Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

DISC REVIEW

N

Strangers In Heaven

Nothing's Carved In Stone

Strangers In Heaven

早くも6枚目のオリジナル・アルバムをリリースするというこの表現欲。無から何かが湧き上がってくるようなプリミティヴかつスペイシーなオーヴァーチャーがこのアルバムを象徴しているようだ。なんともエモいメロと光の束が押し寄せるようなシングル曲「ツバメクリムゾン」に劣らぬ「Shimmer Song」。シーケンス的だがすべて人力で表現する「Crying Skull」はコピーしたいキッズ続出だろうし、UKインディーっぽいグラマラスなリフでありつつ、サウンドスケープはインダストリアルな「What's My Satisfaction」、最強のファンク/ダンス・チューン「Idols」、トライヴァルなのかすら不明な変則的なビートとドラムサウンドがユニークな「Brotherhood」など、どこを切っても意表を突かれる体験的な1枚。

echo

Nothing's Carved In Stone

echo

なんてエモーショナルな音楽だろう......。スター級プレイヤーが揃ったこの4人ならではの驚くべき超絶テクニックもさることながら、村松拓の力強いヴォーカルの存在感がこのバンドの強みでもあると思う。そして、今回は日本語詞の楽曲も収録され、村松の低く安定感のある声は日本語との相性も良く、ヴォーカルそのものの良質さが更に際立っている。互いの個性をうまく昇華した大胆不敵な音の重なりは、まさに奇想天外。メインで活動しているバンドをそれぞれ持つ4人だが、NCISの活動は課外活動でなんか決してない。バンド名の意味が表すように、常に挑戦を止めず、自分自身の枠に囚われることなく新たな音を探し求める現在進行形の姿勢を断固支持する。これぞジャパニーズ・オルタナティヴ・ロックの最前線!

Sands of Time

Nothing's Carved In Stone

Sands of Time

ストレイテナーの日向秀和、ELLEGARDENの生形真一が中心となって結成されたNothing's Carved In Stoneのセカンド・アルバムが6月9日(ロックの日)にリリースされる。まず、この2人が同じバンドで音を鳴らしている、それだけでも奇跡だろう。昨年末から行われたツアーのチケットもたちまち即完売の大盛況ぶりで、そのエネルギッシュなライヴには定評がある彼ら。7月からは全国ツアーが始まり、そのパフォーマンスにも期待したいところ。今作では各楽器が絶妙に調和しつつも、メンバーそれぞれの個性豊かなカラーが気持ち良く現れていて、重厚なサウンドのなかに卓越したテクニックが惜しげもなく発揮されている。確実に"音で魅せる"ことが出来る数少ないバンドのひとつでしょう!

Are You Where You Are?

NOTHING TO DECLARE

Are You Where You Are?

幼少期から海外で育ったMas(Vo/Gt)を中心に結成されたNOTHING TO DECLARE。国内、海外、メジャー、インディーと、幅広いステージで活動してきたメンバーが集結したことが窺える、バラエティに富んだ楽曲を鳴らしながら、常にひとつの"核"を感じさせるパフォーマンスを見せてきた。このたびリリースされるミニ・アルバムは、そんな彼らの"核"が結晶化している。演奏、アレンジ、音圧などで勝負できる実力を持ちながらも、"歌=メロディ=感情"という、一番ピュアなところで勝負しているように聴こえてくるのだ。全体を通して、激しさよりも美しさが際立っており、ポジティヴな余韻を残して締めくくられる。百花繚乱のライヴハウスにおいて、唯一無二の存在感を見せつける1枚だ。

綴る光 夜を游ぐ

notice it

綴る光 夜を游ぐ

福島・いわき出身のNotice itは、2011年に発生した東日本大震災を目の当たりにしながらも、歩みを止めることはなかった。多くのバンドが“音楽”という行為と向き合うことを余儀なくされるなか、5人は、体内に生まれた感情を叫び続けた。今の時代に氾濫する匿名性、他者を媒介して感じる孤独。抱えていたものを吐き出し、自らの核と直結した独特の言葉で慟哭する。解き放つ音は、変則オルタナティヴ・サウンド、電子音飛び交うシンセ・ポップ、メランコリックなギター・ロックと自在に姿を変える。その多様性が、存在を希薄にしてしまうような危うい感情も、暗く淀む世界も吹き飛ばすほどの力強さとなって、“今”と真っ向から向き合う5人の未来を照らしているのだ。

dimen

NOT WONK

dimen

自分の内へと深く潜り込み瞑想的な時を重ね、様々な感情や、想像力を掘り起こしていくような、美しくイマジネーションに富んだアルバムだ。ライヴやツアーができない、時にスタジオに入ることさえもままならない状況もあった、2020年という特殊な時間と閉塞感とを、多くのアーティスト同様にNOT WONKの3人も過ごしたが、そこでのフラストレーションも燃料になったのだろう。彼らに根ざしているハードコアの精神、反骨心や、クリエイティヴィティにスポットを当てて、型にはまることなく作品づくりをしようという姿勢が映っている。前作でのソリッドでスリルに満ちたセッション感、鍛え上げたバンドの筋力を存分に使いながらも、その感触はとても詩的だ。静かに確かに、バンドを新たな次元に引き上げた作品。

Novelbright LIVE tour 2022 Hope Assort tour~『路上ライブから武道館へ』的なよくある目標を実現させちゃうツアー~at 日本武道館公演

Novelbright

Novelbright LIVE tour 2022 Hope Assort tour~『路上ライブから武道館へ』的なよくある目標を実現させちゃうツアー~at 日本武道館公演

路上ライヴがSNSで話題になり、今やヒット・チャートを賑わす名実ともにメジャー・アーティストとなったNovelbrightの初の武道館公演。タイトル通り、夢のまた夢のような目標を実現させたその瞬間が映像化された。ドラマ主題歌「seeker」で幕を開け、「愛とか恋とか」、「ツキミソウ」、そして「Walking with you」と次々に披露されたヒット曲の数々。ブレイクした当初はバンドに対する否定的な声も多くあったというが、そんな声を跳ね返す活躍ぶりを見せつけた姿が清々しい。アップ・チューンでは手を挙げ、バラードでは手を横に振り、「青春旗」ではグッズのフラッグをはためかせ、「流星群」ではライトを揺らし星空を作り上げたフロアの一体感も圧巻。間違いなくバンドのハイライトとなる一夜が収められている。

The Warrior

Novelbright

The Warrior

アニメ"リーマンズクラブ"オープニング・テーマを表題に据えた本作。表題曲は疾走感と熱い歌詞で聴く人を鼓舞する、"これぞロック・アニメ・ソング"と言えるナンバーに仕上がった。2曲目は2017年リリースの『Chandelier』収録曲「Black Snow」を再録。行きすぎた愛を生々しい言葉で綴った歌詞が印象的な1曲だ。3曲目は手数の多いドラムや歌うように動くベース、速弾きで魅せるギターと、その確かな演奏力を前面に押し出したインスト曲「Phantom」。これまで竹中雄大の歌声にフォーカスされることが多かったが、その歌声を支え華やかに彩ってきた楽器陣の技術が、爆発するようなエネルギーをもって存分に発揮されている。彼らの現在、過去、未来を映す3曲。

seeker / ワンルーム

Novelbright

seeker / ワンルーム

穏やかな日々から一転"粉々になった"幸せ、それを取り戻すため僅かな希望を信じ立ち上がる姿が主人公とリンクする、ドラマ"真犯人フラグ"主題歌「seeker」。ドラマ同様スリリングに次々と展開する疾走感溢れるサウンド、決意を込めた力強さと今にも壊れそうな危うさが入り交じる歌声で、Novelbrightの新境地を見せる。一方インディーズ時代の名曲「ふたつの影」の続編「ワンルーム」は、彼らの真骨頂とも言えるラヴ・バラード。"月"をキーワードに、別れたあとも忘れられない切なさとそれでも前に進もうとする姿を描く。そんなダブル・リード曲に加え、爽やかな応援ソング「Designs of Happiness」も収録。曲調は違えど3曲それぞれが誰かの背中を押すメジャー1stシングルだ。

開幕宣言

Novelbright

開幕宣言

メジャー初のパッケージ・リリース。冒険映画のOP的なインスト「El Dorado」から、華々しいタイトルにぴったりの表題曲でスタートするが、思うのは彼らの"主人公"感。常に意欲を燃やし、目標を実現していこうとする輝きが滲む。昭和歌謡っぽいメロディに乗せ愛憎を歌うドラマ"共演NG"主題歌「あなたを求めただけなのに」、ハイトーンVoが突き抜ける"コカ・コーラ ゼロシュガー"CMソング「Sunny drop」、"とくダネ!"内コーナーに起用の劇的なピアノ・バラード「ツキミソウ」と、約半数がタイアップ曲だが、バンド・アレンジのみならず多様な編曲者を招き今まで以上にカラフルな音像を描く。そして、ジャケ写で描く道の先にはドーム。潔く直球メッセージを掲げる彼らの物語はワクワクと勇気を届けるはず。

WONDERLAND

Novelbright

WONDERLAND

2019年夏に行った路上ライヴ・ツアーがSNSで話題になり、2020年ブレイク・アーティストとして注目を浴びているNovelbrightの1stフル・アルバム。橋本環奈出演のゲーム・アプリ"放置少女"TVCMソングでもあるリード曲「夢花火」は、ピアノを軸にしたロマンチックなバラードで、竹中雄大の卓越した歌声が前面に押し出されている。本作を聴いて驚くのは、そのヴォーカルが単に美声というだけではなく、バラードから「君色ノート」のようなきらきらとしたポップ・ソング、ソリッドなバンド・サウンドが走り抜けるパワフルなナンバーまで、より幅広くなった楽曲を見事に引っ張り、そのどれもを磨き上げた表現で聴かせられること。バンドの力と存在感をシーンに印象づけるには充分な作品になった。

SKYWALK

Novelbright

SKYWALK

大阪を中心に活動する5人組ロック・バンド Novelbrightが、初の全国流通盤をリリース。今作は、新曲4曲と既存のライヴ定番曲3曲を収録した全7曲入りのミニ・アルバムとなっている。中でも、雄大(Vo)の力強く伸びのある歌声で幕を開けるリード曲「Walking with you」は必聴。疾走感のあるサウンドとドラマチックなメロディ、そしてまっすぐな歌詞が聴き手の心をがっしりと掴むキラー・チューンだ。また、ライヴでのシンガロングが想像できる「Morning Light」や、冒頭の口笛が新鮮なバラード「また明日」など、多彩な楽曲をバランス良く散りばめ、振れ幅の広さも見せつけている。彼らをもっと知りたいと思わせてくれる1枚。

DANCE BOOK

NOVELS

DANCE BOOK

NOVELSは特異なバンド・スタイルだ。竹内真央(Vo/Gt)の清涼感に溢れるヴォーカル、楠本正明(Gt)のブルース/ハード・ロックをルーツに持つ煌びやかなギター・ワークを武器に現在2人体制で活動を行う(ライヴはサポート・メンバーがつく)。インタビューでもわかる通り、現編成になって音楽的にはフレキシブルになり、今作ではさらに新たなフィールドに足を踏み入れた。ダンスをテーマに据え、ライヴで踊れるアッパーな曲調が揃い、1枚通して非常に華やかな作風になった。EDMも積極的に取り入れながら、ギター・ソロもふんだんに挿入している点は彼らならではのアプローチだ。各楽器の演奏も生々しく、カラフルな色彩感も眩しい限り。ラップを用いた「Mad Hatter」の遊び心溢れる曲調もハマッてます。(荒金 良介)

6月にアルバム『KICK BOOK』をリリースしたばかりの竹内真央(Vo/Gt)と楠本正明(Gt)によるバンド、NOVELSが早くも完成させたニュー・アルバム。ダンスをテーマにエレクトロと生演奏が融合した楽曲を聴かせている。怪しげなジャケットから受ける印象とは裏腹に清涼感溢れる爽やかな歌声は、すべての世代に受け入れられそうな暖かさを伴っていて心地良い。スケールの大きな音像のTrack.3「ヴァルプルギスの夜」は畳みかけるようなリズムと短いながらも間奏のギター・ソロが強烈に耳に残る。ファンキーな演奏とラップによるTrack.5「MadHatter」、豪快なTrack.6「We are the world's endnew order」など、ミクスチャー的な楽曲に彼らのサウンドの核が見え隠れしている。

KICK BOOK

NOVELS

KICK BOOK

2014年、新たなステージを追求すべく、自主レーベル"muff tone"での活動を再スタートさせたNOVELS。竹内 真央(Vo/Gt)、楠本 正明(Gt)の2名体制となった彼らだが、ふたりだからと侮るなかれ。ニュー・アルバムにはゴリゴリのエレクトロから爽やかなポップ・アンセム、さらにはラップまでをも組み込んだ、これまで以上に多様なサウンドが目白押し。さらには合わせ鏡のように存在するネガとポジをメロディに落とし込み、ハッピーなNOVELSとダークなNOVELSの両面が垣間見える。バンド・イメージなんてぶっ壊して、ますます自由度の増した今作は、多くのロック・ファンに衝撃を与えることだろう。既存のスタイルにとらわれず、進化したNOVELSの"今"をぜひ体感して欲しい。

PROTOCOL

NOVELS

PROTOCOL

愛知県発の新世代ロック・ヒーローNOVELSによるメジャー2ndアルバム。アニメ"TIGER & BUNNY"のテレビ版と劇場版のオープニング・テーマに抜擢された3曲をはじめ、インディーズ時代の楽曲からファン待望の新曲まで網羅した今作は、まさに彼らの集大成ともいえる作品。全体を通して光るのは竹内真央が描き出す小説のような詞......しかしそれは紛れもない"リアル"を表している。グルーヴィで賑やかなアレンジと、若さ溢れるエネルギッシュなメロディ・ラインに乗せて歌われる、凛とした世界観。それは夢物語でも絵空事でもなく、現代を生きる私たちに突きつけられた真実なのではないだろうか。2010年代の必聴作。

From The Swing, Into The Deep

NOVEMBERDECEMBER

From The Swing, Into The Deep

デンマーク出身の5人組インディー・フォーク・バンド、NOVEMBERDECEMBER。OH MY!を見出した "Rimeout Recordings"からリリースされる期待の新人は、名前の通り、1年の終わりにさしかかるどこか物悲しくノスタルジックな時節を音楽にしたような趣きがあるバンドだ。フォーキーなサウンドや重厚なコーラス・ワークなどはFLEET FOXESやARCADE FIREに通じる部分があるが、土臭さがなく洗練され、凛としてひたすらロマンチックであるのはさすが北欧といったところだろうか。個人的には休日の夕方に夕日をぼんやり眺めながら聴きたい作品だ。MEWを輩出し、最近ではICEAGEなどの登場で活気づくデンマークの音楽シーンから、これからも目が離せない。

Rhapsody in beauty

The Novembers

Rhapsody in beauty

1曲目の「救世なき巣」のかなりダイレクトにMY BLOODY VALENTINEを思わせる暴風雨のような轟音の壁の向こうに揺らぐ歌を含む音像に、これまで以上に"何が美しくて、何が美しくないのか?"という哲学が音そのもので迫ってくる。これは振り切った哲学だ。不穏で獰猛な曲の合間に、これまでになかったドライヴするスリリングなR&Rがあり(「Blood Music.1985」)、坂本慎太郎の近作にも通じる時間の遠近感が狂うサイケデリックなサウンドと、懐かしいような未知なようなパーカッションが聴こえる「Romancé」、アコギ1本と小林祐介の歌のみに深いリバーヴがかかり、森の中、はたまた白昼夢、もしくはもはやこの世ではないようなイメージが広がる「僕らはなんだったんだろう」まで全10曲。ただただ圧倒的な体験が待っている。

Fourth Wall

The Novembers

Fourth Wall

前作『GIFT』の光を感じる作風から一転、暗闇とも異界とも思しき扉が開かれるTrack.1「Krishna」からして対照的な作品。なのだが、この2作でTHE NOVEMBERSは聴き手をその音像が作る空間に“いる”感覚を獲得したという意味では異なる角度で同じことを表現しているとも言える。その創作された臨場感は例えば「dogma」の破裂音のような打音が、一瞬一瞬を過去にするような感覚だったり、「Fiedel」での美しいピアノのフレーズが、音像によってむしろ恐ろしいものに感じられることなどに顕著だ。ダークでエッジーでカッコいい、そんなシンプルな快感も備えながら、感覚を音として、しかも高解像度で表現した怪作。しかもラストには相当な安堵と覚醒を実感できるので、ぜひ通してじっくり聴いてほしい。

GIFT

The Novembers

GIFT

神秘的で壮大なサウンド。漂うノスタルジア。このバンドはぶれない。THE NOVEMBERSを説明して欲しいと言われたら、まず初めに、日本が誇るシューゲイザー・バンドだ、と私は言うだろう。だが、それは前作までの彼らについて語る場合だ。今作はそれに待ったをかけた。先にあげた特徴はそのままだが、印象が全く違う。今作に感じるのは限りない優しさと多幸感。じんわりと小林(Vo/Gt)の声が沁みてくる。どこかネガティヴなイメージがついているシューゲイザーという言葉の枠では収まりきらなくなった。方向転換したわけではない。バンドの世界が遥かに広がっているのだ。その飛躍に背中がぞくりとする。THE NOVEMBERSからの一足早いクリスマス・プレゼント。楽しみにゆっくりと紐解いて欲しい。

To (melt into)

The Novembers

To (melt into)

THE NOVEMBERS、1年5ヶ月ぶりとなる新作はシングルとアルバムの2枚同時発売。こちらはアルバム盤。前作『Misstopia』で見せた、光とメロディを一斉放射する煌々とした希望の世界から一変、“より良く生きるために”という、より身近なことを歌った作品。だが、まったくもって身近な世界観にはならないのは、小林祐介(Vo&Gt)という人の眼は、私たちとは比べ物にならないほど薄いフィルターを通して世の中を見ているからだろう。当たり前に接しているこの世界にさえも一切従順にならず、疑い、牙を剥く。愛や希望を持って日々を生きることはこんなにもシリアスでなければならないのか、痛々しいほど率直な切り口に心が震えた。私たちの分厚いフィルターで守られた眼にはあまりに痛く、そして厳しい。

Misstopia

The Novembers

Misstopia

前作から約1年振りとなるセカンド・アルバム。一曲目の「Misstopia」がとても開放感溢れる楽曲で気持ちがいい。昨年観たツアー・ファイナルでの彼らは狂気スレスレのソリッドな演奏を展開していただけに、意外だが素晴らしいオープニング。2曲目以降はイノセントなナンバーや攻撃的にフィードバック・ノイズを爆発させるエモーショナルなロック・チューンと様々な楽曲が収められていて彼らの底力を感じさせる。轟音と静けさの中から溢れだすメロディは救いのない不安定な歌詞と相まってとても胸が締めつけられる。そして透明感ある小林祐介の歌声により一層その世界感は高まっていく。渾身の力作の誕生だ。

MAN NOWEAR

NOWEARMAN

MAN NOWEAR

ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文がプロデュースを務めたことでも注目を集めるNOWEARMANの初の全国流通作品『MAN NOWEAR』。シンプル且つタイトな楽曲を詰め込んだデビュー・アルバムでは、一貫してロックンロールの美学が追求されている。すべての始まりを告げるかのようにTrack.1「Ana」が鳴り響いた瞬間、あらゆる前置きは不要となっていることに気がつくだろう。ゆらゆら帝国やTHE STROKESなどを挙げて彼らを語ることはできるのかもしれない。しかし今作から鳴り響く音を聴くとNOWEARMANが2014年の日本に存在する"異質さ"を感じるだろう。洋楽も邦楽もない絶妙なバランスがとれた"最高にクールなアルバム"だ。

GO

NUDGE'EM ALL

GO

KOGA RECORDSが90年代後半~00年代初頭のギター・ポップのメッカだった当時から活動を続け、かつてKEYTALKの小野武正(Gt/MC/Cho)もサポートを務めていた"ナッヂ"。KOGAデビュー20周年記念且つ6年ぶりの最新作は、真田太洋(Dr/Vo)の冴えないがロマンのカケラを抱えた詞と、変則的なメロディを挟む坂木 誠(Gt/Vo)の絶妙なメロディ・メイカーぶりを素直に出した印象。ザクザク刻まれるコードとピアノ・ポップが絡む「CLOUDY DAY」や、ちょっとホンキートンクな「バディ」、イントロで大瀧詠一のナイアガラ・フレーバーが顔を出しつつ内容は朴訥な「オトコはつらいよ」など、ショート・チューンにオイシイ要素を詰め込んだ。メロはタイムレス、音像は現代なのがいい。

H.O.T

Nulbarich

H.O.T

昨年JAMIROQUAI来日公演のサポート・アクトを務めたことでも話題となったNulbarich。リード曲「ain't on the map yet」はデビュー時の彼らのムードを漂わせる爽やかでJQの歌声が優雅に響き渡るナンバーながら、作品全体としてはこれまでとひと味違ったクールな印象を感じさせるわけは、JQのルーツであるHIP HOPの影響が反映された「In Your Pocket」など、他曲のインパクトに他ならない。今月から始まるツアー名にも"しっかり自分たちの居場所を"という想いを込めているようだが、突如出現し日本人離れした歌声&サウンドで音楽好きをざわつかせた2016年、様々なフェスやビッグ・ステージ出演で名を轟かせた2017年を経て、この2018年は確固たる地位を築きたい、そんな意志も感じられる。

Guess Who?

Nulbarich

Guess Who?

JAMIROQUAIを彷彿とさせるジャケットも小粋で、敬意に溢れている。シンガー・ソングライターのJQをリーダーに結成され、今年6月にリリースされたシングル『Hometown』も好評のNulbarichが早くも1stフル・アルバムをリリース。ソウル、ファンク、アシッド・ジャズなどのブラック・ミュージックをベースに、ポップス、ロックなどにもインスパイアされたサウンドは、すべてに温もりが宿る。その柔らかく包み込むような心地いいサウンドスケープは、こちらに"ちょっと遊びに行こうよ"と笑顔で誘う友人のように身近でフランク。大げさではないが、確固たる芯が感じられるグルーヴがリアルで晴れやかだ。未だ謎に包まれている部分も多いバンドだが、聴けば彼らの心意気が十二分に感じられるはず。

Hometown

Nulbarich

Hometown

これまでもシンガー・ソングライターとして活動してきたJQがバンド・スタイルとして立ち上げた新プロジェクトによる1stシングル。アシッド・ジャズやファンクを経由したロックという点ではSuchmosと共鳴する部分があるが、こちらはよりUSビルボード・チャートを彩るようなR&B要素の強いラグジュアリーなサウンド。ネオ・ソウルの複雑なリズムのバースからサビへとスタンダード・ポップスの晴天が広がっていく冒頭「Hometown」。ループするフレーズやカジュアルなタイム感がJohn Mayerの「Waiting On The World To Change」を彷彿とさせる「NEW ERA」など、仕掛け満載の十分な聴き応え。しかしまだまだ手数がありそうで、強者の鱗片を感じるには十分の初作だ。

NUMBER GIRL 無常の日

NUMBER GIRL

NUMBER GIRL 無常の日

ナンバガ、2度目のラスト・ライヴである2022年12月11日、ぴあアリーナMMの壮絶な3時間を音源として約2時間半に収録したライヴ・アルバム。思い入れは人それぞれだろうが、音源としての価値は必要以上にエモくない臨場感と明快な音像だ。センチメンタルな気持ちより4度にわたって演奏された「透明少女」の趣きの違いや、ロック・バンドにおける疾走感のなんたるかを4人全員が証明するようなTrack.3の速度や、向井秀徳の怜悧で洗練されたテレキャスの音や田渕ひさ子の一刀両断するようなリフや、アヒト・イナザワの性急で手数の多いドラムや中尾憲太郎 48才の五臓六腑を揺らす鉄の弦という"物理"に圧倒されればいい。そしてもはや自分の記憶なのかわからなくなった鮮やかで眩暈のするような真夏に何度も出会えばいい。

LIVE ALBUM『感電の記憶』 2002.5.19 TOUR 『NUM-HEAVYMETALLIC』日比谷野外大音楽堂

NUMBER GIRL

LIVE ALBUM『感電の記憶』 2002.5.19 TOUR 『NUM-HEAVYMETALLIC』日比谷野外大音楽堂

再結成の一報に後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION/Vo/Gt)や川谷絵音(indigo la End/ゲスの極み乙女。/Vo/Gt etc)などが反応したことで、チェックしている若いリスナーもいるかも。今回発掘されたのはこの半年後に解散したのが信じられない、いや、むしろこの緊迫感から納得してしまう、アンサンブルや演奏が高次元な2002年の"TOUR『NUM-HEAVYMETALLIC』"日比谷野音公演のライヴ音源。日本のオルタナティヴ・ロックの礎で、今聴いても色褪せていないどころか、ファンクや祭囃子的なグルーヴをソリッドに昇華したり、アティテュードにジャズ的な部分が散見されたりと、先見性というか独自性に驚愕。"少女"をメタファーにした純粋さと毒を孕む詩情も響くはず。

ナイトソングス

Number the.

ナイトソングス

グループ魂などでも活動中の富澤タク、SHERBETSのドラマーとしても活躍中の外村公敏らからなる4人組Number the.。昨年は宮藤官九郎、9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎、高橋 優らと東日本大震災のチャリティ配信シングルをリリースするなどしていた彼らが、活動19年目にして2枚目のフル・アルバムをとうとう今月リリースする。“ナイト・ソングス”というタイトル通り11のナイト・ストーリーが綴られているのだが、どの曲も溜息が零れるほどロマンティック。富澤のソフトなヴォーカルと、余裕と渋さを滲ませる男気溢れる音が揺らめく。都会の夜に繰り広げられる大人の恋愛模様を覗いているようで、何だかドキドキしてしまった。飾らない真っ直ぐな思いが颯爽と、ドラマティックに駆け抜ける。

みらいいえ

NUMBER VOGEL

みらいいえ

5月末のライヴを以て、9年間の活動に終止符を打つNUMBER VOGELのラスト・アルバム。収録されるのは、"NUMBER VOGEL"というバンドの志向が作り上げられた初期の曲、ライヴの定番となっている曲、そして新たに作り上げた「ネガティブスター」も加わった全18曲。最近、ソロでカバー・アルバムを発表したもとつね番ちょうのハスキーで中性的なハイトーンの歌声を活かした、メロウなメロディが冴えるバラードから、近年のアップテンポでダンサブルな曲など、このバンドの幅広さがわかる内容になっている。バンドとしての活動は終えるものの、その音楽は残り、いつでも帰ってこれる場所としてあり続ける。そんな意味合いと、NUMBER VOGELがこれまでその歌とサウンドに込めてきた願いをタイトルに込めた、大きな"いえ"の完成。

番ちょうCOVERS

NUMBER VOGELもとつね番ちょう

番ちょうCOVERS

NUMBER VOGELの、もとつね番ちょう(Vo/Gt)によるソロ・カバー・アルバム。かなり好きで歌い込んでいるという秦 基博の曲を始め、彼自身が、ひとり路上ライヴで歌ってきた曲が並ぶ。小田和正、槇原敬之から、JUJU「やさしさで溢れるように」、一青窈「ハナミズキ」、荒井由実/松任谷由実の名曲まで、女性シンガーをも、そのスモーキーなのに、艶やかさも持った声で歌う。取材で"バンドマンとしてのプライドは捨てて歌っているところもある"と語っていたが、たしかに、各曲の持つソウルに忠実に、丁寧に歌を紡いでいく感覚は、バンドマンとしての看板やエゴのようなものはない。初めて聴く人にとっては、いいヴォーカリストを発掘した感覚にもなるだろう。そして、1枚聴き終えるころには、独特の歌のグルーヴに魅せられていると思う。

かくかくしかじか

NUMBER VOGEL

かくかくしかじか

もとつね番ちょうの中性的なハイトーンヴォーカルが冴えるキャッチーなメロディ、加速感が気持ちのいいダンサブルなドラム&ベース、そしてインパクトの強いフレーズと第二のメロディたる存在感でぐいぐい前に出てくるギターと、なかなかにアクの強い個性がせめぎ合っているNUMBER VOGELサウンド。このEPでは、収録曲4曲ともにそのせめぎ合いの面白さが全面に出ている。全曲BPM150前後の疾走感で、「ナリユキマカセ」ではファンク・テイストのヨコノリ感もあったり、曲の展開も一筋縄でいかないパターンも多い。それでいて耳馴染みはフレンドリー。J-POPも好きだと聞くと、それも納得だ。マニアックなこだわりは随所で感じさせつつ、キャッチーな曲として昇華していく、腕によりをかけたバンドの今を見せるEPだ。