Lyu:Lyu改めCIVILIAN、新機軸を掲げた快作だ。バンドにとって2年振りの新作は、最新モードを表題曲に、そこに辿り着くまでに生まれた2曲をカップリングとして収録している。「Bake no kawa」は化けの皮を被った人間に傷つけられる人間だけではなく、化けの皮を被った人間の心情も汲み取るという視野の広い歌詞ももちろんだが、様々な音色のギターと華やかなヴォーカル・エフェクト、躍動的なグルーヴを作り楽曲を引っ張っていくドラムと、サウンド的にも一皮むけた。自らに課していた制約を作らなくなったことで自分たちを解放し、さらに彼ららしい音楽ができる境地へと足を踏み入れたと言っていい。過去も今も未来も全部引き連れて活動していくという決意がどの音からも感じられる。
アルバムを語る際に"今のモードを全部詰め込んだ"とはよく耳にも目にもする言葉だが、ハロスリの新作はそれを堂々と言い切るパワーを持った6曲が収録されている。前作に続き、HARD-FiのRichard Archerとの共同プロデュースを実現。歌詞世界を汲んだ妖しげなアッパー・ナンバー「百鬼夜行」、デジタル的な手法をサウンドに用いたスリリングでシニカルな「Worker Ant」、和メロ、鮮やかなツイン・ギターとテクニカルなアンサンブルのコントラストが眩しい「アキレスと亀」、優しいヴォーカルが印象的な「朝に二人は」、歌謡ジャズな「デジ・ボウイ」、ラストの重厚な高揚感が圧巻の英詞曲「Ray of Sunlight」、今作で彼らはバンドの可能性を果敢に試している。好奇心の賜物というべき作品だ。
TVアニメ"キングダム"第4シリーズOPテーマに「黎-ray-」を書き下ろし、脚光を浴びたSUIRENがメジャー1st EPを完成。モダン・ヘヴィ・ロックやマスロック的な構築美で聴かせつつ、このユニットの本質はSuiの歌とRenのピアノで成立するメロディと骨格の強さにあることを思い知る。ゲーム"STAR OCEAN THE SECOND STORY R"メイン・テーマでもある代表曲「stella」の高音ロング・トーンで際立つSuiのジェンダーレスなヴォーカルが虚無や宇宙を感じる空間をギター、ピアノ、ストリングスの洪水のようなアンサンブルの中でも鮮明に聴こえるカタルシス。インストの「白雨」からラストの「Squalling」に接続する物語性も聴き応え十分。ひとりで物事を真剣に考えるときの脳内を映すような言葉と音像も見事だ。