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LIVE REPORT

Japanese

KEYTALK

2014.06.29 @赤坂BLITZ

Writer 石角 友香

2ndアルバムにして、メジャーから1枚目のアルバム『OVERTONE』を引っさげての地元・東京への凱旋ライヴとも言える赤坂BLITZ。冷房が効きすぎてるんじゃないか?と思うのは浅はかで、フロアはびっしり。開演のアナウンスでさらに前方へファンが雪崩れ込む様子に興奮以上にソワソワしてしまう。笑いを誘うSEに乗り登場した4人が定位置に付き、巨匠こと寺中友将(Vo/Gt)が"ヨロシク!"と一発かますと同時に、小野武正(Gt)のフレーズが高らかに響き「パラレル」がスタート。寺中と首藤義勝(Vo/Ba)のヴォーカル・リレーが冴え、ステージもフロアもいきなりトップ・スピードへ突入。続いて「コースター」という、メジャー・デビュー後のシングル2連投。八木優樹(Dr)は鬼の(!?)形相でシュアな4分打ちをタイトに決める。さらにポップな地メロから、キャッチーなサビ、意表を突きまくるヘヴィネスと八木のハード・ヒッティングに釘付けになるラスト前の展開に、自分自身が走っているぐらい息が上がる「はじまりの扉」までノンストップで猛ダッシュ。満面の笑みでダブル・ピースをキメる小野の超人ぶりはKEYTALKの象徴みたいだ。

"アカサカー!ついてこれんのか?行けるのか!?"、寺中の煽りから彼がメインでヴォーカルをとる「お祭りセンセーション」が引き続き高速BPMで疾走。一瞬のダビーな音響、歓喜に満ちた小野のギター・ソロ、締めの"セイヤッ!"まで、まぁ目まぐるしい。『OVERTONE』のリリース・ツアーだが、もちろんインディーズ時代からのキラー・チューンも。ボッサ風の粋なフレージングから怒涛の2ビートに突入する切れ味がさらに増した「UNITY」では、小さいながらもフロアにサークルが形成され、その場で走るファンも。新作も歌詞の言葉数は多いが、この曲の言葉の詰め込み具合は歌う首藤にとっては"致死量"じゃないのか?というぐらい、2Fから見ても顔が真っ赤。楽しいことは限りなく逸脱に近いのだ。逸脱と言えば音源ではエディットを多用していた「BEAM」のリフが始まると、そのことを忘れるほど場面が切り落とされていくような転換の多いこの曲を、人力でソリッドに演奏する4人に正直びびった。後半、首藤のカオティックなベース・ラインから、スパッとリズム・チェンジする辺り、ちょっと鬼気迫るものを感じたほど。トンネル状の空間でジェットコースターに乗るとたぶんこんなアドレナリンが放出されるんじゃないだろうか(憶測)。高低差の激しいブロックの最後には、これまたインディーズ時代からの鉄板曲「fiction escape」。軽快なボッサのカッティングから、伸びやかなサビに向けてジャンプが起こる。この曲の歌詞の中にある"26歳"にメンバーが今年なることを考えると少し感慨深い。

1曲1曲、全力注入なのはメンバーだけじゃない。ひとつブロックが終わると驚くほど一瞬、フロアが静かになる。首藤が超満員のファンに感謝を述べ、"熱い曲やっていいですか?やります!"と、ニュー・アルバムでも鍵になる「MURASAKI」の郷愁すら感じるイントロから、メロディの独自性、歌そのものを楽しみながらも横に乗るフロア。首藤のヴォーカルも一語一語が届いているし、地メロでは緻密に裏を行きながら、間奏でスッと泣きのソロを差し込む小野の王道っぷりも曲の色合いを鮮烈に表現する。日本人にとってのヨーロピアンというか、クラシック感は「MURASAKI」に続く「シンドローム」でも際立っていて、ベタなまでの歌メロとメロディック・パンク経由なビートの対比が、展開の多いファストなナンバーとはまた違うKEYTALKの曲構造のユニークさを実感させた流れだった。アルバムの曲順通り、八木の様子そのままのヤギビートこと「YGB」では、手数足数の多いドラミングの果てに八木が立ち上がり、キックのみ&素手でシンバルを叩くエンディング。こんなにドラマーを見てしまうバンドって、そんなにない。強いていえば9mmか時雨か? あらゆるジャンルが突っ込まれていても、やはりバンドの心臓部であるドラマーのプレイ・スタイルが全体のソリッドさを左右するのは当然で、八木のテクニカルでエクストリームなスタイルがKEYTALKをライヴ・バンドの最前線でいることを特に牽引しているように見えた。そして一転、16ビートで踊らせる「サイクル」も配置する幅の広さ!

"『OVERTONE』楽しんでくれてますか?最高のアルバムにするために入れられなかった曲もあるんですけど"と首藤がMCする最中、しんみりしたフレーズを弾く寺中に笑いが込み上げたが、いたって真剣に"このツアーが終わっても『OVERTONE』、何年も聴いてもらえたら嬉しいです"と、このアルバムに込めた思いの深さを伝えきった首藤に、熱い拍手と歓声が送られた。

寺中の叙情とスケール感がストレートに届く「メロディ」、可愛らしいと表現してもおかしくないメインテーマにハードなビートが絡む不思議な三拍子ナンバー「Siesta」、春から一気に夏へ温度か変わるような「雨のち。夏、」では寺中のアコギ、サーフとハード・ロックが交錯する小野のリードが、まさにこの季節にハマる。穏やかなムードのブロックはブロックで笑顔が爆発するようなテンションはまったく緩まない。が、少し長い、これまでのツアーを振り返るMCでは完全にトーンが弛緩。首藤をパーキング・エリアに置き去りにしてしまったり、首藤が曲順を間違えて違う曲で「BEAM」お決まりのポーズをしてしまったり......なんだ、ほとんど首藤いじりじゃないか!と思ったら、本人は崩れ落ちていて爆笑してしまった。まぁ4人が4人ともフロントマンみたいなバンドである上に、全員、笑われてナンボのキャラでもあることはKEYTALKが愛される大きな理由だろう。最後の猛ダッシュに備えて場も和んだところへ、ニュー・アルバムのオープナー「バミューダアンドロメダ」投下!首藤が太いベース・ラインを弾きながら、不思議なメロディ・ラインを明快に聴かせ、音源以上に激しさを体感する八木のビートなどなど、改めて濃厚で完成度の高さに唸る。

バンドをやってみたくなるような男気溢れる「トラベリング」、小野の引き出しの多さに驚嘆する「sympathy」と、インディーズ時代から馴染みのナンバーのとどめはフロアがさらにバウンドする「太陽系リフレイン」。小野は自在にステージを行き来し、寺中がバスドラに乗り、飛び降り、さらにフロアのボルテージも上昇。焼き切れそうなスピード感で演奏をフィニッシュした4人には余裕のかけらも残ってないように見える。

"今日ここに立つのが本当に楽しみで、みんなが盛り上がってくれてるのを見ると、おかえりって言ってもらえたようで......こうやってみんなとはしゃいでいる瞬間はすべてを忘れられると思うので、これからも僕らと一緒にはしゃぎに来てください。KEYTALKでした!"と首藤が清々しい一言を述べて、ニュー・アルバムのラスト・ナンバーを本編最後に配置。今までの激しい展開から、ちょっと名残惜しいせつなさを曲のムードとともに届けて、4人はステージを後にした。

尊敬を込めて"この人たちバカだ!"と泣き笑いしてしまうライヴを過去何回か観たことがある。例えばサザンオールスターズ、昨年の復活ライヴ、ユニコーン復活年のSUMMER SONICでの(BEYONCE前)スタジアムなどなど。首藤が"はしゃぐ"と言ったことを潔いなと思ったのは、はしゃぐには曲が浸透していることが絶対条件だからという覚悟があるからじゃないか?と感じたからだ。
違う言い方をすれば、最高の娯楽として時代の最前線で最新鋭を更新し続ける覚悟と言えるかもしれない。

全力を使い切ったフロアはまだまだはしゃぎたいとばかりにアンコールを求め、早々に登場した寺中がお馴染み二重人格モノマネを披露。この日は特にキレッキレだったと思う。
"ホントにって言いすぎだな今日"と自分で突っ込みながら、メジャーのフィールドは想像以上に大きいと言いながらも"いま、これからが明確に見えてる!天下獲りましょう!"とファンとともに前進することを宣誓する小野。怒涛のアンコール本編(って言い方もおかしいが)突入前には八木が"あス"と書いた紙を手に、王侯貴族キャラで"あスとは感謝とも謝罪にもなるユーティリティな言葉である!"と、ファンに3カウント後に叫ばせるというコール&レスポンスを半ば命令し、このバンドのマスロック的なルーツを感じさせる「blue moon light」、パンク→4分打ち→ラテン→パンクと狂騒を煽る「MABOROSHI SUMMER」で、まだダッシュするんだ?的な底力を見せ、"アカサカー!おまえらが楽しめるか?俺らが楽しめるか?勝負や!"と叫んだ寺中を始め、カオスを極めるメンバー「夕映えの街、今」。ギターを置いたと思ったらクラウドに背面ダイヴを決めて、そのまま見事に歌い切る寺中。決して暴れるフロアではないが、ファンもタフだ。勝負はドロー。だってこのライヴ全体が勝利みたいなものだったから。

ジェットコースター級のKEYTALKの音楽が、そのままメインなきポップ・シーンを正面突破する日は遠くないんじゃないか。分析するとクレイジーなKEYTALKの音楽は、シンプルにリスナーの快楽中枢を直撃してるのだから。

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