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INTERVIEW

Japanese

"革命ロジック"Skream!ステージ 座談会

2024年05月号掲載

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chef's:高田 真路(Ba)
Dannie May:マサ(Vo/Gt)
Klang Ruler:やすだちひろ(Vo)
meiyo
Ochunism:凪渡(Vo)
Interviewer:石田 大実(下北沢LIVEHOLIC店長) 
Photographer:Kanda Yukiya


"自分に向けて曲を作った結果、誰かに刺さるのが一番いい。 バズるとか意識せんと自分らしくあるためにいろんなことを費やしたほうがいい"(凪渡)


-ちなみにOchunismどうですか?

凪渡:僕らはMPCって言って指でビートをやるやつと鍵盤もいるんで、基本頑張ったら生で全部できちゃえるところがバンド構成が多くて良かったところです。けど僕らもめちゃくちゃ同期使ってるんですよ。ほんまは生でやりたいという気持ちもあるんですけど、やっぱ現実的に厳しいところも多くて。Klang Rulerのみなさんの話でいうと、僕は身内ノリみたいなの、あんま好きじゃなくて。けどそういうコミュニティみたいなのを楽しそうやなとも思うし、両方いいとこもあるなとか思いつつ、そこには入れへんのやろなぁとも感じてます。Ochunismはライヴ観たらめっちゃ印象変わるってよく言われるんですよ。それこそ1回Dannie Mayのみなさんにも言われたんですけど、こんな感じなんやって。

マサ:もっとスタイリッシュだと思ったら、結構ロックな感じというか。

-イメージはどう見てもスタイリッシュって感じがしますもんね。MVも楽曲もたしかにそういう感じですね。

凪渡:やっぱロックが好きなんですよ。一緒に曲作ってるギターのちゅーそんも好きですし。だから難しいっすよね。自分たちってこうなんだよというのをどんなふうに伝えていったらいいんかなって、ほんまにたぶんみんな抱えてるんでしょうね。

マサ:自分たちがどう見えてるのかわけわかんなくなるときあります。

やすだ:さっき言ってたみたいな、バンドかバンドじゃないかで音楽聴いてないってのは本当真理だと思ってて、別にバンド界隈の中でもがきたいわけじゃなくて、究極バンドとして見られようが見られまいがどっちでもいいぐらいな気持ちなんです。バンドだけどもっとKlang Rulerの音楽ってこんな感じだよねと、サウンドが素直に入ってくれるような状況にもっともっとしていきたいなっていうのをすごく感じます。

凪渡:でも結局ラベル貼りたがるなぁと思うんですよ。

高田:BMなんだっけ? あるじゃん。

やすだ:MBTI(笑)。

マサ:あれとかなんなんだろう? いろんな人がいて、でもその解像度って絶対みんな違うじゃないですか。あれ、意味ある? と思って。

やすだ:最近めっちゃ流行ってるもんね。イエベ、ブルベもそうだし。

凪渡:最近考えてたんですけど、今ってスマホとか普及して、なんでもすぐ調べられるじゃないですか。例えば映画観たあととか音楽聴いたあとに、ある部分の歌詞とか、一部のシーンについて何言いたかったんやろうっていうのを、本来ならひとりで悶々と帰り道に考えたりすると思うんですよ。それがいつの間にか、答えをすぐ調べられちゃうようになってしまった。自分の性格とかでさえ、本来型にはめられないものも、これ! と決めてしまえるってことが今、よりキツくなってるなと。

やすだ:考える時間減ってるよね絶対。

マサ:調べる安心感のほうがあるんでしょうね。

-みんな不安ですもんね。自分どうなんだろうと調べてここだってなると、たしかにさっき言った安心感というか。

凪渡:僕論理学者です。

-ははは(笑)。調べてた。

マサ:俺もあんなに言ったけど、建築家です(笑)。

一同:ははは(笑)。やってるわ。

マサ:その瞬間は盛り上がるんですよね。ごめん、なかったことにしよう(笑)。

-特にさっき言ったネットというかSNSが普及していて、お客さんもTikTokでしか音楽聴かないみたいなことがすごく多いと思うんですよね。大学生とか高校生とか。今日来てくれたみなさんは比較的やっぱりSNSとかが強いのかなって。TikTokとかでもフィーチャーされて観てもらってるようなアーティストさんが多いなって思うんですけど、バズりにどう向き合ってます?

マサ:音楽を作るうえでの話で言うと、SNSって切り取りの文化じゃないですか。だから今まであったJ-POPっていう形がすごく変わってるなと思ってて。J-POPってAメロがあってBメロがあってサビがあってこの流れ自体を楽しむ、そこに対して音が入ってきてみたいな良さがあったけど、今って音楽全体が洋楽に寄ってて、どこを切り取っても洋楽ってフックがあって、その1フックをずっとループしちゃうとかっていう作りが多いじゃないですか。コラージュ的な音楽が今J-POPのバズってる曲の中にも増えたなと思ってて、そこと自分たちのグラデーションの探し方なのかなとは思うんです。僕らは、僕がかなり洋楽聴かないタイプなんで、そこがすごく難しいなと感じてます。Aメロ、Bメロ、サビでもともと作ってるから1曲の中で絶対に辻褄が合わなくなるんですよ。だからちゃんと洋楽聴かなきゃなって意識してるし。

-アプローチを変えていこうみたいなところもちょっとあるんでしょうか?

マサ:でもTikTokでバズりそうだから書く、みたいなことはあんましてないかなぁ。シンプルにいい曲って今でも、それこそ「ビートDEトーヒ」(ハマいく/作詞作曲meiyo)とかすごくいい曲です。

meiyo:ありがとうございます(笑)。

マサ:あれって別にAメロからサビまで聴いて素晴らしい楽曲だと思うんですよ。だから切り取られるのは1ヶ所でも、曲として素晴らしければそこって全然別の話なのかなっていう。僕だったらJ-POPを書くのが得意なんで、意識しすぎてそこがブレるよりは、自分の強みを出すのが先なのかなと思います。

-今言ってたみたいにいい音楽はいいじゃないけど、今andymoriが若い子にハマってるっていうのもすごいことだなと思って。あのとき流行ってて若い子が聴いてもいいってなるから、そこはTikTokとかもすごいなと。この中ではたぶんmeiyoさんが一番TikTokとかでみんな聴いたことある! になるじゃないですか。

meiyo:そうですかねぇ。

-しかも提供してる曲も知ってるわ、みたいなのが多いと思うんです。

meiyo:曲を聴いてくれたことがある人はめっちゃいると思うんですけど、それがmeiyoなんだってことがまだ全然知られていないっていう体感があって。

-リアルな悩みというか、TikTokでぶわって観てもらっても結びつかないって結構ありますよね。

meiyo:そうですね。だからいい曲を書こうと思って自分が好きになれる曲を書く。まぁ同じですけど、それこそ「ビートDEトーヒ」とかはそういう気持ちで書いて、でも聴いてもらえたんで。

凪渡:一番幸せっすね。

やすだ:SNSは目的によって使い方変える必要がめっちゃあるなって思ってて。私も例えばカバーした「タイミング 〜Timing〜」(2021年リリース/原曲はブラックビスケッツ)っていう楽曲がすごくTikTokで流行って、"曲聴いたことあるよ"は増えたんですけど、それが直接バンドの何かに繋がった体感は正直なかった。"Klang Rulerって名前聞いたことある"には繋がったし、"楽曲聴いたことある"だから言ったら、"え、すごいね!"っていう話題にはなるからそれは良かったんですけど。でも一番良かったのって、それで目に見える数字が増えたというか、再生数や、TikTok何週連続何位ですみたいな冠ができたことで、呼んでもらえたライヴが増えたんです。そういう、その楽曲、TikTokとかSNSのバズから直接お客さんが増えました、ではなかったんですけど、新しく呼んでもらったライヴでKlang Rulerを初めて観たお客さんがめっちゃ増えたんで、やっぱりライヴに来るお客さんが一番増える確率が高いのってライヴで知ることだと思うし。SNSでも曲がBGMとして使われているんじゃなくて、実際に演奏されている映像を観た方がライヴに行きたくなるんです。知名度のためなのかライヴの集客のためなのか、自分たちはこういうバンドって知ってもらうためなのかとか、作るコンテンツによって目的をちゃんと定めないと正解がわからなくなるというか。これバズんなかったから正解じゃないよねじゃなくて、アカウントにこの動画があることで自分たちがバンドだ、こんな演奏する人たちだってわかるとか。目的がわからなくなると、再生数少なかったからダメなんだ、とか多かったからこれはいいんだ、とかなったりするから、なんのためにやるか整理するっていうのが今の時代すごく大事な気がして。やっぱり再生数増えたら嬉しいってテンションになりがちだから、再生数がすべてじゃないというのを最近やっていてすごく感じます。

高田:僕は今、お三方の話を聞いていて、自分も同じようなことをめっちゃ思っているなと感じつつも、僕はバズりに関してはなんでもいいとも考えてて。自分のバンドもちょっと冒頭だけバズるみたいなのがあったんですけど、僕は昔から考えたときに、CDがめっちゃあって、1枚ずつ聴くんですけど、だいたい1曲5分くらいだから人生であと何時間何曲聴けるのかみたいなのをよく計算していたんですよ。このCDを全部聴き終えるためにはどれくらいかかるんだろうって思ったときに、5分と3分の曲だったら、マジで半年くらい違うんです。それで僕は、自分の音楽の中では無駄がなく満足できるものを作りたいって考えてたのが、たまたま時代の流れに合ったからバズるみたいな感じになったんだなっていう思いがあって。バズるってことに関して僕が思っているのは、音楽をお金を稼ぐ手段と考えて、SNS社会になってバズるって指標が1個あれば繋がりとか関係なく仕事が入るなら、それで音楽を続けられる人、音楽でご飯を食べられる人が増えるしまぁいいんじゃねくらいな感じです。自分の制作においては、たまたま自分の思想というか自分の作り方、音楽の作り方に合ってただけで。

-そこに重きは置いていないというか。

高田:もうわからないのかもしれない。バズりを意識して作るってなったら音楽の本質的な作り方が変わっていっちゃうというか。例えば、作るときに上にタイムが出て、ここまででだいたい15秒から20秒に収めたい1セクションとか、タイムを見てテンポを決めるとかになってくると、それは自分が作る音楽的な作り方とちょっと変わってくる。だからもしバズるのを意識して作るのであれば、それはそれで面白いなと思うんですけど、別に自分の制作においてはちょっと別だから、なんでもいいなっていうのが僕の気持ちです。

凪渡:OchunismはTikTok全然ですね。僕は流れで言うと、最初「rainy」(2020年リリースの1stフル・アルバム『Gate of Ochunism』収録)という曲がちょっとだけ再生伸びたんです。10万再生行くぐらい。それで広告出したんですね。当時まだインディーズ・バンドとかが自分で広告バンバンやってなかったんで、それでたぶんたまたま多くの人の目に入って、それは自信に、まぁ成功体験です。

凪渡:そっから音楽始めて1年半ぐらいで事務所にスカウトしていただけましたが、今思うと事務所入るのちょっと早かったなって。最近どこまで行っても音楽は自己表現じゃないとあかんなって改めて気づいたんです。今、詞とか曲作ってもバンバン、ボツ出されるんですけど、それで悩み続けているのをそのまま歌詞にして出したら、これいいやんってなった。

-ははは(笑)、本心を。

凪渡:そこで自己表現できるから音楽始めたのに、いつの間にか人に認められるためにやってたんやなって。僕アーティストって人に喜んでほしいと思ったらあかんのちゃうかなって最近は思います。自分を喜ばせるために自分に向けてずっと曲を作って、それを出した結果、誰かに刺さるのが一番いいんかなって。で、話はバズるに戻るんですけど、バズったものを見てたら案外そうやったりするなと。

マサ:あぁ、めっちゃわかる! めっちゃわかるよ。

凪渡:狙いにいってバズったものもあると思うんですよ。でもほんまにバズってそのあと成功してる人らのバズったものはありのままというか。

マサ:めっちゃ匂いするよね、その人の匂いが。

凪渡:全然狙ってなくて、その人らしさがわかるというか。それってファッションとかSNSの投稿とかもそうやと思うんですよね。いいね、リポストめっちゃいってる投稿って、投稿した人の雰囲気がそれでわかるというか、この人弱い人なんだろうなとか悩んでんやなとか。曲も結局そうなんかなって最近思う。そうなってからはバズるとか意識せんと、自分らしくあるためだけに努力とか、いろんなことを費やしたほうがいいのかなと。それこそさっきCD買ったことなかったですとか言ったけど、やっぱそれを聞いて"CD買ったことないアーティスト!?"ってなる人も少なからずいると思う。"え、なんかOchunismってスタイリッシュな感じやしレコードとか集めてんのんちゃうん?"とか。

一同:ははは(笑)

凪渡:まぁ、この考えに至ったのがほんとに最近なんです。なので今この機会にいろいろ曝け出して言ってます(笑)。ちょっと怖いんですけどね。

やすだ:人の心が動くのって商業的なものじゃないよね。本当に気持ちから出たものなんだなって最近すごく感じる。

凪渡:TikTokとか年齢層が結構離れてる人らとで、心動くのが違うじゃないですか。

やすだ:うんうん。

凪渡:若い子は狙って作られたおしゃれとかでも、それを入口にしてどんどん探っていくうちに、結局自分なりのほんまに好きなアートとか、感性に気づいていくと思うんです。入口がそういうところっていうのは、別にバズるバズらない関係なく、ずっと今まで繰り返されてきたんちゃうかなと。だからバズる時代になっても、媒体が変わっただけで意外と何も変わってないんかなって。

高田:スピードはもう半端なく変わったと思いますね。消費のスピードめちゃめちゃ変わっていると思う。

やすだ:きっかけとしては全然いいですよね。ひとつの出会える場所として。

-いろんな音楽に触れるから、みなさんの演奏もどんどんうまくなっていきますもんね。

やすだ:それはめっちゃあると思います。歌もそうだし演奏もそうだけど、発信しなくてもいいけど録るのめっちゃ大事だなって本当にずっと感じてて。動画や録音をしてみると、できてると思っててもできてないことが多いから、それを繰り返すっていう意味で、弾いてみた動画ずっと出してる人とかめちゃくちゃやっぱりうまくなるし、ツールとして使う正解もあるなって思うし。使い方次第、アーティスト次第っていうのと、やっぱり人それぞれ正解も違うんだなとめちゃくちゃ感じますね。

meiyo:まぁでも、めちゃくちゃバズりたいですけどね。

一同:あはは(笑)。