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DISC REVIEW

F

Going Grey

THE FRONT BOTTOMS

Going Grey

エモ・ポップ・パンク系のバンドが多く所属するレーベル"Fueled By Ramen"からリリースされる、ニュージャージー州出身のふたり組インディー・ロック・バンドの新作。『Back On Top』(2015年)以来4作目となる本作は、オープニングを飾る「You Used To Say (Holy Fuck)」、「Bae」、「Vacation Town」など、ほどよいスカスカ感のあるバンドの演奏とBrian Sella(Vo/Gt)の決して上手くはないが味のある歌声になんだかホッとする。シングル・カットもされている「Raining」は、BPMは速いものの聴いているうちにちょっとのんびりした牧歌的な気分に。効果的に使われているシンセの音も心地よく、ラストの「Ocean」のちょっと感動的な締めに、まんまとリピートしたくなってしまった。

THE GARDEN

FRONTIER BACKYARD

THE GARDEN

アルバムのオープニングを飾る「higher」から、賑やかで煌びやかなホーンが鳴り響いて、ファンキーでダンサブルなサウンド&メロディが溢れ出すFBYの新作。ギタリストが脱退したバンドは、鍵盤とホーンを加えたギターレスの編成で、自身のルーツであるファンクや、メロウでソウルフルなポップ・サウンドを深化させた。ファンク・ミュージックというと、ギターやベースによるリフやフレーズがフックとなることも多いが、あえてまったく竿物を使わないのも面白いかもしれないという発想で、作り上げているのはバンドとしての柔軟性の高さだろう。洒落っ気たっぷりのポップ性やアレンジで、遊び心ある音楽を生んでいたFBY。ルーツに回帰しつつも、かしこまったり落ち着いたりすることなく、ストリート感たっぷりで尖っている。

Backyard Sessions #002

FRONTIER BACKYARD

Backyard Sessions #002

常にセルフ・プロデュースで 作品を世に送り出してきたFBYが、完全に"プロデュースされる"企画盤『Backyard Sessions #002』。結成11年目にして未開の地へ踏み込んだ新たな作品が届いた。フルカワユタカ、イルリメ、KOICHI(Sawagi)ら6名のプロデューサーが手掛ける濃い色を宿した楽曲が、"FBY"という指標にフォーカスすることで、FBY然とした楽曲に仕上がっている。結局のところ、知らず知らずのうちにFBYは自らをプロデュースしているかもしれない。Track.1で心拍数が徐々にあがり、中盤で高揚する気持ちを隠しきれず、いつの間にかやってくるTrack.6では恍惚してしまうこと間違いなし。何度でもリピートしたくなる日常に溶け込む1枚だ。

Slow Focus

FUCK BUTTONS

Slow Focus

エクスペリメンタル・ノイズ・ミュージックと言っても決して難解でもないし、もちろんノイズ=雑音でもない。ロンドン・オリンピックの開会式で曲が使われ、ファンを驚かせたブリストルのデュオが4年ぶりに放つ3作目のアルバム。全曲インストながら、パーカッシヴなドラムを打ち鳴らしたり、ホラー映画のサントラを思わせるシンセ・サウンドがあったり、ダンサブルなビートを弾ませたり、インダストリアルなサウンドがあったり、シューゲイザーばりに轟音ギターを奏でたりと曲ごとに趣向を変えながら胸がすくようなカタルシスを味わわせる。その意味ではどんなロック・バンドよりもロックらしい。全体的に、やや陰鬱な印象はあるものの、音楽に変なこだわりを持っていないリスナーほど楽しめるに違いない。

David Comes To Life

FUCKED UP

David Comes To Life

FUCKED UP IS BACK! 既に昨年リリースされておりSPIN誌では数々の名作をおさえ年間ベスト・アルバムにも選出されており、耳の早い洋楽リスナーの間では話題だったアルバムが遂に日本上陸。彼らの音楽を一言で表すとおそらくハードコアが一番しっくりくるのかもしれない。確かにその名に違わずパンク・スピリットやポリティカルな姿勢は崩さない。しかしこの音はどうだろう。1曲目とされているスキットから恐らくリード曲であろう「Queen Of Hearts」に移った瞬間から広がる彼らのハードコアは何かを打ち倒してくれるような活き活きとした力強さに溢れているが、決して排他的ではないし叙情的なシンセもあいまって強靭かつエモーショナルなロックを全ての曲において展開する。FUJI ROCK FESTIVALでの久々の来日! 絶対観たほうが良いですよ。

Some Nights

FUN.

Some Nights

メジャー・デビュー・シングル『We Are Young』が大ヒットを記録し、ニューヨークを拠点に全世界へと活動を広げているFUN.。Kanye Westらを手がけているJeff Bhaskerをプロデューサーに迎え制作された同アルバムは、ロックをヒップホップやポップスのテクニックで昇華。リズムとが曲の持つムードを盛り上げてゆく。どの曲もドラマティックでダイナミック、美しいコーラス・ワークも相まってまるでミュージカルを見ているような高揚感だ。ポップな楽曲に時折混じるテクニカルなギター・リフもスパイスになっている。言葉を果敢にはじき出すNate Ruessのヴォーカルは、シンガーとしての存在感も抜群。情熱溢れる歌声には、不可能なことを可能にできるようなパワーが漲っている。

BORDERLESS

FUNKIST

BORDERLESS

FUNKISTほど"BORDERLESS"というアルバム・タイトル、テーマを歌い鳴らすに相応しいロック・バンドは、なかなか見当たらないと思う。個々のルーツや世界各国での武者修行を経て、血肉のレベルで多彩なジャンルと強固なグルーヴをモノにした今の彼らの無敵感が、今作では高らかに轟いている。メンバー・チェンジを経て、今は3人のメンバーになっているが、プロデューサーの松岡モトキを始めとして、多彩なゲスト・ミュージシャンが彼らをバックアップ。強いメッセージや万国共通で踊れるビートといった、日本人には苦手なハードルを高々と越えているあたりも、ボーダレスな今作のひとつの象徴か。それでいて、しっかり"日本のロック"に昇華しているところも素晴らしい。

7

FUNKIST

7

ヴォーカル、ギター×2、ベース、ドラムという編成に、パーカッションとフルートが加わった7人組のメジャー3作目のアルバム。ワールド・ミュージックの香りを漂わせる力強いロック・チューンや、まっすぐな歌声が響き渡るバラード、そして完全にお遊びモードのユーモア溢れる曲まで、全15曲の中で多彩な表情を見せてくれる。乙武洋匡が作詞で参加した曲も収録されている。そしてこれは昨年10月に他界した、フルートの春日井陽子が参加した最後のアルバムとなった。FUNKISTはこれからも7人、『7』というタイトルにはそういう決意が込められているという。バンドにとってはもちろん、ファンにとっても、特別な意味を持ったアルバムとして記憶に残っていくだろう。

Pieceful

FUNKIST

Pieceful

痛みを知っている人間の持つ優しさは背筋が伸びるほど情熱的なのに、胸が張り裂けそうなほど切ない。FUNKISTのフロントマン・染谷西郷が綴る言葉もそうだ。FUNKIST8ヶ月振りのリリースである今作は、乙武洋匡との共作や、バンド仲間への熱いメッセージ、メンバー7人の存在、愛する人への一途な想いなど、FUNKISTが10年の歴史で大切に育んできた“絆”を強く深く感じる作品となっている。悲しみを乗り越えた人間だからこそ浮かべることが出来る笑顔が8曲全てから滲み、その人間らしさと嘘の無い真実に心から尊さを感じた。繋がる全ての“piece”を優しく強く抱きしめるFUNKISTだからこそ鳴らせる素朴でありながら壮大な“peace”が、この44分間に詰まっている。

SKELETON

Fusee

SKELETON

前作『Raft.』から約1年3ヶ月ぶり2作目のEP。オープニングで高らかに歌われるのは"あなたを照らす光となれ"という宣言。その後はスピード感あふれるサウンドに乗せて、他者の声に惑わされながらもがく人の心を歌った「voice」、人前で涙を見せられない人にさりげなく寄り添う爽やかなナンバー「空に泣く君」と続き、聴く人を孤独にさせまいというバンドの真摯な姿勢が垣間見える。各楽器の表現の幅も前作から広がった印象だ。想いを伝えられないまま終わった恋の歌であり、文学的な言葉選びが今作の中でも異色な「処暑」を経て、等身大の言葉で人生を捉えた「恋」で幕を閉じる今作。未来を目掛けてやや背伸びしている部分も含めて、結成4年目のバンドの"今"ならではの表現が詰まっている。

dig

fusen

dig

どこか懐かしさ漂う楽曲が魅力の3ピース・バンド、fusen。フォークや歌謡曲に影響を受けたという彼らの楽曲は、時代を問わず日本人の心にすっとなじむ温かさや哀愁がある。これが全員弱冠20歳だというから驚きだ。その奥深い魅力を掘り起こす2nd EP『dig』は、全体的に音数が少なくシンプルな印象だが、オールド・アメリカン・ロック調の「扉絵」やボサノヴァ調の「まちぼうけ」など、曲ごとに違うリズムを取り入れ、雰囲気の異なる4曲に仕上がっている。一方その歌詞は、日常の景色に溶け込んだ、夢への希望や若さゆえの不安を等身大に映す。またCDの最後にはライヴ音源も収録。本作を締めくくる"fusenですよろしくお願いします"という言葉に、バンドのこれからへの意気込みと希望を感じる。

Humans

THE FUZZ ACT

Humans

若いリスナーにはまったく新しい音像に聴こえるかもしれないし、若くても70年代以前の音楽をディグっているリスナーは、むしろ今この音を鳴らせるセンスに驚くかもしれない。いずれにせよ「夢なんかじゃない」のハードボイルドなギター・リフや、大声で人間の心臓の真ん中めがけてまっすぐ放たれるヴォーカルに驚いてほしい。語尾を上げる徳永駿介の特徴的な歌唱、そのメロディが映える楽器一個一個が見えるようなアンサンブル。そのすべてが人間ならではの感情や孤独を伝えるための音色とアレンジを有している。何もエレクトロニックな音楽だけが現代的なわけではない。リアルが何か取り落としそうになっている不安な心情を表現しつつ、生の温度と手触りで聴き手の肩を揺さぶるような彼らの音楽も今の音だ。

Super Alternative

FUZZKLAXON

Super Alternative

2010年結成の名古屋の3ピース・ロック・バンドが前作『BLUE YOUTH SUICIDE FANCLUB』から2年ぶりにリリースする2ndミニ・アルバム。前作で打ち出したガレージ・ロックに留まらないサウンドの広がりを追求している。タイトルで謳っている90's~00'sのオルタナの要素に加え、哀愁の歌謡メロ(「ROCK'n'ROLL MIND」)やフォーキーな要素(「僕らの生活」)も巧みに取り込むことで、轟音のギター・ロックのひと言では語りきれない魅力をアピール。その意味では、同じ名古屋出身の大先輩トリオを連想させるところも。歌詞では20代の若者が抱える漠然とした不安を象徴的に表現して、エネルギッシュな演奏とのコントラストを意識したという。ブルース・ロック調の「MAD GALAXY」では、3人が取っ組み合うような熱い演奏が炸裂!