DISC REVIEW
D
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DOLORES O'RIORDAN
No Baggage
90年代初頭から活躍し、全世界でトータル4500万枚を売り上げたTHE CRANBERRIES のヴォーカルDolores O’riordan のセカンド・ソロ・アルバム。Dan Brodbeck とDolores による共同プロデュース作品だ。プライベートでは、家族と共に世間から隔絶された自然に溢れる場所で過ごす時間を大切にしているそうだが、そんな彼女の母性の強さや優しさがアルバムを通して貫かれている。女性ロック・ヴォーカル特有のヒステリックさや自己主張の強さとも無縁な、耳と頭を心地よく包み込んでくれる至福のポップ・アルバム。このアルバムを最後まで聴いた時には、ほら、嫌なこと忘れてたでしょ?特に「The Journey」は感動的なナンバー。
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DOOKIE FESTA
living room TV
挫折した主人公が希望を取り戻す心の軌跡を、まるでテレビを見るように歌った全7曲。聞けば、そういうコンセプトありきの作品ではなく、結果、そういう作品になったという。それはつまり全曲の作詞、作曲を手がける井上朝陽(Vo/Gt)が自分の想いをそのまま反映させたということだろう。どんな想いでバンドに取り組んできたかが窺える。すでに10年の活動歴がある大阪の4人組、DOOKIE FESTAによる5作目のミニ・アルバム。ストレートなギター・ロック・サウンドを身上としながら、バラードやディスコ・ナンバーも含め、曲は多彩だが、メロコア・バンドとしてスタートした名残なのか、ラウドに鳴る2本のギター、皮肉が込められた歌詞ともにトゲを感じさせるところが彼らの個性を際立たせている。
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DOPING PANDA
Decadence
DOPING PANDA、一年三ヶ月ぶりのニュー・アルバムをリリース!前作シングルの「Beat Addiction」では、メンバーではない女性をメイン・ヴォーカルに迎え、我々の度肝を抜いたのが記憶に新しいが今度は「Gaze At Me」が、ハリウッド映画『Don't Look Up』のメイン・テーマ・ソングに起用されたり、「Beautiful Surviver」ではm-floのVERBALとコラボレートし、資生堂ANESSAのCMソングに起用されたりと、とにかく話題性に事欠くことがない。『Decadence(退廃、堕落)』と冠された今回のアルバムは、全体的にアンニュイな雰囲気に包まれながらも、DOPING PANDAらしいポップな部分はしっかりと主張され、ネクストレヴェルでありながらも、大衆性とのバランスがきっちりと取れているという、彼らの賢さが如実に現れた作品だ。現在バンドは全国ツアー中。11月に大阪でファイナルを迎える。
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DORIAN
Melodies Memories
あの七尾旅人×やけのはらの「Rollin' Rollin'」のアレンジを手がけたという経歴を見るだけでも、この人が生み出す音楽の品質は保証済みというもの。そんな各方面との交流も活発なトラックメイカーのオリジナル作、めちゃくちゃ気持ちいいです! 流麗な音色は優しく耳を撫でるように広がり、それを支えるリズムは心地よくループし……。RolandのMC-909を駆使して生み出す、ソウル・フィーリングたっぷりなDORIAN流サウンドスケープを堪能させてくれます。そして今回は、LUVRAW&BTBを始めとするゲスト勢との共演も注目。G.RINAをフィーチャーした「夏のおわり」などは、もうまさにその名のとおり……。夏の終わりの夕暮れに流れてきたら、その美しくセンチメンタルな音色に涙してしまいそう。
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DORIAN CONCEPT
Joined Ends
ウィーンで生まれ、10代のころに独学で鍵盤やサックスなどを習得し、同時にコンピューターで音楽制作をはじめたDORIAN CONCEPTことOliver Thomas Johnson。大学でサウンド・デザインを学び、THE CINEMATIC ORCHESTRAやFLYING LOTUSのライヴ・メンバーとして舞台に立つなどプレイヤーとしてのセンスやスキルが高くかわれているが、彼自身の作る音楽はとてもロマンティックだ。2ndアルバムの今作は、ウーリッツァーのエレクトリック・ピアノとアナログ・シンセが中心のミニマルな音ながら、柔らかなベールを重ねたような透明感と陰影のあるサウンドを描く。桃源郷の世界から漏れ聞こえてくるような歌声など、音の立体感の妙があり、そんな緻密な計算とは裏腹に自然に心に寄り添い、優しく溶かしてしまうから不思議。
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THE D.O.T.
And That
THE MUSICのフロントマンであるRob Harveyと、THE STREETSことMike Skinnerによるニュー・プロジェクトTHE D.O.T.。今年6月に日本限定でEPをリリースした彼らが公式音源を世界に向けて初リリースする。自身のSoundCloudで発表した楽曲と新曲を収録した今作は、実に多面性のある作品に仕上がった。どこかに転がって消えてしまいそうな危ういビートは音の中を自由に飛び回り、心地の良いエレクトロ・サウンドを作り出す。そこに入るストリングスやドラム、ギターなどの生楽器と憂いのあるメロディと歌声が奥行きをつけ、まだ見ぬ世界へと迷い込ませてくれるのだ。メランコリックの中に宿る希望と力強さ、それを彩る繊細な音色に陶酔。疲れた心に優しく沁みる。
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THE D.O.T.
Whatever It Takes EP
昨年THE STREETSの最後の作品にヴォーカルとして参加した元THE MUSICのフロントマンRob Harvey。その2人が本格的にユニットとして活動を開始したのがこのTHE D.O.T.だ。THE STREETSことMike SkinnerのアッパーでキレのあるトラックにRob Harveyのエモーショナルでアップリフティングなヴォーカルが絡み合う。ジャンルは違えど2000年代のUKシーンの先頭を走っていた2人の個性が、違和感なく溶け合い新たなグルーヴを作り出している。今後も彼らからどのような化学反応が起こるのか楽しみだ。今年のFUJI ROCK FESTIVALにも出演が決定しており、そのパフォーマンスにも大注目だ。
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BLACK RIVERS
Black Rivers
マンチェスターの3ピース・バンド、DOVESのメンバーである双子のJezとAndyのWilliams兄弟によるユニットのデビュー・アルバム。2010年から活動休止している本隊DOVESをNoel Gallagherがお気に入りバンドとして挙げている通り、先日来日公演を行ったNOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDSのイギリス、ヨーロッパ・ツアーにも帯同している彼ら。今回のリリースもNoelが携わるレーベル、Ignition Recordsからということで期待のほどがうかがえる。Track1.「Diamond Days」から始まるアルバムは『Heathen Chemistry』期のOASISを彷彿とさせると同時に、UKロックの歴史を紐解きたくなる"王道の憂い"とサイケデリックに彩られている。THE BEATLESよりもTHE KINKSが好きという方にオススメしたい。
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Down the Hatch
Down the Hatch
大学の音楽サークル仲間が集まり結成されてから約3年半。初期の曲からレコーディング期限ぎりぎりで完成した曲まで、これまでのバンドの歩みを詰め込んだ全10曲収録のセルフ・タイトル作。当初からメンバー間で共有しているというthe band apartやUNCHAINからの影響が色濃い曲から、THE 1975やTWO DOOR CINEMA CLUBのような海外インディー直系のサウンド、近年のR&Bの進化と共鳴するナンバーまで、繊細なフィーリングとダイナミックなポップ・センスを軸に、そのポテンシャルと成長を存分に味わうことができる。この感じだと次回作はどうなるのか楽しみで仕方がない、ネクスト・ブレイクを予感させる香りが漂う。
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downy
第五作品集「無題」 Remix Album
5作目のフル・アルバムで、昨年9年ぶりにシーンに帰還したdownyが、同作のリミックス・アルバムをリリース。レーベル"術ノ穴"を主宰するトラックメイカー・デュオFragmentがホストを務め、リミキサー陣に石橋英子、やけのはら、一般公募のリミックス・コンペで大賞を獲得したBo NingenのTaigen Kawabeや、クラブ・シーンからGeskiaやOLIVE OILなど、downyを敬愛する手練れたちが集結した。それぞれのクリエイターが独自の解釈で楽曲を再構築し、新しく生まれ変わらせたものをdownyとFragmentがひとつの作品に仕上げているため、downyのようでdownyではないdownyのフル・アルバム......という音楽的好奇心を掻き立てる内容。音楽の新たな概念を提示する作品だ。
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downy
第5作品集『無題』
2000年代初頭、音楽と映像とをシンクロさせた、幻想的かつエクスペリメンタルな独自のライヴを行なっていたdowny。ポリリズムを多用した幾何学的なアンサンブルにたゆたうようにメロディを編み、深い思考や感情の海へとダイブするサウンドで、日本のポスト・ロック・シーンを開いた彼ら。長らく活動休止状態だったが、本作で本格復帰する。まず飛び込んでくるのは、心地好くもスリリングなビート。立体的な変拍子のドラムは、リスナーの新たな心拍を呼び起こしていくようだ。その切り開かれた感覚に、淡く美しいギター・アルペジオや温かに刻まれるベース、エフェクティヴなギターやメロディがなだれ込んで、物語を描きはじめる。音の生む世界に誘われて長く思索の旅に出たかのような、何かに没頭していた甘美な疲労が襲う。
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dps
ごめんなんて言葉
"ごめんなんて言葉"というタイトルから、歌謡的なエッセンスを感じる人もいるかもしれないが、今作はひと言では言い表せない。ダイナミックな「Get Up」があったかと思えば、緩さもある「昼過ぎのコーヒー」が現れ、さらには、フォークなのにハードな新感覚の「戦うこと」、和の世界へといざなう「清水の舞台から飛び降りて」、美しいバラードの「7月の雨」......と、様々な楽曲が並んでいるのだ。そんなバラエティに富んだ曲と、色とりどりの物語やメッセージを描く歌詞に筋を通しているのは、ロックからブレない森丘直樹(Gt)のアレンジと、どんな世界観も歌いこなす堂々たる木村涼介の歌声だと思う。8曲という収録曲数を生かした、dpsの8つの顔が見られる1枚。
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DQS
10 Drummers vs EARTH
溝渕ケンイチロウをバンマスに、ドラマーが10人揃った大所帯バンドDQS。2010年2月の初ライヴから約3年3ヶ月、満を持して初音源がリリースされる。ドラマーは10人も要らないのでは?とお思いのかたもいらっしゃるかもしれないが、10人のドラマーの音と動きが抜群のシンクロ率を叩き出す様は、音も見目もとにかく圧倒的で美しい。DVD付でリリースされる同作は、GHEEEの近藤智洋をゲスト・ヴォーカルに迎えたリード・トラック「RESCUE」を含む4曲をCDに収録。時にはシリアスに、時には痛快にはじけるドラムの音色。それに触発されるように加速するヴォーカルと他楽器。リズムがどれだけ音楽に不可欠なものなのかを痛感させられる。ジャケットやパッケージ含め、遊び心がふんだんに詰め込まれたアイテムだ。
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DRAGONETTE
Body Parts
カナダ出身の3ピース・エレクトロ・ポップ・バンド、DRAGONETTE(ドラゴネット)の3rdフル・アルバム。その洗練されたハイ・センスな楽曲が評価され、今までに数多くのコンピや大物アーティストの作品へ参加を果たしている実力派。中でも世界的なヒットを記録したMartin Solveigの「Hello」へフィーチャーされたことにより一躍知名度を上げただけに、今作はフロア・ラヴァーズ待望のリリースといっていいだろう。リード・トラック「Let It Go」の華やかなシンセ音とキャッチーなメロディはクラブ・ファンのみならずロック・リスナーの心も踊らせるはず。作品全体に含まれた80’sのメトロ感やダークな要素も絶妙なダンス・アルバムの新スタンダードを楽しもう。
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Dr.DOWNER
幻想のマボロシ
カオティックなまでに全楽器が押し寄せ、特にハード・ロッキンなリード・ギターの特異性と吐き出されるようなヴォーカルが特徴的だった1stアルバム『ライジング』から一転。音の配置や分離がクリアになり、曲の構成も地メロやサビが際立つ作風に大きく舵を切った今作。元来、カテゴリーとしてのパンク・バンドではなかった彼らが、なぜパンクな印象をもたらしたのか。そして曲の良さや現状を変えていきたい心情の描写によって、より大きな括りのロック・バンドへ変化した理由もわかるこのアルバム。『NANO-MUGEN COMPILATION 2013』にも収録された「レインボー」や、開かれた感情が聴き手を動かすラストの「毎日」など、あらゆる人の日々に気づきを与える10曲。
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Dreamcatcher
PIRI~笛を吹け~-Japanese ver.-
ワールド・ツアーを開催し、iTunesのワールドワイド・アルバム・チャートで5位、Billboard Top World Albums Chartで6位にランクインするなど、大躍進を遂げているDreamcatcher。表題曲は、そんな彼女たちの豊かなパフォーマンスと、口ずさみたくなる親しみやすさを兼ね備えた仕上がりだ。彼女たちのコンセプトと言えばヘヴィなサウンドであり、この楽曲でもそれは存分に生かされているが、それと同時にダンス・ミュージックとしても歌モノとしても聴くことができる。韓国の音楽シーンの進化をロックの角度から見られる楽曲だと思う。カップリングも含めて、取り入れられているSEや音色もドラマチックな世界観を描いており、聴きどころは満載だ。
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DRESSES
Sun Shy
フォーク・ミュージックの影響も感じられるものの、トラディショナルに追求すると言うよりもあくまでも今の時代にふさわしいモダンなインディー・ポップとしてアピールしていこうという想いが窺える。それが今のところベストと言える形に結実したのがダンス・ビートが軽やかにハネるアルバム表題曲だ。ポートランドの男女デュオ、DRESSESのデビュー・アルバム。爽やかかつ、どこか切ないポップ・ソングはすでに本国では"幸せなラヴ・ソング" "完璧なポップ・ソング"と注目を集めている。因みにレーベルはFLOGGING MOLLYで知られるロサンゼルスの硬派インディー、SideOneDummy。レーベル・カラーを考えると、異色とも言えるリリースは、レーベルがこのデュオに寄せる大きな期待の表れと言ってもいい。
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Droog
命題
自主レーベル"TICK RECORDS(ティック レコーズ)"を立ち上げ、前作より約3年ぶりにリリースされるフル・アルバム。独立するにあたり、解散や改名まで考えたという、彼らにとって"原点奪還"の作品なだけあって、前作とはニュアンスの違う、キャッチーな王道ロックを聴くことができる。特にカタヤマヒロキ(Vo)の歌いまわしは大きく変貌した印象で、「終点」のこぶしを効かせた歌い方、「夜明け前」の熱唱しながらもどこか酔いどれ天使のような儚さが美しく、様々な表現で歌を届けようという意欲が伝わってくるはずだ。「TOKYO SUBMARINE」、「loser」など、豪快に楽曲を牽引する荒金祐太朗のギターも理屈抜きにロック・バンドの楽しさを教えてくれる。その楽しさの原動力となっている思いを聴くことができる表題曲の「命題」は強烈!
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Droog
In A Ghost World
楽曲制作にあたり80年代、90年代の選りすぐりの洋楽ロックを聴きまくり作り上げたという、Droog初のシングル「In A Ghost World」。2ndアルバム『ぶっとびぱなし』のリリースから1年、スピード感やギラギラ感はそのまま持ちつつ、今作は今まで以上の圧倒的な解放感に包まれた会心のシングル曲となった。Droog流のパンク・アテチュードを見事に昇華させ、今までのDroogの常識を自らの手で打ち破る。「In A Ghost World」には"オバケ屋敷みたいな世界で、俺がどれだけリアルに叫べるのだろうか"という思いを込めたというカタヤマヒロキ(Vo)。Droogの叫びはどこまでも真っ直ぐに放たれ、何人もの心を射抜いていくこと間違いなしだ。
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Droog
Violence
今年2月にリリースしたファースト・ミニ・アルバムを引っ提げて全国各地のフェスやイベントを荒らし回った、大分は別府出身の10代4人組が、この秋早くもセカンド・ミニ・アルバムをリリースする。『Violence』というタイトル通り、殴るように掻き鳴らされる楽器たち。カタヤマヒロキのヴォーカルは、歌と言うよりシャウトである。彼の激情を表現するには、メロディーという枠は狭過ぎるのだろう。本能のままに暴れ回る汚れない音に圧倒され続け、気を抜けば完全に潰されてしまいそうなくらいだ。若者をゆとり世代と揶揄する大人や、歪みすぎて元に戻れない狂った世界に、一石を投じるどころか隕石を落とすようなとんでもない破壊力が炸裂する全5曲。生半可な気持ちで聴くのは危険です。
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DROP DOLL
シークレットボイス
JKがJKでいられる時間は、たった3年間だけだ。しかし、その3年間が人生の中で持つ意味はきっと途轍もなく大きい。今まさに現役JKである3人がDROP DOLLとして歌うこの表題曲は、彼女たちが出演している青春ストーリー映画"JK☆ROCK"の主題歌となるが、劇中バンドであるDROP DOLL役として歌うそれと、リアルなガールズ・バンド DROP DOLLが歌うそれではあえて表情を変えていると言うから面白い。詳しいことは、ぜひともインタビュー記事の内容を参照されたし。ちなみに、元気いっぱいな表題曲とは一転してカップリング曲「宇宙-ソラ-」で聴ける乙女心満載のキュートな一面も、またJKならではの赴きが満載。JKだからこその輝きが、ここには溢れている。
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DROP DOLL
Little deep love song
天はニ物......いや、三物をも3人の少女たちに与えたようだ。DROP DOLLは、もともと女優を志望しそれぞれに映画や舞台、CMなどの現場でのキャリアをスタートさせていたU(Ba/Vo)、J(Dr/Vo)、I(Gt/Vo)の3人が、制作予定の女子高生ガールズ・バンド映画のメイン・キャストに抜擢されたのをきっかけに、2016年11月に結成したという異色の3ピース・バンド。全員が2000年代生まれの現役JKにしてプロのアクトレスでありながら、ミュージシャンでもあるというこのハットトリックぶりには驚かされるばかりだが、それぞれがヴォーカルをとれることもDROP DOLLの大きな魅力だと言えよう。2ndシングルとなる今作でも、彼女たちの発する瑞々しさとひたむきさに彩られた音と歌が溢れ返っている。
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Drop's
Tiny Ground
Drop'sの約3年半ぶりのフル・アルバムは、結成10周年という節目に相応しい意欲作。全体的にポップで、穏やかという印象はあるものの、かつて多くのロック通を唸らせたブルース・ロックも含めたうえで表現の幅を広げる挑戦は、ある意味野心的だし、それを実現させたバンドの成熟から目を背け、変わったと言うのはナンセンスでしかない。ソウル・ミュージックへの接近やTHE BEATLESを思わせるフラワー・ロック調の「アイラブユー」はロック通の期待に応えるものだ。また、多保孝一(ex-Superfly)とのコラボは今回、現代的なR&Bにアプローチした「Lost inConstruction」という成果を残している。ラストを飾るロカビリー調の「マイハート」もかっこいい。
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Drop's
trumpet
姉妹作でもある前作『organ』からわずか3ヶ月というスパンでリリースされる新作ミニ・アルバム。今作は、前作収録の「Cinderella」で見せた、ポップに振り切った新機軸とはまた別の意味で新鮮な作品となった。"trumpet"という作品タイトルのとおり、リッチなホーン・セクションが入ったTrack.1「毎日がラブソング」は、ソウルフルでハッピーなキラーチューン。そして、過去作のしっとりした「月光」とはまったく違う「ムーン・ライト」は、哀愁を湛えながらもポップに聴かせている。尖った部分を愛と希望で包み込んだ今作を通して、彼女たちのルーツにあるロック、ブルース、フォーク、ゴスペルなど渋い要素と、年ごろの女の子らしい爽やかでキュートな面がうまく交わった印象だ。
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Drop's
organ
札幌から東京に移住したことに加え、ドラマーの交代、キーボード奏者の脱退を経て、4人編成になったことがメンバーたちの背中を押した。約2年半ぶりの新作は、念願だった若いリスナーにもアピールしたいという想いが、作曲家/音楽プロデューサーの多保孝一(Superflyほか)と共作した「Cinderella」に結実。ダンサブルなリズムやアクセントに使ったシンセが新境地を印象づけるその楽曲は、ブルージーなロック・サウンドで音楽通を唸らせてきたこれまでの彼女たちとひと味違うものだが、挑戦するなら思いっきりやらなきゃ意味はない。そこに込めたバンドの熱い想いを受け止めたい。その他、ライヴでお馴染みの4曲に加え、中野ミホ(Vo/Gt)がヴォーカル参加したJR東日本のCMソング「冬のごほうび~恋もごほうび」のバンド・バージョンも収録。
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Drop's
DONUT
"中野ミホの世界観を詰め込む"という明確な作品テーマを掲げて制作された4thフル・アルバム。メンバー全員の個性を打ち出した前作『WINDOW』で見せた音作りやアレンジの自由度はそのままに、今作では中野自身のパーソナルに迫り、それを最大限に伝えるべく自然体な彼女のヴォーカルをフィーチャーした曲が際立っている。"からっぽ"に感じる自分と本当に心動く瞬間をのびのびと歌う「ドーナツ」も、優しいブルース・ハープの音色が郷愁を誘う「部屋とメリー・ゴーランド」も、染み入るように響 く。誰にも言えない心の叫びをピアノの旋律がなぞる「月光」と、たったひとりへのラヴ・ソングをアコースティック・ギターと共に歌い上げるバラード「どこかへ」、初の映画主題歌2曲もバンドにとって新たな挑戦。
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Drop's
WINDOW
『さらば青春』、『未来』という2枚のEPを経て制作された、Drop's通算3枚目となるフル・アルバム。2ndフル『HELLO』で自分たちなりのポップを追求&挑戦したことで、今作ではメンバーそれぞれが思いのままに好きな音を出していけたという。バンドの中心人物である中野ミホ以外のメンバーも楽曲制作をしたりと表現の幅も広がり、"ライヴをより楽しめている"ことも理由か、楽器隊のアンサンブルも以前よりグルーヴィに。バンドが元来愛するブルージーなロックンロールを大事にしながら自らの音楽を追求し、それを楽しんでいることがうかがえる。中野の目と心が切り取る情景描写も以前より明確化し、噛みしめるように歌う彼女の声がそれに説得性を持たす。彼女曰く今作は"通過点"らしいので、次回作の飛躍も期待したい。
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Drop's
未来
春は、いろんなことが始まり、いろんなことが変わっていく季節。これからの未来にドキドキ、ワクワクしながらも、変わりゆく日常にどこか切なくなったり、寂しくなったり......そんな誰もが感じるほろ苦い気持ちを、柔らかい3拍子のリズムに乗せて歌った「未来」は、Drop'sの新たな名曲といえるだろう。続く「恋は春色」は、70年代のアイドル歌謡曲を彷彿とさせる激甘ポップ・ソング。さらに「Purple My Ghost」ではギター・リフを前面に押し出したハードロックなサウンドを展開している。彼女たちのメロディ・センスは一体どこまで広がってゆくのだろう? リリースのたびに圧倒されるばかりだ。Carole Kingの「You've Got A Friend」を哀愁たっぷりに歌い上げる中野ミホの美声も必聴。
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Drop's
さらば青春
前作『HELLO』で新たな境地へと挑む姿勢を見せたDrop'sが、初のアナログ・レコーディングに挑戦し、テープ録り独特の生々しいバンド・アンサンブルが収められた2nd EPをリリースする。青春の儚さを綴った表題曲「さらば青春」は、Drop'sがメジャー・デビューする前からあたためてきた特別な楽曲。1st EP『コール・ミー』で荒井由実の「卒業写真」を堂々とカバーしてみせた彼女たちだが、今作では浅川マキの「ちっちゃな時から」をカバーし、めいっぱいDrop'sらしさを表現している。さらにドライヴ感のある「メトロ・ランデブー」、中野ミホ(Vo/Gt)の気だるい歌声が印象的な「テキサスの雨」と新曲が並び、全4曲ともDrop'sのセンスがありありと感じられる。
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Drop's
HELLO
ハタチとなり、自分たちなりの"ポップ"を示した1st EP『コール・ミー』からわずか2ヶ月というスパンでリリースされるDrop'sの2ndフル・アルバム。新たな日々への希望を歌う「ハロー」に始まり、前作EPにも収録された「コール・ミー」、哀愁たっぷりの「どしゃ降り」、軽快なワルツ「真昼のブランコ」、モータウン・ビートに乗せたラスト・ナンバー「かもめのBaby」など、音楽性の幅広さは相変わらず。特に中野ミホが初めて書いたラヴ・ソングだという「星の恋人」は、息の詰まるような切ない歌声にギュッと胸を締め付けられる。前作にも増してポップさを追求した全13曲、それでも根源に"ロックンロール"を感じるのは、彼女たちがロックを心から愛しているからだろう。こだわりを強くもちながらも新たな境地へと挑むDrop'sの最新モードを堪能できる作品。
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Drop's
コール・ミー
1stフル・アルバム『DAWN SIGNALS』から約8ヶ月振りの新作は、新曲2曲、カヴァー1曲、アコースティック・ヴァージョン1曲、ライヴ・テイク2曲を収録した6曲入りEP。新曲はDrop's流のポップ・ナンバーの「コール・ミー」と、ブルージーな「C・O・F・F・E・E・E」。特に後者はミディアム・テンポに乗る5人ののびのびとした演奏が、新たなDrop'sの表情を覗かせる。中野ミホの遊び心のあるヴォーカルに、またひとつ大人の階段を上った余裕が感じられた。荒井由実の名曲「卒業写真」のカヴァーは、丁寧な演奏と歌が、彼女たちの素直な表情や等身大の姿を映し出しており、またバンドの新たな側面を見られる。今後のバンドの指針となるであろう6パターンのアプローチが詰まった。
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Drop's
DAWN SIGNALS
先月シングル『太陽』でメジャー・デビューを果たした札幌在住、平成5年生まれの女子5人組ブルース・ロックンロール・バンド、Drop'sがバンド・キャリア初のフル・アルバムを完成させた。これまで彼女たちが磨き、培ってきたストレートなロックンロールやブルースの要素だけではなく、そこにプレイヤーや表現者としての個性が表れてきたところが大きな飛躍と言える。“楽しい”という思いを素直に表現した「JET SPARK」、横揺れが心地よい「STRANGE BIRD」、美しいメロディが特徴的な「カルーセル・ワルツ」「やさしさ」、ジャジーなムード漂う鍵盤が妖艶な「木曜日の雨のブルース」など、ロックやブルースを芯に持ちながらもバラエティに富んだ11曲。今後の活躍が更に楽しみな若手バンドのひとつだ。
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Drop's
LOOKING FOR
このバンドは単純にかっこいい。彼女たちには様々なキャッチがつく、“平成5年生まれの女子5人組のブルース・ロック・バンド”確かに聞こえはキャッチーだが、鳴らしている音は泥臭くヒリヒリとした、まさに“ロックンロール”でしかない。今作のTrack.1「くださらないブルース」からTrack.6「赤い花」まで頭からつま先まで純度の高いロックへの愛が満ちている。今作はセンセーショナルに革新性をもってシーンをひっくり返すような作品ではきっとないが、彼女たちを初めて知る人、前述のようなキャッチで穿った目で彼女たちを見ている人間に決して小さくない衝撃を与えることのできる作品であることは間違いない。この北の大地からの今は小さな一歩が今後大きな一歩を生み出すことに期待。
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THE DRUMS
Portamento
ブルックリン出身のインディー・ポップ・バンドの2nd。ギタリストの脱退や今作を作る過程で解散ギリギリのところまでいくなど色々と苦労したらしいが、逆にそんな様々な出来事が今作のエネルギー源になったようで、ピュアなポップさやサーフっぽさなど前作の雰囲気を残しつつも、シンセの音の広がりや妖艶でダークな雰囲気に変化と進化を感じられる意欲作になった。彼らの音楽は別世界に連れて行ってくれるようなものではなく日常を追体験しているようなタイプのものだ。その感覚は今作でも変わらないが、前作よりも内省的な歌詞に注目したい。特に“君がどこに向かって走っているのか分からないけど、僕はいつでもここにいる”と歌う最後の曲の歌詞は今のバンドの立ち位置を象徴しているように思える。
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THE DRUMS
The Drums
昨年末にリリースしたEP『Summertime』でリスナーもメディアも虜にし、そのただ1枚で注目を浴びたTHE DRUMS。デビュー前からNME誌の表紙に大抜擢されるなど、海外主要メディアが"今年最高の新人" とこぞって特集を組み、全米最大の音楽ショーケースSXSWでは、彼らを一目見ようと会場は超満員となったという。まさに"待望" の状態でリリースされる1stアルバムは、インディ・ポップ・バンドとインディ・ポップ・サウンドブームの中で、抜きんでたメロディ・センスが光っている。ローファイでありながら、胸高鳴り心弾ませるまさにギター・ポップ直系の切なくドラマティックな世界。先述の華やかな話題なんてなんのその、ピュアで美しくもポップに弾けたなめらかな歌は、そんなこと忘れて私たちを酔わせてくれる。
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V.A.
KITSUNE MAISON COMPILATION 8
KITSUNE MAISON、この間7が出たばかりなのに、もう8がリリースですか。相変わらずのスピード感。それだけ、面白いインディ・バンドが多いということなのか、それとも流行のサイクルがさらに加速しているということなのか。今回も、TWO DOOR CINEMA CLUBやDELPHICといった今が旬のアーティストから、THE DRUMS、MEMORY TAPESを始めとした、これからのアーティストをコンパイルした充実の内容。ディスコ・ポップからエレクトロ、インディ・ロックまで、ヴァラエティの豊富さとコンピとしての統一感を両立させているところはさすがの仕事。今の潮流をしっかりと追い続けているからこそ・・・と、言うよりは先導しようとしているからこそと言うべきか。
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DRUMS OF DEATH
Generation Hexed
“DRUMS”は“DRUMS”でも、あのハッピーなサウンドで世間を席巻している某バンドとは大違いである。エレクトロ、ハウス、パンクなど、刺激的で挑発的な音が脳内を駆け巡る。PLAYボタンを押した瞬間からじわりと侵食する物々しい空気。唐突に切り替わるように挿入される声の不協和音。ひどく前衛的な映画を観ているかのような印象を受ける。アドレナリンが垂れ流されるかのように飛び交う音は、一曲ごとに目まぐるしくその表情を変容させる。音楽性が似ているわけではないが、雑多で詰め込まれたサウンドは、Klaus Nomiのでたらめにクールな音楽を彷彿とさせる。ゾワッとした鳥肌の感覚は同じだ。オペラやクラシックを中心大胆に彩り、融合させたNomiに対し、Colin Baileyは多種多様な電子音、音としての声をでたらめな分量で衝突させている。それは、ドラッグにも匹敵する危険性を孕んでいる。
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Dua Lipa
Radical Optimism
今最も世界を魅了している歌姫のひとり、Dua Lipa。彼女の歌声が聴こえるだけで、それがどこでも、どんな場面でもダンス・フロアになってしまう。今作は"Radical Optimism(過激な楽観主義)"というタイトルの通り、そんなDua Lipaのパワフルなポップネスと誰でも受け入れてしまう包括性のあるサウンドが、そのままコンセプトとなったようなアルバム。キラキラしたエレクトロ・ポップ・サウンドに、彼女のルーツでもある東欧のノスタルジックな空気が陰影を作り、さらにKevin Parker(TAME IMPALA)ら、国籍も音楽スタイルも様々なプロデューサーたちがスパイスを加え、鮮やかな色彩とコントラストを生み出している。生命力に満ちた歌声に圧倒されつつ、とにかく元気を貰える作品。
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Dua Lipa
Future Nostalgia (Bonus Edition)
UKの新世代ポップ・クイーンの大ヒット・アルバム『Future Nostalgia』が、大物アーティストたちによるリミックス盤『Club Future Nostalgia』とセットに! 80'sディスコ・サウンドへのリスペクトと、最先端のエレクトロ・サウンドを掛け合わせたオシャレなダンス・ミュージックには、幅広い世代を虜にする力がある。Christina Aguileraにも負けない迫力満点の歌唱力と、Kylie Minogueにも通じるポップネス、そしてアイドル性もある抜群のルックス。まさに全方位型の歌姫! リミックス作品ではMissy ElliottやMADONNA、Gwen Stefani(NO DOUBT/Vo)、Mark Ronsonらに加え星野源が参加したことも話題に。
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DUM DUM GIRLS
Too True
ネオ・ガレージ、シューゲイザーといったシーンにリンクしながらドリーミーかつノスタルジックなポップ・ミュージックを作ってきたロサンゼルスの女性4人組。前作から3年ぶりとなる3作目のアルバムはRAMONESやBLONDIEからRONETTESあるいはSHANGRI-LASに遡ることができるポップ・センスという意味では彼女たちらしいものながら、バラードも歌う新境地も含め、成長を洗練という形でアピールするニュー・ウェイヴ・サウンドは、バンドが転機を迎えたことを印象づける。そんな変化はファンを驚かせそうだが、彼女たちのファンならクールにハンマー・ビートを打ち鳴らす「Lost Boys And Girls Club」のかっこよさに溜飲が下がるはず。JESUS & MARY CHAINやVELVET UNDERGROUNDへの憧憬が窺える。
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