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DISC REVIEW

prism.

瀧川ありさ

prism.

生まれ育った東京を舞台に、自身の記憶と感情のかけらを繋ぎ合わせたミニ・アルバム『東京』から2年。20代から30代へと向かう女性のリアルや理想やままならなさを、美しくきらめく歌に変えたのが今作の5曲だ。1stアルバム『at film.』が象徴するように、瀧川ありさは街並みやふとした誰かの言葉、季節の香りや移ろいなどにカメラを向け、繊細な物語を紡ぎ出していく情景描写の妙手だが、今作はもっとダイレクトに心を突き動かす歌が並ぶ。サウンド的にもぐっと深みのある、そして躍動的なポップスとなって、聴き手の心を共振させるような前のめりなエネルギーに満ちている。シルキーな歌声にグルーヴが生まれ、歌のメッセージをまっすぐ届けてくれるものになった。瑞々しく、ソウルフルに響く。そんな作品だ。

わがまま

瀧川ありさ

わがまま

禁断過激なラヴ・ストーリーで話題を集めるTVアニメ"ドメスティックな彼女"EDテーマとして書き下ろされた表題曲は、アニメの世界観に寄り添いながら、その時々で表情を変え、アニメのみならず日常のあらゆるシーンや感情にぴったりとハマる。ドロッとした剥き出しの感情を描いた歌詞が心をかき乱す一方で、メロディは悶々とした感情がサビで解放されていくところが聴いていて爽快。ふと口ずさんでしまうようなキャッチーさも持ち合わせている。瀧川ありさがドラムを叩く姿が見られるMVも必見だ。カップリングの「Always」は、ピアノやストリングスが美しい、壮大なバラード曲。丁寧に描かれた景色に浸るだけじゃなく、彼女の美しい歌声もしっかり堪能できる。

東京

瀧川ありさ

東京

デビュー3周年を迎えての第1弾音源は、初のコンセプト・ミニ・アルバム。東京を舞台に綴った物語全6曲を収録している。恋人や友人に伝えたいもどかしい想い、"君"をうまく慰める術がない不器用な自分、その背景やふたりの距離の間を都会の街並みやノイズが横切って、微妙な想いの距離感や時間の経過をポエトリーに映し出していく。映像的な描写や、何気ないシーン、行間が心を映す歌は、瀧川ありさの得意とするところだろう。昨年、松任谷由実の「ノーサイド」をカバーし、ユーミン愛とシティ・ポップやニュー・ミュージックへの愛情を形にしたが、今作はそうした自身のルーツを昇華した瀧川ありさのシティ・ポップを描いた。でも、街への歪な愛憎も滲んでいるのは、東京出身者ならではの視点だろうか。

ノーサイド/ONE FOR YOU

瀧川ありさ

ノーサイド/ONE FOR YOU

TVアニメ"ALL OUT!!"のエンディング曲である「ノーサイド」は、1984年に松任谷由実がリリースした曲のカバー。ユーミン好きを公言し、毎日のように聴いているという瀧川ありさにとってはしっくりと肌に馴染んだ歌でもあるが、それだけに繊細に曲の景色、情感を扱っている。80年代のニュー・ミュージックの懐かしさが薫るシックな大人のアレンジで、目の前のドラマを静かに描写するように歌うヴォーカルがいい。感情的になりすぎず、心の陰りや機微をさりげない風のように表現できるシンガーだと、改めて思う曲にも仕上がった。ダブルA面のもう1曲「ONE FOR YOU」は、対照的に晴れやかなサウンドで、未来への岐路を明るく照らした曲。まっすぐな歌詞が照れくさいと本人は語るも、これもまたこの声だからこそ歌える歌だと思う。

at film.

瀧川ありさ

at film.

デビュー作『Season』から5枚のシングルを重ね、季節の風や香り、季節が呼ぶ物語を紡いできた瀧川ありさの1stフル・アルバム。タイトルにある"film"という言葉どおり、日常のシーンや心象風景を切り取って、ドラマを描いた13曲が並ぶ。晴れやかで煌めくサウンドやアッパーなメロディを歌っても、ハッとするような美しい一瞬や、青春期の煌めきをきれいに閉じ込めた曲にも、その裏に過ぎ行く時間の儚さも刻印する。それが瀧川ありさのヴォーカルだ。このアルバムは、その声と、声が語る物語にしっかりと焦点を当てている。1stアルバムに相応しい内容となった。また、ラスト曲「花束」で歌う"写真には映りきらない/この記憶が永遠になるよ"というその先へ向かうフレーズにも、期待してしまう。

色褪せない瞳

瀧川ありさ

色褪せない瞳

アコースティック・ギターの力強いカッティングで始まる表題曲「色褪せない瞳」。そのギターとピアノのドラマチックなサウンドに、優しい光を湛えた瀧川ありさのヴォーカルが映える1曲となった。歌声を支えるドラムのターキー(la la larks/ex-GO!GO!7188)とベースの佐孝仁司(Galileo Galilei)というリズム隊の躍動感も、メッセージ性の高い曲のエンジンになっている。こうした彼女の声の力を活かしたピュアでまっすぐな曲の良さはもちろん、カップリング曲「anything」の平熱感のあるエレクトロ・サウンドで、エアリーに物語を伝える曲もまたいい。この曲は瀧川ありさ作詞作曲によるもので、誰かに寄り添うように、静かに相手の話を聞くような近さがある。不安な気持ちをほぐしていくように、抑えたヴォーカルで歌い上げていく、そのナチュラルさが心地いい。

YOU&I

竹内電気

YOU&I

この手の良くも悪くも80’S J-POPサウンドに振り切れた音楽がこの2009年に聴けるとは思わなかった。竹内電気工業の次男である竹内サティフォ(Gt)がリーダーを務める彼らは高校の同級生を中心にバンドを結成。2005年からライヴ活動を開始し、2006年には日本マクドナルドのCM曲を書き下ろし全国のJFL系FM曲でオンエアされている。今年3月にサード・アルバム『SHY!』をリリースし早いスパンで届けられた今作「YOU&I」は甘酸っぱい歌詞と懐かしくも何処か新しいシンセ・サウンドがくすぐったいポップ・ソング。嫌いじゃないなんて言いながら無償に聴きたくなり何度も聴いてしまう。これはクセになりそうだ。おバカなPVも含めて気になってしまうそんな存在。

悄気る街、舌打ちのように歌がある。

竹原ピストル

悄気る街、舌打ちのように歌がある。

6thアルバムからわずか5ヶ月強でミニ・アルバムをリリース。前作は'21年夏にリリースされたものの、全国を旅できていた時期に書いた曲が中心だったが、今作にはコロナ禍における歌うたいとしての想いが刻まれている。唸りを上げるような歌声、重心の低いバンド・サウンドは時代の閉塞した空気を反映したもので、場面に応じて用いられている打ち込みは無慈悲に過ぎる時間を表現しているように感じられた。参拝の情景を内省とともに描く歌詞が見事な「初詣」から民謡的な温度感の表題曲まで、5曲すべてブルースと呼べそうな佇まいで、"生き延びろ"という力強いメッセージが胸に刺さる。なお、初回限定盤付属のDVDには、西川美和の企画/監修によるMV 5作を収録。こちらも必見だ。

youth

竹原ピストル

youth

2009年の野狐禅解散以降、年間250~300本ペースでライヴを行い、ひとりきりでの表現活動を突き詰めてきた竹原ピストル。酸いも甘いも、雑多な日常の中に紛れた何気ない風景や人との会話も、この人はすべて歌にしていく。そして己の身体で表現をしていく。そうしていくことがきっと、彼にとっての"生活"とイコールになっているんだろうなあということが、剥き出しの岩のようにゴツゴツした手触りの全11曲から伝わってきた。"こうするしかない"と決めた人間の、諦めにも似た開き直りは、この上なく泥臭くても最高にカッコよかったりする。"youth"、つまり若さ、青春と名づけられた本作、"必死じゃない大人なんていないのさ"というフレーズにガツンと頭を殴られた。

STREET GOTHIC STYLE

武瑠

STREET GOTHIC STYLE

自身の音楽人生15周年を迎え、これまでのキャリアで発表してきた自作曲を再編曲/編纂した"15周年自己ベスト・アルバム"。自身が初作詞/作曲を手掛け、SuGの代表曲でもあった「LOVE SCREAM PARTY」から、様々なアーティストとのコラボレーションを行った浮気者の「I 狂 U」、そして「死んでも良い」をはじめとした、sleepyheadのラスト作品『センチメンタルワールズエンド』収録曲まで、全キャリアからピックアップされた18曲を収録。主にリアレンジされているのはSuG時代の楽曲だが、どれも原曲が持つ空気感を壊すことなく、現在の形にアップデートされている。過去と今を繋ぎ合わせ、ここから彼はどのように進んでいくのか。その礎にもなるであろう1枚。

愛が欲しくなる

谷川POPゴリラ

愛が欲しくなる

彼らの音楽性は幕開けに置いた「Borderless Party」が総括している。ロック、ファンク、ヒップホップ、ジャズなどのミクスチャーを、そのバンド名並みに取っつきやすい楽曲に昇華。なおかつ、音楽に夢を抱き、愛知から上京したというバンドの野心的なリリックが特に若者の心を掴んで離さないだろう。なかでも、タイトルのフレーズを連呼するパートが斬新な「痴漢、アカン」はアグレッシヴなプレイが曲を牽引していて、そのテーマと音楽のマッチングがユニーク。そしてわずか10秒ほどのジャングル感のあるSEを導入にして、タイトル・コールとともに始まる「俺的恋の予感」は、バンドの現時点でのアンセムらしい堂々たる仕上がり。ギター・リフのインパクトもさることながら、ライヴでシンガロングを呼び起こすであろうサビは間違いなく強力な武器だ。

ラッキー

環ROY

ラッキー

前作『あっちとこっち』以来約2年ぶりにリリースとなる4thアルバム。前作同様客演はなし、トラック・メイカーにはここ数作タッグを組み抜群の相性を見せている三浦康嗣(口口口)や、蓮沼執太、ゴンドウトモヒコ(pupa)、戸高賢史(ART-SCHOOL)などが名前を連ねる。彼はシーン生え抜きのラッパーであることは間違いないが、ライヴ活動も含めて、シーンの外からゲストを招くことで多くの新しい化学反応を引き起こしている。今作も表情豊かな作家陣のトラックのうえを転がるように紡ぐ彼の言葉の輪郭の強さに何度もハッとさせられる。Track.12の蓮沼執太がプロデュースのカラフルなエレクトロニカ的トラックの「YES」の少しアンニュイなフックが実に心地よい。ラップ・ミュージックが苦手な人にこそ聴いて欲しい。

love and pain

たむらぱん

love and pain

『wordwide』以来1年2ヶ月振りとなる、通算6枚目のフル・アルバム。以前以上に"人"について考えて言葉を作った結果、その言葉が呼んだのは、たむらぱん史上いままででいちばんシンプルとも言えるアコースティック色の強い音色とストレートなメロディだった。これまでのたむらぱんのイメージでもある非常にオープンでエンタテインメント性の強い音楽世界とは真逆に位置するような、パーソナルな空間が広がる。それに最初は驚いたが、言葉を主体とした歌を立たせるという根幹は変わらないことに気付き、このスタイルに行き着いたことは必然だとすぐ納得できた。ラストの「やってくる」は"アコースティック"の既成概念をひっくり返す展開で、さすがのセンスと手腕に舌を巻く。彼女の音楽性が持つ深みは果てない。

wordwide

たむらぱん

wordwide

前作『mitaina』から僅か9ヶ月という驚異のスピードで届けられた5thアルバムは、音と言葉がこれでもかと聴く者の耳と心に飛び込んでくる、非常に華やかな作品だ。ジャンルに囚われない奇想天外で変幻自在な楽曲展開は、彼女の紡ぐ言葉をより響かせる。豪華なアレンジは別世界のように煌びやか。だがその真ん中にある彼女の真っ直ぐな歌と歌詞はリアリティに溢れる。この広い世界は、人と人のコミュニケーションの集合体。たむらぱんはそのひとつひとつをより深く追求し、様々な美しい音色で彩った。それはこの世界への希望、理想郷のようでもある。Shing02とのコラボ曲「でもない」はShing02がラップだけではなくディレクションにも参加。より濃度を増すたむらぱんワールドが堪能できる全12曲だ。

mitaina

たむらぱん

mitaina

タイアップ・クイーンである彼女の音楽からは数多くのキャッチ・フレーズが浮かぶ。瞬時に聴き手を虜にしてしまうポップ・マジシャンみたいな、無尽蔵の音楽ストレージみたいな、広大なポップ・マップで自由奔放にはしゃぐ探究者みたいな……マルチ・アーティスト、たむらぱんから4thアルバム『mitaina』が届けられた。本作を経て新たに浮かぶフレーズは、意欲的で果敢な挑戦者/コラボレーター……ミタイナ。イギリスのパンク・バンドSNUFF(!)、椎名林檎ワークスで著名な斎藤ネコ、元ボ・ガンボスのDr.kyOn、そしてこちらもマルチに活動するHALFBYなど、ジャンルを越えてあらゆるアーティストとのコラボレーションでほっこり暖かい独自の世界観をさらに昇華する。愛くるしい童顔に秘めた圧倒的な知性にはいつも驚かされます。

せかんどふぁーすと

THE 抱きしめるズ

せかんどふぁーすと

青春パンクをかき鳴らしていたTHE 抱きしめるズが、それまでギタリストだった篠崎大河がリード・ヴォーカルを取る形で復活。メンバー交代も経て、満を持して新体制初アルバムを完成させた。メロディアスなギターから始まるモータウン調のオープニング・チューン「偉大な凡人」から、これまでのイメージをなんとも美しく塗り替える。何度転んでも諦めなかった篠崎だから歌える、再始動を宣言するナンバーに、聴き手を優しく包み込む素朴な歌声がハマっていて好印象だ。リード曲「Have a good life」では爽やかなメロディと、シンセサイザーも採り入れた近未来的サウンドの融合で新境地をアピール。哀愁と深みを増した詞世界と、懐かしさもあるグッド・メロディにキュンとする。意欲溢れるリスタートに拍手を贈りたい。

I wanna be your boyfriend

THE 抱きしめるズ

I wanna be your boyfriend

初期衝動がほとばしりまくりの、問題作であり1stアルバムである『脳内デート』でとんでもないインパクトを残したTHE 抱きしめるズ。今作ではサウンドが大人になってます!(といっても、メンバーは23 歳にして童貞記録を更新中のようですが......)前作のような勢いを全面に押し出した楽曲もいいけれど、センチメンタルなソングライティング・センスが光る今作に、彼らの真骨頂をみました。甘酸っぱい青春系とあなどってかかるとエラい目にあいますよ。純真無垢なフレーズにストレートすぎる楽曲が相まって、よからぬ化学反応を発生してる。銀杏BOYZ ではアツすぎる......、おとぎ話よりもうちょっとロック色が強いのがお好みという方、THE 抱きしめるズを聴いてみて!!

若者たち

ザ・ダービーズ

若者たち

2022年に名古屋で結成し、"SAKAE SP-RING"等への出演や各地でのライヴを重ねながらロック・ファンの心を掴んでいるザ・ダービーズ。孤独の痛みと喜びを知り、眩い青春期への憧れもあるが、彼等の歌にはどこか達観した視線が宿る。衝動を破裂させるようなアンサンブルがあり、ライヴを重ねてきたからこそミドルな曲でもいいノリが生まれているが、語り掛けるような歌心が沁みる音楽だ。1stミニ・アルバムとなる今作は、あのロック・バンドの名やあの曲のフレーズ等、ザ・ダービーズを形作ったものもちりばめられた自己紹介的作品であり、またロックの遺伝子を受け継いでいく意思も見える。バンドの産声が純度高くパッケージされた1枚。

Chameleon

近石 涼

Chameleon

「ライブハウスブレイバー」に始まり、8月から連続でデジタル・シングルをリリースしてきた神戸発のSSW 近石 涼のインディーズ・デビュー・アルバムが完成した。「ライブハウスブレイバー」ではソリッドなアコギとバンド・サウンドで、「最低条件」は広がりのあるメロディをピアノやビートが躍動的に縁取る。かと思えば「ノスタルジークラムジー」は夢心地なピアノや甘いボサノヴァ、そこからグルーヴィなビートとラップ調の歌になりと、シームレスに場面展開していくポップでトリッキーなアレンジが冴える。ジャジーな「寂しさは夜のせい」や、ピアノとストリングスによる美しい小品「生まれて死ぬまでの間に」など、多彩な曲を芳醇な歌がさらりと包む。曲の幅広さはもちろん、何よりその歌声が深い印象を残していく作品だ。

whiteout

血眼

whiteout

"退屈と同じ 君の言葉は哀しいよ"と冷たく突き放された。瑞々しいほどに透き通ったせつこ(Gt/Vo)の歌声が歌い上げたのは、その歌声とは真逆と言ってもいいような思いだった。さまざまな賞レースに出場し、各方面から注目されている徳島発の3ピース・ガールズ・バンド、血眼。彼女たちの鳴らす音楽は、あどけなさがまったく感じられないところがいい。まっすぐで強いのに、どうしようもなく脆くて、切ないのだ。それに、自分でも気づかないうちにできていた心の隙間に、知らないうちに入り込んできて、ちくりと針を刺してくる。え? 女の子は可愛いだけでいいって? いいや、女の子は一癖も二癖も、なんなら彼女たちのように殺人的な毒を持っているほうが魅力的じゃないか。

誕生

チャットモンチー

誕生

7枚目のオリジナルにして、ラスト・アルバム。2017年のふたり体制でのツアーで見せた、生のギターやパーカッション、キーボードと、自由な発想の打ち込みや背景の音色が作り出す世界観も、やはりチャットモンチーでしかないという、首尾一貫した"スタイルありきではない"彼女たちの音楽が証明されている。2018年の今のオルタナティヴ・ロックと呼びたい「the key」のソリッドさと浮遊感がない交ぜになった感触。DJみそしるとMCごはんとのコラボでは野心や希望を抱いた女の子の葛藤や成長=チャット自身も包み込むような大きな愛情が印象的だし、高橋久美子の歌詞がふたりに宛てた手紙のような「砂鉄」もいい意味で今作ならではだろう。最後まで誰とも違うオリジネーターだったチャットにただただ脱帽。

CHATMONCHY Tribute ~My CHATMONCHY~

V.A. (チャットモンチー)

CHATMONCHY Tribute ~My CHATMONCHY~

今年7月に活動を"完結"させるチャットモンチー、初のトリビュート・アルバム。メンバーとスタッフがオファーした14組と、一般公募で選出された2組が参加。中でもR&Rの激情に愛を込めた忘れらんねえよとギターウルフ、「初日の出」を完全に再構築したPeople In The Box、暴動こと宮藤官九郎が曲中のコントを書き下ろしたグループ魂による「恋愛スピリッツ」の振り切り方は出色。女性陣もストレートにアレンジしたHump Backから、エレクトロニックな浮遊感と冴えたギター・リフで有名曲「シャングリラ」に挑んだねごとの気概も素晴らしいし、オリジナル曲に聴こえるほど自然なカバーを聴かせるきのこ帝国の「染まるよ」もいい。類は友を呼ぶというか、堂々と自身の音楽を鳴らす面々が揃った。

Magical Fiction

チャットモンチー

Magical Fiction

チャットモンチー19枚目のシングル、そして2017年第1弾リリースは、ミニ・アルバムに相当するほど濃い内容だ。チャットには珍しい曲先で作られたTrack.1「Magical Fiction」は、80年代ディスコや、その元になるモータウン・ソウル的な跳ねるビートが特徴的。生きていれば起こりうる悲しみや後悔にさよならを告げるマジカルなフィクションの必要性が、曲の明るさと切ない対比を描きながら、曲としてひとつになる新しいアプローチが最大の聴きどころ。Track.2「ほとんどチョコレート」でのエレクトロ・サウンドと、キュートな中にもタフになったふたりが感じられる歌詞もいい。また、ウルフルズのトリビュート盤でも話題の「かわいいひと」のカバー、初期の名曲「やさしさ」のsébuhirokoリミックスも収録している。

majority blues / 消えない星

チャットモンチー

majority blues / 消えない星

ローファイでブルージーなギターがなんとも言えない。これは橋本絵莉子が感じていたバンドを始めたころの心情、そしてチャットモンチーとして上京したころの心情が、決して攻める一方じゃなかったことを今、表現している楽曲なのだと感じた「majority blues」。自分の中の多数派を信じてやるしかない、そうして進んできた彼女のアーティストとしての信念がこれまでになく表明されている。そして映画"アズミ・ハルコは行方不明"主題歌の「消えない星」は、福岡晃子の書く歌詞がチャットらしい愛することの表現としても、映画の印象を前向きなものに変える装置としても両立する仕上がりに。また、「とまらん」は地元の友達に向けて歌うような阿波弁満載の歌詞と軽快なテンポのなかで、生きていくことの輝きに触れさせてくれる。

共鳴

チャットモンチー

共鳴

チャットモンチーというバンドの自由度と、今、音楽をやるとはどういうことなのか?の両方が感じられる、いい意味でアグレッシヴな快作が誕生。乙女団(世武裕子、北野愛子)による女性の業すら感じさせる歌詞、ピアノも映えるミディアムの「毒の花」と、男陣(恒岡章、下村亮介)によるアブストラクトな面も感じさせる演奏に乗る、人間の本質を表現する「私が証」。この2曲の対照がアルバムの太い柱になりながら、80年代の松田聖子ばりのアイドル・ポップを聴かせる「最後の果実」や、作家の西加奈子が歌詞を手がけたオーガニックな味わいの「例えば、」など、ジャンルにこだわることなく、今の彼女たちの女性、人間、音楽家としての表現欲を余すことなく具体化している。その勇気や喜びに圧倒される全12曲。

ときめき / 隣の女

チャットモンチー

ときめき / 隣の女

チャットモンチーのふたりに世武裕子(Pf/Syn)と北野愛子(Dr)が参加したいわゆる女子チーム"乙女団"ならではの新しい世界観が広がる両A面シングル。「ときめき」は世武のピアノが牽引するバラード。女性心理のちょっとした怖さや潔さが初期の名曲「染まるよ」を想起させる恋愛ソングのリアリティ満載。対照的にギター・リフとリズム・チェンジがソリッドな印象の「隣の女」は忙しさにかまけて実は寂しいイマドキの女の子の像が浮かぶ。そのちょっとしたトゲは身につまされる同性のリスナーも多そうだ。加えてカップリングにはナカコーことKoji Nakamuraのリミックスで橋本のヴォーカルと歌詞が圧倒的に刺さる「Last Love Letter」を収録。同リミックスもピアノが印象的でトータリティのある1枚に。

こころとあたま / いたちごっこ

チャットモンチー

こころとあたま / いたちごっこ

橋本絵莉子のメロディと歌が軸にありつつ、圧倒的に音圧も疾走感もレンジが広がった「こころとあたま」。特にサウンドとして新しい下村亮介のアナログ・シンセもグルーヴを生み出してこそいるものの、チャットモンチーらしさの中に溶け込んでいるのが聴いていて心地よい。一転、牧歌的なピアノの軽快さが印象的な「いたちごっこ」。それでいて巷に溢れるテンプレな音楽と、音楽を奏でる場所として自分が選んだこの場所=東京で生きることをソリッドな言葉で表現しているのが中々に強かだ。2人体制のときの無敵感とはまた違う、もっと鋭く、さらに音楽的なチャットモンチーがここにいる。カップリングにはライヴの登場SEとしても人気のgroup_inouのミックスによる「変身(GLIDER MIX)」も収録。

ハテナ/夢みたいだ

チャットモンチー

ハテナ/夢みたいだ

チャットモンチー今年3作目となる両A面シングルは、トップ・ギアのまま変速不要とでも言わんばかりにダーティーなギターを轟かせ疾走する「ハテナ」と、彼女らがライヴSEとして使用しているMATES OF STATEの「Proofs」に日本語詞をつけた「夢みたいだ」を収録。荒々しくソリッドなバンド・アンサンブルに乗せて“人間はめんどくさい”と言葉を思い切り投下していく橋本のヴォーカルは史上最高の純度と強度をもって響く。「夢みたいだ」では橋本のヴォーカルとギターに沿い、「ハテナ」では前へ攻めて出る福岡のドラム・プレイ/コーラスも楽曲をチャットモンチー色に染め上げる個性を放っている。“ハテナに答えなんてない/生まれた時から”という燦然たる答えを掲げ、“Chatmonchy has come, again!”と高らかに鳴らす祝音だ。

貴方の国のメリーゴーランド

チャラン・ポ・ランタン

貴方の国のメリーゴーランド

PINK FLOYDのギタリストDavid GilmourやTwitterの会長JackDorseyに気に入られているという逸話を持つ、チャラン・ポ・ランタン。もも(Vo)と小春(Accordion)の姉妹による2ndシングル『貴方の国のメリーゴーランド』は、夢の中に引きずり込む気満々の1枚。表題曲となるTrack.1は、映画"飛べないコトリとメリーゴーランド"の主題歌となっており、理想と現実のギャップにもがき苦しむ主人公に、悪魔と天使かの如く美しいワルツで現実逃避をそそのかす。映画を観ずとも、そんな場面を思い浮かべさせる世界観が広がる楽曲だ。とび跳ねているかと思ったらいつの間にかホロリと泣いていたりと、愛くるしいチャランポの一面はそのままに、嬉しいことや悲しいことすべてが収録されている、めくるめく4曲だ。

漂☆流

超☆社会的サンダル

漂☆流

天才ソングライター オニザワマシロ(Gt/Vo)の独創的な世界観に、身長180センチ、平均体重100キロの巨漢メンバーの強靭なサウンド。SNS全盛のZ世代の音楽シーンが生み出した超☆新星、超☆社会的サンダルの1stミニ・アルバムには、SNSで話題を集めた「可愛いユナちゃん」、先行配信シングルとしてリリースされた「魚を追いかけて」を含む全7曲が収録。小学生みたいなピュアさを持ち合わせたオニザワのワード・センスが光る、正直すぎる歌詞と純度の高い歌声、センス抜群のメロディ。めちゃくちゃキャッチーなのに、滲み出る恐怖と狂気を感じた「可愛いユナちゃん」を聴いてぶっ飛んだが、それに限らず、本作収録のひと筋縄ではいかない楽曲はどれも最高! ライヴハウスを騒がす、令和のサブカル・スターの爆誕です!!

おおぞらクルージング

超能力戦士ドリアン

おおぞらクルージング

超能力戦士ドリアンの約2年ぶりの新音源。この2年間ライヴに力を入れてきた印象のある彼らが自身のレーベルから発表するミニ・アルバムは、本誌読者ならあるあるだろう「被りまくりタイムテーブル」や、ライヴ定番曲であり"〇〇と同じ"シリーズの新作「ヤバイTシャツ屋さんと同じ人数」(本家を意識したと思われる高音ヴォーカルも入った仕上がり)などを収録した。「ドラゴンの裁縫セット(笑)」は、懐かしい小学校時代の裁縫セットをテーマにしたナンバー。目のつけどころのユニークさに加え、言いすぎだしリズムにハマっているのも含めて笑ってしまう彼ららしさが今回も炸裂しているが、新鮮な驚きは「寝るまでは今日」だ。お洒落なダンス・ミュージックにいい声の低音ラップまで披露しており、作品のアクセントになっている。

マジすげぇ傑作

超能力戦士ドリアン

マジすげぇ傑作

前作を発売した4日後に、ステイホームのお供にとなんと8週連続で新曲を配信リリースすることを発表したドリアン。その8曲+未発表曲+ボートラ収録というミニ・アルバムのボリュームを超えた1枚が到着した。やっさん(Gt/Vo)の思いつきツイートに寄せられた、リスナーの"やりたいけど自粛してること"を曲の中で実現させた「今は曲の中やけど」は心が温まるし、けつぷり(Gt/Cho)が"カンデミーナグミ"好きを公言していたことから決定したタイアップ曲「カンデみ~んなハッピー!」は、このなんでもありな彼らほど"タイアップ"に適任のバンドはいないのではと思うほどの仕上がり。Twitterに投稿されている各曲の手作り感溢れる映像&"フラッシュ動画"を彷彿させる「万有インド力」MVも併せて楽しもう。

ハンパねぇ名盤

超能力戦士ドリアン

ハンパねぇ名盤

初の本格的な全国ツアーや東阪ワンマンの経験を経て、リスナーの存在をより実感したという超能力戦士ドリアンの2ndミニ・アルバム。"全曲キラーチューン"を念頭に制作したというだけあって、これまで以上にキャッチーさが爆発! さらに、新たにエンジニアを迎えて制作が上げ潮に乗ったことにより、初のメタル曲やシャウトにも挑戦するなどの曲調の振れ幅だけでなく、各パートのフレーズの聴き応えも増している。また歌詞の部分でもいわゆるネタ曲だけでなく、ラストに据えた「満足バロメーター」を筆頭に、バンド自身のメッセージを込めたナンバーも必聴。聴き手、そしてライヴに来る人全員を楽しませたいという彼らの信念はより強く根付き、"名盤"と自らで太鼓判を押す自信作となった。

超能力戦士ドリアンの1004円のCD

超能力戦士ドリアン

超能力戦士ドリアンの1004円のCD

"ワン!チャン!!~ビクターロック祭り2018への挑戦~"でグランプリを獲得し"ビクターロック祭り2018"への出演を果たしてから一気に注目度を上げた、いきものがかりと同じ編成の抱腹絶倒3ピースによる初の全国流通盤。自主制作盤でリリースした楽曲の再録と新曲の計5曲を収録している。笑わせて盛り上げるステージ・パフォーマンスだけでなく、リズム隊が不在という編成を生かし、ユーロビートやエレクトロなど、バンド・サウンド以外のジャンルに振り切った楽曲展開ができる"なんでも屋さん"っぷりも彼らの強みだ。ひたすらにキャッチーなメロディやパロディ・センスも人懐こい。今回の5曲は、自分たちに関連する事柄をテーマにした楽曲がほとんどのため、歌詞の側面から見てもバンド自己紹介編と言える。

アポカリプス

チリヌルヲワカ

アポカリプス

黙示/啓示を意味する"アポカリプス"をタイトルに冠し、収録曲7曲のタイトルをすべて漢字1文字で統一するなど、コンセプチュアルな作品となったチリヌルヲワカの13thアルバム。現代の鬱屈とした空気感がそのままパッケージされた本作ではメランコリーな心情がありのまま描写され、ユウ(Gt/Vo)の詩的な言語感覚も遺憾なく発揮されている。"命"、"影"など人生で誰もが直面するシンプルな7文字を冠したことで、一見パーソナルに聴こえる言葉でも、最後には普遍性を持って響く。また本作では前作に続きエンジニアに南石聡巳を招聘。洗練されたプログレッシヴ・サウンドを前面に押し出し、人生の諦念を吐露したヘヴィな作品ではあるが、最終的には"光"に行き着くという彼らなりの救済もしっかり用意されている。

太陽の居ぬ間に

チリヌルヲワカ

太陽の居ぬ間に

日々の生活に沈む感情の澱を詩的に昇華した歌詞と、ユウ(Gt/Vo)が紡ぎ出すメランコリックなメロディによるところが大きい"ヲワカ節"が、普遍の魅力を湛える一方で、改めてバンドや音楽に取り組む気持ちを自らに問い掛けているような言葉と、ダイナミックなリフで聴かせるガレージ・ロッキンなサウンドが魅力の10thアルバム。エスニックっぽい魅力もある「トライアングル」、サーフ・パンクな「因果関係」、サイケデリックなスロー・ナンバーの「太陽の居ぬ間に」など、それぞれに異なる魅力を持った全7曲は前作同様、エンジニアの南石聡巳と岡山にある彼のスタジオでレコーディングしている。ユウいわく"これまでで一番満足感がある"というアルバムは、ギターの歪みもエグい。


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ノンフィクション

チリヌルヲワカ

ノンフィクション

ちょうど1年前と同じ日にリリースされる9枚目のアルバムは、鍵盤で彩りを加えるなどしていた前作と変わって、尖ったギターとリズム隊で束ねられた太い音をより前面に押し出した印象。今作のハイライトとなるのが、「極楽浄土」。ユウ(Gt/Vo)がこれまでになくファンキーで強烈に耳に残るリフを弾いており、水を得た魚の如くうねるイワイエイキチのベース、シンプルさを極めて軽快に躍動する阿部耕作のドラムと共に疾走する様は、文句なしにカッコいい。はみ出しまくっている音は、1stアルバムを手掛けて以来の共同作業となったエンジニア、南石聡巳が設立した"duskline recording studio"でRECされたもの。形骸化した"オルタナティヴ・ロック"という言葉をあえて使いたくなる、刺激に溢れた1枚。

きみの未来に用がある

チリヌルヲワカ

きみの未来に用がある

2016年1月に坂本夏樹(Gt)が脱退し、3ピース体制となってから2作目となる8枚目のオリジナル・アルバム。荒々しい音で実験的な要素もあった前作『ShowTime』を経て、2015年の6thアルバム『アヲアヲ』とはまた違うシンプルなロックを聴かせている。コーラス・ワークが際立つ「ドルチェ」(Track.1)、静かに盛り上がる「シダレザクラ」(Track.5)、ヲワカ節全開なギター・リフの「浮キつ沈ミつ」(Track.6)など、決して単純化されているわけではなく、複雑な演奏を言葉少なに伝えているようなニュアンスがある。それは新体制後のライヴ活動から生まれた一体感なのかもしれない。ユウ(Gt/Vo)が創り出す詞の世界とメロディへの探求心は、今作でより深まっているのではないだろうか。

ShowTime

チリヌルヲワカ

ShowTime

前作『アヲアヲ』から約1年ぶりとなる通算7枚目のアルバム。毎年この時期にアルバムを発表してきたチリヌルヲワカだが、今回はギターの坂本夏樹が脱退したことで3人編成となって初めてのリリースとなる。シンプルなアレンジで新境地を聴かせた前作の印象を持ってTrack.1「ショウタイム」を聴くと、いきなり頭をぶん殴られるようなショックを受けるはず。歪みまくったベースとギター、マウントポジションでパンチをコツコツ当ててくるようなえげつなさを感じさせるドラム、タガが外れた暴力的な音の塊がこれでもかと叩きつけられる。スペーシーでダンサンブルなTrack.6「=0」や、ライヴの人気曲「ホワイトホール」と対をなすタイトルのインスト曲Track.9「ブラックホール」など聴きどころ満載。

アヲアヲ

チリヌルヲワカ

アヲアヲ

毎年恒例となった4月に発売される新作、6枚目のオリジナル・アルバム。『アヲアヲ』というタイトルの字面からしてヲワカっぽい!とは思うものの、前作『it』にあった2本のギターのフレーズの応酬、複雑に絡み合うリズム・セクションといったアレンジは影を潜め、よりシンプルに歌の良さを前面に押し出した作品となっている。タイトル通りアヲアヲとした瑞々しさを感じさせるポップな表題曲をはじめ、研ぎ澄まされていながらもストイックさとはまた違う、楽曲を立たせる自然なシンプルさが心地よい。豪快にドライヴするTrack.1「陰日向」からミディアムなガレージ・サウンドに乗せて歌われるTrack.7「松の木藤の花」までライヴ感に溢れた1枚。