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DISC REVIEW

F

Fl!ck EP

The Flickers

Fl!ck EP

約7ヶ月ぶりとなるThe Flickersの新作EPは、前作『WAVEMENT』に引き続きプロデューサーに三浦カオルを迎え、よりロックとダンス・ミュージックがスパークした刺激的な作品に仕上がっている。それぞれ異なるアプローチが込められた楽曲は、ロックンロール・リヴァイバルや初期ニュー・ウェーヴのエッセンスに安島裕輔(Vo/Gt)の独特のポップセンスが乗っかり聴き応え満点。クリーンかつポップなエレクトロ・サウンドが心地よく壮大なスケールを感じられる「永遠」から、ノイジーかつ妖しいギターの「go go monster」など、聴けば聴くほど深みにはまっていく色濃い楽曲ばかり。心躍ること請け合いの、至極のニュー・エレクトロ・ロックが詰まった作品だ。

Wavement

The Flickers

Wavement

昨年11月にリリースされた1stミニ・アルバム以降、都内のライヴハウスを中心にとんでもないスピードで話題沸騰中の3ピースThe Flickersから早くも届けられた2ndミニ・アルバム。BPMの早いダンス・ビートとシンセ・サウンドに切れ味のあるギターが暴れ回る。逆にエレポップを感じさせる楽曲もとてもいい。彼らの一番の魅力はエモーショナルで時にはナイーヴな印象を持ち合わせる変幻自在の安島裕輔(Vo&Gt&Prog)のヴォーカル。今作も前作に引き続きBOOM BOOM SATELLOTES等を手掛ける三浦カオルをプロデューサーに迎え、ロックとダンス・ミュージックにおけるバランスの高いサウンドになっている。

GIRL

FLiP

GIRL

初のセルフ・プロデュースに挑戦した3rdフル・アルバム『LOVE TOXiCiTY』から約1年3ヶ月ぶりの新作は、EMI Records移籍第1弾となる3曲入りシングル。Sachikoがインタビューで語ってくれたように、彼女自身もバンドも大きな転機を迎えていた。これまで女性としてのクールを構築しつづけてきた彼女たちだが、この3曲はそのスキルを持った体を裸にした印象。現在の彼女たちのヴィジュアルが示す通り、つきものが取れたようにナチュラルだ。地元沖縄で得た音楽的ルーツと、バンド活動で培ったスキルでもって、彼女たちは次の扉を開くことができた。4つの呼吸でできあがる強固なグルーヴ、そこに彩りを与えるシンセ、すべてが軽やかで心地よい。華麗なる新章の幕開けである。

"LOVE THE TOXiC CiTY TOUR" at LIQUIDROOM

FLiP

"LOVE THE TOXiC CiTY TOUR" at LIQUIDROOM

最高にクールな映像作品だ。3rdアルバム『LOVE TOXiCiTY』のリリース・ツアー"LOVE THE TOXiC CiTY"の恵比寿LIQUIDROOM公演を収めたDVD。約90分の収録時間の中、恐らくMC部分は極力カットしたのであろう、とにかく演奏シーンを見せることに徹した構成。メンバーの指使いや表情まで明確に映し出した、ステージ上の4人の姿を臨場感溢れる視点で捉えたカメラ・ワーク。そのストイックさすら感じさせる映像は、とても生々しく、屈強なライヴ・バンドとしてのFLiPの姿を映し出している。メンバーの逞しく、華やかで、時に色気すら感じさせる存在感は、『LOVE TOXiCiTY』を作り上げたバンドの成熟をヒシヒシと感じさせる。ラスト1分にはとても等身大な姿も納められていて、そこも必見。ライヴ会場限定販売。しかも1000枚限定。意地でも手に入れたほうがいい。

LOVE TOXiCiTY

FLiP

LOVE TOXiCiTY

2ndアルバムである前作『XX emotion』から約13ヶ月、FLiPが全曲セルフ・プロデュースで3rdアルバムを作り上げた。サチコ(Vo/Gt)がパーソナルな部分をさらけ出した歌詞と同調し展開されるサウンドは、精力的なライヴ活動で築いた実力と熱量、何より隅々にまで飽くなき音楽的探究心が詰まっている。この4人で音を鳴らすことをひとつひとつ感謝するように奏でられる音色は、聴き手を衝動的に突き動かす。ロック・サウンドを基盤にハードなものからゆるめの横揺れの曲、メロウなナンバーなど様々な色を持つ楽曲群は、多様な表情を持つ“女性”という存在、そして現在のFLiPをそのまま投影しているようだ。結成から8年、自身の“核”を再確認した彼女たちが更に飛躍を遂げることを確信させる。

CLOCK TOWN

The Floor

CLOCK TOWN

前作『nest』で"巣"を作ったThe Floorが1年半の時を経て、"CLOCK TOWN"と題した架空の"街"を作り上げた。秒針の音をモチーフとし、時は戻らないことを改めて音楽で表現したインスト曲「We can't put the clock back」や、暗いトンネルの先には希望が待っていることをエモーショナルに歌った「Faraway」、ゆっくりでも前に進んでいく決意を表す「slow motion」など、ここ1年での考えや想いを反映させた1枚だ。地元 札幌にある北24条駅を想起して作られた「24」は、時が経って環境が変わっても、故郷に帰ってくればいつでもあの頃に戻れると歌っており、延期になったツアーを札幌だけで完結させた彼らならではの1曲に仕上がっている。

nest

The Floor

nest

今夏に新体制で動き出したのをきっかけに、メンバー全員が作詞作曲をした挑戦の1作。リード・ギタリストが不在という状況を逆手に取り、「Candy」や「雨夜の月」といったサポート・ギタリストのカラーも生きた楽曲や、シンセのアンビエント感が心地いい「砂の山」、エレクトロとロックを掛け合わせた「I Don't Know」など、振れ幅のあるサウンド・アプローチに成功している。ササキハヤト(Vo/Gt)の楽曲は伸びやかなメロディが心地いいポップ・ナンバー、ミヤシタヨウジ(Ba)の楽曲は硬派で強固なバンド感と雄大なメロディ、コウタロウ(Dr)の楽曲は壮大なサウンドスケープを持つなど、それぞれの人間性や特色が表れた作風も趣深い。バンドが飛躍する準備を整えた新たな原点と言うべき作品。

CLOVER

The Floor

CLOVER

言葉のメッセージ性ではなく、音色の調和が作り出すイメージにピントを合わせたサウンド・アプローチが特徴的な6曲入りミニ・アルバム。楽曲そのものが持つ旨味を引き出した楽曲が多いのは、これまで以上にバンドというセオリーにとらわれない音作りが行われているからだろう。「Keep On Crying」では打ち込みのドラムやゴスペル的な多重コーラスなどを用い、海の中を漂う透明感を表現することに成功。「Through The Night」はリズミカルな譜割りとギターのカッティングの交錯やリフレインが、軽やかなサウンド・スケープを作り出している。海外の音楽にも精通している彼らの性質やポリシーと、J-POP的ポップ・センスが等身大で花開いた楽曲が揃い踏み。バンドの強い意志を感じる。

革命を鳴らせ

The Floor

革命を鳴らせ

メジャー・デビューから8ヶ月を迎えた札幌出身の4人組によるメジャー1stシングル。表題曲はチームでミーティングを重ね、これまで彼らが培ってきた"らしさ"から殻を破る、まさに革命を鳴らす曲になった。雄大なメロディと華やかなサウンドは、新境地に飛び立つ彼らの姿とも重なる。聴き手を焚きつけるのではなく寄り添う姿勢が表れた、包容力の高い楽曲だ。c/wの「マジック」はライヴでも存在感を発揮するであろう、彼らの持ち味を生かしたポップで躍動感のあるバンド・サウンド。「FASHION」はシンセを大胆に取り入れ、リズム・セクションもシンセ・ベースや演奏したドラムをサンプリングで汲み上げるなど、4人の音楽への知的好奇心が溢れている。さりげない皮肉が効いた歌詞もいいスパイス。

ターミナル

The Floor

ターミナル

TOWER RECORDS限定リリースの『リップサービス』からちょうど2年、札幌在住の4人組がバンド史上初のフル・アルバムでメジャー・デビュー。メンバー全員が国内外&ジャンル問わず自分たちのアンテナに引っ掛かった音楽をリスペクトする、キッズよろしく非常にピュアなミュージック・ラヴァーっぷりは、今作でも炸裂している。感銘を受けた音楽を自分たちなりに表現することだけでなく、自分たちのイメージや精神性をより鮮明に音楽や言葉に落とし込むことができるようになったのは、インディーズ時代の音源制作の積み重ねがあったからこそだろう。ロック且つポップで、どこかいつもセンチメンタルな彼らの音楽は温かい。寒さや暗闇を知っている人間だからこそ表現できる光や熱が、美しく煌めいている。

ウェザー

The Floor

ウェザー

前作のインタビューでササキハヤト(Vo/Gt)が"飛躍の2017年になれば"と語っていたとおり、『ウェザー』はそれを大いに感じさせる作品だ。ロックに目覚める前の音楽の原体験である童謡やゲーム音楽の要素も取り込んだことによりアレンジの妙も広がっただけでなく、作詞を担当するササキとコウタロウ(Dr)の表現方法もそれぞれが新境地に挑戦。何より、メンバー全員が楽曲のイメージを以前よりも明確にプレイやフレージング、歌詞、ヴォーカルに落とし込むことができているのは大きな成長だ。ドラマチックな展開が冒険感のある歌詞とリンクしたTrack.1で幕を開け、幸福感から悶々とした風景、ヘイトまで色とりどりの景色を見せる。ミュージック・フリークたちの愛に満ちた音楽はどこまでも煌びやかで頼もしい。

Re Kids

The Floor

Re Kids

全国デビュー以来、"RISING SUN ROCK FESTIVAL"や多数のサーキット・イベントに出演するなど、活動の幅を広げている札幌発の4人組の4曲入りEP。その充実ぶりからさらに音楽が好きになったという彼らの気持ちが反映された楽曲が揃い、タイトルのとおり愛する音楽への純粋な気持ちやリスペクトを感じさせる。Track.1や2のようなダンサブルなビートとインパクトのあるリフが作る楽曲にも、エモやパワー・ポップの要素を取り入れており、以前よりも音像が分厚い。特にTrack.4はパワー・ポップやグランジ的アプローチに傾倒した楽曲。耳をつんざく爆音と包容力のある伸びやかなヴォーカルがきらきらと眩しい。ポップ・センスが光る軽やかなウィンター・ソングのTrack.3も新境地。

ライトアップ

The Floor

ライトアップ

今年2月にリリースしたTOWER RECORDS限定1stシングル『リップサービス』がオリコン・インディーズ・チャートにランクインするなど、着実に広がりを見せている札幌在住4ピースの1stミニ・アルバム。シングル2曲のように印象的なリフと音の空間をうまく使った音楽偏差値高めなアンサンブルの楽曲に加え、今作にはギターをかき鳴らして突っ走るようなシンプルなアプローチのナンバーも。どの曲にも共通して通っているのは心の底から音楽を愛する想いと、音を鳴らせることへの充実感や喜びだ。The Floorの音楽が聴き手を高揚させるのは、彼らが国境を問わず様々な時代の音楽を純粋に楽しんでいるからに他ならない。シンセ・ベースを取り入れるなどの新たな挑戦もフレッシュで、全曲が青春の煌めきを放つ。

リップサービス

The Floor

リップサービス

インタビューを読んでいただければわかると思うが、この札幌在住4ピース・バンドThe Floor、いい塩梅に生意気で皮肉屋で、音楽に対して非常にピュアなバンドだ。日本のロックはもちろん、UKやUSのインディー・ロック/ポップのテイストを取り入れた、日本在住の音楽オタクでないと成し得ない音像は非常にフレッシュで、戯れるように鳴らされる音とムードのある歌声も眩しい。2曲入りワンコイン・シングル、Track.1はアップ・テンポで踊れるビートにリフレインがキャッチーでシニカルな歌詞が痛快。Track.2はゆるやかなテンポに太いダンス・ビートが心地いい。THE 1975やWALK THE MOONなどに通ずるポップ・センスも持っており、これからの活躍と飛躍が大いに期待できる。

LUNGS

FLORENCE AND THE MACHINE

LUNGS

先行シングル「Kiss With A Fist」の衝撃は忘れられない。やはりこのバンドの一番の魅力は幻想的で存在感のあるFlorence の歌声だろう。今年復活を果たしたBLUR のオープニング・アクトも務め、今年のBrit Awards では話題の新人に送られるクリティック・アワードを受賞。今最も注目すべきアーティストの一つ。ビートを意識したダイナミックでパワフルなトラックから、物語を紡ぐ様な繊細なバラットまで。全体をグッとまとめる緊張感溢れるサウンドも見事。Paul Epworth、James Ford、という2 人の人気者とTHE STOOGES のSAX 奏者であるSteve Mackayが揃ってプロデュースを手掛けたのも頷ける天性の歌声。新しい歌姫の誕生だ。

IN CVLT

The Florist

IN CVLT

"ギターが轟音で鳴るストレートなシューゲイザー・ナンバーはもはや、その一部でしかない。"とレビューを書いた前作の延長上で、今一度メンバーたちのルーツであるエモ/オルタナ・サウンドも取り入れた3rdアルバム。耽美的なThe Floristの世界に、熱狂と表現することもできるロック的な勢いが加わったところが聴きどころ。そのぶん、曲の幅はニュー・ウェーヴからギター・ポップ、ハードコアまでとさらに広がったが、それが散漫にならないのは、張り詰める緊張のなかアップダウンを繰り返す感情の流れが、最後ポジティヴな「Bell Rings On The Silent Night」で昇華される曲順が完璧だからだ。The Floristの美学の結晶とも言えるそのカタルシス、多くの人にぜひ味わってほしい。

Blood Music

The Florist

Blood Music

オープン・マインドな感性がうかがえる「Disintegration」を始め、"評価を勝ち取る"というテーマが"シューゲイザー"のひと言には収まりきらない多彩な楽曲に実った2作目のアルバム。STARBOARDの今村寛之(Vo/Gt)を中心にエモ/ギター・ロック・シーンで活動してきたメンバーが顔を揃えた4人組。ギター・ロック・サウンドの可能性を押し広げる2本のギターによるスリリングなアンサンブルと、それを支えるしなやかなリズムが音の桃源郷とも言える世界を描き出している。ギターが轟音で鳴るストレートなシューゲイザー・ナンバーはもはや、その一部でしかない。アコースティック・ギターと変拍子を使った「Romance」がアピールする新境地は、前進しようというメンバーの意志の表れ。閃きに満ちた演奏は、今村が紡ぎ出す美しいメロディとともに聴きどころだ。

スポットライト

FLOWER FLOWER

スポットライト

辣腕ミュージシャンが揃い、なかなかマッシヴなサウンドを構築するFLOWER FLOWERだが、約3年半ぶりとなるこのニュー・アルバムの成果は、その音の渦の中で、肩の力を抜いた声の表現をモノにしたyuiの自由度だろう。警告的なイメージとイノセンスが同居するドラマチックな1曲目「命」から、ポップな音楽を強制されていた過去を思わせる歌詞の辛辣さが取り沙汰されがちだが、yuiがソングライターとして持つポップネスがむしろ際立つ「コーヒー」、ウィスパー・ヴォイスが新鮮な「あなたと太陽」、"Wurlitzer"のウォームな音色がマイペースで生きることを優しく許してくれるラストの「日常」。エレクトロ、シンセも効果的に全体に施されたことで、ジャンルは多岐にわたりながらひとつの空気感がある。

world e.p.

Flower In The Vasement

world e.p.

ドラム、ベース、ギター、そしてヴォーカルというオーソドックスなバンド形態でありながら、それぞれがシンセをいじり、思い描く音世界、サウンドスケープに相応しい音を鳴らす。夢心地の時間に鳴っていてほしいファンタジックさで、また耳を澄まして聴き進むほどに不可思議な音の森へと迷い込むサウンドが、今回も広がっている。幻想的なポップス、アンサンブルの躍動感を響かせる重厚な曲から、幾何学的サウンドとエモーショナルな歌とが溶け合う美しい曲に、ビートが効いたダンス・ミュージックなど、全7曲それぞれのタッチで、想像的な世界へと連れ立つEPとなった。VJと組み、試みのあるライヴを行う4人だが、そんな発想が生まれるもととなる、刺激ある音だ。

deep deep april

Flower In The Vasement

deep deep april

「パッヘルベルのカノン」を思い起こさせるような、晴れやかなピアノとストリングスのフレーズがループし、キラキラとした電子ノイズとバンド・サウンド、アンニュイなトーンのメロディとヴォーカルとのアンサンブルが、切なくもあたたかく響く「deep deep april」。メロディやフレーズが頭の中を何度も回ってしまうキャッチーさと麻薬性があるけれど、いわゆるJ-POP的なサビのメロディで突き抜けるような展開でない、ポエトリーな曲をシングルとして持ってくるのが面白い。サウンドはまったく違うけれど、BLURが「Song 2」をシングルとして切り取ってくる、あのパンチ力にも近い。短い中にうまみも詰まっているし、"なんだこれ?"というフックもあって、気になるひっかき傷をたくさん残しいく曲。バンドへの最高のイントロダクションだと思う。

You're Dead!

FLYING LOTUS

You're Dead!

FLYING LOTUS最新作のテーマはズバリ"死"。無限に広がる死の世界という、誰もが迎えるであろう未知の領域を表現したサイケデリックな音像を聴かせている。USヒップホップ・シーンの代表的ラッパー、Kendrick Lamarや大御所感漂うSnoop Doggが参加しているほか、「Moment Of Hesitation」では度々来日している天才ベーシスト、THUNDERCATと共にジャズ界の巨匠、Herbie Hancockも参加。ジャズ、ヒップホップ、エレクトロが混然一体となった様子はFLYING LOTUS版の『狂気』(PINK FLOYD)とも受け取れる。"このアルバムは、終わりをテーマにしているわけじゃない。これは次なる体験に向けた祝福なんだ"と彼が語るように、スピリチュアルな体験を求めているかたにはドハマりしそうなアルバム。

Cosmogramma

FLYING LOTUS

Cosmogramma

名実共に現代のトップのビート・メイカーとなったFLYING LOTUSの新作が遂に到着。Thom Yorkeが参加するなど話題も集めているが、そんな個別のトピックは抜きにして、ここでは、既存の枠組みが解体され、あらゆる音とビートが弾けては消え、また新たな音像が現れる。ジャンルやスタイルの超越自体にはもう意味などなくなった時代に、何を提示するのか。ここには、ただ革新的なビート・ミュージックを創りあげようとする飽くなき探究心だけで描き出されたコズミックなサウンドが詰まっている。ダブステップもJAZZもヒップホップもエレクトロニカも、あらゆる音を取り入れるというよりは、あらゆる音がもう何年もそうだったかのようにひとつに溶け合いながら紡がれる美しいビート・ミュージック集。

Life Is Yours

FOALS

Life Is Yours

前作『Everything Not Saved Will Be Lost』2部作は、Part 1が踊れるロック、Part 2が骨太なロックと、持てる技を全部見せつけるような、バンドとしての集大成的アルバムだった。そして、そんなすべてを出し切った前作を経て、さらに閉塞感のある世の中の空気とも重なり、今作では新機軸となるような、突き抜けて明るいポップ路線を打ち出している。直感的に踊りだしたくなるような、軽快なギター・カッティング、ファンキーなドラム、浮遊感のあるシンセ・サウンド。どこを切っても輝きに満ちた幸福感のあるサウンドで、音楽を聴いてこんなに"眩しい!"と感じることがあるなんて。日常の鬱屈した感情や面倒事がぶっ飛ぶ、FOALS流非日常ポップでひと足早い夏を楽しんで。

Everything Not Saved Will Be Lost Part 2

FOALS

Everything Not Saved Will Be Lost Part 2

前/後編からなる2部作の後編は、ダンス色濃い前編に対して、ビッグなリフをガツンと鳴らしたロック色濃い作品に。デビューから10年、インディー・ダンス・ロックの新星からUKロックを代表するスタジアム・ロック・バンドに成長したFOALSの軌跡を、今一度、2枚のアルバムでダイナミックにアピールする格好となったわけだが、FOALSが持つロック・バンドとしての魅力がぎゅっと凝縮しながら、同時に新境地も印象づけているところがポイント。その意味では、オープニングを華々しく飾るソウルフルなロック・ナンバー「The Runner」、FOALS流のブルース・ロックと言える「Like Lightning」が一番の聴きどころ。ROYAL BLOODやTHE BLACK KEYSのファンにも薦めてみたい。

Everything Not Saved Will Be Lost Part1

FOALS

Everything Not Saved Will Be Lost Part1

"SUMMER SONIC 2019"への出演が決定し自ずと期待値が上がる新作は、2019年秋にリリース予定の後編との2部作前編。スタジアム・バンドとしてのスケールに見合うプロダクションを獲得した前作以降、バンドはベース・ミュージックや今のエレクトロニックなサウンドと対峙したのだろう。近未来を想像させるメランコリックなオープニングや、持ち味である民族性とエレクトロニックなポスト・パンクは、本作を象徴する1曲「Exits」で1音の輪郭をより明確にし、新鮮な音像を獲得している。全体的にシンセを効果的に用いながらも、80's風にもドリーミーにもならない。「Cafe D'Athens」ではトラップを高速に再解釈したようなビートも。我流且つ古くならないバンド、FOALS面目躍如の1枚。

Holy Fire (Deluxe Edition)

FOALS

Holy Fire (Deluxe Edition)

エレクトロ・ダンス・パンクの新鋭としてシーンに現れてから6年目にリリースした3作目のアルバム。アート・ロックからアリーナあるいはスタジアムで鳴ってこそ映えるビッグ・ロック・サウンドへの転身が賛否を呼んだ。メンバー自らライヴにおけるサウンドを反映させた結果と語っているように、それは自然な変化だったようだが、バンドのスケール・アップを受け入れたうえで新たな表現に挑んだところに彼ららしい気概が窺える。楽曲の振り幅が持つダイナミクスをよりはっきりと描き出すことで、本来の魅力がさらにわかりやすい形で伝わるようになった。結果、全英2位の大ヒットを記録。来日に合わせリリースされるツアー・エディションには2013年3月28日のロイヤル・アルバート・ホール公演の模様を収録したDVDがカップリングされる。

Holy Fire

FOALS

Holy Fire

この作品を作れるようになるために前2作を作ったようなものなんだ"とギターのJimmy Smithが語るように、この3rdアルバムは彼らの確実な進化を決定づける作品となっていると言っていいだろう。『Holy Fire』というタイトルの由来はわからないが、リード・シングルにもなっているTrack.2「Inhaler」はジリジリと熱を孕み、緻密で煌びやかな細工が施されたギター・サウンドはまさに"聖なる炎"を感じさせる崇高な光を放っている。アルバムを通してフィジカルさはグっと増し、彼らのアーティスティックなサウンドにハッキリとした輪郭を与えたことにより、ロック・バンドとしての強度はグっと増している。既に世界的な評価を得ている彼らの更なる飛躍を予感させる作品だ。

Total Life Forever

FOALS

Total Life Forever

デビュー・アルバム『Antidotes』での強迫的なスピードと変拍子ビート、まくしたてるようなハイトーン・ヴォーカルも後ろへ下がり、グッとスマートに、シンプルになったFOALSの最新作。エモーショナルな美しさを湛える本作でのバンドのスケール・アップは特筆もの。新人バンドがセカンドやサードでスケール・アップなんて言うと大概がスタジアム・バンドという保守的なステレオ・タイプに陥り、一気に退屈になってしまうわけだけれど、FOALS はそうではない。彼らの特徴であるビート、鋭角なギター・リフへの強迫観念が消え去った結果、好事家だけに向けられたアートでも、退屈なステレオ・タイプでもない場所に彼らは辿り着いている。驚くほどにピュアなその音に打ち震える会心作。

clear and serene

fog × weave

clear and serene

横須賀発の4人組weaveと京都の新鋭fogの2組によるスプリット・アルバム。fogにとってはこれが初の全国流通盤となるとのことで、気合も一入だろう。どちらのバンドも未発表曲を3曲ずつ持ち寄ってリリースされる今作は、一貫してエモーショナルなサウンドが印象的だ。weaveの"静"と"動"で編み込まれた緻密なサウンドに対して、fogは日本語詞によるギター・ロックで直球を投げてくる。似ているようで似ていない、近いようで遠いような両者だからこそ、まとまりを持ちながらも楽曲の個性が際立ったスプリット・アルバムに仕上がったのだろう。五月蝿いぐらいに詰め込まれた感情的なサウンドで、シーンの扉を開けていく彼らの勇士が見えるようだ。希望と期待に満ちている。

Just Because It's Raining

FOGLAMP

Just Because It's Raining

アコースティック・ギターとピアノの音色が彼らならではの個性を際立たせていることを思えば、自ら語る90年代のUKロックやUSエモの影響はもはやバンドの出発点に過ぎないようだ。横浜の4人組、FOGLAMPによるデビューEP。「intro」を含む全5曲はメランコリック且つリリカルなギター・ロック/ギター・ポップという印象ながら、ギターのカッティングがファンキーなTrack.2「Feel So Good」、ダンサブルなTrack.3「Lying in the Wind」、轟音ギターが唸るTrack.4「Janie」など、1曲1曲、ていねいにアレンジを練り上げていることを思えば、メンバーが言う、かちっとまとまった手のひらに収まるポップ・ソングはまさに言い得て妙。そういう意味でも先入観を持たずに美しい曲の数々に耳を傾け、曲ごとの魅力を楽しみたい。

INTRODUCTION

fogliar

INTRODUCTION

"都会の中心で深夜に嘘を叫ぶバンド"というコンセプトのもと活動する女性3人組 fogliar。彼女たちの初の全国流通盤『INTRODUCTION』は、文字通り我々にfogliarの実像を提示している。彼女たちは心象世界を静かに、そしてたしかな言葉で綴る。この誠実さがfogliarの本質なのではないだろうか。他人との関わりの中で生まれる違和感や、永遠に分かりあえることはないという現実を引き受け紡がれる歌詞。しかし......いや、だからこそと言うべきか"裏切り、傷つけあっても信じ合いたいんだ"と言わんばかりに一貫してポップな山口香月(Vo/Gt)の歌は力強く響く。世界に対する不信感を募らせ、歪な自己愛に満ちたものではなく、常に他者を慈しむ音楽からは母性さえも感じられる。

DOMINANT

folca

DOMINANT

アルカラ主宰レーベル"くだけねこレコーズ"からの2作目、約2年半ぶりのリリースとなるアルバム。バンドマンには"ドミナント・コード"など、音楽用語で馴染みのある言葉をタイトルにしているが、直訳すると"支配的"、"圧倒的"の意。1曲目「Strain」から、タイトルどおりに圧倒的な音圧が飛び出してくる。サウンドの方向性はダンス・ロック的なアプローチが前面に出ているが、内面的なことを歌う「Strain」、「FALL OUT」と架空のストーリー的な「クレイジーショウタイム」、言葉遊び的なサビの「dope dope dope」と、曲により歌詞の内容でかなり違う印象を受けるあたりにバンドの懐の深さを感じさせる。ボーナス・トラックにはアルカラの稲村太佑がコーラス参加。

GLAMOROUS

folca

GLAMOROUS

人と向き合うことで見える自分自身は、それはもうたくさんあるもので、自分の嫌な部分を見なければならないこともしばしばだ。でもそこから目を背けていても進歩はないし、それを少しずつクリアしていくことで人としての深みを増していく。それが本当の意味で"大人になる"ということなのだろう。folcaというバンドは人と真摯に向き合い、感じた想いをすべて音に投影している。ギター・ロック、ハード・ロック、グランジ、オルタナ、歌謡曲など、3人が吸収してきた様々な音楽が、彼らの人間としての深みや色気と化合した全9曲は、人間の熱量と愛情に溢れたロックンロール。艶もあり骨太で、躍動感もある。アルカラ主催の"くだけねこレコーズ"が贈る第一投として申し分のない作品であり、バンドだ。

いつかへの旅

The Folkees

いつかへの旅

hotspringを擁する新レーベル"QEEMA RECORDS"から期待の新人がいよいよ全国デビューを飾る。満を持して完成させた1stフル・アルバムは今年3月、TOWER RECORDS限定でリリースした「ドーナツ&コーヒー」を含む全9曲が収録され、この4人組のユニークさをアピールするものになっている。日本のリヴァプールと謳われる博多のバンドらしいロックンロールを基調としながら、カレッジ・フォークの影響も感じられるところが面白い。Track.5「Good Luck」を聴き、地元の大先輩、THE ROOSTERSを思い出す人もいるんじゃないか。Track.6「旅の途中」は、異色のトラッド・ナンバー。サウンドはノスタルジックだが、芯には熱いものが感じられる。そこにシビれる。ライヴはアルバムよりもっと熱い。

ドーナツ&コーヒー

The Folkees

ドーナツ&コーヒー

前身バンドを経て、2012年から活動する博多在住の4人組ロック・バンドThe FolkeesのTOWER RECORDS限定でリリースされる2曲入りシングル。表題曲のTrack.1「ドーナツ&コーヒー」もTrack.2「clever boy」も一聴しただけでなぜか不思議と懐かしい気持ちになる。THE BYRDSのような60年代フォーク・ロック的なニュアンスと70年代ジャパニーズ・ロックのテイスト(SHŌGUN「男達のメロディー」など)と近年のシティ・ポップ・バンドのビート感覚を混ぜたとでも言おうか、新しい曲なのか古い曲なのかわからないところに魅力を感じるバンド。現在、博多を拠点にしているとのことだが、今後どのような活動をしていくのか大いに気になる。

メリーゴールド

岩ヰフミト

メリーゴールド

元Galileo Galileiのメンバーによるバンド FOLKSのヴォーカル 岩井郁人がソロ・プロジェクトを始動して"岩ヰフミト"名義でリリースする初シングル。表題曲の「メリーゴールド」はJ-POPアレンジのバラード・バージョンと洋楽テイストのアップテンポ・バージョンの2種類が収録される。これまでのバンド活動のなかで自身の中にある邦楽と洋楽というふたつの音楽的アプローチを行き来することに限界を抱いた岩ヰは、このプロジェクトによって新たな表現の可能性を模索する。親友の結婚式を祝うために書いたというウェディング・ソングが見せるふたつの表情に注目してほしい。またカップリングにはスタイリッシュなポップ・ナンバー「星が降る夜に」を収録。軽やかなリズムに乗せたセンチメンタルなメロディが性急に過ぎていく夏の余韻を描く。

BLUE & YELLOW

FOLKS

BLUE & YELLOW

取り繕わず、ありのままの自分を受け入れていく。その思いが綴られた今作には、己が思う自分と他者が描く自分、理想と現実、憂鬱と希望など、タイトルの"BLUE & YELLOW"同様のさまざまなコントラストが描かれる。ふたつが拮抗したり、溶けあったりしながら、気づけば思考の時間に静かに横たわっているようなアルバムだ。デビュー時から高いアレンジ・センスで気密性抜群のポップ・ワールドを構築してきたバンドだが、今作は、選り抜いた材料をさらに研ぎ澄ますような美意識で、サウンドを作りだしている。細部の響きにこだわった、透明感のある音の余韻が、メロディ/ヴォーカルの機微を美しく引き立てているのがいい。シンプルだが、より実験的であることに重きを置いている繊細さが、今現在のFOLKSというバンドの肝。

SNOWTOWN

FOLKS

SNOWTOWN

デビュー・ミニ・アルバム『NEWTOWN』やシングル『HOMETOWN STORY』での想像力を掻き立てる音世界やバンド感を汲みつつ、さらに自由な発想で音遊びを重ね、同時にエヴァーグリーンなポップスとしても磨きをかけていった新作。北海道の冬がテーマで、彼らが日々の暮らしの中で見る、体感する景色を音で表現したいというのが、音遊びや実験の始まりだったという。シンセを多用し、楽器以外の音の素材もふんだんに盛り込みながら、美しい箱庭を作り上げ、そしてトライバルなダンス・ビートや躍動感でサウンドスケープを持広げていく。アンビバレントな音空間で、冬の景色を描きながらも、彼ら独特の冬の世界観を作り上げたアルバムだ。この芳醇な冬の季節を経て次にどんな音楽が芽生えるのか、また楽しみになってくる。

HOMETOWN STORY

FOLKS

HOMETOWN STORY

ミニ・アルバム『NEWTOWN』でデビューした北海道恵庭市在住の5人、FOLKSの1stシングル。アイディアたっぷりのアレンジで生み出される、キラキラと瞬くサウンドと叙情的で熱い歌とは、今作でも鮮やかなコントラストを描いているけれど、同時に深く混じり合ってもいる。ドリーミーな音世界とそこに哀愁の風を吹かせる空模様は彼ら独特で、早くもFOLKS節ができているのを感じる。ファンタジー濃度の高い曲から、シニカルなシンセの音色がフックのロックンロール、80'sポップスのエッセンスが盛り込まれた曲などタッチは様々。5人でああだこうだ言いながら組みたてたアレンジを、何度もブラッシュ・アップして、聴く人の記憶に触れるような普遍的な音楽にしていく。ますます洗練されてきたことを感じる1枚。

NEWTOWN

FOLKS

NEWTOWN

北海道恵庭市のニュータウンで育った幼なじみ5人で結成したFOLKS。Vo/Gtの岩井郁人とBaの野口一雅はGalileo Galileiで活動していたが、2人が以前活動していたバンドと岩井の兄のバンドとが合体し、FOLKSとなった。ANIMAL COLLECTIVEのカレイドスコープ・サウンドから、ARCADE FIREの醸す哀愁と高揚感などインディー・ロック好きな要素がうかがえ、北海道の長い冬の間、想像をあれこれとふくらませ実験を重ねながら熟成させていった夢見心地なポップ・サウンドが聴こえてくる。かと思えば、ブルージィな香り漂うロックも、叙情的でアンセム的なメロディとキラキラとしたチルアウト・サウンドがマジカルに融合した曲もあり。洗練されていて、なお曲の余韻にはまだたくさんの可能性が感じられる。この先に何があるのか見てみたい。