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SEBASTIAN X (133)
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僕らが愛を感じるとき。それは決して"愛してる"という言葉を交わし合う瞬間などではなく、家族と食卓を囲むような日常の些細な出来事の中だったりする。僕らが言葉にできないほどの豊かな想いに満たされるとき。それは何気ない言葉を交わし合う会話の中だったりする。"心"は形のないものではない。"心"は、"生きること"によって立派に形作られるものだ。SEBASTIAN Xは、それを証明するために「こころ」という名曲を作り、「たばこをプカプカ」や「感受性に直行」という素晴らしい曲たちを作り、そして、ひとまずの終焉を迎えるのだろう。だが、営みは人々が言葉や肌を重ね合わせることで生まれ、音楽もリズムやメロディやハーモニーが重ね合わさることで生まれる。それが続く限り、"心"は生み出され続ける。(天野 史彬)
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この仕事をしていると、"音楽を言語化なんてできるの?"と訊かれることがあるけど、音楽批評は"音楽の言語化"とはまったく別物だよ。そもそも、音楽は音符ですら説明しきれないものなのだよ。でも、今の僕らは音楽を言語化/可視化できると思い込んでいるフシがある。SEBASTIAN Xの記念すべきメジャー・デビュー作は、その名も『イェーイ』。たとえ"イェーイ"と歌ったところで、それを歌詞カードに載せるミュージシャンは少ない。でも、SEBASTIAN Xは"イェーイ"と言葉にしなければならなかった。きっと永原真夏にとっては、この"イェーイ"という言葉すらもどかしいのだろう。言語化/可視化できない音楽の"根っこ"に掴みかかる。それをメジャーというフィールドでやろうとしている。SEBASTIAN X、この先も断固支持。(天野 史彬)
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太陽は人を照らすが、では太陽を誰が照らしてくれるのだろうか。人は母なる海へと帰っていくが、では海はどこへ帰ればいいのか。星空は僕らの哀しみを癒すが、星々の涙は誰が拭うのか。大きいものはそれだけで優しくて、だからこそ孤独でもある。SEBASTIAN Xの永原真夏という人は、そんな大きなものの孤独と哀しみを知っているからこそ、ステージの上であれだけ強く美しく輝いていられるのかもしれないと、この工藤歩里とのユニット=音沙汰の初音源を聴いていると思う。ここには、歌とピアノというシンプルな編成によって紡がれた、まるで太陽や海や星空のように大きくて優しくて孤独な曲が並んでいる。帰る場所を持たない子供たちと、届くことのない"I love you"のための音楽。「ホームレス銀河」とSuiseiNoboAzの名曲「64」のカバーが特に素晴らしい。(天野 史彬)
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初期SEBASTIAN Xにあった向こう見ずな多幸感、パワフルさは、"今、この瞬間を謳歌しよう"という刹那性によるものだった。故に、当時の彼らの表現は、自分たちもいつかは"過去"となり消え去ってしまうという切迫感を孕んでいたのも事実だ。しかし、DAFT PUNKの新作が証明してみせたように、未来とは過去があるからこそ作られる。記憶は、人が未来へと歩むための最も大きな武器だ。『POWER OF NOISE』は、とても真摯に永原真夏が過去を肯定したアルバムだ。彼女は、パンク少女だった頃の自分を見つめながら、過ぎ去る時間の中で、それでも残るものを未来へ繋げようとする。「DNA」で彼女は歌う。"友達よ 恋人よ 同じ気持ちでいられるなら 血は必ず繋がっていく"――このアルバムは、音楽という魂の連帯と連鎖を強く祝福する。 (天野 史彬)
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SEBASTIAN X初のフィジカル・シングル・リリースとなる本作。タイトル曲「ヒバリオペラ」の主人公は、男の子に恋に落ち、まだ恋人関係になる前にもかかわらずベッドを共にし、<本気になるつもりじゃなかったの>と心の中で呟いてみせる、どこにでもいるような女の子だ。しかし、そんな女の子の中に、SEBASTIAN Xは生命の輝きを見出してみせる。机上の空論よりも、若者たちのリアルな生活の中にある喜びと悲しみを何よりも敏感に感知し、そこに向けて歌ってきたバンドだからこその説得力。去年のミニ・アルバム『ひなぎくと怪獣』を経て、SEBASTIAN Xは自分たちの届けるべき音と言葉を見定め始めたのだろう。自分の輝き方は自分自身で決めることができるのだということを、この曲はとても鮮やかに伝えている。(天野 史彬)
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今までのSEBASTIAN Xの音楽に常に根付いていた感覚―それは、"私たちはいつか死ぬ"という、人間が唯一知ることのできる真理に他ならない。彼女たちは、その圧倒的な事実に絶望し、だからこそ、"今"を何よりも謳歌するための音楽を鳴らしてきた。だが、このミニ・アルバム『ひなぎくと怪獣』は、今までの作品とは少しばかり様相が異なる。本作において、彼女たちは"衝動"という普遍的なテーマを掲げることで、"死"や"過去"といった自らを捕らえて離さなかった呪縛を解き放つことに成功している。その結果、今までのどの作品よりも聴き手に対する訴求力を持つメッセージ・アルバムになった本作は、SEBASTIAN Xの今後を左右するターニング・ポイントとなる1枚だろう。(天野 史彬)
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08年結成の男女4人組 SEBASTIAN Xの2ndミニ・アルバム。"ぼくらのファンタジー"とは、あくまでも永原真夏(Vo)の"ぼくら"であり、このファンタジーに足を踏み入れることは、彼女の世界に触れることを意味する。それほどに、作中の彼女の存在は圧倒的だ。笛とアコーディオンの音が印象的なアイリッシュ調の冒頭曲「フェスティバル」で、"音楽は続くだろう" と高らかに歌い上げ、冒険の幕開けを告げる。船出したその先にあるのは、アコーディオン、ホーン隊、バイオリン、スティールパン、多くの楽器を鳴らした、まるでカーニバルのような賑やかな世界。その中心にはやはり彼女がいる。自由気ままに、踊るように歌いながら、ひとつひとつの音に命を与えてまわっていくその姿、音と言葉を解放していくその様は、まさにファンタジーだ。(島根 希実)