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INTERVIEW

Japanese

cinema staff×アルカラ

2018年06月号掲載

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cinema staff:飯田 瑞規(Vo/Gt)
アルカラ:稲村 太佑(Vo/Gt)
インタビュアー:吉羽 さおり Photo by 石崎祥子

-ただ仲良しだから創った作品ではない、それ以上の意味のあるものができてますね。では、カバー曲についても訊きたいのですが、お互いどの曲をカバーするかはどの時点で明かしたんですか。

飯田:マスタリング後で、こうして取材が始まる直前ですね。それまでは内緒にしていたんです。

稲村:どの曲をやるのかお互いにわからないまま、レコーディングを迎えて。"何してくんねやろ、あいつら"みたいなワクワクがありました。

-cinema staffは「チクショー」をカバーしましたが、曲はすぐに決まったんですか。

飯田:候補曲としては「半径30cmの中を知らない」(2011年リリースのアルバム『こっちを見ている』収録曲)とか「LET・IT・DIE」(2016年リリースのシングル『炒飯MUSIC』収録曲)とか「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」(2009年リリースのアルバム『BOY NEXT DOOR』収録曲)とかが挙がっていたんです。そのあたりの曲なら、cinema staffらしさが出つつ、(ファンに)やりそうな曲だなと思われるところだったんです。アルカラが「great escape」をやってるのはあとから知ったんですけど、これは同じ理由だなと思いましたね。きっと、お客さんの身体に入ってる曲をがらりと変えた方が、ハッとする気持ち良さがあると思うんです。それも、誰もが"アルカラと言ったらこの曲だ"っていう「チクショー」を、あえて外さずにやりたいと思ったんです。ツウな曲をやるのもアリですけど、ちょっと今回は違うかなと。

-誰もがアルカラと言えばこの曲、というものだからこそ難しくもありますね。

飯田:もともとのアルカラのアレンジ自体がやり尽くされているので。メンバーとも"ヤバいね"とは話をしていたんです。じゃあ、やりたい曲はたくさんあるんだから、そのやりたい曲を全部1曲に入れてしまえばいいんじゃない? っていう話になって。なのでこの曲には、アルカラの曲の断片が散りばめられています。アルカラ・ファンにとっても、愛溢れる感じで作れたかなと思ってますね。

-試行錯誤もありましたか。

飯田:引き算はまったくない感じだったので、大丈夫でしたね。もとの曲がわからないけどっていうくらいのやつまで入れているので。

稲村:一番"これでもか!"と思ったのが、曲が終わったあとに、違う曲の終わり方がまた来るんですよね(笑)。僕と三島はマスタリング作業に立ち会って聴いているんですけど、本当はマスタリングだから音のことを言わないといけないのに、そんなことよりも、"何が起こってるんだ?"みたいな。これ、うちの下上(貴弘/Ba)が聴いて、あまりに感動して泣いたらしいですから。

飯田:泣いてくれたんだ(笑)。喜んでもらえて良かった。

稲村:また歌が、艶っぽいんですよ。エッチなんですよね、声が。

-そしてアルカラは「great escape」をカバーしましたが。冒頭から違う曲になってますね。なんの曲が始まるんだろう? っていう。

稲村:アルバム・バージョンの「great escape」(2014年リリースのアルバム『Drums,Bass,2(to)Guitars』収録の「great escape(alternate ver.)」)には、曲の前にちょっとイントロ的なものがあるんですけど、原曲リスペクトとして、そこはちゃんと踏襲しようと思って。アルバム・バージョンを作っているからには、こっちに意味があって、こっちをカバーしたんだって思わせたい。でも、そこをカバーしたといきなりバレてもあかんから、何が始まるかわからない感じにしようと。あと、さっきのアレンジの話で言うと、cinema staffの曲も完成しているんですよ。栄養バランスもすごく良く、味つけもすごく良く、見た目もすごくいい感じなんですよね。これを例えば、ボサノヴァっぽくするとかテンポを変えるとかで勝負しちゃうと、曲が生きないなと思ったんですよね。どこまでもアルカラらしくトリッキーにやりながら、最終的に原曲リスペクトに戻ってくるというものにしたくて。cinema staffがこの曲を聴いたときに、"こんなことすんねや!?"と思わせたかったんですよね。あとは、この曲のメロディがヨーロッパの感じがしたんですよね。クラシックな感じで。そこをバイオリンで弾いたら、より引き立つんじゃないかなって思って。

-仕上がりを聴いて、飯田さんはどう感じましたか。

飯田:まんまと、太佑さんがこうしたいと思っていたものにハメられた感じがあって。最初、なんの曲かも一瞬わからないし(笑)。

稲村:はははは(笑)。

飯田:俺はシモさん(下上)と違って笑いましたけどね。すげぇな! と思って。メイン・フレーズも、太佑さんがバイオリンを弾けるからこそのもので。そういえば、台湾にツアーに行ったころって、太佑さんがバイオリン弾けるの知らなかったんですよ。リハでバイオリン持っていたんですけど、絶対当て振りだと思っていたんです。当て振りしそうじゃないですか(笑)。だからライヴで弾いているのを見て、びっくりして。この人なんやろ!? と思って。

稲村:(笑)

飯田:そのあと話を聞いたら、小さいころからバイオリンをやっていて、しかも絶対音感も持ってるし。すげぇいろんなもの持っているんですよ。その武器をこの曲でフルで使ってくれてるのも嬉しかったし。絶対にアルカラにしかできないカバーで、楽しめるカバーですね。

-お互いに、何か言わせてやろうっていう気持ちを感じますね。

飯田:そうですね。だって、これが入ってるEP聴きたいでしょ? って。

稲村:聴きたいよ。本編は言ってみれば頭の2曲で。そこで2,000円分の価値はクリアしてんねん。こっから先は、また別で(笑)。でもマジで、お互いのファンはこれを聴きたいんじゃないかと思う。cinema staffの「チクショー」を聴いたら、下上みたいに泣くくらい感動したり、アルカラの「great escape」を聴いて、めし君のように笑ってくれたりするのが想像できるので。なんて豊かなEPなんだって思いますね。

飯田:めっちゃ詰め込んでますよね。

稲村:脳みそがついていくの大変ですよ、これ。