SEBASTIAN X 永原真夏の「つれづれなるままに…サファイア!」【第3回】
「拝啓 大島弓子様」
感じたことを正直に言おうとすると、「不思議ちゃん」とか「電波系」とか、「あの子ちょっと危ないんじゃないかしら」…とか、不本意に思われたりする。
全く生きにくい世の中よね~!
だからこそ私たちには、大島弓子が必要なのだ。
大島弓子。
私が最も愛し崇拝する漫画家。
漫画家というよりももはや思想家と云うべきかもしれない。宣教師。伝道師。
私にとって、彼女の生み出した作品は、頼もしき代弁者でもある。
大島弓子作品の中の登場人物は、多かれ少なかれみな妄想の世界を住処としている。
過食と拒食を繰り返す女の子や、過度のショックから空想の恋人を作り出してしまった女の子。痴呆症で過去と現在の区別がつかない老人男性に、同性愛者の文豪。
ストーリーに対するキャラクター設定は様々だが(『少女漫画』という枠からはみ出さずにこれだけ多様な設定を描ける漫画家もそうそういないと思う)、みな孤独を抱え、現実と妄想を行き来する。
何より特殊なのは、その現実と妄想を、大島弓子は対等に扱う点にある。
現実と妄想だけならまだしも、猫もお金も冷蔵庫もドラッグも対等に扱うのだ。
人の光も闇も、ジェンダーも、善悪も、何もかも。
人も猫も花も歌も冷蔵庫もマイペースに。ゴーインマイウェイ。
現実と妄想を対等に扱ってくれる大島弓子という存在は、一体何人の少女を救ったのだろう。
大島弓子が大切にしてくれたのは、おそらく「妄想」があるからこそ「現実」を生き抜けるという生き方だ。
その妄想があるがゆえに日常という戦場を生き抜けるのであれば、その妄想は立派な現実世界の一部だ。
作品を通して、大島弓子は少女たちの生き方を肯定してくれた。
孤独と妄想こそが誰かと繋がる片道切符なのだと。
拝啓 大島弓子様。
ほんとうにありがとう。
あなたの教えてくれたことは、私の胸の中でずっと生き続けています。
今だって目に見えない友達と喋れる気がするし、草や木や風は言葉を持っている気がする。
そういう思いが、どれだけ私を強く支えてくれていたことか。
わたしは大人になったいま、全世界にドアを開け放っています。
どうかお身体に気をつけて、先生が幸福でありますように。
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