Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

DISC REVIEW

G

ひとりぼっちになる日のために

GOING UNDER GROUND

ひとりぼっちになる日のために

約1年3カ月ぶり、オリジナル・アルバムとしては記念すべき通算10枚目となる今作は、冒頭の2曲にクリープハイプなども手掛ける元SMILEの浅田信一をプロデューサーに迎えて制作。「Turquoise blue」でのダブステップ風の揺らぎからモータウン・サウンド調に変化するアレンジなどで楽曲にユニークな化学反応を起こしている。「ならば青春の光」、「カモメトゥモロー」では末光篤と共演し王道のGOING節を聴かせているのも最高だが、EDM全開の「僕たちのフィロソフィー」、アニソンやボカロ曲にもできそうな「哀愁のボーイ」など、近年の音楽シーンにもきっちりアプローチしているところが心憎い。ノスタルジックな名曲「my small town」を聴きながらアルバム・タイトル、ジャケットを見ているとグッとくる名盤。

Roots & Routes

GOING UNDER GROUND

Roots & Routes

80'Sシンセ・ロックやシティ・ポップスの淡い郷愁感をまといつつも、タイトなバンド・サウンドですっきりと聴かせるアルバム。前作『稲川くん』は、メンバー脱退を経て4人で新たに走り出した作品であり、衝動的で、ふんだんに入ったシンガロングで士気を上げていく、もう一度音楽の楽しさやパワーを体で感じて、発する感覚があった。今作は、4人が今どんなふうに向き合って、どんなバンド・ライフを送っているかをさりげなく伝えている。久しぶりに会った友人の近況を聴くようだと言ったらいいだろうか。意外な面を見せれくれたり、お互い大人になったなと感心したり、でもやっぱり自分の知ってるあいつのままだなと思わず顔が綻んだり。辿った道は違うけれど、親しみ深い共有感がある。リスナーとさりげなく並走する音楽が詰まったアルバムだ。

愛なんて

GOING UNDER GROUND

愛なんて

今年メジャー・デビュー10周年を迎えたGOING UNDER GROUNDのニュー・シングル。ピアノの綺麗なメロディが印象的な表題曲「愛なんて」は、優しく力強いメロディと歌声に、少し悲しくも前向きな歌詞がとても心に響くバラード。11月5日公開の映画『ハラがコレなんで』の書き下ろし主題歌ということで、映画を観てからこのシングルを聴くとより楽曲が深く感じられ、また違った印象を持つかもしれない。4曲目のエレクトリック・バージョンでは周りの音が削ぎ落とされ、より歌詞がダイレクトに伝わってくるので、ぜひこちらとも聴き比べて欲しい。軽快なポップ・ロック・ソング「Madonna」や、過去曲「東京」の再録バージョン「東京2011」も収録され、全編を通してとても聴きごたえのある1枚になっている。

稲川くん

GOING UNDER GROUND

稲川くん

『稲川くん』と銘打たれた8thアルバム。いきなりのタイトルにつかみは完璧だ。実は今年で結成20年目を迎えるGOING UNDER GROUND。大御所と断言してしまえるほどのキャリアを積んでいるにも関わらず、松本素生(Vo&Gt)の描く世界はいつだって瑞々しく眩い希望に溢れている。昨年、育児に専念するためキーボードの伊藤洋一が脱退し、続いてレーベルの移籍を行った4人。本作からは、自身の活動環境の変動に左右されず、これまで以上に真っすぐに、芯が強く太くなっていることが分かるだろう。聴く者を後押してくれる爽やかなメロディと、切ない言葉の核にある力強さ。こちらがちょっと気恥ずかしくなってしまうような松本の言葉が、晴れ渡った青空へ響き渡る情景が目に浮かぶ。彼らの描く世界は、いつだって明るい未来へと繋がっているのだ。

A Good Time Was Has By All

THE GOLDEN BUBBLES

A Good Time Was Has By All

生涯で大好きな曲を5曲挙げろと言われたら絶対は入るのがBUGGLESの「ラジオスターの悲劇」である。THE GOLDEN BUBBLESというチャーミングなバンド名の彼らはこの曲みたいな曲を作りたいと遊んでいたら(遊んでいたわけじゃないと思うけど)、今のサウンドが生まれたとの事。このエピソードは個人的に非常に好感が持てる。BUGGLESのようなキラキラとした世界観を持ちつつも、BEN FOLDSを彷彿とさせるピアノ・バラッドまでこなす彼らには正直非の打ち所がない。MIKA好きをもすぐに虜にするであろう抜群のピアノ・ポップとエレ・ポップと遊び心が詰まった力作。大の親日家という事だし、早く来日してほしい所。

Golden Grrrls

GOLDEN GRRRLS

Golden Grrrls

7インチでリリースしていたシングルが耳の早いインディー・ミュージック好きには話題になっていたグラスゴーのギター・ポップ・トリオ・バンド。甘酸っぱさ全開のメロディにちょっとローファイな男女ヴォーカルの掛け合いが最高に気持ちいい良盤!Track.1の「New Pop」は“まんまやんけ!”と思わずツッコミを入れてしまいたくなるくらいのスィートネスとポップネスが凝縮した疾走感のある青春ポップ・チューン。個人的にはCLAP YOUR HANDS SAY YEAHの1stを聴いたときか、それ以上のインディー・ポップのヒット。全曲シングル・カットできるくらいのキャッチーさがつまった、WEEZERのブルー・アルバムを彷彿とさせるデビュー盤。これは洋楽リスナーならずとも聴いていただきたい。

True Romance

GOLDEN SILVERS

True Romance

ロンドンから登場したギターレス3ピースバンド、GOLDEN SILVERSのデビューアルバム。60、70年代のSOUL、FUNKの香りが漂うエヴァーグリーンな楽曲と、抜群のコーラスワーク。と言っても、何一つ古臭さくない、まさに、2009年に生まれた新たなブルーアイドソウル。先行シングル「True No.9 Blues(True Romance)」は、まるでディスコクラシックの如く、妖艶なGROOVEを持っているし、そうかと思えば、「Arrows Of Eros」のキッチュな遊び心、そして「Magic Touch」のピュアなポップネスまで、その軽やかで洗練されたセンスには、ただただ脱帽。しかも、洗練が全く嫌味ではなく、あくまで自然体なところは、都会育ちならでは、なのかな。夜遊び上手な伊達男達のデビューアルバム。

Lucky Shiner

GOLD PANDA

Lucky Shiner

4月に過去の音源を集めた日本オリジナル編集のアルバムをリリースし、3月には来日を果たしSIMIAN MOBILE DISCOのオープニング・アクトを務め、本誌のパーティにも出演してくれた新世代のトラック・メイカーGOLD PANDAの1stアルバム。全て新曲で構成された本作はオリエンタルなボイス・ループが印象的なリード・トラック「You」で始まり、ダブ・ステップ、ミニマル・テクノなどあらゆる音楽の要素を詰め込みそして削ぎ落としたとても繊細でメランコリックなアルバムだ。ダンス・フロアに映える曲ももちろんあるが、iPod に詰め込んで夜の街を歩きながら聴くことがこのアルバムには似合う気がする。感動的で美しい都会のサウンドトラック。

Companion

GOLD PANDA

Companion

BBC SOUND OF 2010に選ばれるなど、様々なメディアからも新世代のトラック・メイカーとして注目を集めるGOLD PANDA のEPや配信音源をまとめた日本独自編集盤。HIP HOPをルーツに、サンプリングを駆使しながら織り成されるトラックは、エレクトロニカやミニマル・テクノ、ダブステップにジャングルなど様々なエッセンスを感じさせる。そこに、オリエンタルな要素も加味された独自のGOLD PANDAワールド。彼が都会の中で感じる孤独にインスパイアされたと語るその世界観は、実験的でありながらもポップ。日本フリークであり、インド人の祖母を持つ彼が生み出すサウンドは、あらゆる価値観と人種がクロスオーバーし、雑然とした今の世界を象徴していると言えるのかもしれない。

A Sufi & A Killer

GONJASUFI

A Sufi & A Killer

ダウンビート、ドローン、ダブ、サイケにブルース・ロック、フォークを大鍋で煮込んで辿り着いた、ざらついたモノクロームの世界。WARPからの新たな刺客は、摩訶不思議な2010年、宇宙の旅を奏でるGONJASUFI。THE CORALがWARPから出現していたら、きっとこんな感じか。奇妙で斬新。それでいて、ノスタルジックで温かい。彼のしわがれた歌声は、時に荒々しく、時に甘美だ。メキシコとエチオピアのハーフである男が誘う、あらゆる国籍、スタイル、価値観が交わるサウンド・ジャーニー。プロデューサー陣も、FLYNG LOTUS、GASLAMP KILLER、MAINFRAMEとL.Aが誇る才能が揃い踏み。2010年を代表する傑作の一つであることは、疑いの余地がない。

ニューフォークロア

GOOD BYE APRIL

ニューフォークロア

いきなりピアノの弾き語りにストリングスを加えただけの「水色の夏」で始まるから、4人編成のバンドなのにバンド・サウンドじゃないと驚かされたが、2011年結成の彼らが満を持して完成させたこの1stフル・アルバムは楽曲が求めるまま、バンド・サウンドにこだわらないアレンジに挑戦した作品なんだそうだ。その結果、バンドが掲げる"エヴァーグリーンなポップ・ソング"は80年代にまで遡って、洋楽と邦楽の影響や、様々な要素が入り混じるバラードからダンサブルなロック・ナンバーまで、多彩な全12曲に結実した。バンド・サウンドにこだわらないアレンジは逆にメンバーそれぞれの個性を際立たせる結果にもなった。伸びやかな倉品 翔の歌声やポップな楽曲を楽しみながら、楽曲を支えるバンドの演奏にも耳を傾けたい。

夢みるモンシロ

GOOD BYE APRIL

夢みるモンシロ

季節感溢れるグッド・メロディを奏でる4人組バンド、GOOD BYE APRIL初の全国流通盤。透明で温かくて、陽だまりのような声。3曲目の「さまよい森のリンゴ」を聴き終わった瞬間思わずため息が漏れた。ヴォーカル倉品の伸びやかで澄んだファルセットを聴いて、知らず知らずのうちに息を詰めていたようだ。そして、アルバムを締めくくるバラード「I ‘m for you」は、大切な人への愛を優しく感動的に歌いあげ、そのスケール感が素晴らしい。全ての楽曲が美しいヴォーカルと安定感のあるリズム隊と音色豊かなギターで彩られ、1つ1つの良い音が見事に調和し、水彩画のように四季の風景や空気を描き出す。“季節感”と“調和”。日本が誇れる良質のポップ・ソングがここにある。

ドッペルゲンガー

Goodbye holiday

ドッペルゲンガー

2ndフル・アルバム『A LA QUARTET』から6ヶ月というハイペースでリリースするミニ・アルバムは、アコースティック・ギターの弾き語りが"おぉっ"と思わせたあと、バンドが加わるブルージーなロック・ナンバー「No discount」でスタート。そこから、跳ねるリズムが印象的なオルタナ調のロック・ナンバー「共犯」に繋げると、中盤では彼らの王道とも言えるキラキラした印象のポップ・ロック・ナンバーを聴かせる。そして、畳み掛けるような疾走ロック・ナンバー「ゴンドラの夢」で再びテンポ・アップ。最後は力強い四つ打ちのキックがライヴハウスのフロアを跳ねさせるに違いない「Writing Life」でアンセミックに締めくくる。新境地と王道、どちらも楽しませる意欲作だ。

A LA QUARTET

Goodbye holiday

A LA QUARTET

メジャー2作目となるアルバムは、セルフ・プロデュース作。"A LA QUARTET"のタイトルが表わす、4人が腕によりをかけて作り上げた14曲が収録され、新鮮なタッチの曲から親しみのあるGoodbye holidayならではの曲など、多面的に見せる内容だ。心地よいループ感とアンサンブルの妙味がある「ハザマステップ」(Track.3)、60'sポップの甘美な懐かしさと80年代のシティ・ポップの風が混じり合った「海辺のイエスタデイ」(Track.7)、いつもエモーショナルな歌声を聴かせている児玉一真(Vo/Gt)によるラップが、意外にもハマっている「room」(Track.8)など。毎日のどこかの時間にフィットする曲、プレイボタンを押したくなる曲が詰まっている。視界が広がって、どんなシーンを切り取っても物語を描くことができる4人を伝えている。

KNOCK

Goodbye holiday

KNOCK

メジャーでの1stアルバム『with YOU』から1年経たずして完成したミニ・アルバム。「十ヶ条」という曲で幕を開けるのだが、これがBPM速めのアグレッシヴなロック・チューンで、続く「パラダイムシフター」もまた然り。グッド・メロディを丁寧に、あるいは爽やかに歌い紡いできたバンドに、まさに"パラダイム・シフト=価値観の変革"が起こっているようだ。とはいえ、これまでの流れを汲んだ美しいミディアム・テンポの曲も、牧歌的なあたたかさのあるポップスも健在で、より引き立ってもいる。いずれにしても、Goodbye holidayサウンドの可能性が広がっているのは間違いなく、全6曲、清々しい風が吹いている。多幸感溢れるタイトル曲も、この今のモードだからこそ歌えるポジティヴなメッセージ・ソングで、とても新鮮だ。

with YOU

Goodbye holiday

with YOU

シングル『革命アカツキ』で2015年にデビューし、同年の秋にはダブルA面のシングル『溢れるもの/リベレーター』をリリースし、ニューカマーながらも「溢れるもの」がTVドラマ"掟上今日子の備忘録"のオープニング・テーマに抜擢。やわらかで印象深いメロディとその歌がドラマにもマッチして、バンドにとって一歩踏み出せる曲になった。2作のシングルは共に、プロデューサーとタッグを組んだりアレンジャーを迎えたり、また自分たちで試行錯誤しながら作り上げたりと、起こることすべてスポンジのごとく吸収しながら同時にアウトプットもしていった。デビューからここまで、アグレッシヴな新陳代謝をあげた、その成果を詰め込んだのがこの1stアルバム。歌をド真ん中に置いた正統派のギター・ロックを響かせるアルバムだ。

溢れるもの/リベレーター

Goodbye holiday

溢れるもの/リベレーター

現在OA中のドラマ"掟上今日子の備忘録"のオープニング・テーマとして、あたたかで爽やかな風をドラマに送り込んでいる「溢れるもの」。この曲が主題歌へという背景は、一筋縄でなかったようだけれども、7月にデビューしたばかりの彼らのチャレンジへの前のめりな思いと、今だから伝えられる素直で初々しい思いが、屈託なく詰まっていると思う。いきものがかりやaikoなどを手掛ける島田昌典氏をアレンジャーに迎え、みずみずしいバンドのアンサンブルを、スケール感たっぷりで聴かせている。もう一方の「リベレーター」は、メロディアスなギター・フレーズとソリッドなドラミングが新たに道を切り開くように突き進み、児玉一真(Vo/Gt)のヴォーカルがじりじりとその温度を高めていく。短い曲にここからへのバンドの意志を込めた、宣誓のような曲だ。

革命アカツキ

Goodbye holiday

革命アカツキ

表題曲「革命アカツキ」は、寺岡呼人がプロデュース。若いバンドが持つ特有の勢いや、正統派の、ストレートなギター・ロックでありつつ彼らの爽やかなメロディを際立たせたシャープなサウンドで、メジャー・デビュー作に相応しい1曲になっている。疾走感のあるビートで、今いる場所と、ほんの少し先に見える景色も感じさせるような、ポジティヴィティが宿っている。タイトルはとても強いイメージがあるけれど、その歌には、ほんのりと切なさだったり、涙の跡が滲む。心に寄り添うような歌だ。カップリング曲、「サイダー」は、スピーディでアグレッシヴなビートと、小気味いいギターによるロックンロールで、「世界が終わる朝は」は、静かで優しいアコースティック曲。3曲3様でGoodbye holidayの魅力を伝えるデビュー・シングルとなった。

FLAG

Goodbye holiday

FLAG

キャッチーなメロディと澄んだヴォーカルで人気を博している広島発の4ピース・バンド、Goodbye holidayの3rdミニ・アルバム。今作には、aiko、いきものがかり、back number、秦基博などを手掛ける島田昌典を音楽プロデューサーに迎えた「スパイダー」や、疾走感のあるギター・ロック「さらば」、昭和の歌謡曲を思わせる「陽炎」、おもちゃ箱のようなキュートなナンバー「ポップコーン」など個性豊かな7曲を収録。特にタイトル・トラック「Flag」は、ハイセンス且つ安定感のあるバンド・サウンドに支えられた、児玉一真(Vo/Gt)の伸びやかで表情豊かなヴォーカルがなんとも耳心地いい。ロックに固執するでもなく、ポップに寄りすぎるわけでもない、均整のとれた1枚。

はじまりの唄

Goodbye holiday

はじまりの唄

2008年に広島県で結成。今年1月に初の全国流通盤『ソラリス』をリリースし、その名を日本中に広めつつある4人組ギター・ロック・バンド、Goodbye holidayのニュー・ミニ・アルバム。本作は、少年のひと夏の思い出を歌ったリード・トラックの「少年シンドローム」をはじめ、爽やかに疾走するロック・チューン「モノクロ」、ピアノやマークツリーなどの幻想的な音色が印象的な「茶色いうさぎ」など、"はじまり"をテーマにしたポップでキャッチーな7曲が収録されている。"はじまり"は、同時に何かの"終わり"でもある。そんな切なさも孕んだ楽曲たちは、これからの季節によく合うセンチメンタルな雰囲気も漂う個性のある曲ばかり。じっくりと聴いてほしい1枚だ。

P.S. モノローグ

GOOD ON THE REEL

P.S. モノローグ

"P.S."(=追伸)、"モノローグ"(=独白)というタイトルが付けられた本作は、まさに心の内が綴られた手紙のようにメッセージ性の強い作品となった。日々生まれる気づきや悩みを投影した歌詞は、同じ時代を生きるひとりの人間の言葉としてリアルさをもって心に迫ってくる。一方サウンド面では、ロックからエレクトロ、シティ・ポップまで曲ごとにがらりと表情を変え、宇佐美友啓(Ba)が初めて作曲を手掛けた「ファンファーレ」や、アレンジ/ピアノ/ギターで杉本雄治(WEAVER/Pf/Vo)が参加した「同じ空の下で」など、新たなエッセンスも加わり、さらなる振り幅の広さを見せる。ここまでキャリアを重ねてもなお貪欲に進化を続ける姿勢を崩さず、バンド史上最もバラエティ豊かでチャレンジングなアルバムを完成させた。

花歌標本

GOOD ON THE REEL

花歌標本

結成15周年を迎えたGOOD ON THE REELが待望の新作をリリース。やはり特筆すべきは、人気作家 住野よると千野隆尋(Vo)による想像上の男女の交換日記をもとに、歌詞を書き上げた「交換日記」だろう。当たり前のようにいる身近な人が大切であることをドラマチックに歌い上げており、ぜひ楽曲のもととなった交換日記を片手に聴いてほしい。さらに、失恋を経て新しい恋を見つけようとする女性をメロウなサウンドに乗せて描く「虹」や、ドラマ"俺たちはあぶなくない"OPテーマにもなった、戦わずして勝つ道を提示するアグレッシヴなギター・ロック・ナンバー「ノーゲーム」など、全10曲を収録。4年ぶりのアルバムは、"標本"のように形あるものとしてだけでなく、リスナーの心にも残り続ける作品になった。

手と手

GOOD ON THE REEL

手と手

GOOD ON THE REELがここにきてキャリアの最進化系を堂々と叩きつける改作。5人の手足だけで出せる音へのこだわりから、そこにある熱量を大切にしながらサウンドのイメージを拡張し、より高い次元で"景色の見える"サウンドの実現に向かった近年の流れが見事に結実した。エモーショナルなメロディと力強いバンド・サウンドに、シンセによるホワイト・ノイズを薄く乗せ夢見心地なエッセンスを少し。絶妙なサジ加減で"東京"を描き、新たなオリジナリティに目覚めたと言えるタイトル曲「手と手」に始まり、人と人との繋がりの大切さを歌った1枚。そこには昭和レトロな場末の酒場あり、広大な大地あり、豊かでユーモラスなサウンドスケープを手に入れたことで、持ち前のメロディと言葉がさらに躍動している。

GOOD ON THE REEL

GOOD ON THE REEL

GOOD ON THE REEL

今年4月に新しい環境でリスタートを切った5人が、キャリア初のセルフ・カバー・アルバムに挑戦。リレコーディングされた過去曲と、バンドの新境地的な新曲「YOU & I」、イントロダクションの全16曲を収録している。ライヴで育ててきたモードをそのまま封じ込めた楽曲も、ストリングスやピアノ、プログラミングなどを加え華やかにリアレンジを加えた楽曲も、どちらもバンドのタフなグルーヴを体感できるだけでなく、元来楽曲が持っているポテンシャルを大きく引き出した。メンバーが好きな曲やどうしてもリアレンジしたかった曲たちが集められたこともあり、5人が守り続けていたポップネスとパンクス魂、確固たるポリシーを現在のモードで届けている。どこを切り取っても高い作品性に唸るばかりだ。

グアナコの足

GOOD ON THE REEL

グアナコの足

"どう足掻いても戻れない/後ろ向きのまま進んで行くか もしくは前を向くかだ"――決して巻き戻ることはない人生において、大前提となることを断言した幕開けの1曲、「砂漠」。それを踏まえ、このアルバムには様々な現状/過去を抱えたまま生きる主人公を据えた、あらゆるヒューマン・ドラマが時に郷愁的に、時に生々しく描かれている。物語を表現するソングライティング力も、アレンジ力も以前より格段にスケールアップ。通して聴けば、長旅を経たような大きな体験をくれる1枚。"グアナコの足"は、世界一乾燥した砂漠で雨が降ると一斉に咲き乱れる、奇跡のような花を指すという。ふと、彼らはその雨のような存在だと思った――とりわけライヴにおけるGOOD ON THE REELは、解放感と希望を携えていて、そんな奇跡すら起こすのではと期待させてくれるのだ。

七曜になれなかった王様

GOOD ON THE REEL

七曜になれなかった王様

何だって真っ白に照らし出して未来を向くよう促してくるのだから、光はときに暴力的だ。なのに、ひとりひとりの生(せい)を全肯定するこの眩しさは何故そうではないのか。それはGOOD ON THE REELが"痛み"を唄い続けるバンドだから、である。本作の中心にあるのは喪失と悲しみ。どうしても拭えない"痛み"を拒絶せず存在否定もしない。そして"永遠なんてない"という事実を真っ直ぐ受け止めたうえで、祈りに似た希望を放っていくのだ。今年で結成10周年。7thミニ・アルバムに表れるのは、光も影も両手で抱きしめる懐の深さ。意志。覚悟。それは"生きたい""生きよう"と誠実に唄い続けてきた月日の賜物であり、バンドの意義がかつてなくたしかなものとなった証明でもある。

6番線の箱舟

GOOD ON THE REEL

6番線の箱舟

これまでリリースした作品すべてが各店舗で在庫切れを起こし、バンド・シーンの話題をさらってきたGOOD ON THE REEL。何故彼らの音楽はそこまで求められているのか? それは彼らの"声を涸らして伝えたい"という明確な意思がもたらした結果だ。痛みや、切なさ、情熱をすべて昇華して音として表現する千野 隆尋(Vo)の絶唱するかのような歌声にはドキっとするような儚さと生命力を感じる。儚さと生命力なんて正反対のものだが、きっとこれは紙一重なのだ。生きているから死ぬし、寒いから温もりを求める。だから千野の声には抗えない。そんな声で叫ばれたら耳を閉ざせないじゃないか。6枚目のミニ・アルバムとなる今作もきっと、伝わる。意固地になって硬く閉ざした人にも届くのはこの音だ。

オルフェウスの五線譜

GOOD ON THE REEL

オルフェウスの五線譜

一見、哲学的なアルバム・タイトルや、ジャンルを特定できないアートワークには、バンドの"曲を聴いて判断してほしい"思いが継続して表れている。情報自体も過多で、バンド・サウンドもショート・チューンにいかに多くの情報を詰め込むか?音楽もある種のコスパ意識を持つ、それもいいと思う。しかしGOOD ON THE REELが伝えたいことは、究極、"無駄な命なんかない"ということに尽きるんじゃないだろうか。千野隆尋(Vo)の素直で時には和のブルースを感じさせるエモーショナルな声と4つの楽器が人間の身体のように無駄のない動きのアレンジで楽曲を構成すること自体が自然な生命活動のように思える。きちんと死生観に向き合うことはできても、ここまで平易で具体的な言葉で歌う勇気と切実さに意気を感じる。

マリヴロンの四季

GOOD ON THE REEL

マリヴロンの四季

3作のミニ・アルバムを経て、昨年、初のフル・アルバム『透明な傘の内側より』をリリースした5ピース・ロック・バンド、GOOD ON THE REEL。作品を重ねてなお性急で、1秒でも速く、1ミリでも傍で聴いてほしい気持ちと、メロディとがつんのめりながら耳に飛び込んでくるのは今作も変わらずで、むしろさらに増しているとも言える。傷ついても誰かを愛したり、くじけてもへこんでも何度もトライをしたり、痛みや喜びを積み重ねるたびに見えてくる景色や感じる気持ちが広がってくる、そんな瞬間を音に封じ込めたのが彼らの音楽。普段は照れ臭くて口にはしない日々の感動や、心の機微を大きな声で叫ぶ千野隆尋の存在感が増し、ヴォーカリストとして多くの耳を引き寄せて行くエモーションも確かになってきているのが頼もしい。

BOY

GOODWARP

BOY

2017年春から3人体制での活動をスタートさせ、同年11月に配信シングル「Souvenir」をリリースしたGOODWARPが、約4ヶ月のインターバルで世に放つ配信シングル第2弾。前作同様にIkomanをプロデューサーに起用している。「Souvenir」がビターなラヴ・ソングならば、この「BOY」は親友や家族など大事な人に宛てる歌。男らしい力強さが綴られた歌詞は、今まさに前へ進もうとする人の背中を押すだろう。桜が青空に舞う様子を想起させる煌びやかなギターとやわらかいストリングスの音色も、歌詞の世界観を際立たせている。ダンス・ミュージックという基盤を保ちつつ、J-POPとしての大きな一歩を踏み出した楽曲になったのでは。

FOCUS

GOODWARP

FOCUS

日常にピントを合わせて"人生の素晴らしさを描きたい"という気持ちを込めたというバンドにとって初の全国流通盤。90'sポップス、クラブ・ミュージック、シティ・ポップやニュー・ウェイヴ、ファンクなど、様々な音楽性をドリーミー且つポップなダンス・ミュージックに落とし込む。そこに重なるのはごくごく普通の男女の恋愛模様や泊まり込みで仕事をする会社員などの素朴な日常だ。ありふれた風景をファンタジックに描く歌詞に、その世界をさらに美しく彩るサウンドは日常の尊さを教えてくれる。indigo la Endの川谷絵音とSEKAI NO OWARIのFukaseを足して2で割ったようなあどけなさの残るヴォーカルもセンチメンタルでありながら人懐こい。世代を選ばないグッド・ミュージックだ。

Miracle Pill

GOO GOO DOLLS

Miracle Pill

"アメリカン・ロックの良心"ことGOO GOO DOLLSの12作目となるフル・アルバム。30年以上活躍しているバンドだというのに、オヤジ臭さがまったくないのが本当にすごい。暑苦しさ、説教臭さなど皆無のポジティヴ・ポップ・ロック。GOO GOO DOLLSと言えば、ちょっと切ないロック・バラードやエッジの効いたオルタナティヴ・ロックというイメージも強いが、今作は、30周年を記念した前作のシンセやコーラスを使った豪華な音作りを踏襲しつつ、さらにポップな圧倒的光属性へと進化。軽やかで優しいメロディは、気負わず耳を傾けることができ、爽やかな新緑の香りを運んでくれる初夏の風のよう。まさにタイトルの通り、聴く者の荒れた心や疲れを癒してくれる"奇跡の薬"だ。

GORILLA CITY

Gorilla Attack

GORILLA CITY

昨年リリースした1stシングルが噂を呼ぶラッパー・ユニットの1st EP。ダークでオルタナティヴなR&Bを軸とした世界観は現実の東京渋谷の延長線上のイメージ。複数の共同プロデューサーを迎えているのも特徴的で、Yaffleとの「Gorilla Step」は2ステップのビート、Loyly Lewis(ケンカイヨシ)との「隔世 gorilla」にはインダストリアルな凶暴さ、Tepppeiとの「ゴリラ・バカンス」は悪夢的で不思議なバカンス感が漂う。コンクリート・ジャングルの王者=ゴリラに限りなく近い存在だと自認しながら、強くて優しい本物のゴリラにはなれない人間らしい感情の矛盾。それが日常も哲学も飲み込んだリリックと独自のフロウを持つヴォーカル&ラップで表現された怪作だ。

Cracker Island

GORILLAZ

Cracker Island

通算8作目となるGORILLAZのフル・アルバムは、リアルと虚構が錯綜する浮遊感、幸福と哀しみがミックスされたような世界観で、時代が求める甘い救いとビターな代償が音楽で表現されている。時代を先取りしてきたバーチャル・バンドという存在である彼らが描くことによって、それらはより意味深いものになるだろう。フックのあるファンキーなシンセ・ポップも、トロピカルなラテンのビートも、肉感的にならないギリギリのラインでGORILLAZ的な未来感のあるサウンドに仕立てている。今作でももちろん、THUNDERCATやStevie Nicks、TAME IMPALA、BECKなどといった数多くの人気アーティストがゲスト参加し、物語性のあるそれぞれの楽曲に個性際立つ印象を残している。

Song Machine: Season One - Strange Timez

GORILLAZ

Song Machine: Season One - Strange Timez

バーチャル・バンド GORILLAZが2020年初頭にスタートした音と映像のコラボ・プロジェクト、"Song Machine"の"シーズン1"を総括するアルバムがリリースされた。Robert Smith(THE CURE/Vo/Gt)が耽美な歌声を披露するTrack.1を筆頭に、今回が中心人物 Damon Albarn(BLUR)と初コラボのBECKや、ST. VINCENT、そして御大 Elton John(MVではカートゥーン化!)と、豪華ゲストが登場。日本から唯一参加のCHAIがJPEGMAFIAとピースフルなトラックを作り上げる「MLS」も面白い。ゲストの魅力をしっかりと引き出し、いい意味で雑多さを残しつつ1枚のアルバムとしてまとめあげたDamonの手腕はさすがのひと言。

Humanz

GORILLAZ

Humanz

いきなり6年ぶりの新曲「Hallelujah Money」を公開、しかもトランプ政権を批判した内容をトランプ・タワーで撮影するという、GORILLAZらしい一撃でこのニュー・アルバムの幕は開いた。そしてVRを導入し、360度ビューを実現した「Saturnz Barz」と、ヴァーチャル・バンドである彼らの強みを最高に打ち出してシーンに舞い戻った感もある。そしてメディア・アート的な試み以上に、昨今のアブストラクトなヒップホップ・シーンや、あらゆる人種を呑み込んだ未来のゴスペルのような「We Got The Power」の地に足のついた音楽としての強さが素晴らしい。個々のピースを包摂するようなサウンドトラック的な厚みやスケール感で表現していることに狭義のジャンルを超える共振も期待できる。今年のフジロックは伝説になること必至だ。

Music For Men

THE GOSSIP

Music For Men

「Standing In The Way Of Control」の大ヒットで衝撃的なデビューを飾ったGOSSIPのメジャー移籍後としては初となるスタジオ・アルバム。その言動からも常に話題をふりまく巨漢ディーバ、Beth Dittoのヴォーカルは恐ろしいほどにソウルフル。鳥肌が立つほどにセクシーな彼女の歌声にやはり圧倒される。そして、曲ごとに巧みに変化がつけられたリズム・パターンを軸にしたバンド・アンサンブルも素晴らしくスリリングだ。例えば、Patti Smithが歌う「Grolia」の緊張感と興奮にも似た、クールで妖艶なロックンロール。ロックもパンクもディスコもファンクもトライバルなニューウェーヴも全てをGOSSIP色に染め上げた本作は、全編を通して危険な香りが充満している。

Can't Be Forever Young

Gotch

Can't Be Forever Young

全曲メジャー・キー、生ドラムを使わない圧の少ないサウンド・プロダクションが、まず聴き手の構えた気分を解きほぐす。"まぁ座りなよ"とでも言われてる気分とでも言おうか。スクラッチが90sのUSインディーやローファイ感を想起させる「Wonderland/不思議の国」もあればオーソドックスなR&Rが新鮮なタイトル・チューンもあるし、ホリエアツシがギター、ピアノ、コーラスで参加した「Great Escape from Reality/偉大なる逃避行」はエクスペリメンタルでありつつ、潔く音を引いた聴感が心地よい。そしてアルバムのラストに配置された「Lost/喪失」が、アルバムの中にあることで、また違う聴こえ方をするのも興味深い。日常の中にある旅もどうしようもない諦念も怒りも、声高じゃない分、より細胞に染みわたる。

The Scene Between

THE GO! TEAM

The Scene Between

Ian Partonを中心とする6人組、THE GO! TEAM。前作のリリース後、メンバーは各々の活動を行い、特にIanはももいろクローバーZの「労働讃歌」を作編曲したことでも話題となった。4年ぶり4作目となる今作『The Scene Between』は、Ianが"メロディとソングライティングによって動かされるアルバムを作りたかったんだ"と語る通り、"歌"に寄り添った作品。アメリカやフランス、ブラジルや中国のDIYアーティストをヴォーカルに起用し、無国籍なサウンドにも一層磨きがかかる。時にサイケデリック、時にメランコリックな、総じてキュート且つ祝祭感の溢れる楽曲が並び、聴くものを楽しませる。ギミックや突飛なアレンジがなくとも楽曲の地力だけで魅せられる珠玉のポップ・ソング集。

G⇔P

GO TO THE BEDS & PARADISES

G⇔P

GANG PARADEから分裂したG(GO TO THE BEDS)とP(PARADISES)が、全メンバーをトレードして"トレード・スプリットEP"を完成させた。ゴリっと歪ませたロックやダンス・サウンドを主軸としてきたGと、"WACKの楽園"を掲げて自由度高めに活動してきたP。それぞれの道で表現力を培ってきたからこそ、両グループの代表曲がトレード前後で驚くほど印象の違う仕上がりになっている。新曲は2曲。テラシマユウカがGで作詞をした「merry bad end」、ヤママチミキがPで作詞をした「you」は、それぞれが互いに贈った手紙のように思えてつい深読みして聴いてしまう。いつも予想外の活動で驚かせてくれるこの2組は、今回のトレードを経てどうなるのか。次の一手にも注目だ。