DISC REVIEW
G
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YEASAYER
Amen & Goodbye
MGMTやANIMAL COLLECTIVEらと共に2000年代中盤NYブルックリンから登場した、全員がヴォーカル/ソングライティングをとる3人組による3年半ぶり の4作目。これまで良くも悪くもクラブナイズされたエギゾチカ・ポップ・バンドという印象があったが、本作でシンガロングできるようなキャッチーなものは「DeadS ea S crolls」のみ。先行公開されている「I A mChemistry」も大ヒット・アンセム「O.N.E.」に通じるダイナミックな曲展開を持つが、マッチョな演奏とコーラスでよりトライバルに進化。これまでの作品を昇華しながら有機的なサウンドで彩ったグルーヴの坩堝となっている。新陳代謝の激しいブルックリンだが、アニコレも新作を発表する中でさらなる成熟と進化が見える。
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GIRLFRIEND
sky & blue
なんという透明感と瑞々しさだろうか。青春を感じさせるまばゆい輝きが詰まったこの音と詞からは、若さとは正義であり美徳であるのだということを強く感じるほかない。アニメ"ブラッククローバー"の第8クールOPテーマに起用されている表題曲は、夏の終わりのリリースに相応しい爽やかさと、さりげない味わい深さを漂わせる趣きのある1曲。一方、バンド名義での作詞作曲がなされているカップリング曲「心音」は、彼女たちのここからに向けた想いが映し出されたなかで、地に足の着いた音像が具現化されたものとなっているように感じる。平均年齢18歳という輝かしい未来への展望をいくらでも持てるバンドだからこそ作り出せる、澄みきったピュアネスから生まれた響きに聴き手はきっと心洗われることだろう。
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GIRLFRIEND
ヒロインになりたい
平均年齢18歳のガールズ・バンド、GIRLFRIENDの4thシングル。表題曲「ヒロインになりたい」は、大人と子供の狭間を生きる10代後半の女子が抱える日々の悩み、今だから描ける等身大の想いを詰め込んだポップ・チューン。鍵盤の音やストリングスも取り入れた希望に満ち溢れたサウンドに、SAKIKA(Vo/Gt)の大人っぽい歌声が乗ることで、よりリアルな心情と深みが感じられる。冒頭に無邪気な彼女たちの笑い声が入っているのも面白い。すでに配信されている「魅力とは?」は、GIRLFRIEND初の恋愛ソング。好きな人を想う甘酸っぱい気持ちをくるくるとループするリズムに乗せていく。クールな印象から一転し、よりポップさを追求した、彼女たちの新たな一面が窺える1枚。
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GIRLFRIEND
CHOCOLATE
平均年齢17歳のガールズ・バンド、GIRLFRIENDがリリースするメジャー1stアルバム。夢に向かってまっすぐに進むピュアな衝動から、止まらないガールズ・トーク、退屈な学校生活、離れて暮らす家族への想いまで――10代女子のリアルを綴った等身大のロック・アルバムだが、そのサウンドは"まだ10代"と一蹴されることを決して許さない。例えば、「吠えろ」のさりげないギター・リフにはルーツへの敬意をしっかりと感じさせるほか、今作には彼女たちのロック・バンドとしての気概が随所に光る。メンバー全員が作詞作曲を担当することで、必然的に広がっていくバラエティ豊かな楽曲たちを自在に歌いこなすSAKIKA(Vo/Gt)のナチュラルなヴォーカルも含めて、とにかく4人のバランスが抜群だ。
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GIRLPOOL
Powerplant
2015年にロンドンの名門 Wichita Recordingsからリリースした1stアルバムは、数々の音楽メディアにて称賛を浴びた。それから約2年の歳月を経てLAのガールズ・デュオが帰還。ギターとベースを軸にした前作では、ドラムレスの編成を生かしてただただナードなフォーク・ポップをかき鳴らしていたが、今作ではそれらの制約を投げ捨てることでドリーム・ポップを彷彿とさせる新たな表現領域を獲得。その証明としてオープニングを飾る「123」では、従来のアンニュイなサウンドから突如重厚なバンド・サウンドへと展開する。シェイカーやピアノを採用した表題曲「Powerplant」など、わかりやすいアップデートも遊び心のある曲として十分楽しめる。覚醒への第一歩として、今後が楽しみになる1枚。
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GIRL RAY
Girl
HOT CHIPやTHE DRUMSらを輩出した"Moshi Moshi Records"の秘蔵っ子、ノース・ロンドンのガールズ・ポップ・バンド GIRL RAYが2ndアルバムをリリースした。今作は、デビュー作で見せたインディー感バリバリのローファイ・サウンドから、一歩も二歩も進化して、上質な大人のシンセ・ポップに。しかしながら、いい意味でのノスタルジックなインディー感はしっかりと残っているし、華美な装飾がまったくない余白のあるサウンドも彼女たちらしい。サブカル臭プンプンだった個性派オシャレさんが、都会派になって帰ってきたみたいな不思議な感じだが、インディー・ポップmeets R&Bの世界観に表現の幅が格段に広がったことで、より多くのリスナーにリーチするだろう。
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GIRLS
Broken Dreams Club
まず、サプライズに届けられたプレゼントのようで嬉しい。そして、これは来るべき2nd アルバムへの序曲だろうか? GIRLS が6 曲入りEP をリリース。どの曲もGIRLS らしい、切なさと温もり混じるメロディが彩り、センシティヴにイマジネーションをくすぐってくる。1st アルバムの延長線という印象も受けるが、本作最大のトピックとして、初スタジオ・レコーディングという変化が挙げられる。前作でのくぐもったサウンドはクリアとなり、より繊細な魅力が引き出された結果に。ラテン風味の冒頭曲「Oh So Protective One」に顕著だが、ホーン・セクションを大胆に導入しサウンドの幅を広げた点も興味深い。傷心や逃避の果てに鳴らされた無垢の音楽は世界中から称賛されたが、新たなマテリアルを手にした今、ふたりは何を想い飛躍するのか……。
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GIRLS
ALBUM
カリフォルニア出身の男性二人組、GIRLS。ローファイなドリーミー・サウンドと、サーフ・ポップ、60年代ポップスを土台にした甘いメロディ。シンプルながら、ゆったりと身体をスウィングしてくれるリズム。Christopher Owensの気だるいヴォーカルも相まって、心地よさと同時にノスタルジーも漂わせる。アルバムの通低音となっているのは、非現実へぶっ飛ばされる類のサイケデリアではなく、現実の匂いを失わない物語性を持った美しいドリーミー・ポップ。ここのところ、ドリーミーなサーフ・ポップを各々の解釈で鳴らすバンドが続々と登場しているが、このアルバムがその起爆剤となるだろう。DEERHUNTERやVIVIAN GIRLS、BLACK LIPSなどに夢中になった人は、必聴。
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GIVERS
In Light
バンド名は“与える人たち”という意味を持つ。男4+女1の5人組は一体何を与えてくれるのかって? それは飛びきりマジカルでドリーミーでサイケでパワフルでダンサブルでキュートでハートフルな音楽の至福だよ! まるでVAMPIRE WEEKENDやtUnE-yArDsが放つアフロ・ポップやトロピカリズモの体裁だが、LOS CAMPESINOS!のヤンチャな遊び心までも見え隠れするオリジナリティだ。そんな反則技、心はワクワク!ドキドキ!スウィングしっぱなしでしょう。09年結成、アメリカはルイジアナ出身のGIVERS。すでに本国メディアでは軒並みネクスト・ブレイクの称賛が送られ、デビュー・アルバム『In Light』は話題のGLASSNOTE RECORDSからリリース。しかし、あまりの楽観的な世界観だけに一部“ディズニー・ソング”と揶揄するインディ・キッズがいるようですが、バンドに変わり反論しておきます。ディズニーなめんな!
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GIVERS
In Light
軽快なハンド・クラップとトロピカル・フレーバーたっぷりな1曲目「Up Up Up」から高揚感溢れる楽しい一枚。VAMPIRE WEEKEND以降のビートとneco眠るを彷彿とさせるような印象的なギター・フレーズ。一筋縄ではいかない一曲一曲の曲展開。男女の掛け合うヴォーカル・メロディも含め、ポップな感性とアヴァンギャルドな展開が絶妙なバランス感覚で成り立っている。ルイジアナで09年結成された彼らは、今年のSXSWフェスのベスト・アクト10組に選ばれた様に今年注目のバンドである事は間違いないだろう。カントリー・テイストの曲もあったりアルバム全体のバラエティも豊か。今後のインディ・シーンの中心となれるか!?そのくらいのポテンシャルを秘めたバンドだと思う。
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GLASGOW
NOW I SAY
柔らかな春風を纏ったような爽やかさと切なさがこの始まりの季節にぴったりなメジャー1stフル・アルバムが到着した。初アニメ・タイアップとなったTrack.6や浦和レッズ応援番組のエンディング・テーマTrack.11など疾走感溢れるロック・チューンから、80s感漂うダンス・ナンバーTrack.5、叙情的な詩が際立つセンセーショナルなTrack.9まで表情様々な全13曲。それらが、インタールードとして収録されたTrack.1、Track.7、Track.13が形作る美しい世界観によって見事にまとめ上げられている。ワンコーラスのみのTrack.1で幕を開け、そのロング・バージョンとなるTrack.13で締めくくる、この物語をそっと閉じるような繊細なアコギの音色と歌声が紡ぐエンディングに、最後まで惹き込まれる。
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GLASVEGAS
EUPHORIC///HEARTBREAK\\\
デビュー・アルバム『GLASVEGAS』から約3年振りのリリースとなる2ndアルバム。デモ録音から完成までに1年を費やしたという意欲作だ。分厚い轟音は今作も健在。そして以前よりも、よりJames Allanという表現者の深層心理に近付く作品でもある。非常に叙情的かつ官能的なヴォーカルが耳に入るたび、ここまで踏み込んで良いものかこちらが躊躇してしまう。ダイレクトに迫り来る情熱が、聴き手の感情をかき乱すほど奮い立たせるのは必然だろう。シューゲイズ・ノイズは耳に心地良く反響し、極上の眠りも誘うようである。彼らの作り出したGLASVEGASという世界は、グラスゴーの青い世界やラスベガスの眠らないパーティーの空間を逸する、まったくの別次元。だがそこには揺るぎ無いリアルが存在する。
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Glider
STAGE FLIGHT
都内を中心に活動している栗田兄弟と、椿田兄弟による4人組のバンド GLIDER。彼らが、前作より1年半ぶりにリリースする2ndアルバム『STAGE FLIGHT』。驚くほどに渋い。渋すぎる。平均年齢22歳という若さで生み出していると思えない今作は、ある意味、AORと呼んでもいいのかもしれない。BPMなんて"130以上出しませんよ"と断言するかのような大人なテンポ感と、まるでQUEENのような見事なコーラス・ワーク。そして、Track.7の"胸の扉にグッバイ/胸に残るよ ララバイ/永遠に続きはもうない"など、胸を打つ大人な歌詞もニクい。聴けば聴くほど60〜70年代UKロックが大好きな香りがぷんぷんしてくる1枚。
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Glider
Glide & Slide
東京都内を中心に活動するツイン・ヴォーカルと、ソングライティングを手掛ける栗田兄弟とリズム隊の椿田兄弟による4人組バンド、Glider。正統派ブリティッシュ・ロックを踏襲し、見事に日本語ロックへと昇華させる絶妙なセンスは、平均年齢21歳とは思えない技術だ。Gliderを結成して最初に制作したというTrack.7の「Glider」は7月にタワレコ限定でシングルとしてもリリースされている彼らの代表曲。鍵盤が優しく響き渡り、栗田ユウスケの力強いヴォーカルが印象的な楽曲で、まるでグライダーがゆっくりと離陸していくような開放的な高揚感を抱かせてくれる。若くて渋い、そしてみずみずしい青さを包括した彼らがこれからどのように成熟していくのか、期待したい。
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GLIM SPANKY
The Goldmine
前作から1年3ヶ月というスパンで到着した7thアルバムで、GLIM SPANKYはさらなる扉を開いた。"金脈が見つかる鉱山"という意味を持つタイトルを冠した本作は、タイトル曲をはじめとしたライヴ会場を熱く沸かせるロック・チューンはもちろん、松尾レミ(Vo/Gt)の吠えるような歌声と重厚なグルーヴが絡み合う「Glitter Illusion」や、亀本寛貴(Gt)が奏でる軽やかなカッティングが心地よい海風を運んでくるAOR系統の「ラストシ-ン」、柔らかな光に包み込まれるようなサイケ感のある「真昼の幽霊(Interlude)」~「Summer Letter」など、全11曲、どれもがすべて主役級のクオリティを誇る楽曲ばかり。圧倒的な開放感が全身を突き抜けていく感覚を、音源とライヴでぜひとも感じてもらいたい。
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GLIM SPANKY
Into The Time Hole
現代的なサウンド・プロダクションを導入しながら、GLIM SPANKYが今鳴らしたい音楽を提示した前アルバム『Walking On Fire』から約2年。その路線を引き継ぐ6thアルバムは、重量感のある「シグナルはいらない」や壮大な「風は呼んでいる」といった、ロック・ミュージックが持つダイナミズムを際立たせたものから、「レイトショーへと」や「ドレスを切り裂いて」といった、ソウル・ミュージック的なアプローチで見せる新しい顔もあれば、サイケな「It's A Sunny Day」やブルージーな「Sugar/Plum/Fairy」といった、ふたりがこれまで培ってきたものもありと、サウンドのバラエティをより広げつつも、軸は一切ブレていない珠玉の11曲が揃った。
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GLIM SPANKY
ストーリーの先に
現代の若者が主人公の映画やドラマの主題歌が続くGLIM SPANKYだが、今回はドラマ"Re:フォロワー"への書き下ろし。オンラインに絡めとられていても、人間としての野生や感受性は決してなくならないことを、明け方の夜に共有するような確かな歌詞とサウンドで示唆している。選び抜かれたピアノ・リフとギター・フレーズの豊かさ、祈りのような淡々としたAメロの磨かれたコード進行が、不安な気持ちを鎮めてくれる。Track.2のタフなブルースは、さらにその先をどう生きていくのかを問うような叫びだ。さらに、未知の明日に手ぶらで旅立つ心持ちを"どこかへ渡る小さな鳥"に喩えるTrack.3と、身ひとつで生きる自由へと誘う。個別に作られたはずの3曲があなた自身のストーリーになる。
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GLIM SPANKY
LOOKING FOR THE MAGIC
再生するや否や、Track.1の不穏な雰囲気に際立つ松尾レミ(Vo/Gt)のオアシスへ導くような歌声と、亀本寛貴(Gt)のエモさ満点のギターで、GLIM SPANKYの世界へと一気に引き込まれる。メッセージ性の強い「TV Show」から輝く恋心を歌う「Hello Sunshine」まで、様々な表情を見せる歌詞も大きな魅力だ。自身初の日本武道館公演を大成功させ、映画主題歌など多くのタイアップも決定、さらには"フジロック"のメイン・ステージ出演など、様々なシーンに爪痕を残してきたふたりが鳴らす、進化した"至高のロック"が凝縮された1枚。「To The Music」でも歌われているとおり"共通言語はミュージック"、グリムのロックが世界中で愛される日はそう遠くない。
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GLIM SPANKY
愚か者たち
その揺るぎないロックな世界観で大傑作となった3rdアルバム『BIZARRE CARNIVAL』から約半年、2018年初リリースは3曲入りシングル。松尾レミ(Vo/Gt)の舌鋒がますます鋭く冴えわたる表題曲は映画"不能犯"の主題歌だ。亀本寛貴のルーズな間合いの歪んだギターと、時折巻き舌で聴かせるレミの強烈な歌声は絶好調で、アルバム収録曲とも地続きの力強いメッセージ・ソング。対照的に、軽快なカッティング、スライド・ギターとドリーミーな歌声に惹き込まれる「In the air」、そしてCMで使われていたCarole Kingのカバー「I Feel The Earth Move」と、どれも聴き応えありで、早くも次のアルバムが待ち遠しくなる。5月には初の日本武道館公演を控える彼らの音楽の神髄に触れることができる作品だ。
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GLIM SPANKY
BIZARRE CARNIVAL
6月に行った日比谷野外大音楽堂でのワンマン・ライヴがソールド・アウトするなど、国内外で活躍の場を広げるGLIM SPANKYの約1年ぶりとなる3枚目のフル・アルバム。60、70年代ロック、ブルースを現代の日本語ロックにアップデートした楽曲を聴かせる彼らだが、前半の「THEWALL」、「BIZARRE CARNIVAL」、「The Trip」から感じられるのはサイケ・ムーヴメント期のUKロックのテイストだ。松尾レミ(Vo/Gt)の強烈且つ哀愁漂う歌声に心が震える「美しい棘」、「Velvet Theater」に代表される亀本寛貴(Gt)の感情表現豊かなブルージーなギター、彼らは間違いなく本物中のホンモノ。"カッコいい日本のロック"を探しているならこのアルバムを聴けばよい。初回限定盤DVDには日比谷野外大音楽堂でのライヴ映像約60分を収録予定。こちらも必見だ。
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GLIM SPANKY
ワイルド・サイドを行け
"自分が信じた道を歩け"―― そんなメッセージをどこかの誰かさんが言っていたなと、ふと思い出させるGLIMSPANKYの最新作『ワイルド・サイドを行け』。サウンド・プロデュースに亀田誠治、作詞共作にいしわたり淳治を迎え、GLIM SPANKYの新たな一面を覗かせるTrack.1。QUEENの「We Will Rock You」を彷彿とさせる力強いTrack.2は、"ブラインドサッカー日本代表公式ソング"に起用されているだけあり、自分を奮い立たせる音作りや歌詞が素晴らしい。さらに、初めてシャッフル・ビートに挑戦したというTrack.3や、OASISのようなミディアム・ロック・バラードに仕上げているTrack.5のストリングス・アレンジも新しい。これまで以上に音の幅を広げている意欲作だ。
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GLIM SPANKY
褒めろよ
昨年6月、ミニ・アルバム『焦燥』でメジャー・デビューを飾った男女ロック・ユニットによる1stシングル。バラードや弾き語りも含め、多彩な魅力を印象づけた『焦燥』から一転、ここではスピーディーなタイトル・ナンバーを始め、ロッキンな魅力をアピールしている。テレビCMで話題になった「MOVE OVER」(Janis Joplin)のGLIM SPANKYバージョンを始め、彼らなりの70年代のロックへのオマージュとも言えるが、同時に平成生まれのふたりならではのアプローチにも耳を傾けたい。その他、THE ROLLING STONESを思わせるリフとポップ・メロディの相性が抜群にいい「サンライズジャーニー」、ねちっとずしっとした演奏で圧倒するブルース・ロックの「踊りに行こうぜ」も含む4曲を収録。聴き応え満点のシングルが完成。
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GLIM SPANKY
焦燥
Janis Joplinの再来と謳われる松尾レミ(Vo/Gt)と亀本寛貴(Gt)の2人組、GLIM SPANKYがメジャー・デビュー。OKAMOTO'Sのハマ・オカモト(Ba)、くるりのサポートで知られるBOBO(Dr)とスタジオでレコーディングした表題曲他2曲にライヴとカヴァーを2曲ずつ加えた計6曲を収録。60~70年代を思わせるブルース・ロックを基調としながら、彼らが単なるリバイバリストでないことは、跳ねるリズムと疾走するビートを使いわける「焦燥」を聴けば明らかだろう。敢えて弾き語りで挑んだAdeleと荒井由実のカヴァーで圧倒的な歌声をアピールする松尾と、饒舌かつ艶やかなギター・プレイを閃かせる亀本――本格派と言える実力を持った2人がその才能を、これからどんなふうに表現していくのかかが楽しみだ。
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G.LOVE
The Juice
ヒップホップとブルースを融合させた"ラグ・モップ"のオリジネーター G. LOVEの、ソロ名義としては約9年ぶり4作目となる新作。自身のバンド、G. LOVE & SPECIAL SAUCE名義でリリースされた近作は、ヘヴィなロックンロールの要素も持ち合わせたスタイルだったが、グラミー受賞のブルースマン KEB' MO'や、名だたるスティール・ギタリストなどのコラボレーターを迎えた今回は、代名詞と言うべきブルージーなサウンドに満ちた、キャリア25周年を総括する内容に。ゴスペル調のコーラスが美しいTrack.1や、アッパーなグルーヴに思わず頭を揺らしてしまうTrack.4、ブルース・ハープが染みわたるTrack.7など、肩肘張らずにまったりと楽しめる1枚だ。
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G.LOVE & SPECIAL SAUCE
Love Saves The Day
THE AVETT BROTHERSと組んで、Garrett DuttonがG.LOVEになる前に聴いていた音楽に回帰した『Fixin' To Die』を経て、オリジナル・ラインナップのSPECIALSAUCEと組んだ『Sugar』から1年ちょっとでもう新作だなんて、G.LOVEの絶好調具合が窺えるが、1曲目からギターが大音量で鳴るこの新作を聴けば、そんな思いはよりはっきりしたものになるはずだ。"ラグ・モップ"と名づけたG.LOVE印のヒップホップなブルースは相変わらずゴキゲンだが、彼がここで追求したヘヴィなギター・サウンドはデビュー21年目を迎え、まだそんなやんちゃなアプローチができるのかとファンを驚かせるに違いない。前作に引き続き、多彩なゲストを迎えたところからもポジティヴでオープンなヴァイブが感じられる。
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G. LOVE & SPECIAL SAUCE
Sugar
Jack Johnson主宰レーベルでの5作目となるG.LOVEのニュー・アルバムは、バンド名義でのデビュー作から20周年を迎えることもあり、当時のメンバーであるJimmie Prescott(Ba)、Jeffrey Clemens(Dr)が再集結した原点回帰的作品。ブルースとヒップホップを大胆にシェイクしたストリート感と、粋でとんがっているけれど、どこかユル~っとした雰囲気で親しみがある音楽で90年代の空気を体現していたG.LOVE。今作はその、勢いのあるラフ・スケッチの空気感や軽やかなサウンドのミックス感を、味のあるしなやかなタッチで聴かせてくれる。Ben Harper等のゲストも迎えた、シンプルでありながら饒舌でリズミカルなセッションが心地好い。懐かしさもあるけれど、やっぱりこの遊び、ノリやグルーヴは新鮮。
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G.LOVE
Fixin' To Die
歌っている彼の笑顔が自然と頭の中に浮んでくる。そんな生き生きとした澄み渡るギターとハーモニカと歌に、身体がスウィングしてしまうのは不可抗力! G.LOVE 9作目となる今作は5年振りのソロ名義。戦前のブルースなど多数のカバー曲も収録された、彼の音楽ルーツを極めた内容になっている。彼の歌と楽器の持つ魅力が十二分に引き出された非常に軽やかな作品だ。初夏の生い茂る青い木々と、やわらかい風を彷彿させる。彼独自のブルースの解釈は愛と敬意に溢れており、それはブルースだけでなくヒップホップやファンク、ジャズなど様々な音楽を純粋に吸収した彼の人生そのものなのだろう。表情豊かで、飾らないスタイリッシュなヴォーカルとサウンドに陶酔。大きな余裕に満ちた、子供の心を忘れない大人の作品です。
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GO CHIC
We Ain't Home
FUJI ROCK FESTIVAL '10のROOKIE A GO-GOや、SUMMER SONIC 2013のMIDNIGHT SONICへの出演を果たした台湾発のエレクトロ・ポップ・バンドGO CHICの初となるフル・アルバム。ひたすらファットなリズム・マシンとシンセの音色、ディストーション・ギターが隙間なく空間を埋めるダンス・チューン満載のアルバム。聴き進むうちに繁華街のゲームセンターにいるような気分になるのは良いのか悪いのか。とにかくちょっと下世話なくらいの夜遊び感は、彼女たちの音楽に惚れ込んだエレクトロ・ポップの女帝PEACHESのプロデュースのなせる技とも言える。CSSをもっとケバケバしくしたような印象で、彼女たちのフォロワーといえなくもない存在感を示す作品。
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GOD ALONE
Bent Shoulders
クリスチャン・ポスト・ハードコア・バンド THE DEVIL WEARS PRADAのメンバー、Mike Hranica(Vo/Gt)とKyle Sipress(Gt)を中心に結成されたGOD ALONEの1stアルバム。しかし、TDWPのイメージを持って聴くと、正直びっくりさせられる作品だ。本人たちが自身の音楽性を"ブルージー・ポスト・パンク"と表現しているが、たしかにその実験的で激しく、原始的なサウンドは、そういう表現がしっくりくる。ポスト・ハードコアとは違う意味で激しい、いろいろなものを削ぎ落とした、どちらかと言えば静の激しさ。90'sグランジのダウナー感、MOGWAIあたりのポスト・ロックや、MELVINSのようなノイズ・ロックの轟音ギター、激情系ハードコアが好きな方にはぜひ聴いてほしい。
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GOD HELP THE GIRL
God Help The GIRL
BELLE&SEBASTIANのStuart Murdochのソロ・プロジェクト、GOD HELP THE GIRL。名前の通り、女性Voをフィーチャーしたこのアルバム。Stuart Murdochと女性Voとの相性は抜群にいい。BELLE&SEBASTIANの傑作シングル「Lazy Line Painter Jane」などは最たる例だ。また、本作ではBELLE&SEBASTIANの「Act Of The Apostle」と「Funny Little Frog」を再録しているが、原曲とは全く味わいの異なるソウル・ナンバーに仕立てるアレンジ能力の高さも流石である。ソウルと60年代風ガールズ・ポップによって織り成される、甘酸っぱく切ない日常の風景をセピア色に染めるStuart Murdochならではの作品。
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GOGOL BORDELLO
Trans-Continental Hustle
2008年のFUJI ROCK、そして昨年のSUMMER SONICでの圧巻のライヴ・パフォーマンスを観て彼らの虜になったという人は多いはず。今や夏フェスの欠かせない顔になったGOGOL BORDELLOからニュー・アルバムが登場。今作はパンク・ロックとジプシー・ミュージックを織り交ぜた多国籍なパーティー・サウンドを鳴らしている。一曲目の「Pala Tute」はヴォーカル、Eugeneの濃厚な歌声にヴァイオリンが哀愁漂う旋律を奏でる魅力が詰まったキラー・チューン。そして彼らのごった煮とも言えるミクスチャー・サウンドを華麗にまとめあげたプロデューサーRick Rubinの手腕も光る。夏がやってくるのが楽しみになって来ました。
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go!go!vanillas
アメイジングレース
2018年末に交通事故に遭った長谷川プリティ敬祐(Ba)復帰後初となる待望の新作。表題曲は、希望に満ちた"4人で再び音を奏でる、歓びの人間讃歌"となっており、光を信じて困難を乗り越えたメンバーの強い絆、支えてくれた人々への感謝の気持ち、多大なる愛に溢れている。"音楽って楽しい"、そんな想いが凝縮されたようなキラキラと眩しいサウンドは、聴き手を笑顔に、ハッピーにしてくれるはず。そして、そんな新曲を今届けたいと考えるところにもバニラズらしさを感じる。改めて"おかえりなさい"だ。また、カップリングのサウナ・ダンス・チューン(!?)「TTNoW」、柳沢進太郎(Gt)が手掛け、ヴォーカルも担当した「ノットアローン」、「おはようカルチャー」のライヴ音源(完全限定生産盤のみ)も必聴。
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go!go!vanillas
No.999
まず「No.999」のハチャメチャっぷりに大笑いした。いったい1曲中に何ヶ国へ行くつもりなのだとツッコみたくなるほど目まぐるしい展開に、止まらないバンド・サウンド、皮肉を交えつつ感性を殺すなと訴える歌詞。C~Dメロがかなりクレイジーだけどそれも含めていい。ピカピカのおもちゃを手にしてはしゃぎながら遊ぶバンドの姿に、バニラズを初めて好きになったあのころと同じような気持ちになった。最高だ。カップリングの「触れたら」は柳沢進太郎(Gt)が書いた曲を牧 達弥(Vo/Gt)が歌うというバンド初の試みで、新たなアンセムが生まれたような手応え。観客の声をはじめとした会場の空気をそのままパッケージングしたライヴ音源も、聴いているだけでテンションが上がる。
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go!go!vanillas
SUMMER BREEZE / スタンドバイミー
「SUMMER BREEZE」はタイトルが想起させるとおり爽快さ抜群。これまでは洋楽あるいはフォークからの影響が反映された曲が多かったが、コード進行や転調の仕方などにそことは異なる要素が見受けられる。「スタンドバイミー」はゆるやかなシャッフル・ビートが心地よい1曲。好奇心のまま様々なジャンルを吸収してきたこのバンドは、全体的に音を重ねまくる傾向にあったが、この曲では引き算のアンサンブルが冴えわたっている。新しい風の吹く新曲が2曲できたから両方リードにしよう、という流れはかなり健全だし、両曲ともライヴですでに力を発揮しているというのだから頼もしい。柳沢進太郎(Gt)が作詞作曲&ヴォーカルのカップリング「Penetration」も必聴だ。
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go!go!vanillas
FOOLs
桜、そして恋愛というJ-POPのクリシェを調理したTrack.2「サクラサク」、ブラス・サウンドを取り入れたTrack.3「FUZZ LOVE」、柳沢進太郎(Gt)作詞作曲のTrack.9「ストレンジャー」と、かつてなく個性豊かだが、このバンドにしか鳴らせない13曲を収録した充実の3rdアルバム。これまでは好奇心&探究心旺盛であるバンド自身の奔放な性格をうまく乗りこなせていない感じがあったが、先発シングル3枚でバンドの地盤を固められたこと、さらにライヴを通して"音楽の自由を謳歌してこそバニラズである"という点を確かめたことなど、この1年での経験が自信と誇りをもたらしたようだ。もともとこういうことをやりたかった人なんだろうなぁ、というのがいよいよ見えてきた印象。そのまま突き進め!
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go!go!vanillas
平成ペイン
2017年第2弾シングル。表題曲「平成ペイン」はタイトルどおり平成生まれならではの視点で綴られた歌詞が特徴的で、牧 達弥(Vo/Gt)による比喩や皮肉の表現も冴えわたる。基本的にこのバンドらしい軽快な曲調だが、何かをなぎ倒さんとする勢いあるイントロや終盤に待つ不意の転調など熱量がグッと高まるポイントがいくつも用意されていて、聴いているとつい拳を握り締めてしまう。前作『おはようカルチャー』からの、先陣切って聴き手を引っ張るモードは継続。音楽に懸ける愛情だけではなく、バンドとしての誇りと矜持まで表れるようになってきたその音が、今年のバニラズはひと味違うと知らせてくれているようだ。そしてカップリングには、恒例のカバー曲ほか、幻のあの曲も収録!
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go!go!vanillas
Kameleon Lights
リード曲「スーパーワーカー」も良いがそれだけで判断するべからず、というほど多彩な曲が並ぶ。それでも、がむしゃらにあれこれやっているように聴こえないのは、どの曲もバンドの個性である昭和フォーク直系のメロディ・ラインやブリティッシュ・ビートなどを忘れていないからだろう。自らの武器を握りしめながらも固定のジャンルから大いにはみ出す曲たちを聴いて、自由を求めて冒険を絶やさない彼らの音楽が全方位的に濃度を増したのだと確信した。また歌詞に関しても、バンドやロックンロールへの希望と理想を描く視点も残しつつ、喧騒の中で戦うように生活する人々の背中を押すものへ変化した印象がある。奔放な本作を引っ提げてのツアーも始まるが、その先のさらなる進化にも期待したい。
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go!go!vanillas
Magic Number
いわゆる若手バンドと歳が近いため、勝手ながら彼らを"次世代を担うか"よりも"「これがうちらの世代だ」と胸張りたくなるかどうか"で見てしまう筆者だが、go!go!vanillasのことは心から信頼している。跳ねるリズム、センチメンタルなメロディ・ライン、シニカルな視点もあくまでサラッと描く歌詞のセンス――もともとバンドが持っていたそれらを高純度でレベル・アップさせたメジャー・デビュー・アルバム。クローンのように均一化された昨今の"踊れるロック"に疑念を抱いている人にこそ、若手バンドだからと決めつける前に聴いてほしい。多少歪でもどこまでも自由に転がり続ける音楽は、人間の感情もロックンロールの根っこも、"喜怒哀楽"のうちの"楽"がすべてではないと物語っている。
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go!go!vanillas
エマ
どこか懐かしく温かい、そして最高にポップなロックンロールを鳴らすgo!go!vanillasがTOWER RECORDS限定でリリースするニュー・シングル『エマ』。"1・2・3"と威勢良く始まる冒頭の表題曲から軽快なビート全開で聴く者をいとも簡単に踊らせたかと思えば、昔懐かしいサウンドと歌うようなギターが印象的な「となりの町のお嬢さん」で甘酸っぱい恋心を歌い、切なくも甘いメロディと牧達弥(Vo/Gt)のソフトな歌声が絶妙にマッチしたミディアム・ナンバー「ルーシア」でソウルフルに今作を締めくくる。決して完璧な演奏ではないかもしれない。しかし、真っ直ぐ前を向いて鳴らされる彼らの音楽は未完成な私たちとリンクし、身近に感じさせる。そして、それ故に人間味溢れるものとなり聴き終えたあとにホッとさせてくれるのであろう。
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go!go!vanillas
SHAKE
曲のタイトルを歌詞に歌いこんだTHE BEATLES他、60年代のブリティッシュ・ビートからの影響は明らかだろう。しかし、様式美の追求が歓迎されることがままあるロックンロールの世界において、自分たちらしい表現にこだわりながらそれを飄々とやっているようなところが頼もしい。その意味では、キャロルやルースターズといった日本語のロックンロール・バンドの系譜を現代風にアップデートしたバンドという印象もある。THE BAWDIESを見出したレーベルがデビューさせた大分出身の4人組、go!go!vanillasの1stアルバム。演奏、それを生々しさとともにとらえた音像にしてもまだまだ荒削りながら、詩情や歌心を感じさせるソングライティングはすでに個性的。僕はそこに大いにシビれた。
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- 2025.01.17
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