DISC REVIEW
カ
-
-
鴉
夢
秋田県出身の鴉の3曲入りメジャー・デビュー・シングル『夢』。秋田県のライヴ・シーンでは絶大な支持を集めていた彼らの音楽性は、自ら激情、激唱型と謳うように、熱いヴォーカルと確かなバンド・アンサンブルを備えたエモーショナル・ロック。テレビ東京系テレビドラマ『怨み屋本舗 REBOOT』の主題歌にも抜擢されたリード・トラック「夢」は、疾走感のある攻撃的なサウンドと歪な歌詞が印象的なヘヴィー・チューン。「君がいない空」「残像」は、対照的にシンプルなバンド・アンサンブルとVo近野の歌唱力の幅広さと曲の良さが際立つ、穏やかなラヴ・ソング。これからじっくりアルバム作りに取り組むという彼らのエモーショナル・ロックがどういう進化、深化を見せていくのか、注目だ。
-
-
カラスは真っ白
バックトゥザフューチャー
1年ぶりの新作となる2ndフル・アルバムはメンバー全員が作詞作曲を手掛けている。完全ノー・コンセプトであるというのに、まったくキャラクターの異なる楽曲が揃い、映画のようにドラマチックに展開。結果的として"ポップの現在過去未来"という言葉に集約される作品になったのは、活動初期にコンセプチュアルな制作方法を貫き磨き上げた実力だ。ポップ、ロック、ジャズ、ファンクなど様々なジャンルの様々な時代性を含み新しい音楽を生み出す、名は体を表す作品である。何よりメンバー全員の音楽愛が爆発するテクニカルで躍動的、知的でやんちゃなサウンドスケープが痛快。ヤギヌマカナ(Vo/Gt)のヴォーカルもカラフルな楽曲とシンクロして様々な表情を見せ、特に時折見せる色気には女でも思わずドキッとしてしまう。
-
-
カラスは真っ白
ヒアリズム
彼女たちの音楽への知的好奇心は留まることを知らないのだろう。過去にミニ・アルバムを3枚、フル・アルバムを1枚リリースしているカラスは真っ白の4thミニ・アルバム、過去最高に音色豊かだ。ファンクとポップを掛け合わせた楽曲のトータル・バランスも、フレーズひとつひとつも知性が滲み出ているのだが、それだけじゃない感情的なダイナミズムがあるところが、このバンドがロック・バンドだと知らしめるところ。バラエティ豊富な楽曲同様に、曲によって違う表情を見せるヤギヌマ カナ(Vo/Gt)のヴォーカルが活き活きとしており、それによって音のすべてが無敵と言わんばかりに輝いている。聴いているこちらにも、その煌めきが伝染してくるようだ。さらに強く逞しくなるバンドを十二分に感じられる。
-
-
カラスは真っ白
HIMITSU
脳みそだけを刺激する音楽も、体だけを刺激する音楽も、たくさんある。しかしカラスは真っ白のように、脳みそと体を同時に刺激する音楽はそうそうない。しかし、それこそが本来のポップのあるべき姿。観念と身体の相関関係なくしてポップとは呼べず。というわけで、前作『おんそくメリーゴーランド』から約7ヶ月ぶりのミニ・アルバム。前作で見せた雑多な音楽性は鳴りを潜め、むしろ"ファンク×ポップ"というバンドの主軸をソリッドに研ぎ澄ませた全5曲。体を揺さぶる屈強なグルーヴとキャッチーなメロディ、そして思考を刺激するシュールでミステリアスな言語世界が一塊となり、より高次元のファンク・ポップとして昇華された楽曲が並ぶ本作は、このバンドの魅力を過去最高にストレートに伝える1枚に仕上がっている。
-
-
カラスは真っ白
おんそくメリーゴーランド
ファンキー・ポップ・バンド、カラスは真っ白の2ndミニ・アルバム『おんそくメリーゴーランド』は、そのタイトル通り、まるで遊園地に連れて行かれたような浮遊感とワクワク感が詰まった作品になった。ヤギヌマカナ(Vo/Gt)のキュートなウィスパー・ボイスは今作も冴え渡り、冒頭の「サーカスミラー」から一気に駆け抜け、ラストを飾る「雨傘パレット」では一転してメロウなサウンドに思わず酔いしれてしまう。若手アニメーション・クリエーター植草航が手掛けているリード曲「fake!fake!」のMVは、曲の持つスピード感がアニメーションと相まった圧巻の仕上がりで、アルバムの持つ世界観をより奥深く広げている。エンターテインメント性に溢れた快作だ。
-
-
カラスは真っ白
かいじゅうばくはつごっこ
2010年に札幌で結成された4人組ファンク・ポップ・ロック・バンドの1stフル・アルバム。冒頭の「無農薬ファンク」から男性メンバー3人の“超絶技巧派”な演奏がテンション高くアルバムの幕を開けるが、続く「メニー・メアリー」で登場するヴォーカル&ギターのヤギヌマ カナの個性的で可愛らしいウィスパー・ボイスに良い意味でヘナヘナと脱力。部屋の中で夢想しながら呟くようなラップ調の「かいじゅうファンク」あたりはどうしても相対性理論からの影響を色濃く感じてしまうが、スラッピング・ベースを多用したサウンド面ではこちらの方がはるかにタイトで重量級。素直にポップスしている「ねむれないマスカレード」のメロディ・ラインとオールドR&B調のバンド・アレンジが出色なだけに、この路線でもっと聴かせてほしい!
-
-
カラスは真っ白
すぺくたくるごっこ
耳に飛び込んできたのはキュートなウィスパー・ヴォイス。けれどもウィスパーと聴いてぱっと思い浮かぶようなアンニュイな癒し系とは一味違う。こんなにポップでハイテンションなウィスパー・ヴォイスがかつてあっただろうか。そして、その歌詞とメロディのセンスはまさに“不思議ちゃん”。これは癖になる。勿論、楽器隊だって負けてはいない。ご機嫌なギターとグルーヴィなベース、そして思わず上手い、と唸らずにはいられない安定のドラムがしっかりとバンドを支える。北の国からやってきた注目の新人バンドのデビュー・ミニ・アルバム。そのバンド名とは裏腹に、サウンドはカラフルでファンキー。ひと度その再生ボタンを押せば、まるでキャンディ・ドロップを手にした子供のようにわくわくした気分を味わえるに違いない。
-
-
カラーボトル
COLOR BOTTLE
カラーボトルのフル・アルバムとしては1年半ぶりとなる新作。昨年自主レーベルからリリースされたミニ・アルバム『情熱のうた』をリリース後、インディーズ時代からのメンバーでありリーダーでもあった穐元タイチ(Ba)が脱退。今作が制作されるまでの過程は決して平坦ではなかっただろう。しかしどうだ、アルバムの1曲目、イントロからのリフが印象的な「SHOW」から、このアルバムは今の彼らを体現した熱に満ちた楽曲で溢れている。 "光照らすステージの主人公はあなただ"――音楽は常にバンドで完結するものでは無い。聴いて、感じ取ってくれるリスナーと完成させるものだ、という一貫した彼らの思いがこの言葉に詰まっている。自身のバンド名を題した今作。彼らの思いを、音を、ぜひ受け止めていただきたい。
-
-
カラーボトル
情熱のうた
正直、カラーボトルがこんなにロックバンドだなんて意識したことがなかった。バラードの楽曲が秀逸、そんな印象を持っていたバンドだった。だが、このミニ・アルバムからあふれ出すアツい叫びはロック以外のなんと呼ぼうか。自分の心の声に正直に、リスナーにまっすぐにぶつかっている。かっこ悪い自分を認めたからこそ、がむしゃらに壁に立ち向かい、それがカッコいいと自らの姿を持ってして伝えてくれる。音楽を始めた頃のワクワクした気持ち、それを今、また改めて手にしたカラーボトルに怖いものなんかない。良く作られた音ではなく、この曲たちのように人の魂を揺さぶる音こそがいつの時代も世界を変えるのだろう。全身全霊を音に込めるその姿勢、まぎれもなくロック!!
-
-
かりんちょ落書き
レストラン
"自由形ロックンポップス"を掲げるSSW かりんちょ落書きの今までを詰め込んだ1stフル・アルバム。爽やかなラヴ・ソング「溶けあうくらい」、八方塞がりな状況をポップに歌い放つ「Dari」、若者に向けた青春ロック「少年」、まどろむ昼下がりの空気感を閉じ込めた「昼中電車」など全11曲が収録された。ロックの熱量とポップスの軽やかさを併せ持ち、ノスタルジックな雰囲気を醸しながらもどこか新しい。そんなまさに"自由"な音楽に乗せられたのは、"伝えたい"という思いを軸に綴られた澄み切った言葉たち。そのフレーズは繰り返されるほどに味わいを増し、特にラストを飾る「又、風呂に入れない夜」では、絶望を希望に変えていく歌のエネルギーに圧倒される。「(SANPO Brake)」でチラ見せされた、小粋でポップな新境地にも期待。
-
-
かろうじて人間
ゾウさんが殺す
harogi(Gt/Vo)を中心に2015年に結成されたばかりという、4人組ロック・バンドの初めてのリリースとなる1stミニ・アルバム。バンド名もアルバム・タイトルも気になるうえに、アー写もマスクを被っているためまったく素性がわからない。ただ、そのおかげで曲を聴いてどんなバンドか知るしかなく、自ずとじっくりアルバムを聴くことになるのは作戦だったのだろうか? Track.3「高円寺、吉祥寺、深大寺」、Track.5「鮟鱇の骨まで凍てて」などの文学的、且つ、内省的な歌詞とポスト・ロック的な各楽器の演奏とのギャップが面白い。ギターを中心とした表情豊かでエモーショナルな演奏で歌われるTrack.8「ひとりになったり、ふたりになったり」が人間味に 溢れていて沁みる。
-
-
河内REDS
オリオン座
地元大阪を中心にファン・ベースを築き、2018年に"関西発!才能発掘TVマンモスター+"のバンド・オーディションでグランプリを獲得し、2019年8月にメジャー・デビュー。数々のフェスにも出演するなど、今最もキテいるバンドのひとつとなった"河内REDS"。メジャー・デビュー作となった前作シングル『東京ガール』に引き続き、寺岡呼人による全面プロデュースも話題の今作は、さらに踏み込んで彼らの魅力を知ることができる作品だ。全編にわたる、どこか懐かしいフォーク・ソング的な等身大の詞世界と、ポップにロックにパンキッシュに、カントリー風に懐メロ風に、くるくると様相を変える音楽性。瑞々しいコーラス・ワークも歌メロのキャッチーさを引き立てていて魅力的だ。
-
-
感覚ピエロ
色色人色
感覚ピエロが初のフル・アルバムをリリースすると知ったときの最初の感想は"おっ、やっとか!"。幅広い曲調を持つこのバンドは、フル・アルバムでこそ本領を発揮するのでは? と思っていたからだ。実際、本作はどこまでも色鮮やか。いきなり始まるゴリゴリのダンス・ナンバーにひっくり返り、疾走感溢れるサウンドに拳を握りしめ、おバカな下ネタに笑い、バラードにグッと心を掴まれる。全13曲の根底にあるのはアルバム・タイトルにも表れている"多様性を肯定する"ということ。シリアスになりがちなこのメッセージを、振り切った表現で、どこまでも楽しく鳴らせることが彼らの強みだろう。4人が好き勝手に大暴れすればするほど、勇気づけられる人は確かにいる。だからそのまま、突き進め!
-
-
感覚ピエロ
等身大アンバランス
自主レーベル"JIJI RECORDS"でのDIYな活動にこだわりながら、今年は全国ツアーに東名阪Zeppワンマンも控えるという急成長の感覚ピエロ。すでにライヴで披露されている表題曲やMVが公開されている「加速エモーション」を含む全5曲入りのミニ・アルバムは、これまで以上に解放的でダイナミックなアプローチがバンドの進化を感じさせる1枚になった。全員が曲を作れるマルチ・プレイヤーが揃ったバンドだが、今作はレーベルの代表でもある秋月琢登(Gt)と横山直弘(Vo/Gt)がメインのソングライティングを担当。脇目も振らずに未来へと突き進んでいく力強いメッセージが多いのもバンドの現状と重なる。キャッチーなメロディからノリの良いビート・ソングまで、リスナーの快感ポイントをズバリ射抜く感覚ピエロの抜群のセンサーは今作でも遺憾なく発揮されている。
-
-
感覚ピエロ
不可能可能化
インディーズながら、日本テレビ系ドラマ"ゆとりですがなにか"の主題歌に「拝啓、いつかの君へ」が抜擢され、劇中で「O・P・P・A・I」(2015年リリースの1stミニ・アルバム『Break』収録)が効果的に使われるなど、世の中をざわつかせる感覚ピエロ。最高な状況での2ndミニ・アルバムのリリースであり、シニカルで青臭い姿勢はそのまま。「拝啓、いつかの君へ」でバンドを知ってこのアルバムを手に取った人のための優しい保険みたいなものは1ミリもかけずに、全8曲8様で振り切っている。"感覚ピエロとは何者か"の確たる答えをはぐらかすような作品。今回はメンバー全員が歌詞を書いているのも大きいが、聴き手それぞれで違う"感覚ピエロ像"があって、真面目さも不真面目さも琴線に触れるなど、とても人間臭い矛盾を孕んだ面白さが凝縮された内容だ。
-
-
感傷ベクトル
君の嘘とタイトルロール
1stフル・アルバム『シアロア』から2年以上の時を経てリリースされる2ndフル。この期間、作詞作曲編曲すべてを担当する田口囁一は、漫画執筆を行いながらライヴやイベントにも積極的に参加するなど、これまで以上にハイブリッドな活動をしてきた。『シアロア』は漫画やムービーとリンクするなど明確なストーリー性が強いものだったが、今作は田口本人の感傷なのか、それともどこかの誰かのそれなのか、音と言葉で我々を感傷ベクトルという深い深い空間へと手を引く。人間の心の脆さや繊細さを投影したような不安定だが美しいメロディと、田口の消え入りそうな透明感のあるヴォーカルはより西洋の童話のように神秘的な佇まいを持ち、サウンドからは余分な力が抜けた印象。サポート・メンバー含め5人の呼吸が通う、人間味溢れる作品になった。
-
-
感傷ベクトル
エンリルと13月の少年
5月から別冊少年マガジンにて新連載"フジキュー!!!"をスタートさせる漫画家、田口囁一(Vo/Gt/Pt/作画)と春川三咲(Ba/脚本)によるハイブリッド・ロック・バンド、感傷ベクトルの1stシングル。表題曲は2台のグランド・ピアノによる優雅で緊張感のあるリフと強攻でテクニカルなバンド・サウンドが交錯するロック・ナンバー。彼らの音楽は透明感のなかにどこかふつふつと湧き上がる怒りや悶々とした思いが佇んでいるが、「エンリル~」ではその気持ちを抱えつつ"遠くへ"と光を求め駆け出している。これは大きな変化だ。繊細なリズムを持つメロディと決意に満ちた歌詞、意義深いタイトル、各パートを効果的に響かせるアンサンブル、全てが堂々と響く。彼らは大きな光を掴んだのかもしれない。
-
-
完全にノンフィクション
※この音源は完全にノンフィクションです。3
3ピース・バンドとしてリスタートを切った、完全にノンフィクションの3rdミニ・アルバム。この3人にメンバーを固定したことも、"ギターはフィンガーとスラップのみ、ベースはピック弾きのみ"と演奏法を限定したことも、今の彼らにとっては"抑制"ではなくむしろ"解放"。そんなバンドの風通しの良さが、全5曲における疾走感となって表れた。自らの活動すべてが表現に繋がるのだと語り、完全DIY精神でやってきたバンドだからこそ表現の海に溺れてしまう危険性があるが、その結果が2014年の活動休止だったのかもしれない。しかし、彼らは帰ってきた。別所英和(Gt/Vo)はずっと被っていたあのお面を脱ぎ捨てた。一切の迷いを断ち切ったその姿を、真正面から受け止めるべし。
-
-
完全にノンフィクション
※この音源は完全にノンフィクションです。
“完全”という言葉は、そう容易く使えるものではない。それをバンド名に持ってくるのは並ならぬ覚悟なのではなかろうか。とはいえ、この策謀の中心人物である別所英和は格段に特別なことを歌っているわけではない。だが、彼が本来持っているセンスはいい意味で少々(否、大分?)鬱屈している。騒がしくも清涼感に溢れたギターと変拍子、あどけない声が時折紡ぐ関西訛りが、シニカルな視点と合致して小気味良い。そのフラットでありながらも独特な情景が聴き手の中に入り込み、若かりし頃の記憶をエグいところまで引きずり出すのだ。彼の心のシャッターが切り抜くノンフィクションと、自分の記憶の奥に潜むノンフィクションが重なったら、最後……。彼らが描く現実から自らの現実に帰るのは、なかなか至難の業である。
-
-
神田莉緒香
愛と叫びたいんだ
本間昭光(Pf)、サカタコスケ(Engineering)、飯田高広(Prog)、中村タイチ(Arrange)というbluesofaのクリエーターの面々、そしてエンジニアには伊東俊郎(Recording/TD)という、様々なアーティストに携わってきた豪華な布陣にバックアップされて完成した1曲。ピアノを主体とした柔らかなトラックの上で、彼女がまっすぐに考え抜いた"愛"の定義が綴られていく。エモーショナルに暴走しても、哲学的な迷路に入り込んでもおかしくないようなテーマだが、素直な人間性が垣間見える歌詞になっており、さらにそれを丸みがある声で丁寧に歌い上げているので、とても聴きやすい。それを達人たちが卓越したポップ・センスで包み込むことで、耳にすーっと染み込んでくる。ミュージシャンに愛されるシンガー・ソングライターということで、実力は折り紙つき。これからも注目していきたい。
-
-
Curly Giraffe
FLEHMEN
歌、演奏、そしてジャケット・デザインまでひとりで手がける謎のベーシストCurly Giraffe。5作目にして初のメジャー・リリースとなる。タイトルの“FLEHMEN”とは動物が本能的に行う仕草という意味だそう。その名の通り、本能的にのびのびとした気持ちの良い楽曲揃いである。爽やかであたたかいメロディに乗る英語詞、優しく奏でられる楽器たち、美しいハーモニー……のどかな草むらで感じる春のそよ風に身を任せているような気分に浸る。聴き終えた後は、心も体も浄化され身軽になった。大量の情報が交錯する中、目にも止まらぬ速さで動き続ける我々に“ちょっと休憩でもいかがかな?”と優しく微笑むような包容力とリラクゼーション。大人の余裕ってこういうことを言うのかも。
-
-
ガガガSP
THEガガガSP
タイトルからも覚悟や自信が窺える25周年のガガガSPが全身全霊で放つ意欲作。"これぞガガガSP!"と両手を挙げたくなる青春パンクもキャリアとスキルを生かしたプレイやアレンジ、抜群のコーラス・ワークで聴かせる楽曲に仕上がっていたり、歌や詞も、過去も現在も受け入れたうえで進もうとするポジティヴなエネルギーに満ちていたりと、"今が一番カッコいい!"と言いたくなる。「これでいいのだ」で勢い良く始まると、ユーモアや世知辛さもトッピングしたパンク・チューンに高ぶらせ、「ロックンロール」、「遠い遠い」でこれからに大いに期待させて幕を閉じる今作。聴き終えて様々な感情が入り組むなか1曲目に戻ると"いろいろあるけどこれでいいのだ"と大納得。そして2周目へと突入する無限ループにハマっていくのであった。
-
-
ガガガSP
ストレンジピッチャー
まさにタイトル通りこれまで剛球ストレート一本槍だった投手が変化球を覚え、それを交えて投球しているかのような1枚だ。約5年ぶりのオリジナル・アルバムは、実に40代を迎えた彼らならではの内容。従来の"勢い重視のいてまえ突っ込み打線"を想像して聴くも、まずはその逆とも称せる世界観が続き、それが徐々に彼ら本来の"これ! これ!"と蘇っていくそのストーリーも興味深い。楽曲をコザック前田(唄い手)からメンバー各位、中でもギターの山本 聡に委ねた移行による過去作風とはまた異なる手触りや肌触り、バラエティさも楽しめる今作。従来の哀愁性やノスタルジックさはそのままに、やりたいことややるべきこと、変化すべき面と不変を保つべき面が同居した、まさにこれまでとこれからが感じられる作品だ。
-
-
ガガガSP
ミッドナイト in ジャパン
ウディ・アレンのオシャレ映画"ミッドナイト・イン・パリ"に対抗した、ガガガSPの"汚"シャレなミニ・アルバム。「かなわない夢」を始め、メンバーそれぞれが作詞作曲を手掛ける楽曲たちは熱く女々しくメロディアスにと、それぞれの強い個性を放ちながら、泥臭いロック・サウンドとコザック前田(Vo)の男臭いヴォーカルにより、"ガガガ節"としか形容しようのない楽曲へ昇華。いいことばかりではない日常の喜怒哀楽を歌い続けてきた彼らが、キャリアと年齢を重ねた現在だからこそ歌える悲哀や仄かな希望を歌った楽曲たちは、説得力を持って胸に響く。ラストに収録された「ミッドナイト in ジャパン」は、そんな様々な感情が深夜の闇に飲みこまれてしまうような不思議な感覚に陥り、今作の意外な面白みも感じさせてくれた。
-
-
がらくたロボット
ツキノアリカ
いよいよ本格始動していくというがらくたロボットの1stフル・アルバム。オープニングからエンディングまで、研ぎ澄まされたバンド・サウンドでダイナミックに聴かせている。本物の産声を収録した8分の6拍子の短い英詞曲「産叫」に始まり「ツキノアリカ」まで、パンク、ガレージ、モータウン風ポップス、ブルース、8ビートのシンプルなロックと、3ピースで考えうるアレンジを目一杯やって楽しませる娯楽作でもあるが、"今見ている月は太陽に見せられている月で人それぞれ違う月を見ている"という表題曲のメッセージには、衝動的なロックの人のようで、実は冷静に作品を見つめ、表現の幅広さも持っているヤマモトダイジロウ(Vo/Gt)が描く世界の奥深さと繊細さを感じる。
-
-
がらくたロボット
BREAK OUT
神戸を拠点に活動する3ピース・ロック・バンドの新作は、パンク・チューン「Lonely It's Alright」で勢いよく飛び出して、バラード「ハネル」で幕を閉じる全6曲。ピックが弦に深く当たっている感じの骨太なギター・サウンドは、王道のロックのようでいて音楽シーンのメインストリームではほとんど聴くことができないサウンドだ。「Bye Bye Baby」の毒っ気とユーモア、ツボを心得たアレンジなどからは、若くしてロックへの造詣が深いことが窺える。1枚を通して聴けば単なる衝動だけでなく、『BREAK OUT』というひとつの作品としてコンセプトと意思を持ったアルバムであることがわかるはず。エンディングにはこの先へと続く余韻がある。
-
-
がらくたロボット
GOOD-BYE THE SUN
ヤマモトダイジロウ(Vo/Gt)を中心に結成、2015年に現メンバーが揃い精力的なライヴ活動を行っている3ピース・バンドのミニ・アルバム。遠藤ミチロウ、SA、STANCE PUNKSといった大先輩ミュージシャンと同じステージに立っていることからもうかがえるように、周囲の若手とは異なる音楽志向を感じさせる。単純明快なパンク・バンドかと思ったら大違いで、定番のリズムで歌う「ディストーション」のポップなメロディや、振り切ったガレージ・サウンドを聴かせる「リケルトン・ブック」、「街」の凝った曲構成と迫力ある演奏は実力派バンドの片鱗を感じさせる。オールディーズを現代にアップデートしたような表題曲「GOODBYE THE SUN」が特にカッコいい。今後、バンドの名前を聞くことが増えることになりそうな快作。
-
-
硝子越しの暴走
光
アグレッシヴなステージングでライヴハウス界隈を中心に話題を集めている3ピース・ガールズ・バンド、硝子越しの暴走の2ndミニ・アルバム。暗闇を暴くような鋭いサウンドとともにどうしても諦めきれない希望を歌っていく様は紛れもなく彼女たちのリアルだが、その点に関してはこれまでの作品と変わりない。しかし、本作がかつてなく強い説得力を持っているのはなぜか。それは"新たな一歩を踏み出す人の背中を押すような音楽を鳴らしたい"と語る彼女たち自身が、この作品を完成させる過程で葛藤と挑戦を繰り返しながら突き進んできたからだ。表現者としての新たな扉を開いた先で掴み取ったその"光"はきっと揺るがない。そんな確信と、バンドにとっての数々の可能性に満ちた1枚だ。
-
-
トゲナシトゲアリ
運命に賭けたい論理
東映アニメーションによる完全新作オリジナル・アニメ"ガールズバンドクライ"。同作の劇中に登場する5人編成のガールズ・バンド、トゲナシトゲアリが5thシングル『運命に賭けたい論理』をリリースした。アニメと連動するリアル・バンドは今やそう珍しくないが、本プロジェクト最大の特徴は、バンドを先に走らせて知名度を上げた状態からアニメが始まるという点。本作の音楽プロデューサーを務める玉井健二(agehasprings)が"極めて稀有な逸材"と太鼓判を押す理名(Vo)の力強いヴォーカルは本シングルでも遺憾なく発揮されている。彼女たちの"最新型"を存分に堪能することができる1枚。
-
-
岸田教団&THE明星ロケッツ
転生したら剣でした
ヲタ界隈とロック・シーンの狭間という、ニッチな領域で希有な存在感を醸し出してきた岸田教団&THE明星ロケッツの最新作は安定のアニソン。しかも、今作表題曲は彼らにとって実は初の異世界転生モノの主題歌になるそうで、すでにアニメ"転生したら剣でした"のOPとして絶賛放送中となる。突如として剣に転生した主人公が、異世界で猫耳少女と出会い展開していく物語を描いた曲ではあるものの、"セカイが輝いていく方へ 掴み取る"剣"(ミライ)"という歌詞、そして切れ味鋭いバンド・サウンドは、今の時代の中においてもリアルな説得力を持ったものとして響いてくる。また、カップリングの「TIME FLIES.」も微妙に表題曲に寄せた詞の内容となっている模様。アニソン・シングルとしてまるで隙なし。
-
-
岸田教団&THE明星ロケッツ
Super Pro Max Ti
1ミリのブレもないままヲタ趣向を発揮し続けるロック・バンド、岸田教団&THE明星ロケッツが、ベスト・アルバム『異世界転生したらベストアルバムでした。』に引き続くかたちで、早くも新しいアルバムを発表した。今作は2021年10月に開催された[LIVE TOUR 2020 "厳かに祭典"]のライヴ音源と、新曲「TRIGGER」からなる全15曲をパッケージしたもの。なお、初回限定盤特典Blu-rayには、2021年4月に行われたイベント"岸田さんがライブハウスでレコーディングする"のドキュメント映像と、「TRIGGER」をレコーディングした際の映像も計172分にわたって収録されるという。メジャーからのリリースとは思えない、相変わらずなヲタ全開のアートワークがまた素晴らしい(褒めてる)。
-
-
岸田教団&THE明星ロケッツ
異世界転生したらベストアルバムでした。
秀逸なタイトルどおり、今作はメジャー・デビュー以降の楽曲をまとめた1枚。同時に、リーダーである岸田(Ba)が、"とある科学の超電磁砲T"への限りないリスペクトを音にも詞にも全力で込めたという「nameless story」を筆頭に、これまでに彼らが手掛けた全アニメ主題歌たちがオリジナル音源にて収録されているため、音楽ファンのみならずアニヲタの方々にも堪能していただける内容であると言えるはず。一方で、メジャー・デビュー曲「HIGHSCHOOL OF THE DEAD」を再RECした「HIGHSCHOOL OF THE DEAD[2021]」をはじめとして、様々な過去曲が再録されている点も興味深い。入門編としても最適なうえ、コレクターズ・アイテムとしての存在感も強い2枚組。
-
-
岸田教団&THE明星ロケッツ
nameless story
好きこそものの上手なれ。ひと口にアニソンと言っても、世の中には様々な生い立ちを持ったものがあるのも事実だろう。その点、今シングル表題曲は岸田教団&THE明星ロケッツが、アニメ"とある科学の超電磁砲T"への限りないリスペクトを音にも詞にも全力で込めたものになるという。と同時にこの曲は、LiSAの「紅蓮華」を作ったことでも知られる、草野華余子とのコライトというプロセスを経ての制作が行われたという点も、一大トピックスではあるが、アニソン文化を愛するロック・バンドだからこそ作り上げることができるこの音世界の有り様は、極めて鮮やかのひと言。なお、c/wの「暁のカレイドブラッド」はアニメ"ストライク・ザ・ブラッドIV"OP曲。すなわち、これは極めてヲタクみの濃い1枚なのだ。
-
-
岸田教団&THE明星ロケッツ
REBOOT
岸田教団&THE明星ロケッツは今作をもって、文字どおりバンドとしての"REBOOT"を果たしたことになるはずだ。リーダーである岸田(Ba)の思惑がより忠実に具現化されることになったせいか、今作では各曲における音楽的意思伝達率が格段に飛躍している印象が強い。また、ichigoのヴォーカリゼーションもこれまでにないほどまっすぐなベクトルを持ったものとして聴こえてくる。中でも、フィクションとノンフィクションが交錯する「Decide the essence」、事実上のタイトル・チューン「Reboot:RAVEN」、そして作品を締めくくる「stratus rain」から「Code:Thinker」にかけた流れは相当に秀逸で、その手腕の鮮やかさに唸らされること請け合い。"REBOOT"、ここに完遂!
-
-
岸田教団&THE明星ロケッツ
シリウス
ひと際の輝きを見せながら、全天で最も強い光を放つシリウスの如く。今回のシングルにおいて彼らが提示しているのは、アニメ・タイアップ曲ならではの劇的な物語性と、彼らならではの求道的な姿勢を見事に貫いた、個性と魅力に溢れた楽曲たちだ。ichigo(Vo)の可憐さと優美さとパワーを称えたヴォーカリゼーションが映える表題曲「シリウス」の完成度もさることながら"もし、表題曲と同じアニメでED曲も作ることになったら?"なる想定のもとで作られたというカップリング曲「stratus rain」が、また実になんとも興味深い。いずれの楽曲も、将来的な音楽シーンの変革や岸田教団&THE明星ロケッツの今後に向けた展開まで考慮しながら制作したというだけあり、そこはかとないモダンさが漂うところもさすが。
-
-
岸田教団&THE明星ロケッツ
ストレイ
何かに夢中になればなるほど、その対象いかんに関わらず人はきっとヲタク化してゆく。同人界隈で名を馳せるところからスタートした彼らは、今やその強烈なバンド・サウンドをもってジャパニメーションの世界を鮮やかに彩る希有な存在となっているわけだが、今作の表題曲「ストレイ」についてもアニメになった際のコマ割りや、絵コンテの切りやすさ、詞の面での物語との親和性までをすべて考慮しながら制作されたのだとか。また、その表題曲と対になるかたちで"勝手に挿入歌の体で"作ったというc/w「sleep walk」も、アニメの主人公とは別のキャラからの視点で描いたというからさすが。特濃のオリジナリティと盤石の音像を下敷きにした究極のアニソンは、ガチ勢のヲタクだからこそ作り得る逸品なのだ。
-
-
岸田教団&THE明星ロケッツ
LIVE YOUR LIFE
2007年にバンドとして始動した4人組の、メジャー・オリジナル・フル・アルバムとしては2年3ヶ月ぶりの新作。4曲のアニメ・タイアップを含む全12曲で構成されたアルバムは、タイトルにもあるとおり"あなたの人生を生き抜け"という強いメッセージが込められている。グランジやハード・ロック、オルタナを基盤にしたサウンドもそのメッセージを引き立て、これまでで最も言葉が伝わるアレンジが施されているところも特徴的だ。ichigo(Vo)が作詞作曲を務めた「vivid snow」はR&Bの要素とロックの要素が融合した楽曲に。サウンドとしてもメンバーのバックグラウンドを感じさせるものから新しい方法論を生んだものまであり、10年を迎えたタイミングに相応しい堂々たる作品になった。
-
-
キタニタツヤ
ROUNDABOUT
2023年を彩ったヒット曲「青のすみか」で"NHK紅白歌合戦"への出場も果たしたキタニタツヤ。タイアップ曲満載の前作『BIPOLAR』から強めた大衆へのアプローチが見事に結実した今、約1年半ぶりとなる待望のアルバムをリリースした。絶望に寄り添いながらも生きていてほしいと願いリスナーと固い約束を交わす「私が明日死ぬなら」を筆頭に、死を意識することで生への希望を見いだしていくような楽曲たちは、注目を集める今だからこそこれまで以上の訴求力をもってより多くの人々を救うことだろう。また「Moonthief」といった挑戦的な楽曲からは、まだまだ進化を止めない彼の計り知れない可能性が感じられる。そしてヒリつくエンディング・ナンバー「大人になっても」では本音を曝け出し、終幕を飾る強烈な捨て台詞がぶっ刺さる。
-
-
キタニタツヤ
青のすみか
SSWとしてはもちろん、他アーティストのサポートや楽曲制作/提供などマルチに活躍するキタニタツヤが、EP『青のすみか』をリリース。TVアニメ"『呪術廻戦』「懐玉・玉折」"のOP主題歌として書き下ろされた表題曲は、物語でフォーカスされる五条と夏油の姿が頭に浮かぶ。戻れない過去を彷彿とさせる歌詞や学校のチャイムの旋律を用いたスキャットなどで彩られる儚い青春ナンバーとなっており、"呪術廻戦"ファンのみならず青春時代を通ってきた人たちも唸らせるに違いない。Mizoreと共同編曲した「素敵なしゅうまつを!」、コラボEP『LOVE: AMPLIFIED』より「ラブソング feat. Eve」のセルフ・カバーも収録。キタニの真骨頂と言えるオルタナティヴ・ロック・サウンドにも注目してほしい。
-
-
キタニタツヤ
スカー
新EP『スカー』は、とにかくコンセプチュアルな作品だ。"週刊少年ジャンプ"で15年間連載された人気漫画"BLEACH"の生誕20周年を記念して開催された原画展"BLEACH EX."のテーマ・ソングとして書き下ろした「Rapport」、展示イメージ・ソングの「タナトフォビア」。"BLEACH 千年血戦篇"OPテーマのために作った「スカー」、同時期に作った「永遠」。どれもが"BLEACH"の世界観を巧みに表現し、そこにキタニ自身の人間愛、死生観、哲学も見事に反映している。さらにインスト曲「Insel」では「Rapport」の特徴的なリフが盛り込まれており、楽曲への解釈をより深めてくれる。類稀なソングライティング力、作品全体のプロデュース力が遺憾なく発揮された1枚。
LIVE INFO
- 2025.08.02
- 2025.08.03
- 2025.08.04
- 2025.08.05
- 2025.08.06
- 2025.08.08
- 2025.08.09
- 2025.08.11
- 2025.08.12
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
ASP
Skream! 2024年09月号