"I'm With You"
10月9日(月・祝)下北沢 BASEMENTBAR / THREE
OPEN 17:00
出演:bed / DYGL / Homecomings / in the blue shirt / Le Makeup / Maika Loubté / No Buses / SATOH / Strip Joint / uku kasai / Waater / ////虹////(0.8秒と衝撃。)
素晴らしい。この「ジャスミンの恋人」は、ハチゲキ、狂騒のボディ・ミュージック時代の幕開けを告げた2011年のシングル曲「町蔵・町子・破壊」以来のターニング・ポイントとなる1曲だろう。ノイズが消え、シンプルに削ぎ落とされたアレンジ。故に今まで以上に輪郭が露わになった、ソリッドなビートのトラック。その上を流れるアコースティック・ギターは、時に聴く者の心のひだをそっと撫でるように艶やかなメロディを奏で、時に聴く者の腰をダイレクトに揺さぶるようにアタック感強く掻き鳴らされている。80年代のイギリスでNEW ORDERやTHE STONE ROSESが鳴らしたサウンドを、20年以上の時を超えて再解釈しているような新機軸。誰にも踊らされない君の気高き心は、こういう音楽でこそ踊らせるべきだ。
0.8秒と衝撃。の、今年2作目となるフル・アルバム。制作開始当初、石野卓球『BERLIN TRAX』から影響を受けたというこの作品は、アルバム・タイトルの"NEW GERMAN WAVE"という言葉が示すように、電子音楽の深淵を巡る。このアルバムでハチゲキは、自分たちの鳴らす音楽の奥には歴史と文脈という道しるべがあることを表現してみせる。そして音楽性だけでなく、このアルバムは精神性の部分でもハチゲキのディープな内面が吐露されている。特に、ふくよかなサウンドに乗せた優しげなメロディが心地よい「FLoWeR」、壊れそうなほどに美しい「UKuLeLe HiBisQs」。この2曲は、これまでのバラード曲よりも一段と重い筆圧で"別れ"と"死"を歌う。音楽的にも、バンドの精神性的にもより深みを覗き込んだ大傑作。
前作、そして去年のEPを経て、クラウト・ロックやインダストリアル・ロックを参照することで0.8秒と衝撃。の音楽的個性となった暴力的なビートは、本作でも健在。だが、それは今までのように周囲に対する違和感や怒りを表現するためのものではなく、リスナーを鼓舞するためのものとして、本作では鳴らされている。無論、苛立ってはいるが、いじけてはいない。電気グルーヴとTHE BLUE HEARTSに影響を受けたという塔山の言葉は、THE BLUE HEARTS的な部分――つまり、リスナーに対する扇動者としての役割に一層自覚的になった。この時代、“生きづらさ”を感じることは、同時に、“自分を持っていること”の証明でもある。生きづらくて結構。楽しめ。そんな強さと誇りに満ちた、現時点での最高傑作。
0.8秒と衝撃の新作EP は、ファースト・アルバムに比べ、音が整理された印象。攻撃的なポスト・パンク「ビートニクキラーズ」や「号84谷渋」も、ジャンクなハードコアではあるのだが、ポイントをしっかりと押さえた構成と音作り。ナイーヴな昭和歌謡的メロディ×フラメンコ「21世紀の自殺者」は0.8秒と衝撃。のセンスが凝縮された秀逸な雑食ポップ。逆に、「FOLK GUERRILLA」は正直ピンとこない。例えばUSインディの文脈もジャンクに取り入れながら、独自の感性を持つ歪なポップ・ソングになっているところがこの二人の面白さだけれど、その対象がSunny Day Serviceになると、途端に素直になるからそう感じるのかも。でも、ブルーにこんがらがった愉快犯的センスはやはり好きです。
ソング・ライティングを手がける塔山忠臣とモデルとしても活躍するJ.M. による男女二人組ユニット、0.8秒と衝撃。のデビュー・アルバム。2008年に結成し、音源を一切リリースしていないにもかかわらず、ネット上を中心に話題を集めていたこのユニット。ヤケッパチで自意識過剰気味な歌詞をディストーション・ギターに込めたかと思えば、おセンチなポップ・ソングになったり、昭和歌謡になったりと、ほとんど愉快犯的なソング・ライティングが一番の魅力。オルタナを基盤に、時にダブやHIP HOP の要素も取り入れたアレンジもしっかりしていて驚かされるが、自主プロデュースなんだろうか?どこか刹那的な匂いをプンプン放っているこの二人、どこまでこのセンスを高めていくことができるか注目だ。
国境を越えての活動が期待されるバンド No Busesが、2ndアルバムをリリース。トリプル・ギター編成となった彼らが鳴らす音は、表現豊かでメロディックだ。「Number Four or Five」で奏でられる高速ビートや、インスト曲「Biomega」のリフレインする心地よいフレーズも、この作品を語るうえで外せないところ。また、全体に散りばめられたメランコリーな歌詞はダウナーな雰囲気を漂わせている印象だが、"希望はある/大丈夫"(「Not Healthy」/訳)ともあるように、ネガティヴな状態も肯定してくれているように感じる。ボリューム満点に12曲を詰め込んでセルフ・タイトルを冠したのも、"これがNo Busesである"という自信の表れだろう。