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DISC REVIEW

F

Medicine At Midnight

FOO FIGHTERS

Medicine At Midnight

結成25周年を迎えてなお、斬新なサウンドを開拓し続けるFOO FIGHTERSが、踊れるロック・サウンドを追求した今作。もちろん、これまで同様フーファイらしいメロディや、骨太なロックンロール・サウンドは健在だが、今作ではそこにさらに軽快なリズムやセクシーなグルーヴをプラスし、聴けばもれなく身体が揺れるようなサウンドができあがった。また、パーティーで盛り上がるような楽曲にも、アコースティックでしっとりと癒されるような楽曲にも、FOO FIGHTERSが駆け抜けてきたロックの歴史と、バンドが掴み取ってきた彼らだけの表現というエッセンスが入り混じっていて、新鮮でありながら懐かしさも感じられる作品となっている。あらゆる世代のロック・ファンに楽しんでほしい。

Concrete And Gold

FOO FIGHTERS

Concrete And Gold

今年のサマソニでヘッドライナーを務めたFOO FIGHTERSから待望の新作が到着。様々な実験的要素もあり、遊び心に溢れた前作『Sonic Highways』(2014年)とは違い、今作は"これぞまさにフーファイ!"というような、力強いロック・ナンバーで勝負したストレートな作品だ。グルーヴィなナンバーも、歪みまくった音色で攻めたハードなナンバーも、ドリーミーに囁きかけるナンバーも、すべてがロックンロールのダイナミズム、セクシーさで溢れている。かつて『In Your Honor』(2005年)で、ヘヴィ・サイドとメロウ・サイドを別々に聴かせ、その二面性をアピールした彼らだが、今回はそのヘヴィ・サイドが濃厚に表れつつも、そのなかに光るいぶし銀の芳醇なメロディも同時に味わうことができる。

The Forest And The Trees

THE FOREST & THE TREES

The Forest And The Trees

スウェーデンからまたポップで美しいメロディを持ったユニットが登場。THE CARDIGANSを彷彿させるLinnea Edinのキュートで澄んだ歌声を中心にシンプルなサウンド・プロダクションで作られた今作はとてもポップでキャッチー。LUCKY SOULを始めとする近年盛り上がったガールズ・ポップの流れでこのアルバムを聴いても何の遜色もないだろう。しかし、森そして木々にインスピレーションを受けたと語るアルバム全体から感じられるオーガニックで穏やかな質感と雰囲気は夫婦であるこのユニットならではのもの。特に後半にかけての流れはこれからの季節にピッタリ。すっと心に染み込むメロディが心地良い素敵なアルバムだ。

証

THE FOREVER YOUNG

"ずっと 独りで寂しかったかい?"と語り掛ける表題曲「証」から始まる、孤独や苦しみの中にいるすべての人へ手を差し伸べる本作。4人体制となり新たなスタートを切るエバヤンの決意の歌「FELLOWS」、クニタケヒロキ(Vo/Ba)の語りが染みる、心で聴く1曲「本当の私になりたい」、"俺たち人間合格"と全肯定する包容力に溢れた「人間合格」など全6曲が収録された。聴く人の背中を力強く押し、同時に自分たちを鼓舞する彼らの魂の叫びとも言えるシンガロングは、泥臭くも透き通る汗のようにまっすぐな輝きを放つ。音源からライヴハウスの熱気、スポットライト、観客の大合唱が伝わってくるような、熱いパフォーマンスが目に浮かぶこの1枚に、彼らが夢を追い続けてきた"証"を刻む。

生きる

THE FOREVER YOUNG

生きる

全国のライヴハウスでド直球な青春パンクをかき鳴らし、着実に動員を伸ばしているエバヤンことTHE FOREVER YOUNGの2ndフル・アルバム。これまたド直球に"生きる"と名づけられた今作は、挫折や劣等感を誰よりも味わってきた、泥臭くも人間味溢れる彼らだからこそ歌える"今を生き抜く"ための全11曲を収録。現実に押しつぶされ挫折して、ボロボロになって泣きじゃくって、行き場のない怒りに震えて、それでも生きるために鳴らされる彼らの音楽は何よりも熱く、誰よりも優しく、胸の奥のずっと深いところに入り込む。そしてそれは、身体の奥底から生きる力を漲らせ、真っ暗な闇に眩しいくらいの光を放つのだ。彼らの"生命の爆発"が生んだ今作は、凄まじいエネルギーと輝きに満ちている。

Paradise State Of Mind

FOSTER THE PEOPLE

Paradise State Of Mind

FOSTER THE PEOPLEが約7年ぶりのアルバムをリリース。70年代ディスコやファンク、R&B、ソウルと縦横無尽にミックスされたグルーヴィなダンス・ミュージックで彩られる本作は、喜びや楽しさに焦点が当てられた、開放感のある1枚だ。ストリングスの甘美なメロディが心地よいTrack.2のレトロフューチャー感、緩やかなネオ・ソウルのTrack.4やスローモー・ディスコのTrack.8に抱く安らぎ、アルバムを締めくくる(※日本盤はボーナス・トラックあり)Track.11のシンセによる浮遊感。楽園へと向かって弾むポップネスは輝きを放つ一方、あらゆる社会不況に反抗するかのようにロックな一面も携える。アヴァンギャルドな攻撃性を"喜び"という純粋さで昇華させたアイディアに感服する。

Sacred Hearts Club

FOSTER THE PEOPLE

Sacred Hearts Club

エレクトロニックでダンサブル。しかし、ぐっとメロウになった3年ぶりの3rdアルバム。踊れるロックと謳われる一方で、このバンドが魅力のひとつとして持っていたメロウネスを、さらに打ち出してきた印象だ。ヒップホップ色濃い「Pay The Man」(Track.1)からR&B色濃い曲が続く序盤は、ひょっとしたら地味と受け取られるかもしれない。しかし、そこで絶妙なアンサンブル――センスで聴かせるギター、タイトなドラム、そしてクセになるフレーズを奏でるベースにじっくりと耳を傾けることに慣れておくと、女性シンガーとデュエットするノスタルジックなポップ・ナンバー「Static Space Lover」(Track.7)以降の起伏に富んだ流れをより楽しめるに違いない。終盤はバンド・サウンドにこだわらないアプローチも。

Torches

FOSTER THE PEOPLE

Torches

英NME誌による2010年のベスト新人50にランク・インし、この夏日本でもシングルである「Pumped Up Kicks」がクラブ・アンセムとして定着したLA出身のFOSTER THE PEOPLE。彼らの日本盤がいよいよ登場。PASSION PITをダンス・フィールド寄りにしたようなお洒落な感覚。そして、そのポップ感と少しのユルさが絶妙なバランスで成り立っているのが彼らの最大の魅力だ。シンガロング必死な「Call It What You Want」や極上のシンセ・ポップ「Houdini」など、アルバム全体としても楽曲は粒ぞろい。まだまだシングル・ヒットがここから生まれるだろう。日本盤のみに収録されている、KNOCKSなどの注目アーティストが手掛けたリミックスも聴き応え抜群だ。

CLASSICS

FOUR GET ME A NOTS

CLASSICS

EP『DEAR』を携えたロング・ツアーを経て、『SUN』と『MOON』という2作のEPを発表。そして再び全国へと旅していく。コロナ禍の最中ではあったが2021年~2022年のフォゲミは精力的に活動を行ってきた。ライヴで楽曲を再構築したり、またバンドの武器を磨いたりして、そこから培ったものがEPで形になった。結成からは20年近くなるが、なおフレッシュに、エヴァーグリーンな歌を更新しているのを改めて感じたこの数年だったが、今回の『CLASSICS』は、そんなフォゲミのアップデートをし続けているからこそ輝くスタンダードな曲をコンパイルしたセルフ・カバー・アルバム。ライヴのテッパン曲と新曲2曲の1ダースはフォゲミ・ベスト且つ、2000年代からのメロディック/エモの"クラシック"たる決定盤だ。

MOON

FOUR GET ME A NOTS

MOON

5月にリリースしたEP『SUN』に続く新作。キャッチーなメロコアが中心の前作に対して、今回はフォゲミの泣きのある歌心で畳み掛けるエモ、インディー・ロック、メロディック・チューンが揃う。ノイジーなギターとビートの疾走感と憂いを帯びたメロディ&ヴォーカルのコントラストが切なさのスピードを加速させる1曲目「Erase」から、未来を変えていく思いをまっすぐに刻んだ「Futures」、女性Vo/Gt 高橋智恵をメイン・ヴォーカルにした90年代USインディー・ロックの香り漂う「Dahlia」から、さらにポップでタイムレスなメロディとギター・サウンドが輝きを増していく「Happiness」への流れも最高だ。シンプルなバンド・アンサンブルで細やかに曲の表情を彩る、バンドの旨味を感じる。

SUN

FOUR GET ME A NOTS

SUN

2ヶ月連続EPリリース、その第1弾となる『SUN』収録の4曲は、キャッチーさとアグレッシヴさを押し出したメロディック・パンクが並ぶ。高橋智恵(Vo/Gt)がメインVoを務め、ノイジーでアンセミックなメロディが駆け抜けていくTrack.1に始まり、続くTrack.2は自分自身で人生の舵をとっていくことをスピード感たっぷりに描き、Track.3は90秒に満たないショート・チューンで現実と自分自身と戦っていく姿を激励する。Track.4はパワフルなギター・リフと重量感もキレもある阿部貴之(Dr/Vo)のビートが快走し、男女Voがメロディの色味を倍増していく。高揚感のあるサウンドが心のエンジンをふかして、現実と向き合っていく曲が揃った。6月には対をなすEP『MOON』が控える。

DEAR

FOUR GET ME A NOTS

DEAR

ノイジーなギターでエンジンを吹かし、止まっていたときを動かしていくような物語の始まりを感じる「RPG」で始まるEP。哀愁混じりで徐々に高揚感に満ちていく男女ヴォーカルのハーモニーはフォゲミらしく、続く「Free will」の、パワフルなメロディック・サウンドと螺旋状に登っていくメロディの開放感も、これぞフォゲミだ。泣きのある歌心やメロディック・ファンの琴線に触れつつ、「Cat and myself」では新たなタッチで楽しませてくれる。ノスタルジックなポップスの香りを漂わせる心地よいテンポ感のギター・サウンドに、エアリーな男女ヴォーカルが物語的に掛け合っている。アンニュイなメロディ・ラインが新鮮だ。3人が今やりたい曲を持ち寄った自由な空気が駆け抜ける、その爽快な風が気持ちいい。

KEEP THE FLAME

FOUR GET ME A NOTS

KEEP THE FLAME

通算6枚目で移籍第1弾となるアルバム。心機一転の意味合いもあるだろうか、心の火を灯し続ける1ダースの曲が収録された。メロディック・シーンの男女ツインVoの草分けと言っていいフォゲミ。哀愁交じりのグッド・メロディの泣きや歓喜をブーストさせ、そのハーモニーで繊細な感情表現をも鮮やかに響かせる彼らの真骨頂が、ここに詰まっている。Track.3やTrack.4では、高橋智恵(Vo/Gt)がメインで石坪泰知(Vo/Ba)や阿部貴之(Dr/Vo)がコーラスで彩り、Track.9やTrack.11などは、石坪がメインとなり陰影のあるコーラスで曲を盛り上げる。メロディ・ラインも磨きがかっているが、ツインVoやコーラスの絡みもまた円熟の域。曲の炎も煌めきも引き立てている。

ASTREA

FOUR GET ME A NOTS

ASTREA

スピーディなビートと上昇感のあるメロディが爽快な「Sail」で始まり、紅一点・高橋智恵がメイン・ヴォーカルの「Music is my life」ではFOUR GET ME A NOTSのポップ・サイドを色濃く打ち出し、続く「Set you free」はこの3人の真骨頂たる泣きのメロディでシンガロングさせる。今回はいずれの曲もこれまで以上にブライトに、曲のチャーム・ポイントを磨き上げている。今後ライヴ定番曲として長く愛されるだろう曲が、1ダース収録された。ベスト盤以降初のオリジナル作だが、これもまた現在進行形のベスト、と言える内容だ。力の入ったアルバムだが、それぞれの曲は程よく肩の力が抜けているのもいい。グッド・メロディがどんどん湧き上がってくる興奮と、アイディアを試す開放感とが絶妙なバランスを保っている。バンドをますます楽しんでいる今が見える1枚。

FOLLOW THE TRACKS -The Best of 10years-

FOUR GET ME A NOTS

FOLLOW THE TRACKS -The Best of 10years-

疾走感のある2ビートに、ブライトなメロディがのる陽性メロディックもあれば、哀愁味のあるエモーショナルな歌もある。高橋智恵のハイトーンが映える曲や、石坪泰知の熱いヴォーカルが冴える曲も、男女ヴォーカルのユニゾンで攻める曲もある。高速2ビートだけでなく、じっくりと情景を描く阿部貴之のドラムによる沁みる曲も、また聴かせる。わき目も振らずに突っ走っていたころから、3人にとってのいい曲とは何かという試行錯誤や、さらなる覚醒へと、クロニクル的に並んだ曲にここまでバンドが歩んできた充実した時間が刻まれたベスト盤だ。キャリアを重ねて、成熟には向かっているけれど、曲とともにいつでも青春のとある1ページに戻れる。切ないような、焦燥感で狂おしいような、そんな琴線に触れる彼らならではの"節"を聴いて欲しい。

BLINKS

FOUR GET ME A NOTS

BLINKS

男女ツイン・ヴォーカルのスリー・ピース・バンドFOUR GET ME A NOTSの約1年半ぶりとなる3rdアルバム。彼らの持ち味といえる疾走感溢れるグッド・メロディと、このバンドの専売特許である石坪 泰知(Vo/Ba)と高橋 智恵(Vo/Gt)による男女ツイン・ヴォーカルの掛け合いは今作も健在。彼らの楽曲、演奏スタイルから対バンなどは現状パンクに寄っているが、彼らの持つポップ・センスは決して狭いジャンルに留まらず今作でもっと多くのロック・リスナーに受け入れられるだろう。全曲シングル・カットができるほど自己主張が強い楽曲が並ぶが、硬いアルペジオから一気にはじけるミドル・チューンのTrack.7「Cosmos」は彼らの新しい光を感じさせるキラー・チューンだ。

Pink

FOUR TET

Pink

RADIOHEADのThom Yorkからも絶大な信頼を得ているフォークトロニカのパイオニア的存在のFOUR TETが前作『There Is Love in You』以来約2年ぶりとなる新作をリリース。今作はFOUR TET自身のレーベルとなるText Recordsから、過去2年間に渡りアナログのみでリリースされていた作品をまとめ、新曲2曲を収録した内容となっている。非常に彼らしい彩色豊かなメロディと、各楽曲が様々な色を織り成すエレクトロニカ・サウンド。全体的にミニマルな構成の中に必ずFOUR TETらしさの垣間見えるメロディであったり、展開が見え隠れしており、実験的というよりは非常にリラックスしながら作った様子がうかがい知れるスタンダードな作品。

映画「コンフィデンスマンJPプリンセス編」 オリジナルサウンドトラック

fox capture plan

映画「コンフィデンスマンJPプリンセス編」 オリジナルサウンドトラック

"現代版ジャズ・ロック"をコンセプトとしたピアノ・トリオ、fox capture plan。多くのフェスに名を連ねるほか、ドラマ劇伴やCM、ゲームにも楽曲提供をし、何気なく、そして確実に日常を彩るサウンドを生み出す彼らの新作は、ドラマ版でも印象深い"コンフィデンスマンJP"の映画版サントラだ。スリリングでワクワクするメイン・テーマ「We Are Confidence Man」をはじめ、ストーリーの背景となり語り部となり、登場人物の企みを表現し、心の機微を吐露する饒舌で贅沢なサウンド、アンサンブルが数珠繋ぎとなったアルバム。映画音楽ということで作品ありきではあるが、作り手として様々な想像力や筋力を使って描いているクリエイティヴなサウンドは、刺激的で、またキャッチーで、面白い。

Curtain Call feat.Yosh (Survive Said The Prophet)

fox capture plan

Curtain Call feat.Yosh (Survive Said The Prophet)

fox capture planが、Survive Said The Prophetのヴォーカリスト Yoshを迎えたコラボ・シングルをリリースした。それぞれインスト・ジャズ、ラウドロックのシーンからジャンルの枠組みを越えた自由な活動を行ってきた両者だが、今作ではそんな彼らによるタッグはまさに必然だと思わせるほどの相性の良さを見せている。疾走感溢れるリズム・セクションにエモーショナルなピアノ/ストリングスが絡みつき、Yoshの切なくも力強い歌声が物語を紡いでいく表題曲は、互いの持ち味が存分に生かされた会心の出来。カップリングではサバプロの代表曲「Right and Left」をギターレスなジャズ・ロック・サウンドで再構築し、秀逸なアレンジを聴かせている。

FRAGILE

fox capture plan

FRAGILE

J-JAZZシーンに新風を送り続けるfox capture planの5thフル・アルバム。昨年はKeishi Tanakaと『透明色のクルージング』でコラボしたり、1月17日からスタートする話題のドラマ"カルテット"の劇中音楽を担当したり、ジャズ・ファン以外へも自然とその音楽が浸透している彼ら。いわゆる現代ジャズ的な複雑なリズム・アプローチではなく、スムーズな8ビートや時には四つ打ちも消化。聴きどころはピアノのループがテクノ的でリズムはマス・ロックのタフさもある「エイジアン・ダンサー」や、ストリングスとピアノの調和が美しい「the Gift」(NHK"超人たちのパラリンピック"メイン・テーマのセルフ・カバー)、そしてお馴染みの洋楽ロック・カバーは今回、ARCTIC MONKEYSの「Brianstorm」! ギター・リフをピアノ・リフに置き換えた大胆なアレンジが痛快だ。

Color & Monochrome 2

fox capture plan & bohemianvoodoo

Color & Monochrome 2

ジャズでありつつロック、ロックでありつつジャズという、日本での新しいジャズの地平を切り拓くレーベル"Playwright"を今現在、代表する2バンドによるスプリット企画の第2弾。5thフル・アルバムのリリースも迫るfox capture planが軽快で疾走感溢れるTrack.1で幕開けを告げ、bohemianvoodooはTrack.2で、ラテン・ビートをぐっとスリリング且つノワールな色合いで表現。マイナー・キーとラテン・テイストをfox capture planがTrack.3で引き継ぐように、哀愁味漂うピアノのフレーズとタイトなビートで表現。ラストはbohemianvoodooによるオーガニックなアンサンブルが心地よく、あたたかなエレピとアコギが、時に人の声=ヴォーカルのように雄弁なTrack.4へ帰着する。2バンド各々の個性が際立ちながら、ひとつの情景を描くような流れのある1枚。

透明色のクルージング

fox capture plan feat. Keishi Tanaka

透明色のクルージング

ジャズ・ロック・バンド fox capture planとシンガー・ソングライター Keishi Tanakaが互いをフィーチャリングした作品をそれぞれのレーベルから同時リリース。表題曲のTrack.1「透明色のクルージング」と同曲のインスト・バージョンを共通トラックとした内容違いの5曲入りとなっている。「透明色のクルージング」はfox capture planにとっては初めてのヴォーカル入り楽曲を収録したものとなっており、見事なマッチングで躍動感溢れる楽曲を聴かせている。その他、fox capture planサイドでは軽快なピアノをバック・ビートで聴かせ、まさに本領発揮といった爽快さのTrack.3「Silent Fourth」、Keishi TanakaサイドではTrack.4「After Rain」の"fox capture plan Remix"など、互いに異なる聴きどころを楽しめる。

The Kick

FOXES

The Kick

ZEDDとのコラボレーションでも知られる、UKのシンガー・ソングライター FOXESが、6年ぶり3枚目のアルバムをリリース。パンデミック下での制作ということで、リモートで行われたという今作は、ロックダウンの閉塞感をまったく感じさせない解放感に満ちたアルバムとなった。アッパーなビートが鼓動をリードし、爽やかで嫌味のないメロディが心に沁みる。喪失と失恋というテーマを描きつつも、悲壮感のないダンス・ポップは、心を浄化し、目を覚まさせてくれる。ヘッドフォンでじっくり聴くのもいいけれど、日常のどんなシーンにもフィットする楽曲の数々は、スピーカーで流せば、なんでもない日常が明るく輝いて見えること間違いなし。暗い世の中を明るいダンス・フロアに導くような良質なポップ・アルバム。

INCEPTION

Fo'xTails

INCEPTION

クリストファー・ノーラン監督のSF映画からインスパイアされた"INCEPTION"をタイトルに冠し、人の無意識にある考えを植え付けるという映画の内容にならい、Fo'xTailsの音楽を様々な人の内に染み込ませようとの思いがあったという。もともと一筋縄ではいかない曲の幅広さがあり、ソングライターのテラ(Gt/Prog)と鳴風(Gt)の書く曲もタッチが違った面白さがあるのが、Fo'xTailsである。そのレンジの広さと真ん中にある歌の強さを、より明快に打ち出したのがこのアルバムだ。ドラムが脱退し4人編成となったが、そのぶん発想を自由に、曲にあったドラマーを迎えトライしたいビートやヴィジョンに忠実に作り上げたことも、Fo'xTailsらしさを強く打ち出す突破口となったようだ。歌にも描かれる不屈さが、しっかりバンド・サウンドとなった。

Innocent Graffiti

Fo'xTails

Innocent Graffiti

takaoの伸びやかなヴォーカルで始まり、なめらかなギター・フレーズが先導していくようにして心地好く疾走する「Innocent Graffiti」。形としてはラヴ・ソングではあるけれど、青春の1ページから切り抜いてきたような青臭くも爽やかな歌で、ドラマティックでキャッチーなメロディが冴える曲だ。またカップリングはライヴ時に燃料投下するような、アグレッシヴなシンガロング曲「RUSH」と、歌謡性のあるメロディでいてダークな香りをまとった「ALIVE」という2曲。「ALIVE」は特に、これまでのFo'xTailsにはないタイプの曲でもある。デビューをして、毎日を全力で駆け抜けていく中で芽生えた苛立ち、楽しさ、喜び、そして自分たち自身で檄を飛ばして突き進んでいく勝気な姿勢、そういった経験が曲になったシングル。

GLITTER DAYS

Fo'xTails

GLITTER DAYS

ボリューム感のある骨太な王道ロックンロールでありつつ、耳に残るのは、曇りのない、澄んだブルーのイメージ。メジャー・デビュー・シングルとなる「GLITTER DAYS」は、物語が動き始めたときの躍動感と高揚感とで、怖いものなしに突き進んでいくバンド・アンサンブルが光る。そこに乗るのはフロントマンtakao(Vo)のハイトーン・ヴォーカル。線が太めの声で、サウンドを指揮するように引っ張っていくことでスピード感を生んでいる曲でもある。またカップリングでは、ループ感のあるシンセをフックにしたハード・ナンバー「蛍火」、そして柔らかで包み込むようなミドル・テンポな曲もありとレンジが広い3曲となった。それぞれ違った音楽背景を持った5人の色味を活かし合い、トレンドを押さえながらも、定番の良さや明快さはとても大事にしているのを感じる。

Return to Earth

FoZZtone

Return to Earth

FoZZtoneというバンドはいつも様々なユーモア溢れる企画で楽しませてくれるし、ライヴでも熱い心意気で我々の心臓を鷲掴みにする。そしてフロントマンの渡會将士はいつも世間よりもひとつ先を見ている。常に現在の事象に疑問を持ち"こうするべきなのではないか?""こうした方が面白いのでは?"という提示をしてくれる。このアルバムは、エネルギッシュな側面が際立つ『INNER KINGDOM』や『Reach to Mars』とは逆ベクトルのアプローチ。だがシリアス一辺倒にならないところにFoZZtone流の救済がある。ひとつひとつの楽曲の歌詞と音に確立した意味と確固たる意志があり、そこを追求すればするほど様々なものが待ち受ける。それは歓迎のようであり、ある意味試されているようでもある。やはりこのバンドは深い。

Stomp the Earth

FoZZtone

Stomp the Earth

前作『Reach to Mars』では火星へと旅立つどでかいロックンロールを届けたFoZZtoneが、今作で地球へ帰還。ウエスタン×カントリー×ファンク×ロックなTrack.1、ストンピングを取り入れたTrack.2、アコースティックでパーソナルな雰囲気の幕開けから後半へ向けての多幸感を呼ぶTrack.3などなど、それはネオ・ソウルでもあり、リズム・アンド・ブルースでもあり、ジャズでもあり......この1年3ヶ月で彼らは日本やらロックやらという狭いカテゴリーなんてぶっ壊してしまった。ストリングスを取り入れた「Return to Earth」を今回はあえてデモ音源としてラストに収録した真意も気になるところ。やはり彼らは次々と我々の知的好奇心を刺激し続ける、とんでもないロック・バンドだ。

Early Best Album 2007-2009

FoZZtone

Early Best Album 2007-2009

今年結成10周年を迎えるFoZZtone。彼らがEMI在籍時の楽曲をまとめたベスト・アルバムをTOWER RECORDS限定でリリース。シングル曲や代表曲はもちろん、アルバムのみに収録されている楽曲、未発表の新録曲、入手困難なシングルのカップリング曲など全16曲を収録している。初期の名曲たちで構成される同作のアクセントになっているのは「BASTARD IN THE SUN」。未発表曲のリミックスを収録するという、FoZZtoneらしいちょっとひねくれたアプローチの同曲は、ダンサブルなリズム、何度もリフレインする楽器のフレーズとコーラス・ワークが無機質なようで肉体的で、心地よい混乱を招く。新録の未発表曲「window to window」は、ふくらみのあるギミックたっぷりのナンバー。現在形のFoZZtoneサウンドだ。

INNER KINGDOM(内なる王国)

FoZZtone

INNER KINGDOM(内なる王国)

“フィジカル”がテーマになった FoZZtoneの4thフル・アルバムは、10曲を収録したdisc physicalと、組曲を収録したdisc mentalの2枚組。1曲1曲に物語があり、どちらのディスクも膨大な情報量だ。それでも重圧感がないのは“音楽で踊る”という肉体的なアプローチが基盤だからだろう。サンバやアフリカン・リズムを取り入れたり、「LOVE」と「MOTHER ROCK」のフレーズや歌詞などを他の曲に取り入れるなど、アイディアたっぷりの音構成は何も考えずに体を動かしても楽しいし、じっくり聴いても面白い。リズムが持つ魔力を改めて噛み締めると同時に、いくら文明が進化しても人間が持つ本能は遠い昔から変わらないのだと思い知った。“生きること”を多方面から見つめ、音楽で体現したエネルギッシュなアルバム。

LOVE

FoZZtone

LOVE

愛の名の下に、2012年のFoZZtoneが始動。昨年3月のあの悲しい出来事から、それでも明日に向かって歩を進めたロックが、この『LOVE』に辿り着いた。ミドル・テンポで足を踏み鳴らし手拍子を響かせ、大行進のようなビートに乗って"光が刺しているのは僕の目の前だ/体と心が釣り合える日も来る"という希望を高らかに歌い上げる。今こそ内側に秘めていた愛を歌うべきなんだ、というメッセージが、鼓膜をすっ飛ばし心臓へ電光石火の到着。会心作だ。「Tomorrow Never Knows」のような、Vo & Gt 渡會氏特有のフロウとファンキーなベースが乱反射して飛んでくる楽曲もバンドの大きな武器であることを改めて見せつけられた。オーダーメイド・アルバム等、常に新しいトライを重ねて来た彼らの大行進は、今年どんな光へ向かうのか?

Wreckorder

Fran Healy

Wreckorder

英国の国民的ロック・バンドTRAVISのヴォーカリストFran Healyの初のソロ作品。TRAVISの4作目『12 Memories』にあったラフで生々しいサウンドを彷彿とさせる所もあれば、ストリングスを多用したシンプルで美しい曲もあり、全体的には彼の音楽に向ける情熱が反映された穏やかで心地の良い作品だ。Fran Healyの歌声を中心としたダイレクトなサウンドもとても躍動感に溢れている。そしてまた曲も素晴らしい。現在拠点となっているベルリンでレコーディングした事も大きいのだろう。リラックスしていながらTRAVISとはまた違う広がりある力強いヴォーカルを聴かせてくれる。Paul McCartneyもベースで参加している他、ゲスト陣も豪華。

Hunger

FRANKIE & THE HEARTSTRINGS

Hunger

両手を高く上げ、背筋を伸ばし、口を大きく開けて満面の笑みで「イェーイ!」と叫ぶ。そんな空気を纏う英・サンダーランド出身の5人組、FRANKIE & THE HEARTSTRINGSのデビュー・アルバム。フランキー・フランシスのダイナミックで情熱的なヴォーカルは、聴き手の心をバウンドさせるように揺さぶる。シンプルで思わず口ずさんでしまうキャッチーなメロディと、いい意味でちょっと垢抜けない雰囲気が漂う手作り感漂うサウンドに、妙に親近感と安心感。現代に生きる彼らならではの伝統的なブリティッシュ・ロックに対する敬意を随所に感じられる。おだやかな曲はじっくり聴かせて、激しい曲では元気にさせる。そんなストレートな潔さに、高らかにピース・サインをしたくなった。

Hits To The Head

FRANZ FERDINAND

Hits To The Head

ここ日本でも絶大な支持を得ているロック・バンド FRANZ FERDINANDが、キャリア初のベスト・アルバムをリリースした。ベスト盤というと、コアなファンからは軽視されがちだが、これは結成20年を越え、多くの世界的ヒット曲を持つ彼らの軌跡を次世代へと繋ぐ重要な作品だ。シンプルでノスタルジック、それでいて誰にもマネできない不思議な味のあるサウンド。誰でも一度は聴いたことのあるようなお馴染みのシングル曲や、ライヴを盛り上げた楽曲、ダンス・フロアやラジオでヘヴィ・ローテーションされてきた名曲の数々、そして"女の子が踊れるような音楽"を目指してきた彼らの、こだわりと普遍的なポップ・センスがアップデートされた新曲と、まさにすべてが詰まったアルバムになっている。

Always Ascending

FRANZ FERDINAND

Always Ascending

英国紳士的なシニシズムとユーモア、00年代初期のダンス・ロックを象徴するFFによる約4年半ぶりのアルバム。タイトル・チューンが先行配信され、白昼夢的なサウンドスケープと微妙な90年代のテクノ/ハウス的なビートの融合に驚かされたが、バンドが"過去のFRANZは忘れてほしい"というほど別物になったわけじゃないことがアルバムで明確になった。というのも基本にはミニマムなポスト・パンク的なビートがどの曲にも存在し、そこにエキゾティシズムを掛け合わせた「Lazy Boy」、エコーがかかったサイケデリックなオルガンが特徴的な「Finally」など、上モノにはエレクトロを通過した浮遊感やサイケ感がある。派手に踊らせるアルバムではないが、英国ならではの陰とオペラ風な物語性は健在なのだ。

To Us, The Beautiful!

Franz Nicolay

To Us, The Beautiful!

ニューヨーク大学のミュージック・プログラム学科を卒業後、様々なバンドでキャリアを積み、THE HOLD STEADYのメンバーとしての活動歴もあるマルチ・インストゥルメンタリスト/コン ポーザー、Franz Nicolay。『To Us, The Beautiful!』は彼の4作目となるアルバムだ。Ian MacKayeとともにDCハードコア・パンク・シーンに貢献してきた元JAWBOXのJ. Robbinsをプロデューサーに迎え制作された今作は、ロック、ブルース、カントリーなどアメリカン・トラッドなテイスト満載。プロデューサー/アレンジャー/セッション・プレイヤーとしても活躍する彼だからこそとも言うべき丁寧に作りこまれた滋味深い1枚に仕上がっている。

Helios

THE FRAY

Helios

デビュー10年を迎えた、コロラド州デンバー出身のTHE FRAY。こと日本に関してはグッド・メロディで大きなスケール感を持った、物語のある歌を響かせるアメリカン・ロックという印象が強いが、最新作ではその"イメージ"を壊している。全曲、外部ソングライターを迎え共作しており、ONEREPUBLICの Ryanや、RELIENT Kの Mattなどのバンドマンのほか、異ジャンルのトラックメイカーと組むことで、THE FRAYの新しい切り口を見せている。長い時間をかけ築いたものをどこまで裸にし、どこまでTHE FRAYとするか。作り手としては簡単なことじゃないはずだが、全曲新タッグとなると、ある種手放しで楽しんでしまっているのではないだろうか。その潔い開放感が鳴っている。

Scars & Stories

THE FRAY

Scars & Stories

THE FRAY、3年振り3枚目のオリジナル・アルバムは、とにかく外へと開けている。世界各国を舞台にする航海のように雄大でロマンに満ちた作品だ。ルワンダを旅したときに受けたインスピレーションにより完成した「Heartbeat」、ツアー生活を歌った「48 To Go」、ベルリンのことを歌った「1961」、「Rainy Zurich」「Munich」など、その場所で受けた刺激を心の中に取り込み昇華する。以前まではIssac Sladeのピアノがバンドの音を率いているような印象もあったが、今作はいい意味でそれが主役ではない音作り。特にJoe Kingのリード・ギターの存在感が増し、よりロック・バンドとしてのサウンドを聴き手の心に打ちつけている。美しく勇敢な物語。そのまっすぐな強さとぬくもりに酔いしれる。

碧

FREE WALK FREE

昭和歌謡を思わせるノスタルジックなメロディと80~90年代のUSパンク/ハードコア由来の激しいサウンドを掛け合わせ、ラウドロック・シーンで異彩を放つ福岡のバンド、FREE WALK FREE。結成から6年、その彼らがライヴの定番に新境地を印象づける新曲を加えた全7曲を収録した1stアルバムで全国デビュー。スカ・パンクの「WALKING DEAD」、ノイズ・ポップの「MEMORIES」、V系かポジティヴ・パンクかなんて言ってみたい「アオ」を聴けば、彼らが冒頭に書いた方向性だけにこだわっているわけではないことがわかるはず。現在の主流の音ではないからこそ、新鮮に聴こえる全7曲は、複雑になりすぎたラウドロックに対する彼らなりの回答という意味も込められている。

2013 - Live Friction

FRICTION

2013 - Live Friction

2006年からレックと中村達也の二人編成で再始動したFRICTIONのライヴ盤が登場。70年代後半、東京ロッカーズと呼ばれるムーブメントの中で登場し、90年代半ばに休止したFRICTIONが、中村達也という最強のエンジンを加え、一切の装飾を取り払い再び動き始めたこと自体、驚きではあったのだが、THE ROLLINGSTONES「You Got Me Rocking」のカヴァーで始まるこのライヴ盤は、新生FRICTION の強度と密度の濃さを示している。不穏に歪みながらうねるベースとタイトでありながら野生的なドラム。歴史は確実に刻まれていく。FRICTION もまた、歴史の一部になりかけていた。それでもまだ、歴史の一部に収まることを拒絶するように蠢く「今」のFRIC TION。痺れます。