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DISC REVIEW

都合のいい時だけ子供になる

最悪な少年

都合のいい時だけ子供になる

"大人"の定義とは何だろうか。20歳を超えたら、学校を卒業したら、酒や煙草の味を覚えたら、自分のことをひとりでできるようになったら―― いろいろな条件があるかもしれないが、19歳という年齢ほど不確かで足元の覚束ない時期はないと思う。ハタチというボーダーラインを目前にして、多感な19歳はほんの少しの石に躓いて挫けて、目を背けるためにアルコールに溺れることも煙に巻いて逃げることもできない。そんな思いを代弁するかのような音楽に、当時の自分もこんなふうに音楽で吐き出せていたら、と思わずにはいられない。さすが、10代の登竜門"閃光ライオット"のファイナリスト。体中の感情を吐き出すその熱さに胸がヒリヒリする。都合のいい時だけガキになっていた、あのころの自分との邂逅を。

最期のゲージュツ

最終少女ひかさ

最期のゲージュツ

怖いもの知らずのロックンロールで作品ごとに注目度を上げていく、北海道の5人組による1年ぶりのミニ・アルバム。平和ボケして、安易な"死にたい"が溢れる社会の風潮も、生きづらいとか人間嫌いとか、そんなモラトリアムも、軽くいなして我が道をゆく但野正和(Vo)の泥臭いエネルギーは、今作でも笑い出したくなるほど痛快だ。脱力系のシンセと骨太なバンド・サウンドが絡み合う真骨頂の「A.N.Z.N」を始め、バンドの所信表明を歌ったパンク・ロック「Rolling Lonely review」、レゲエを取り入れた「半分人間」、淫らな欲望を爆発させた「レイラ」など、より幅広いサウンド・アプローチに底知れないバンドのポテンシャルも感じた。ラストの「さよなら最終少女」では初めてラモネス(Key)がヴォーカルとして参加。その歌では今作の収録曲をネタにするというオチも含めて、すべてが聴き手の斜め上を行くバンドだ。

グッドバイ

最終少女ひかさ

グッドバイ

音楽シーンをざわつかせた前作『いぎありわっしょい』から約1年、札幌発の5人組ロック・バンド"最終少女ひかさ"がついに1stフル・アルバムをリリース。もちろん期待はしていたけど、それを大きく越えられて少し悔しくなるくらい最高の1枚だ。歪むギターとギラついたシンセの渦巻くようなグルーヴに溺れさせて尖りに尖った言葉でぶっ刺さしてきたり、このまま攻めまくるのかと思えばストレートな言葉と切なくメロウなサウンドで泣かせにきたり。より殺傷力を増した攻撃的で荒々しい楽曲と、そんな顔も持っていたのかと驚かされる脆くも美しい楽曲のバランスが絶妙で、どれも文句なしにカッコいい。この爆発的な勢いと不器用すぎるほどの純粋さで彼らがどこまで行くのか、その先を見たいと心の底から思った。

いぎありわっしょい

最終少女ひかさ

いぎありわっしょい

"もしも俺に歌うことが無くなった日が来たら、どうか君の手で俺のこと殺してくれ"。こんなことを唄うヤツらがカッコ悪いわけないだろ?とロックンロール・ラヴァーのみなさんに問いただしたい。怒りも悔しさも情けなさも、自分への感情だろうが誰かへの感情だろうが全部愛へと変換して溢れさせていく、この感じ。不器用だし乱暴だけど最高にキュートな生き様に痺れた。スルー・スキルとかコピー&ペーストの技術とか、そういう種類の賢さはロック・バンドには要らないよなあ、やっぱり。ギターとシンセがバキバキ効いたダンス・チューンからド直球のフォーク・ソングまでカラフルに鳴らしきる楽器隊のサウンドもいいが、CDの中ですらギンギンに存在感を放つフロントマン但野のことが超気になる。

SODA POP FANCLUB 3

サイダーガール

SODA POP FANCLUB 3

ユーモアも毒もロマンスも希望も込めた歌詞。ロック・バンドという骨格にストリングスもホーンも躊躇なく取り入れたアレンジ。そういった振り切った面が見られる一方で、爽快感やポップ感――すなわち彼らが掲げ続けてきた"炭酸系"サウンドは揺るがない。つまり、サイダーガールの進化と不変が、華やかに、軽やかに表れた3rdフル・アルバムになっている。まっすぐな歌詞のサビからきらびやかに始まる「クライベイビー」ではなく、SNSやタピオカを"ぱぱぱぱぱぱ/ぱあと生きていたいな"と歌い飛ばす「週刊少年ゾンビ」がリード曲になっているところは、今の彼らの砕けた感じや攻撃性の象徴かも。共感を呼ぶ情景描写や、ライヴで聴きたい遊び心といった、彼らの武器も育ってきている。

エバーグリーン

サイダーガール

エバーグリーン

爽快感×儚さを併せ持ったシュワシュワと変幻自在の"炭酸系サウンド"が今話題のロック・バンド"サイダーガール"が、初ライヴからちょうど3年の節目に満を持してメジャー・デビュー・シングルをリリース。2017年度イメージ・キャラクターに現在中学生の池間夏海を迎えて新スタートを切る彼らが今作で掲げた表題曲「エバーグリーン」は、甘酸っぱい"初恋"の心情を爽快に歌った、この夏ぴったりのロック・チューン。カップリングの「光って」ではセンチメンタルな感情を代弁し、「茜色」では赤く灯される夏の夕日の情景を思い浮かばせるなど、今作でその表現の幅をグッと広げ、柔軟性もアップした印象だ。暑い夏を爽やかに駆け抜けるシングルを携え、メジャー・フィールドへと踏み出す彼らの新たな一歩を感じてほしい。

たまもの from ぬばたま

蔡忠浩

たまもの from ぬばたま

bonobos のフロントマンである蔡忠浩の初ソロ・アルバム。多数の豪華ゲスト・ミュージシャンを招いたこの作品は、彼がこれまでの音楽活動で培ったシンガー・ソングライターとしての歴史の総括と言っても良い。蔡の奏でるギター、やわらかい鍵盤やホーンセクション、ストリングスなど、あたたかみのある楽器の音がひとつひとつ煌き、その中に佇む蔡の歌声が非常に心地良い。その心地良さの絶対的な理由は、どの曲でも彼の歌声が笑っているから。伸びやかで安心感があるその歌声を聴いていると、身体の中にある良からぬことや、もやもやしているもの、悩みなどが全て外へと流れ出ていくようだ。George Harrison の名曲「All Things Must Pass」のカヴァーなど、軽やかで穏やかで濃厚な全10 曲を収録。

斉藤和義 弾き語りツアー「十二月~2022」Live at 日本武道館 2022.12.21

斉藤和義

斉藤和義 弾き語りツアー「十二月~2022」Live at 日本武道館 2022.12.21

弾き語りもバンド・スタイルもどちらも真骨頂と言える完成度とすごみを湛える現在。デビュー30周年アニバーサリーのバンドでの一発録音アルバムに続いて全国25ヶ所27公演にわたる弾き語りツアーの日本武道館公演を完全収録した映像作品の発売は必然的だ。新旧広範囲なレパートリーからの選曲はその音楽性の幅の広さを歌とギターという最小編成に凝縮した原点且つ完成した表現で届けられる。今回の見どころはひとりっきりで歌と対峙する前半だけでなく、中盤には沖 祐市(Key/東京スカパラダイスオーケストラ)とふたりで「Over the Season」、「泣いてたまるか」の2曲、後半はバンドのギタリストでもある真壁陽平も参加して、2本のギターの豊潤な絡みも堪能できること。歌を生み出し続ける彼の根底にある魂の強さに打たれる。

ROCK'N ROLL Recording Session at Victor Studio 301

斉藤和義

ROCK'N ROLL Recording Session at Victor Studio 301

デビュー30周年のアニバーサリーにバンド・メンバーとの一発レコーディング作品を制作するのがなんとも斉藤和義らしい。マメにライヴに足を運ぶファン以外はおそらく今の彼らの演奏がこれほどソリッドで、時にカオスなロックンロールであることを知る人は少ないのではないか。冒頭、斉藤と真壁陽平のゾクゾクするようなツイン・ギターにKO。真剣勝負の抜き差しの美学、時代を超えるバンド演奏のすごみ、ラテンやダンス・ビートも消化する貪欲さにハマるとあっという間にラストに辿り着く。まっすぐ放たれる斉藤の歌はいい意味で不変。やめたいのに自分と人を比べてしまう「ジレンマ」の歌詞が四半世紀を経ても刺さり、不安はあるけれど群れの中にいられない心情が「歩いて帰ろう」で肯定されるように受け止めてしまった。

Toys Blood Music

斉藤和義

Toys Blood Music

斉藤和義はバンドを従えギターで弾き語る歌うたいの印象が強いが、時にひとりで多重録音で曲を作る。今作も藤原さくらがコーラスで参加するものなどもあるが、多くの楽曲で音源ならではの彼の演奏が味わえるのだ。新しい玩具としてドラム・マシンの名機で遊び、打ち込みのリズムにシンセを重ねるが、今風テクノではなく、表情豊かなギターや血の通った詞を乗せ、懐かしく彼らしいロックを演出。"文春"なんて言葉も入れ今の日本を皮肉った「オモチャの国」。ギターが滑らかに流れるインスト曲でラストを心地よくまとめる大人のニクさ。初回限定盤収録のパワフルに自らを鼓舞する「I'm a Dreamer」も必聴だ。「始まりのサンセット」で歌うように、彼が新鮮に感じ、やりたいことはデビュー25周年を迎えても尽きないのだろう。

やさしくなりたい

斉藤和義

やさしくなりたい

15枚目となるアルバム『45 STONES』も素晴らしく、夏フェスにも積極的に参加し、幅広い層から支持を集める斉藤和義がニュー・シングルをリリース。躍動的なギターで幕を開けるこの曲は火曜ドラマ『家政婦のミタ』の主題歌。"やさしくなりたい""強くなりたい"と叫ぶ、そのメッセージには人を傷つけてしまったときに自分の未熟さに気付くように、やさしい人こそ強い心を持っているんだと感じる。佇まいはゆるく自然体。だが、ポーカーフェイスに隠されたアツい信念は揺るがない。斉藤和義のそんな姿がより心を揺すぶるのかもしれない。ドラマの世界観と曲がどうリンクしていくのかも注目したいところだ。c/wには8月31日に放送されたUSTREAMで披露された「ウサギとカメ」などを収録。

ARE YOU READY?

斉藤和義

ARE YOU READY?

斉藤和義14 枚目のオリジナル・アルバム。元BLANKEY JET CITY の中村達也、リリー・フランキー、妻夫木聡、ザ・クロマニヨンズの真島昌利などの豪華ゲストを招き、タイアップ曲も多数収録。全ての曲に美しい物語が凝縮され、過去最高にゴージャスでバラエティに富んだ内容になっている。優しいメロディと、照れ臭くてなかなか面と向かって言えないような素直でストレートな歌詞は、心の中に陽だまりのようなあたたかい光を点す。スチャダラパーのBose を招いた「いたいけな秋」では斉藤がラップのようなポエム・リーディングを披露。大人の男2 人がサシで交わすクールでスリリングなマイク・リレーは鳥肌ものだ。秋晴れの都会が舞台のトレンディ・ドラマを見ているような、ロマンチックな気分に浸る1 枚。

ずっと好きだった

斉藤和義

ずっと好きだった

懐かしい女優やアイドルが勢ぞろいしている資生堂のCMソングとして書き下ろされたナンバー。タイアップといってしまうと、あまり聞こえは良くないが、これはものすごく良質なタイアップだ。CMと楽曲の世界観、さらにはミュージック・ビデオまでも、全てがリンクしているのだ。これは商業的なリンクではなく、大人の遊び心に溢れている。アラフォーとなったアイドルと、彼女たちに夢中になったかつての少年たち。CMと楽曲とが両者を結びつけることで、そこにドラマ性を生み出している。だから「ずっと好きだったんだぜ」というおっさんくさいセリフにも、爽やかな哀愁があり、胸をキュンとさせるのだ。そして、楽曲テーマをさらに広げる形で作られたミュージック・ビデオでは、元・少年たちの方が主役となっている。

斉藤"弾き語り"和義 ライブツアー2009≫2010 「十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば弾き語る~」

斉藤和義

斉藤"弾き語り"和義 ライブツアー2009≫2010 「十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば弾き語る~」

2009年の年末に大阪城ホールで行われた弾き語りプレミアム・ライヴがCD&DVDとなって登場。"大阪?!!"と始まる今作は現時点の最新作である『月が昇れば』からの楽曲を中心にこの日のライヴがすべて収録されている。もちろん「歌うたいのバラッド」や「歩いて帰ろう」などの代表曲もありとてもお得な内容。5年振りとなる弾き語りライヴだが気負いや緊張感はなく、とてもリラックスしていて軽やかな感じが彼らしくカッコいい。今作のギター一本、ピアノ一つで演奏される楽曲もメロディの良さや歌詞の素晴らしさを感じられてとても感動的。最後に友人であり今回舞台演出を担当し、今注目を集める大宮エリーの特典映像も見逃せないところ。

World Ska Symphony

東京スカパラダイスオーケストラ

World Ska Symphony

スカという枠組みをさらに押し広げながら独自のスタイルを確立して20年間君臨するスカパラ。多彩なスタイルと方法論で、大衆性と独自の音楽性を両立する彼らの面目躍如とも言えるポップなアルバムだ。洗練されていながら、ダイナミズムに満ちたその音楽性はもちろんだが、スカパラほどメジャー・フィールドに対して戦略的なバンドはそういない。それはスカパラのようなバンドが未だに現れないという事実が物語っている。例えば多様なコラボ(今作では奥田民生、Crystal Key、斉藤和義が参加)をとっても、とてつもなく意識的で戦略的だからこそ、その高い音楽性をキープできるのだろう。「Won't You Fight For Happy People?」スカパラはファイティング・ポーズをとり続けている。

ゴールデンスランバー~オリジナルサウンドトラック~

斉藤和義

ゴールデンスランバー~オリジナルサウンドトラック~

2009年は伊坂幸太郎の年だったと言えるくらい彼の本は売れた。数々の原作が映画化されてきたが、山本周五郎賞を受賞した今作「ゴールデンスランバー」もいよいよ公開。その伊坂幸太郎と斉藤和義の関係は深く、作家になる決心をつけたのも斉藤和義のある曲を聴いたからだと言う。斉藤和義が初となる全編に渡り映画音楽をプロデュースした今作は、主題歌でTHE BEATLES のカヴァーである「Golden Slumbers」と再録された「幸福な朝食 退屈な夕食」、「ランナウェイ」の三曲以外はすべてインストゥルメンタル。映像化力の高い彼の曲の数々は暖かく、そしてどことなく切なさを含んでいる。熱っぽい「Golden Slumbers」も素晴らしいが、全体を通しても二人がこの作品に傾ける情熱が伝わってくるようでグッと胸を打たれる。

月が昇れば

斉藤和義

月が昇れば

昨年デビュー15 周年を迎えた斉藤和義から前作『I Love Me』から2 年振りとなる13 枚目のニュー・アルバムが届けられた。フジファブリックの山内総一郎がギターで参加しているが、それ以外はほぼ一人でこなすマルチプレーヤーである彼の魅力が発揮されたアルバムである。パワフルなロック・ナンバーの「COME ON!」で始まる今作は、アリナミンのCM 曲でもお馴染みの「やぁ 無情」やブルージーで弾けた「ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー」。初めてのピアノ弾き語りを披露している「アンコール」と曲ごとにガラッと雰囲気が変わり全く飽きさせず、すべての曲から斉藤和義が歌にかける情熱を感じる事が出来る。中途半端な志では到底たどり着けない高みを見せてくれる。ただそこに力みはない。だからかっこいい。 

デート

斉藤壮馬

デート

ズルすぎはしまいか。斉藤壮馬という人は、声優としての表現力や声の良さを武器にしながら、もともと音楽リスナーとして培ってきた才覚や、かつてのバンド活動を経て身につけた手腕、趣味として続けてきていた作曲能力や、小説家志望でもあったというだけある鮮やかな歌詞世界など、そのすべてをもってしてアーティストとしての活動を行っているというのだから。今3rdシングルより全曲作詞作曲を手掛けることになったという、彼のクリエイターとしての持ち味は、各曲の中で存分に発揮されている。さらにインタビュー記事の内容から窺える音楽に対する造詣の深さや、音楽に対する熱意のあり方を思うと、今後生まれてくるであろう作品たちにも大きな期待がかかるものの、すでにこれ自体がヤバみ満載の尊い1枚。

MUSIC EXPRES$

サイプレス上野とロベルト吉野

MUSIC EXPRES$

ボンクラどもに捧げる魂の叫び――よっしゃっしゃっス!"HIP HOP all グッド何か"を標榜とする"顔面狂気"サイプレス上野と"全身凶器"ロベルト吉野が帰ってきた。昨年はfelicity移籍やオリジナル・ミニ・アルバム『Yokohama Laughter』のリリース、SPECIAL OTHERSのコラボ・アルバムへの参加があった。また、サ上は愛する日本語ラップを語り尽くした書籍"LEGENDオブ日本語ラップ伝説"までも刊行し大忙しだった。そして、フル・アルバムとして約3年振りとなる『Music Express』、まさに待望の新作が届けられた。本作も多彩なゲストが名を連ねるが、意外なところでは元ミドリの後藤まりこだろう。「ちゅうぶらりん」は共作で作られており、ガーリーでアンニュイ歌声が汗臭いフロウと絡まるさまは新境地となるケミストリーが。マジでリスペクトっス!

Yokohama Laughter

サイプレス上野とロベルト吉野

Yokohama Laughter

海外からはヒップホップ・シーンの枠を越え暴れまくっているOFWGKTAが伝えられるが、我らには“ヒップホップ ミーツallグッド何か”を座右の銘とする暴れん坊、サ上とロ吉がいる!felicity移籍第1弾リリースとなる本作は、地元レペゼンを貫く愛すべき横浜をテーマにしたミニ・アルバム。出世作となった09年『Wonder Wheel』以来2年振りのオリジナルだ。パーティー・アンセムからメロウな世界観と本作も笑いあり涙あってからの大笑いあるサ上とロ吉・ワールド炸裂!下品?下劣?しらね~、笑えりゃ最高じゃん!と繰り出すライミングだが、「Bump」や敬愛するクレイジーケンバンドの「空っぽの街角」REMIXではクールにキメてくれるから最高。ゲストも渡辺俊美(TOKYO No.1 SOUL SET)やNORIKIYO、やけのはらなど多彩な顔ぶれで、まさに新時代の“横浜ドリームランド”状態!

Wonder Wheel The Live

サイプレス上野とロベルト吉野

Wonder Wheel The Live

今年5月、恵比寿リキッドルームでの『WONDER WHEEL THE LIVE TOUR FINAL』の模様を収録したサ上とロ吉初のDVD。笹沼位吉(SLY MONGOOSE)、TARO SOUL、LUVRAW&BTB、宇多丸(RHYMESTER)など、楽曲に参加したゲストも次々と登場しながらのツアー・ファイナルは158分にも及ぶが、笑いを詰め込んだ演出も織り交ぜながらのエンターテイメント性の高いライヴは、その時間を全く長く感じさせない。ユーモアたっぷりなのにリアルなHIP HOP。HIP HOPはもちろん、あらゆるフィールドにおいて支持を拡大し続けているサ上とロ吉。ライヴ前の映像からラストの大団円まで、彼等が愛される理由を感じ取ることができるガチのエンターテイメント。

Soul Rain + Touch The World Instrumentals

さかいゆう

Soul Rain + Touch The World Instrumentals

さかいゆうが、最新アルバム『Touch The World』に収録されているソウル・バラード「Soul Rain」をシングル・リリース。本作には、同楽曲のアルバムVer.と、今回新録したアコースティックVer.を並べ、アルバムの中でも重要な立ち位置となる同楽曲に、改めてフォーカスを当てた。ピアノと歌のみで一発録りされた「Soul Rain (Acoustic Ver.)」は、ロンドンのアビー・ロード・スタジオで録音された、ゴージャスなストリングスが至高なオリジナル・バージョンとはまた違い、歌と詞がより心に届くものとなり、その場のリアルな緊張感や空気も感じ取ることができるものとなっている。c/wの"雨"にちなんだ選曲のカバーとDisc2の最新アルバムのインスト音源も必聴。

バッハの旋律を夜に聴いたせいです。

サカナクション

バッハの旋律を夜に聴いたせいです。

「SAKANAQUARIUM 2011"ZEPP ALIVE"」の最終公演、6月28日ZEPP TOKYOで、リリースに先がけていち早く披露されたこのナンバーの、圧巻としか言いようがない物凄い空間は未だに忘れることができない。バッハの旋律を夜に聴いたせいです――。メンバー全員の歌声を重ね、ハーモニーを構成するタイトル・フレーズから、恍惚的なビートのループに拡散/収縮を繰り返す多彩な音像。そして、その一瞬のインターバルに切れ込む流麗なピアノは、ダンサブルなサウンドの中に厳かなムードを加え、楽曲は再び雄大な広がりをもって聴き手を圧倒する。そこにあるものは、聴き手の身と心をただただ問答無用に踊らせる、音楽が本来持つべき根源的な魅力。サカナクション、本当に凄いバンドになった!

アイデンティティ

サカナクション

アイデンティティ

前シングル「アルクアラウンド」に続き、アルバム『kikUUiki』のヒットで世間の注目を集めたサカナクション。彼らは今、マニアックさとポップさの狭間にいる。でもどちらもサカナクションの姿で、どちらも良質な音楽であって、新たなポップミュージックの新基軸を作りあげるための挑戦と提案をしている。今作はラテンのリズムが、妙に日本の祭りのスピリッツを感じさせ、自分自身に問いかける歌詞の世界観と絡んで体になじむように入ってくる。このビート、日本人なら踊りださずにはいられないのではないだろうか。今後この曲を布石にどんな方法で、どんなアプローチを仕掛けてくるのか、気が早すぎるかもしれないが次のアルバムを期待せずにはいられない。

kikUUiki

サカナクション

kikUUiki

今もっとも注目を集める期待のアーティスト、サカナクション。セカンド・シングル「アルクアラウンド」がオリコン・ウィークリー・チャート3位を記録し、いよいよシーンの中心に浮上し始めた彼らから4枚目のフル・アルバムが届けられた。ポップな浮遊感と文学性の高い歌詞、そしてロマンティックなエレクトロ・サウンド。ここまで様々な要素を取り入れながら高いクオリティを保つバンドはそうそういないだろう。今作はロックとクラブ・ミュージックが混ざり合う場所を目指して作られた作品だという。今までの彼らもそうだったが今回はよりその二つが上手く調和されている。色とりどりなアイデアを詰め込んだ7 分を超す大作「目が明く藍色」がとっても素晴らしい。

アルクアラウンド

サカナクション

アルクアラウンド

サカナクションのニュー・シングル「アルクアラウンド」。柔らかなエレクトロニカの手触りは保ちながらも、80'sテイストのシンセとアグレッシヴなバンド・サウンドが、独特の歌心を力強く推し進め、切なさとともに高揚感がこみ上げてくる。「スプーンと汗」は、アコースティック・サウンドと幽玄なバック・トラックが絡み合う不思議な感触の一曲。そして、Rei Harakamiによる「ネイティヴダンサー」のリミックスは、美しさと変態性が捩じれながらせめぎ合いながら、山口の言葉を包み込んでいく。分かりやすさとマニアックさとのバランスを高品位に保ちながら、軽やかに提示してみせるサカナクションのセンスがよく分かる3曲だ。新たなアルバムが楽しみになるシングルだ。

Face To Time Case

崎山蒼志

Face To Time Case

高校卒業後、上京しミュージシャン専業になった2021年、さらに多様な表現を自由に突き詰めた印象のあるメジャー2ndアルバム。いわゆるモダン・ラウドロック的なバンド・サウンドは「嘘じゃない」、「逆行」など先行発表曲に続き、「Helix」でさらに進化した。「舟を漕ぐ」などは幼少期の記憶と分かち難いパーソナルな世界観だし、リーガルリリーと演奏も含めコラボした「過剰/異常」の共鳴は清々しいほど。一方、石崎ひゅーいや水野良樹(いきものがかり/Gt/Pf)とのタッグはJ-POPを踏まえ、更新する気概に満ちている。また、毎回楽しみな打ち込み多重録音は、インダストリアル・テクノとマンブル・ラップの混成のようで、表現者のポテンシャルをパッケージ。ジャンル語りの無効さを痛感する。

いつかみた国

崎山蒼志

いつかみた国

崎山蒼志との出会いが当時15歳とは思えないギター・プレイと独特の世界観だった人が大半でも、すでにそれは過去だ。彼の何に圧倒されるか? それは、既存の何かと比較する余裕も必要もないほど溢れ出る刹那にだ。ボサノヴァやジャズのコード感と、その意味を剥奪するような我流のカッティング。そして、永遠に終わらないようなミドル・ティーンの憂鬱や覚醒を繰り返す感情と温度や湿度が瞬時に立ち上がる言葉の数々。堂に入ったテンポとカントリーを思わせる、そのジャンル感のある導入に逆に驚く1曲目の「国」も、途中から自在に形を変えていく。唯一のミニマルなDTM作品「龍の子」も彼の脳内を覗くようでスリリングだ。誰のものでもない自分の国。音楽だけが叶えてくれるそれを彼は鳴らすのだろう。

I wish / POKER FACE / SAMURAI GIRL

サキヲ

I wish / POKER FACE / SAMURAI GIRL

2020年12月から始動する4人組ロック・バンド サキヲが、3週連続配信リリースという形で世界に打って出る。サウンド・プロデューサーに氷室京介やGLAYのサポート・ドラムを始め、名だたるアーティストのライヴやRECに参加しているTOSHI NAGAIを迎え制作した3曲は、柔らかな音像に壮大な光景が目に浮かんでくる「I wish」、心に巣くう闇を強烈な勢いで吐き出す「POKER FACE」、ドラムとブルース・ハープが絡み合い、時代を切り開くと高らかに宣言する「SAMURAI GIRL」と異なった印象を持つ。それでいて、その土台にあるのはパワフルなバンド・サウンドであり、軸にあるのはSAKIWOのまっすぐな歌声。今まさに飛び出そうと荒ぶるロック・スピリッツが閉じ込められている。

おれは錯乱前戦だ!!

錯乱前戦

おれは錯乱前戦だ!!

前作『ランドリー』が、限定店舗/会場のみでのリリースながら徐々に店舗を拡大し話題を集めた5人組、錯乱前戦。そこから1年、大型フェスのみならず、新木場STUDIO COASTで行われたSUPER BEAVER主催企画や、ザ50回転ズとの対バンなど、屈強なバンドとの直接対決の経験も経て、満を持して全国流通フル・アルバムをお披露目する。ライヴの空気を閉じ込めたような彼らの息遣いや雄叫びまで聴こえる「タクシーマン」、日本人の琴線に触れそうなメロディも魅力的な「カレーライス」などが今作初収録。ノリノリの8ビートでロックンロールのスタンダードを鳴らす彼らの音楽は、彼らと同世代の若者からガガガSP、さらにTHE BLUE HEARTS世代まで、年齢、そして時代を超えて愛されるはず。

ランドリー

錯乱前戦

ランドリー

2017年の"出れんの!?サマソニ!?"に選出後、本格的にライヴ活動を開始した平均年齢19歳の5人組バンド、錯乱前戦の1stミニ・アルバム。このバンドは山本(Vo)の艶のある声質がとにかく魅力的だ。初期衝動のまま突っ走るような「ロンドンブーツ」で歌い上げる力強い歌唱も良し、「モンキー・オ・マンキー」で魅せる起伏のあるヴォーカル・ワークも文句なしにカッコいい。彼の歌声を際立たせているのは、古き良きロックンロールをストレートに表現している楽器隊の力の賜物であろう。個人的におすすめしたいのはラストの「boy meets boys」。後半での胸を締めつけられるような"boy meets boys"の大合唱が感動的な、ライヴでシンガロングが巻き起こること必至の1曲だ。

東京シティらんでぶー

笹木勇一郎(ex-笹木ヘンドリクス)

東京シティらんでぶー

ソロ・アーティストとしての魅力を伝えたいという思いから本名に改名した笹木勇一郎。それは"笹木ヘンドリクス"をバンドとして残すための決断でもあり、バンドへの強いロマンがそうさせたのだろう。冒頭を飾るのは"僕だけの歌を探そう "という"1人"の音楽家として決意だが、その曲は「"not"_alone」と名づけられた。そう、ソロは"独り"ではない。ジャンルの枠に捉われず自由に羽ばたく全11曲がそれを物語っている。札幌→イギリス→東京と拠点を移しながら活動する中でスポンジのように吸収してきた事柄を、自ら磨き上げて完成させた結晶のようなフル・アルバム。これから先どんな形態をとろうとも、音楽の旅を続ける限りこの作品が彼にとっての糧となるはず。

星のかけら

笹木勇一郎(ex-笹木ヘンドリクス)

星のかけら

札幌生まれのシンガー・ソングライター、笹木ヘンドリクスのデビュー・シングル。ソロのアーティストだがインディー時代から固定のバンド・メンバーとライヴを重ねてきて、レコーディングも馴染みのバンドとの作業だったのもあってバンド然とした内容になった。大きく、よく通る歌声を武器に、そしてその声がもっとも映えるような大らかで、スケール感のあるメロディを歌う今作は、彼のデビューに寄せての決意が込められている。またカップリング「命の灰」は、震災時に見たこと感じたことをドキュメント的に綴った曲だという。説明的な歌詞はなく、抽象的で淡々としているけれども、言葉よりも"音"、自分のバンドが鳴らせる音で当時の感覚や思いを封じ込めた。元々ユニークな曲も多いが、真正面から強い曲で攻めたデビュー作。

空と虚

ササノマリイ

空と虚

自身が大ファンであり、表題曲「空と虚」がオープニング・テーマを務めるアニメ"ヴァニタスの手記"からインスパイアされた7曲を収録したミニ・アルバム。"ヴァニタス"がラテン語で"空虚"を意味することから"空と虚"と名付けられた本作は、一貫して透明感のある洗練された音作りが印象的だが、そのまっさらな世界の中に歌声や歌詞の儚さがにじみ、どこか虚しさが漂う。無機質なリズムに乗せた、"機械仕掛け"など"ヴァニタスの手記"を彷彿とさせる言葉が、登場人物の心情を映しアニメの世界観とリンク。そしてアルバム後半になるにつれ、視界が開けるように生き生きと華やかさを増していく。最後に収録された「雪花の庭」で描かれる儚くも大きな愛が、作品全体を包み込む1枚。

game of life EP

ササノマリイ

game of life EP

昨年11月にメジャー・レーベルへ移籍したササノマリイのニューEP。"game of life EP"というタイトルが表すように、人生をひとつのゲームに喩えつつ、日常に潜むルーティンが本当に"当たり前"なのかどうかを問いかけてくる。そのコンセプトは、拭えない諦観と、それでも諦めたくない人間の性とが同居する彼のリリックとの相性も良い。ぼくのりりっくのぼうよみとのコラボ曲や、その曲のリミックス版を含む全5曲は聴き手の集中力と想像力をグッと引き出してくれるため聴き応え抜群だが、収録曲のピアノ即興版や、スライム・シンセサイザーとの実験的コラボ・セッション映像を収録したDVDも付属する、本作の世界観を立体的に伝えてくれる初回生産限定盤が特におすすめ。

M(OTHER)

ササノマリイ

M(OTHER)

ササノ自身がリスペクトしているというTV・ゲーム"MOTHER"のオマージュ曲である表題曲「M(OTHER)」、ぼくのりりっくのぼうよみに提供した「CITI」のトラックに新たなメロディと歌詞を施し再構築した「Re:verb」、ねこぼーろ名義での曲をリアレンジした「戯言スピーカー (in synonym)」などを収録。多彩な挑戦に打って出たEPがこのたびリリースとなる。冷たさとあたたかさが共存する声と、柔らかく丁寧に構築された、しかしそれゆえの空虚さも潜むサウンドは、虚像と現実が混在する、孤独の集団としての"街"と共鳴するものだ。別れの存在から目をそらさない歌詞の内容を始め、孤独に寄り添う音楽を生み出す彼の根底に何があるのか、気になった。

シノニムとヒポクリト

ササノマリイ

シノニムとヒポクリト

ネットを中心にボカロPとして活動してきた"ねこぼーろ"が、自身が歌う"ササノマリイ"としてCDデビューする。"詰め込んだ 感情を ひとつ ひとつ 殺して"というねこぼーろ時代の楽曲「戯言スピーカー」で始まる今作は、柔らかい演奏と温もりを感じる歌声にうっとりしつつも、パーソナルで辛辣な歌詞にはっとさせられる。エレクトロニカをベースにしつつ、ロックやヒップホップを融合させて多くの楽曲を制作してきたというように、様々なエッセンスを昇華させた彼だからこその上質なポップ・ミュージックを奏でている。そんなメロディに乗せて歌われる歌詞は無意識に心の奥にまで入り込んでいく。ボカロ出身だなんて......と聴かずして文句を言う前に、聴いてから御託を並べてほしい。

WOOLLY

さとうもか

WOOLLY

インディーズ時代から早耳の音楽リスナーやクリエイターの耳と心をくすぐり、その曲で虜にしてきたさとうもか、待望のメジャー1stアルバム。ふとした時間に、街並みやそこに漂う香りに、無防備なときに聞こえてくる音楽や誰かの仕草に、蓋していた想いや誰かの面影がまた身体中で弾けてしまう。ほろ苦さと同時に、そんな自分に悔しさやみっともなさすら抱いてしまう瞬間をも、きらびやかに、ポップに、クールに、あるいはちょっとビザールな世界観で彩って、気持ちの置きどころを作ってくれるマジカルで爽やかな令和のシティ・ポップが詰まっている。ベッドルーム・サウンドからバンド・アレンジ、ESME MORIなど様々なアレンジャーとのグルーヴもふわりとステップを踏んでエアリーに乗りこなすヴォーカルもまた、気持ちがいい。

2FACE feat.SKY-HI

さなり

2FACE feat.SKY-HI

18歳のラップ・アーティスト さなりの最新シングル。表題曲はさなりが尊敬するSKY-HIをフィーチャリングし、浮遊感のあるトラックが印象的な楽曲に仕上がっている。10代の終わりの多感な時期にコロナ禍で活動を制限され、アーティストとしても苦悩の中にいたであろうさなりへ宛てた手紙のようなSKY-HIのリリックは包容力に溢れ、さなりの代表曲「Prince」から引用したようにも取れる"俺はお前のヒーロー/だけどお前は俺のプリンスさ"というフレーズが優しく響く。それを受けたさなりのヴォーカルにも体温のある繊細さが感じられ、アーティスト同士の真心の交歓に、聴き手も思わず励まされるに違いない。たくましく進化を遂げるさなりの、マイルストーンに相応しい1枚。

ネオフューチャーメンヘラ

さめざめ

ネオフューチャーメンヘラ

"人が言う幸せに共感が湧きづらい"という笛田サオリの、圧倒的にドキュメンタリーな生き様が刻まれていて、かっこいいニュー・アルバム。10年間の筋の通った活動が結実した「一生あたし女の子宣言」で文字どおり"宣言"し幕を開ける。Track.2には後藤まりこが参加しており、ストリングスに電子音を重ねた懐かしい香りもするポップ・チューンに、悶々とした感情と戦ってきた笛田と同世代の後藤の声が重なるコラボには、ときめき、勇気づけられずにいられない。歪んだベース×ギラついたシンセ×澄んだピアノがヒリヒリするTrack.7、カウベル音がコミカルに彩るTrack.9など、サウンドの彩りの鮮やかさでも楽しませてくれるが、つまりはただ、正々堂々と好きなものを好きと言いたいだけなのだ。