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DISC REVIEW

N

Physical Drafty

NeruQooNelu

Physical Drafty

メンバー・チェンジを繰り返しながら、長きにわたって活動を続けている3ピースのキャリア初アルバムには、現体制で再構築した既存曲と新曲を合わせた全12曲を収録。歌モノだった原曲をリミックスばりの勢いでインスト曲に再編した「DISCORTION BIG LINE」や、トライバルな趣きもある「Oishiii!!」など、ノイジーでローファイな爆音バンド・アンサンブルと、ミニマル・テクノを彷彿とさせるエレクトロニクスが交錯し、圧巻のサイケデリック空間を生み出している。全編通して変拍子もかなり多いのだが、耳に残るリフや歌メロがしっかりとフックになっていて、聴き手を突き放すことなく、全員まとめてトリップさせていく最高のストレンジ・ポップが、とてつもなくクセになる。 山口 哲生

サイダーのように言葉が湧き上がる

never young beach

サイダーのように言葉が湧き上がる

多彩な楽器や女声なども効果的に配した『STORY』をリリースし、ホール・ツアー完遂後のネバヤンは今年、一転してまたグッと身近な印象のシングルを発表している。本作はその親しみやすさに加えて、お得意の夏曲。同名の劇場アニメ主題歌である「サイダーのように言葉が湧き上がる」は、優しく軽快なギターが印象的な、まさに"サイダー"のように、カラッとした暑さに爽快感と懐かしさを弾けさせる1曲だ。シンバルやベースの響きを最小限に抑えた粒立ちの良い4人の音からなり、映画に登場する"言葉を交わすこと"に億劫になっている少年少女を見守る、安部勇磨の温かい歌声を際立たせる。c/w「シティサイド・ラプソディ」は阿南智史(Gt)作曲で、彼らとしては新しい都会的なファンクがえも言われぬ余韻を残す。

A GOOD TIME

never young beach

A GOOD TIME

"西海岸のはっぴいえんど"と称されるnever young beachが、遂にメジャー・デビュー・アルバムをリリース! 前作同様エンジニアに池田 洋を迎え、音へのこだわりはもちろん、肩の力が抜けるほどの日常のキーワードで満ち溢れた今作。"溶けたバターの匂い"と生活の中で見つける幸せを表現した「気持ちいい風が吹いたんです」、"電車にゆられガタンゴトンと"と始まる「海辺の町へ」など、これまで以上にフォーキーで日本語の響きを大切にした楽曲が勢揃い。さらに、眩いコーラスとリズム隊の掛け合いが絶妙な「SURELY」では、3年間の活動の月日を凝縮したサウンドで、ネバヤンがこれまで愛されてきたわけを再認識させられた。なんでもない日常に隠れた幸せに気づかせ、心地よい時間へと導いてくれる、それが今作『A GOOD TIME』の魅力だ。

YASHINOKI HOUSE

never young beach

YASHINOKI HOUSE

"西海岸のはっぴいえんど"と称される平均年齢23歳の5人組、never young beachの1stアルバム。ペトロールズ、踊ってばかりの国、クリープハイプなどを手掛ける池田洋をエンジニアに迎えた今作には、70年代J-POPサウンドを現代に落とし込んだような、懐かしくも新しい楽曲陣がずらり。"夢見てる"のフロントマンとして活躍していた当時から、安部勇磨(Vo/Gt)のソングライティング・センスには一目置いていたが、ネバヤンでそれが最大限に生かされるようになったのだと思う。エキゾチック且つサイケな要素を含んだ極上のポップ・サウンドに乗せて歌われる何気ない日常は、キラキラした初夏の爽やかさと、"僕らはまだまだ若いんだ!"と言わんばかりの期待感で満ちている。さあ、夏が来るぞ!

Newest Zealand

NEWEST ZEALAND

Newest Zealand

ポーランド、ワルシャワ発のポップ・バンドTHE CAR IS ON FIREの中心人物だったBorys Dejnarowiczが、脱退後ソロ活動を経て結成したのがこのNEWEST ZEALAND。今作はバンドにとって初のフル・アルバムとなる。ポスト・ロックやニュー・ウェイブが、ボサノヴァやジャズに姿を変えたとでも言うべきか。お洒落なストリート・カフェが良く似合うモダンな空気感。呟くようなヴォーカルは、軽やかな小鳥の囀りのように穏やかだ。と思えば、不協和音や緊張感のあるウォール・オブ・サウンド色の強いギターはこちらに襲い掛かるように耳に入り込んでくる。心地良さの中にそこはかとなく狂気を感じたのも事実だ。心をざわめかせる、ちょっと不思議なポップ・サウンド。

New Hope Club

NEW HOPE CLUB

New Hope Club

イギリスの3人組ポップ・バンド、NEW HOPE CLUB。昨年行った初の単独来日公演も盛況だった彼らが、満を持してデビュー・アルバムをリリース。哀愁を帯びたメロディにR&Bやラテン・ミュージック、エレクトロ・ポップなど様々なダンス・ミュージックを混ぜ合わせ、オリジナルな世界観を作り出している。USっぽいサウンドなのかなと思いきや、シンプルな楽曲の中には、しっかり彼らのバックグラウンドにあるUKロックの片鱗を感じ取ることができる。何しろ若いし顔がいいので、アイドル的な目で見られてしまいそうだが、3人ともマルチ・プレイヤーで、とにかく、ソングライティングのセンスもアレンジメントのセンスも抜群の音楽エリートなので、幅広い世代に聴いてほしい。

∑(No,12k,Lg,17Mif)

NEW ORDER

∑(No,12k,Lg,17Mif)

前身バンドであるJOY DIVISIONの結成40周年を迎えようとしている17年7月、そのJOY DIVISIONがレコード・デビューするきっかけを掴んだとも言える地元マンチェスターのスタジオで、NEW ORDERが行ったライヴを収録した2枚組ライヴ・アルバム。ライヴでは30年以上演奏することがなかったJOY DIVISION時代の「Disorder」を始め、全キャリアから選曲した曲を新たなアレンジで披露している。多くのメディアから大歓迎されたメモリアル・ライヴを追体験しながら、ゴシックでインダストリアルでディスコ・ポップな、ポスト・パンク/ニュー・ウェーヴの先駆者の真骨頂を堪能できるという意味で、聴き応えは満点。危なげない演奏にバンドの円熟を改めて感じられる。

Newspeak

Newspeak

Newspeak

2022年にメジャー・デビューして以降、シングルの発表を重ねつつ制作をじっくり続けてきたアルバムがついに完成。"もし恐れるものがなかったとしたら、君はどうする?(和訳)"そんな問い掛けから始まる、ミドル・テンポのオーセンティックなインディー・ロック「White Lies」をリード曲に堂々と据えたのも彼ららしい。疾走感のある「Leviathan」、ダンス・チューン「Alcatraz」、「Bleed」にバラード「Be Nothing」、ロマンチックなラヴ・ソング「Blue Monday」、繊細な歌声も新鮮で抒情的な「Tokyo」、「Nokoribi」とハリウッド映画の劇中音楽にも似合うスケール感のあるロックを響かせる。今のNewspeakを味わい尽くせる、セルフタイトルに相応しい1枚。

Turn

Newspeak

Turn

約2年ぶりのフル・アルバム。リズミカルなストリングスが眩い光へと導く「Blinding Lights」をはじめ、管楽器アレンジを取り入れた「Generation of Superstitions」、牧歌的なフルートと歪んだシンベが怪しげに絡み合う「Hear It Out」など、00年代以降の洋楽ロックのロマンチックな匂いを継承しつつ、決して枠にとらわれない自由なアプローチがいっそう研ぎ澄まされた全13曲が並ぶ。"朝霞"を意味する「Morning Haze」から開放感に満ちた「Great Pretenders」に繋ぐ、インスト曲を効果的に挟んだ曲順も美しい。ホーリーなラスト・ソング「Parachute Flare」に辿り着いたとき、この困難な時代に捧げる明日への祈りのような想いを感じずにはいられなかった。

No Man's Empire

Newspeak

No Man's Empire

出音一発、ビッグなスタジアムでのライヴを想起させる1曲目「Feel Alive」、Tony Hofferがミックスを手掛け、強靭でダンサブルなグルーヴの魅力がさらに膨れ上がった「Wide Bright Eyes」。生ベースをあえて降ろし、Daniel J Schlettがミックスを担当、そのエレクトロニックな側面をさらにブラッシュアップした「Stay Young」。チルアウトな「What's Left In Your Mind」、ユーモアたっぷりのディスコ「Shanghai Disco」、ラストを締める壮大な「See You Again」など、バラエティ豊富な曲群に溢れた1枚。まさにタイトル通り、聴く者の感性の扉を開き、何者にも縛られない帝国へと導いてくれることだろう。

Out Of The Shrinking Habitat

Newspeak

Out Of The Shrinking Habitat

2017年春に結成以降、わずか1年半の間に、"SUMMER SONIC"への2年連続出演を始め、多くのフェスや大小様々なイベントを沸かせ、多くのメディアにも登場するようになった勢いの要因がよくわかる1枚。インディー・ロックの系譜に対するリスペクトが下敷きにありつつ、その隆盛期に固執することも、例えば演奏の手数を極力減らすような現代のトレンドにとらわれることもない。何を模するでもなく、まずは"今"の自分たちが出したい音を、素直に思いっきりかき鳴らすことで描かれる"今"。本誌インタビューでの話の流れがあってのことではあるが、自らの音楽を"踊りエモ泣きロック"と形容したそのサウンドが、新時代を作りあげる日も遠くはないかもしれない。

July

Newspeak

July

ex-go!go!vanillasのRyoya(Gt)、イギリスのリヴァプールより帰国したRei(exJohnDoe Tokyo/Vo/Key)らによる4ピース・バンド Newspeak。彼らの2ndEPは、邦楽の枠を超え洗練された音で創り上げられた作品となった。まず1曲目の「July」の音の広がりにぐっと引き込まれ、2曲目の「Media」では思わず身体が揺れるようなダンス・ミュージックを展開。そして最後の「Watch Me Blaze」は後半に歪んだギター・ソロが入り、エモーショナルな仕上がりに。3曲とも色は違うが、共通するのは"異国感"。いつもと同じ部屋で聴いているのに、知らない場所にいるような気分になり、彼らが奏でる音にすっかり呑み込まれてしまうのだ。ジャンルにとらわれない、新進気鋭のバンドに出会ってしまった。

The Optimist

NEW YOUNG PONY CLUB

The Optimist

ディスコ・パンク、ニュー・レイヴというムーヴメントの渦中に登場したNEW YOUNG PONY CLUB。きらびやかなディスコ・パンクからは距離を置き、今作ではダークなエレクトロ・ニューウェーヴへと向かっている。自主レーベルからのリリースということからも、一過性のムーヴメントとして消費されて終ることを避けようとするバンドの姿勢が明確になっている。前回の焼き増しにならないことを前提に制作されたこの作品で、彼らは確実な進歩を遂げている。THE HORRORSが「Sea Within A Sea」でみせた深化を思い起こさせるサイケデリック・グルーヴを放つ「The Potimist」は出色の出来。エモーショナルで抑揚の効いたこの作品で、彼等は前作とは別種の生々しいバンド・グルーヴを獲得した。

リデルの詩

The next! Liddell 1974

リデルの詩

下北沢を中心に勢力的なライヴ活動を展開する話題の4ピース・ガレージ・ロック・バンドの2ndフル・アルバム。数多くの良質なアーティストを輩出してきた名門primitiveからリリースされる今作には、ユーモア溢れる詩の世界観と切れ味鋭いギター・サウンドで疾走する本格派ロック・ナンバーが一発録りかのような熱量で収められている。それはリード曲である「しゃぼん玉」の性急な4つ打ちのリズムに絡むキャッチーなメロディに凝縮されていると言っても過言ではないはず。続く「ひとりぼっちのホリデー」「恋の業火」と1曲ごとに別の個性を放つ楽曲を聴き進めていくにつれて、その毒をも含んだ主観的な内容の歌詞にニヤニヤしながらも自然とリデルの虜になっていくことだろう。

Extra Wow

NICE NICE

Extra Wow

ポートランド出身のJason BuehlerとMark Shiraziの2人によるエクスペリメンタル・ロック・デュオ。現在20周年を迎え、ノリにノっているWARP RECORDSからのデビューということで目下の注目を浴びていますが、もちろん彼らも間違いありません!BATTLESやGANG GANG DANCE やボアダムスなどがよく引き合いに出されて語られており、実際その通りなんだけど、それらのバンドにはない新鮮な高揚感を感じます。こりゃ才能あるわ。こういう音楽を聴いていると、まる一日、ずっとずっと緩くまぐわっているような、終わりのない快感みたいなものを感じます。因みに、この複雑な音をライヴでどう再現するのだろう?と、調べたところ、JasonがGt、Vo、Keyを兼任、MarkがDr、+同期という編成のよう。来日が楽しみ。

Here And Now

NICKELBACK

Here And Now

NICKELBACK約3年振りとなる7thアルバム。オリコン週間洋楽アルバム・チャートでは初登場1位、総合チャートでも8位を獲得。この数字は日本のリスナーが彼らを待ち望んでいた証と言えるだろう。聴いてすぐに彼らの音だと分かるその強烈な個性は勿論今作も顕在。色気と男気が迸るChad Kroegerのヴォーカルは、聴き手を真正面から食らうような勢いを持つ。ダンサブルなハード・ロックは比較的ミドル・テンポで、スピードという武器に頼らなくても鋭さを生むことが出来る彼らならではのアプローチだ。どこまでも強く揺ぎ無い自信に漲った音の応酬に、自然と背筋が伸びる。ポジティヴなパワーとスケール感に溢れた快作だ。日本盤には熱狂をそのままコンパイルしたSUMMER SONIC 2010のライヴ音源3曲を収録。

nicoten

nicoten

nicoten

メンバー全員が曲を書けるという圧倒的な長所があるにもかかわらず、例えば山口隆(サンボマスター)が楽曲提供していたり、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)と共作した曲があったり、そうやって自分たちのまだ見ぬ可能性を探ってきた3人。そしてこのたびリリースとなる2ndフル・アルバムは、バンドにとって初のセルフ・プロデュース作品。肩の力が抜けた素の温度感によって、"聴き手のすぐそばにピタッと寄り添う"、"そうやって幸せを分かち合っていく"というこのバンドの魅力がいかんなく発揮されている。あらゆる角度から自分たちらしさを俯瞰してきた経験があるからこそ、nicotenによるnicoten論は純度も濃度も限りなく高い。

アルドレア e.p.

nicoten

アルドレア e.p.

ポップでキャッチー、カラフルなサウンドで人気を集める1990年生まれの3ピース・バンド、nicotenのメジャー・デビュー盤は、新曲に加え過去曲のリメイク&新録を収録した全5曲のEP。プロデューサーにはCHEMISTRYやJUJUなどを手掛けていることでも知られる川口大輔を起用し、彼らの持つポップ要素を更に高めている。インディーズ時代の代表曲のひとつである「アルドレア」を現在形にアップデートしたTrack.1、クラップなどが入るノリの良いうきうきのサマー・チューンのTrack.2、シニカルな歌詞と四つ打ちビートのコントラストが心地よいTrack.3など、インディーズ・バンド・リスナーだけでなくJ-POPリスナーの心もくすぐること間違いないだろう。

QUIZMASTER

NICO Touches the Walls

QUIZMASTER

[DISC 1]
作品全体のテーマに掲げた、人生の謎を追求したパーソナルな歌詞と歌としての魅力をたっぷりと味わえる全10曲。そのぶん、たしかにじっくりと聴かせる曲が多いものの、『TWISTER -EP-』、『OYSTER -EP-』の2枚を経て、ルーツに根ざしながら最新トレンドも見据えたアレンジ、アンサンブルはさらに自由になっているから、ブルージーでソウルフルなものから、ダンサブルでサイケデリックなものまで、バンド・サウンドという意味でも物足りなさはこれっぽっちもない。歌を際立たせるため音数を削ぎ落としたというバンド・サウンドからは、演奏している4人の姿が浮かび上がるようだ。しかも、10曲すべてが書き下ろしの新曲。まさにNICO Touches the Wallsの神髄が感じられる。

[DISC 2 (Bonus Disc)]
"NICO盤"の全10曲をアコースティックにアレンジした"ACO盤"。これまで彼らがリリースしてきたその他の"ACO盤"同様、アコースティック編成で焼き直した曲はひとつもない。むしろ遊び心、バンド・サウンドにとらわれない自由度という意味では、"ACO盤"に軍配が上がるか。UKロックっぽいダンス・ロックをアイリッシュ・フォーキーにアレンジした「MIDNIGHT BLACK HOLE?」、アーバンなバラードがボサノヴァに変わった「別腹?」。その2曲を例に挙げるだけでも"ACO盤"の面白さは伝わるはず。NICO Touches the Wallsのルーツ・ミュージックに対する愛着や造詣の深さを知ることができるところも、"ACO盤"の聴きどころだ。

TWISTER -EP-

NICO Touches the Walls

TWISTER -EP-

[DISC1]
メジャー10周年EPの第2弾。楽曲の幅広さが聴きどころだった前作『OYSTER -EP-』同様、今回も曲ごとに趣向を凝らした全5曲が収録されている。が、ビッグ・ビート的な音像で現在のヒップホップ/R&Bを解釈したという「VIBRIO VULNIFICUS」、中盤スロー・ブギになる「SHOW」、パンク・ディスコな「FRITTER」など、全体の印象はファンク/R&B/ブルースのエッセンスを随所に感じさせながらバンドのグルーヴをガツンとアピールするロック色濃いものに。その中で異色と言えるのが歌謡GSサーフ・ロックなんて言いたい「来世で逢いましょう」。彼らの代表曲「N極とN極」の続編だという。そして、今回のカレキーズはラテンで迫る。

[DISC2(bonus disc)]
DISC1の全5曲のアコースティック・バージョンを収録したボーナス・ディスク。前作同様、単に楽器をアコースティックに持ち替えましたなんて安易なものになっていないところが、"音楽なんだから楽しんだ者勝ち"を掲げる彼らならでは。DISC1のラスト・ナンバーからのラテン・ファンクな「VIBRIO VULNIFICUS」に思わずニヤリ。太いグルーヴを際立たせた「SHOW」、パンク・ディスコが泥臭いブルース・セッションに変わった「FRITTER」。そして、フォーク・ロックにアレンジした「来世で逢いましょう」は2本のアコースティック・ギターが絡み合うソロも聴きどころだ。カレキーズによる「Kareki is burning!!」の、アッと驚くアレンジ。最後まで飽きさせない!

OYSTER -EP-

NICO Touches the Walls

OYSTER -EP-

[DISC1]
新しいグルーヴを提示した20thシングル『マシ・マシ』からおよそ1年、NICOが待望のニューEPをリリース。今作には、持ち前の遊び心と音楽愛を思う存分に追求した大充実の5曲を収録。バダスなロックンロールからアダルト・オリエンテッドなバラードまで、曲の振り幅からは、この1年でバンドがさらに多くの引き出しを開けながら意欲的且つ実験的に曲作りに取り組んできたことが窺える。ピアノが転がるように鳴るファンキーなリード曲の「Funny Side Up!」は「マシ・マシ」同様、彼らのライヴの景色を変える新たな代表曲になること間違いなし。古村大介(Gt)、坂倉心悟(Ba)、対馬祥太郎(Dr)の3人が作ったインタールード的な「カレキーズのテーマ」も聴き逃せない。

[DISC2(bonus disc)]
DISC1に収録されている5曲すべてのアコースティック・バージョンを収録した、オマケという位置づけのボーナス・ディスク。しかし、ジプシー・ジャズ風の「Funny SideUp!」を始め、それぞれに原曲とは別曲と言ってもいいほど趣向を凝らしたアレンジは、オマケというにはあまりにも聴き応えがありすぎる力作となっており、そんなところからも彼ららしい遊び心と音楽愛を垣間見ることができる。フォーク・ロック調の「Ginger lily」にメンバー全員で加えたハーモニーも見事だ。全編通して、力を入れたコーラス・ワークも今回のEPの大きな聴きどころ。コーラスはこの1年でもっとも変化し成長した部分だと彼らは言っていたが、今後、大きな武器になることは間違いないだろう。

マシ・マシ

NICO Touches the Walls

マシ・マシ

メンバー全員が革ジャンでキメた最新のアーティスト写真から20thシングルはロックンロールなのか!? と思いきや、TVアニメ"ハイキュー!! 烏野高校 VS 白鳥沢学園高校"のエンディング・テーマに使われているライヴなら合唱必至の表題曲を始め、うねるようなグルーヴが感じられる1枚に。表題曲のみならず、ドラム・ソロからのインプロがあまりにも熱いブルージーなロック・ナンバーの「MOROHA IROHA」、UAの代表曲をとことんファンキーにアレンジした「太陽手に月は心の両手に」のカバー、ともに今一度ロック・バンドの原点に戻ったうえで、たくましい姿をアピール。THE DOOBIE BROTHERSやRED HOT CHILI PEPPERSを連想させるところも!?

ストラト

NICO Touches the Walls

ストラト

新たなスタートと位置づける6thアルバム『勇気も愛もないなんて』からわずか2ヶ月でリリースするシングル。映画"ヒーローマニア-生活-"の主題歌に使われた表題曲は、キラキラと鳴るアルペジオとファンファーレのように鳴るサビのホーンが印象的なNICO流のネオアコ・ナンバー。「まっすぐなうた」「渦と渦」のような激しさこそないものの、懐かしさと切なさが入り混じるメロディからふつふつと熱が沸き上がるようなところもまた彼らの持ち味。沁みる。ファンキーな歌謡ロックの「BAD ROBOT」、美空ひばりの曲を大胆にアレンジした「お嬢さんとこいさん」。メンバーいわく、遊び心しかないというカップリングの2曲も聴きどころだ。特にメンバー全員で歌い、セリフもある後者はファンなら聴き逃せない出色の出来。

勇気も愛もないなんて

NICO Touches the Walls

勇気も愛もないなんて

アコースティック・アルバム『Howdy!! We are ACO Touches the Walls』を挟んで、前作『Shout to the Walls!』から3年振りのリリースとなる6作目のアルバム。前作以降にリリースしてきた6枚のシングルの表題曲がすべて入っているからって、わかったつもりで聴いたら、幾重にも重ねたコーラスにシンセ・サウンドを加えたオープニングの「フィロローグ」から面食らうことは必至。毎回、勇気と愛を振り絞りながら前に進んできたこの3年間の――順風満帆に見えて、決してなだらかではなかった道のりを、「天地ガエシ」を始め、シングルの表題曲で振り返りながら、前述の「フィロローグ」に加え、ポップなロックンロール、歌謡ブギウギ、アコースティック・バラード、と思っていた以上に多彩な新曲からさまざまな可能性が感じられるところがいい。

渦と渦

NICO Touches the Walls

渦と渦

7月19日の東京国際フォーラム ホールA公演でライヴ初披露した新曲「渦と渦」をシングルとしてリリース。現在、放映中のTVアニメ"アルスラーン戦記"のオープニング・テーマだ。彼ららしいと迷わずに言えるストレートな ギター・ロック・サウンドが「まっすぐなうた」からさらにバンドが加速していることを印象づける。輝きの中に若干の不穏な空気を漂わせる演奏はもちろん、持ち前の反骨精神や不屈の闘志が表れた歌詞も彼ららしい。カップリングは光村龍哉(Vo/Gt)がついに30歳になる思いの丈をぶつけた「僕は30になるけれど」。スライド・ギターが唸るファンキーなロックンロール! そして、恒例のカバーでは、矢野顕子の「ラーメンたべたい」を大胆にアレンジ!! 彼らの遊び心が窺える。

まっすぐなうた

NICO Touches the Walls

まっすぐなうた

昨年(2014年)、彼らが掲げた"リベンジ"というテーマはその後、"挑戦""攻めのモード"に変化。そして、ACO Touches the Wallsという大きな成果を生んだわけだけれど、『TOKYO Dreamer』から約10ヶ月ぶりとなるこのシングルでも"挑戦""攻めのモード"はまだ続いているようだ。「まっすぐなうた」というタイトル通りアップテンポの8ビートで突き進むロック・ナンバー。そこに込めたメッセージと抜き身のバンドの姿のかっこよさを、僕らリスナーもまっすぐに受け止めたい。歌謡サーフ・ロックなんて言ってみたい「いいこになっちゃいけないの」と名曲を大胆にアレンジした吉田美奈子の「夢で逢えたら」のカバー。バンドの遊び心をアピールするカップリングの2曲も聴き応えあり。

Howdy!! We are ACO Touches the Walls

NICO Touches the Walls

Howdy!! We are ACO Touches the Walls

大成功を収めた先日の日本武道館公演でもコーナーを作っていたように、これまで意欲的に取り組んできたアコースティック・アレンジがひとつ実を結んだことを思わせるバンド初のアコースティック・アルバム。もちろん、アンプラグドで演奏しましたなんて単純な作品ではなく、それぞれに趣向を凝らしたリアレンジが加えられた代表曲の数々を楽しめるものになっている。カントリー調の「天地ガエシ」、R&B調の「夢1号」など、あえて自分たちの曲を、ある意味トラッドなスタイルに当てはめた曲からはルーツ・ミュージックに対する興味とともに定番のアレンジだからこそ際立つ曲本来の魅力が伝わってきて面白い。

HUMANIA

NICO Touches the Walls

HUMANIA

NICO Touches the Wallsのハードでポップなギター・ロックは、常にすさまじい熱がたぎる。最新作『HUMANIA』は、その熱と90年代の邦楽を熟成させたサウンドへと変化した。新たな音楽シーンが次々と開拓されていく中、彼らは自らの根底に息づく黄金期を新たな解釈で形にしたのだ。NICO特有の若く泥臭い衝動は練り上げられ、自らの内面をストレートな言葉で掘り下げていく。サザンオールスターズらを敬愛する光村のヴォーカルも、彼らを自分と同化させ体内で組み替えることで、自由奔放さを獲得。明けすけになった現実の4人は、時に絶望し過去に恋焦がれる弱さを見せる。しかし、現実を踏みしめる力強さがあってこそ、脆さを見せることができるのだ。昨年の武道館公演を越えて、解放できた等身大の自分。新たな飛躍に向けての大いなる一歩だ。

Night Flowers

NIGHT FLOWERS

Night Flowers

ロンドン出身の男女混合5人組バンド、NIGHT FLOWERS。彼らの日本デビュー作となる今作は、柔らかく霞がかったギター・サウンドと、気だるくメランコリックに、そして甘く囁きかけるヴォーカルが印象的な「Bound」で幕を開ける。ステレオから音が零れた瞬間、もう出会うことがないと思っていた昔の恋人を偶然見かけてしまったかのような胸のざわつきを覚えた。なぜなら、SLOWDIVEやMY BLOODY VALENTINEといった偉大なる先人たちを思い起こさせるロマンティック且つメランコリー満載のド直球なシューゲイズ・サウンドが、限りなくピュアな衝動を以って鳴らされているから。永遠に続くことのないこの瞬間を思うからこその甘酸っぱいイノセントな輝きと、蒼き憂いの両方がここにはあるように思う。

Love Gloom

NIGHT RIOTS

Love Gloom

カリフォルニア・サンルイスオビスポ出身のオルタナティヴ・ロック・バンドがSumerian Recordsからリリースする1stフル・アルバム。Track.3「Fangs」、Track.4「Contagious」など、アルバム全体を覆っているのは憂いのある音像。出身地カリフォルニアから連想する明るさはなく、かと言って過度に陰鬱でもない。穏やかな前半部分、スケールの大きなメロディを聴かせるサビの展開など、思わず引き合いに出したくなるのはU2。それはBonoを思わせるTravis Hawleyのヴォーカルによるところも大きい。要所に数十秒のインタールードを挿入して場面転換していくところは決して新しい手法ではないかもしれないが、次にどんな曲がくるのかグッと耳を引き寄せられる。

アリバイ

NIHA-C

アリバイ

ヒップホップ・クルー 電波少女の代表曲に数多くフィーチャリング・ラッパーとして参加しているNIHA-C(読み:ニハシ)の2ndアルバム。"俺は抜ける くだらない"と昨今のラップ・バトル、HIPHOPシーンに強烈なdisを突きつける1曲目「It's GoingDown」にいきなり気圧されるが、続く「リーダー」では大勢でシンガロングできそうなメロディを歌い上げるあたり、既存のラップ/HIPHOPアーティストと一線を画している。電波少女のハシシ(MC)をフィーチャリングした「モナリザ feat.ハシシ from 電波少女」や「夜光虫」、「Goodbye」などは、レゲエ寄りで爽やかなJ-POPっぽさがある。ヴォーカルにオートチューンがかけられた曲が多いことも、そうした印象に繋がっているのかもしれない。

Equal

NIKIIE

Equal

デビュー・シングル「春夏秋冬」で2010年12月度FMパワープレイを42局獲得し、歴代女性アーティストとしての史上最多獲得記録を更新したNIKIIEの2ndフル・アルバム。伸びやかで透明感のある声自体の魅力は勿論のこと、前作と比べて遥かに表現力の増した彼女の声は変幻自在だ。時に力強く、時に優しく軽やかに、少女のように歌っていたか思えば、一転して、どきっとするほど艶めかしくしっとりと歌い上げ、大人の女性の顔を覗かせる。そして、同じ単語の繰り返しをところどころに散りばめた独特なリズムの詞の世界。まるで呪文のように頭の中を反芻するフレーズは中毒必至である。特に彼女の歌詞に共感するであろう、同世代の女性にお勧めしたい今作。あなたもNIKIIE中毒になりませんか。

hachimitsu e.p

NIKIIE

hachimitsu e.p

NIKIIE(ニキー)、本年のリリース第1弾が、春風を一杯に孕んで到着。2010年のデビュー当初から、流麗な英語を交えて真っ直ぐに放たれる歌声には人の耳を力強く奪い去る瞬発力があったが、今作ではより透明感が増し、喜怒哀楽に加えて更に表情が豊かだ。鍵盤の上で跳ねるように“I wanna love you ねえ、歌ってよ”と歌いかける「カナリア」で駆け出し、パーカッションとピアノが軸となった「ito」では少ない音の中で感情を抑えるように淡々と言葉を浮かべていく。“good night my sweet home.”と、ピアノ弾き語りに大事な存在への“お休み”を託して幕を閉じるカラフルな6曲は、ウキウキと少しの寂しさが混じる春の1日にピッタリ。耳を奪われる代わり、扉を開けて走り出す元気をもらえる1枚だ。

NILE LONG

NILE LONG

NILE LONG

日本のインディー・シーンで異彩を放ち、ロック・リスナーとダンス・ミュージックのリスナー、洋楽と邦楽の垣根を飛び越えて支持されていた、The Brixton Academyの突然の解散から2 ヶ月。TBA のメンバーにVJ を加えたNILE LONG の始動がアナウンスされた。早速届いた音はどうだろう、TBAの音を更に洗練させた、説明されなければ日本人のものだと気づかないくらいにボーダーレスかつアーバンなトラック。速めのBPMで4つ打ち一辺倒なダンス・ロック・サウンドの流行に一石を投じる素晴らしい作品だ。惜しくも解散してしまったDOPING PANDA のYUTAKA FURUKAWA、盟友ORLAND、そしてLOVE ACTION という団体でともに活動するCanopies and DrapesによるRemixを収録。踊るってこういうことだよねって再確認させてくれる良盤。

MELLOW KONG

nim

MELLOW KONG

2006年の結成以来、90'sエモを継承しながら、自らの音楽性に磨きをかけてきた京都のインディー・ロック4人組、nim。紅一点メンバーの加入を含む2015年のメンバー・チェンジ以降、新たなサウンドを追求してきた活動の集大成と言える2ndフル・アルバムだ。ちなみにフル・アルバムのリリースは、2015年の『Stay Hungry, Stay Foolish』以来。90'sエモの叙情と荘厳さを身上としながら、ポップなアプローチにも挑戦。その試みが顕著に表われた「Piece of heaven」からは、さらなる新境地を切り拓いていこうというバンドの意欲が窺えるが、その意欲は「月がみてる」の童謡を思わせるノスタルジックなメロディにも感じられる。女性ヴォーカルを含む3声のハーモニーも大きな聴きどころ。他のバンドにはない彼らの強烈な個性になっている。

Candy For The Clowns

NINE BLACK ALPS

Candy For The Clowns

UKロックの異端児と呼ばれたデビューから早11年、新ベーシストのKarl Astburyと共にゼロから作り上げたこの5thアルバムは、前作『Sirens』に続いてセルフ・プロデュースの力作となった。"人形"や"道化師"をモチーフにしたアートワークおよび歌詞も興味深いが、DINOSAUR JR.やNIRVANA、そしてHOLEといった米オルタナ・バンドからの影響が、かつてなくダイレクトに反映されたサウンドにも注目。NBAの初期衝動を思わせるファズ・ギターと、フロントマンSam Forrestの壮絶なシャウトの応酬には否が応でも血がたぎる。本国では相変わらずシーンから孤立無援の状態だが、近年のグランジ再評価と上手くハマれば再ブレイクも期待できるのでは?

Bad Witch

NINE INCH NAILS

Bad Witch

3部作の第1弾EP『Not The Actual Events』ではネガティヴな感情との格闘を、第2弾EP『Add Violence』ではノイジーでヴァイオレントな作風に時代を超えたある種のキャッチーさ、ロックのヤバい匂いを表出させてきたTrent Reznor(Vo/Electronics/Gt)。この最終作が今作だ。怜悧でノイジーでヘヴィという初期NINがもたらしたカタルシスに通じる「Shit Mirror」、人力ドラムンベースとエディットで挟まれるシャウトが不穏そのものな「Ahead Of Ourselves」、サックスとシロフォンが断片的に鳴っているのが不気味な「God Break Down The Door」、インダストリアルとSF的なエレメントが融合した「Over And Out」。怒りと虚無感から90年代的なヘヴィさを除いたような音像が妙にリアルだ。

Snares Like A Haircu

NO AGE

Snares Like A Haircu

ロサンゼルスのノイズ・ロック・デュオ NO AGEの、2013年『An Object』以来約4年半ぶりとなる5枚目のスタジオ・アルバム。序盤の「Cruise Control」、「Stuck In The Changer」、「Drippy」といった楽曲は豪快に突っ走るパワフルなもの。このあたりが日本の音楽にはない"オルタナティヴ・ロックなんだけど爽快感があり、だけどなんとなく陰気"という、USインディー・ロックの特徴を表している。タイトル曲「Snares Like A Haircut」や、「Third Grade Rave」といったインストもいい。後半になるにつれてどんどん脳を揺らすようなサイケでノイジーな曲が増え、くぐもった音像がリスナーをさらにサウンドの沼に引きずり込んでいく。個性的なジャケットのアートワークも最高にカッコいい。

Everything In Between

NO AGE

Everything In Between

前作『Nouns』はなんとあのグラミー賞にノミネートされたNO AGE("Best Recording Package"。アートワーク系の賞ですね)。その『Nouns』と比べると疾走系ナンバーが増加しているせいか、攻撃性はさらに際立った感あり!ときに無慈悲にループ、かと思えば爆裂するリズム、暴力的に響くファズギター......。ノイジーな音色には鼓膜をかきむしられる感覚さえ覚えるのと同時に、雄大な奥行きで広がる音色はその痛みを癒してくれるかのよう。激しいけれど野蛮じゃない、知性や美をほのかに感じさせる世界観が素晴らしい。ちなみに彼ら、9月は本国でPAVEMENTやSONIC YOUTHらと対バンしているよう(観たい!そのメンツで来日希望!)。その両者を始めとする先人が切り拓いたオルタナティブ精神を、確実に受け継いでいるバンドだと思う。

Sweet Home

No Buses

Sweet Home

"フジロック"への出演も果たし注目を集めるNo Busesの3rdアルバムが到着した。かわいいテディベアが不気味な雰囲気を纏ったジャケットと、"Sweet Home"というタイトルが不穏に響き合う本作。UKロックの影響を色濃く反映する彼らの楽曲は、前作に比べダークでよりダウナーな印象に。デジタル・サウンドも取り入れ深みを増した音使い、起伏に富んだメロディにエモーショナルなヴォーカルと、その進化は一目瞭然だ。さらにラッパー BIMを迎えた「Daydream Believer」は、タイトなビートとスリリングなラップの掛け合いがヒリつく緊張感を生み、本作のいいアクセントになっている。表現を深化させ独自のサウンドを追求したことで、よりロック・バンドとしてタフになったNo Busesを堪能してほしい。