DISC REVIEW
ア
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荒井岳史(the band apart)
sparklers
the band apartの荒井岳史(Vo/Gt)のソロのパイロット版的なミニ・アルバム。オリジナルはもちろん、バンアパ・ナンバーの日本語によるセルフ・カヴァーも大いに聴きどころ。元来、自然にキャッチーなメロディを書く彼の資質を引き出す、シンプルなアンサンブルの「駆け抜ける蒼」、アコギにリアレンジされたことと日常の心の動きをビビッドに捉えた歌詞がいいセルフ・カヴァー「写真」、サザン・ロックを想起させるシンプルなインタールードを挟んで、明度がぱっと上がる「ループ&サマー」、フォルムこそ違えど曲そのものの良さは不変であることを示唆する「Kと彼の自転車」、素朴な味わいのピアノが美しいラストの「虹」。いい意味で秦基博や大橋トリオ好きのリスナーにも響きそうな強度を備えている。
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あらいやかしこ
WHY
あらいやかしこの、実に約6年ぶりとなる最新アルバム。ボカロPとしても活躍する梨本うい(Vo/Gt)が制作したボカロ曲をバンド・アレンジするあらいやかしこだが、ラウドでノイジーなサウンドに、梨本の感情的なヴォーカルで表現する楽曲たちは全くの別物。クソみたいな日々や自分を受け入れた上で、自己否定感や自身への苛立ちを爆音でぶっ飛ばす。「絶叫モブB」の"笑うんだ ほら開き直っては笑おうぜ"という一節のように、怒りや諦めの先にある開き直りの境地まで辿り着いてる感さえある歌や音が、鋭く深く心に突き刺さる。全曲一発録り、わずか6~7時間で録音したという今作に感じる、ヒリヒリとした緊張感やライヴ感もロック・アルバム然としてて非常にいい。
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あらかじめ決められた恋人たちへ
キオク
音楽の本質は"伝承"である。音楽は伝承されることで、場所や時間を超えて存在してきた文化である。伝承させるのは"人"である。音楽は、その時代その場所にいる人々の想いを吸収し伝承される。故に、音楽とは人の、土地の、時代の"記憶"の集積である。......この、あら恋のDVD+CD作品に触れて、そんなことを考えた。DVDは、ツアーの模様を、演奏風景や土地の景色も含めて映した映像作品。音楽が旅先で人と出会い、想いを吸収し、また旅立つ、その様子が刻まれている。CDには、旅の果てに紡ぎ出された新たな4曲の記憶を収録。クガツハズカムと吉野寿も参加。何故、音楽は途切れることなく伝承されてきたのか。その答えは、映像に収められた人々の熱狂を観ればわかるだろう。果てなき音楽の歴史と未来を感じさせる作品。
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あらかじめ決められた恋人たちへ
今日
爆音ダブ・サウンドが生み出す深みのなか、滲み出すピアニカやテルミンの美しい旋律。そのサウンドにみるような矛盾を包括し、どこか胸をざわつかせる音を放つ“あらかじめ決められた恋人たちへ”。劇画的な楽曲は、“寂”な抒情的空気を孕んでいる。『今日』というタイトルを冠した今作は、バンドマスターである池永正二というフィルターを介し、東日本大震災を通して見つめ直した日常への思いを刻む。不安、喪失感、無力さ――圧倒的な力のなか迎えた“時”との対峙を経てたどり着いたものは、美しい記憶や未来への多幸感だ。“今日”は、“前日”の積み重ねと“翌日”への希望から成り立つ。緊迫した状況下において、無限に続く“今日”という日々が持つ癒しを見出したのだ。
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荒川ケンタウロス
時をかける少年
映画やマンガの中みたいなことなんて起こらないけど、平凡な日々の中にも小さな幸せや、ちょっとした悲しみはいくつもある。つい置き去りにしてしまう、そういった気持ちこそ大切にしたいなと、彼らの音楽を聴いて思った。今年の2月にメジャー・デビューを果たした荒川ケンタウロスが、フル・アルバムをリリース。ノスタルジックなメロディと軽快なリズム、5人編成を活かした色とりどりのサウンドは誰の耳にもすんなり入ってくる。そして歌われるのは、眠れない夜や、故郷での思い出、淡い別れや、過ぎたあの夏のこと。大事件じゃないし、いつかは忘れちゃうような些細な出来事かもしれないけれど、そんなちょっとした毎日がキラキラして見えて、少し特別に思えて、明日がちょっと楽しみになる、そんな1枚。
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あらき
UNKNOWN PARADOX
ひとりの男性の声の中に少年から老獪な支配者まで、あらゆる人格を超人的歌唱で表現するあらきのメジャーからのオリジナル・アルバム。90sのエモ/ラウドロックをベースに、その空間に身を置くようなエクストリームなアレンジを乗りこなすVoは矛盾や憎悪、腐敗をひと振りで切り落とすような抜群の切れ味だ。誰もが憧れ、カタルシスを感じる復讐劇の趣きだが、表題通り自身に痛みがあるからこそ、それを対象化して戦える"知られざる矛盾"が彼のモチベーションなのでは。いずれ劣らぬ超絶的な曲を提供するDECO*27、堀江晶太(PENGUIN RESEARCH/Ba)、かいりきベア、すりぃらの競演の意味でも濃厚だ。中でも柊マグネタイトのインダストリアル、EDM、トラップまで飲み込んだ「夢現境界層」は新鮮な驚き。
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有馬元気
勇者の剣
これまでとは真逆の方向へと全てを振り切り、自身の新たな側面を見せた4thメジャー・シングル。ドラマ"サバエとヤッたら終わる"のED主題歌となる表題曲は、初となる電波ソングでコミカルな印象もあるが、有馬が大切にする"弱さは強さ"がしっかりと根底にあり、あと少し勇気が必要な心を奮い立たせる。カップリングの「夏空」ではシティ・ポップに彼らしい優しさと切なさを乗せ、傷付いた心を掬い上げる。弱さもネガティヴも、さらにはコンプレックスまでもを大切に抱き締め、力に変えた今作。芯の強さ、自分を信じ抜く勇気、原作やドラマ、そこに関わる人たちへの深い想いを終結させた1枚。有馬元気の可能性がここには満ち溢れている。
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有馬元気
not end
メジャー・デビューから約1年、3枚目のシングル。ピアノのイントロと出だしのフレーズからその世界へと一気に惹き込む表題曲は、残酷なほどの絶望のなか、最後に伸ばした手だけが唯一の救いとなる、彼にしか書けない希望の物語。1番と2番とで話す人物が変わる仕掛けのせいか、いろんな場面のいろんな感情に自分を重ねてしまう。バンド・サウンド全開の楽曲に乗せ、叶わぬ恋をユーモアたっぷりに描いた「裸」、限られた命を、細やかで壮大なアレンジで優しく、美しく表現した「あと少し」。三種三様の物語にひとつだけ共通点があるとしたら、それは有馬元気の寄り添いたい、伝えたいという強い想いだけ。それぞれの主人公に自分を重ねながら、誰かを重ねながら、泣いたり笑ったりして、その想いを受け取ってほしい。
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有馬元気
宿命
前作『フィルター』より約半年ぶりとなる1stアルバム。タイトルとへヴィなバンド・サウンドが印象的な「挫折」で幕を明け、2023年1月に上京した際に書いたというラスト「憧れをずっと追いかけた」まで全力を出し切り、今の有馬元気が全開となった全11曲。ポップでかわいくてついついクスッとしてしまう「ワガママ」、元気いっぱいの「愛なんです」といった遊び心も交えつつ、未来のない恋愛を美しく描いた「黙ったまま」、生きることの意味を自らに問う「この世界に」など深いテーマも彼らしいサウンドと視点で描く。ポジティヴもネガティヴもすべてがリアルに聴こえるのは、どの曲にも彼の命が注がれているからで、だからこそより伝わるものがある。妥協なしの1枚、その自信と本気の想いを受け取ってほしい。
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有馬元気
フィルター
大切な人へは悔いの残らぬよういつでもほんとの想いを伝えようと歌う「フィルター」、自分の気持ちに嘘をつかず前に進んでほしいと願う「それでも愛は勝つから」、そして初っ端からバンド・サウンド全開の「二人なら」。有馬元気の魅力をギュッと凝縮した全3曲だ。何より3曲とも主人公がちょっと弱いというところが、"痛みに寄り添う曲を歌いたい"と言う彼らしく、勇気を貰えたりもする。人がめんどくさいと思っても、人に救われているのもまた事実で、ひとりでも生きてはいけるけど、気の合う誰かや好きな誰かが一緒のほうが楽しいし、嬉しい。そんな人間関係のもどかしさや難しさもまるっと飲み込み、人へのまっすぐな想いを綴ったニュー・シングル。有馬元気の今がすべてここに詰まっている。
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有村竜太朗
≒demo
Plastic Treeの有村竜太朗(Vo/Gt)がソロ名義で発表してきたミニ・アルバム『個人作品集1996-2013「デも/demo」』(2016年)、『個人作品集 1992-2017「デも/demo #2」』(2018年)、シングル『円劇 / engeki』収録曲のリアレンジ・アルバム。各々、アレンジャー&ギタリストとして悠介(lynch./健康/Gt)、小林祐介(THE NOVEMBERS/THE SPELLBOUND/Vo/Gt)、生熊耕治(cune/BLUEVINE/Vo/Gt)を迎えているが、原曲やアコースティック・アレンジとは一転、ライヴ感満載のハードコア・パンクやガレージ、オルタナティヴ・ロック色を濃くしている。オリジナルでも小林が参加していた「19罪/jukyusai」のリアレンジ「≒jukyusai」の初期パンク的な破壊性、悠介がギターを弾いた「≒sikirei」はよりザラついたグランジテイストとエレジーを感じる仕上がりに、楽曲が孕む二面性が、有村の意志とそれを嗅ぎ取った今回のメンバーにより炙り出された感じだ。
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有安杏果
ココロノオト
ももいろクローバーZの有安杏果による初のソロ・アルバムは、武部聡志、多保孝一、川上洋平([Alexandros])、小谷美紗子、渡 和久(風味堂)といったソングライターの曲に加え、自身が作詞作曲をした曲も並ぶ。気持ちを整理するように、10代のころから綴っていたノートをもとにした歌をエモーショナルに、表現力豊かに歌い上げ、ソングライター陣も、有安の声を活かしながら、挑戦的に新しい一面を引き出している。小谷美紗子による「裸」は、饒舌なピアノのフレーズと絡みながら語るように歌い、言葉を置いていくのが新鮮で、可憐なヴォーカルもよく映える。また有安作詞作曲の「色えんぴつ」ではTokyo Recordingsの小島裕規をアレンジャーに自ら指名し、アンビエントな楽曲に仕上げるなどこだわりが窺える。
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アルカラ
NEW NEW NEW
サポート・ギターに為川裕也(folca)と竹内亮太郎(ex-the storefront)を迎えたアルカラの10thアルバム。リリース直前のツアーでこの会心の作をいち早く堪能できたが、ライヴで様々なシーンを生む曲が揃っている作品となった。言葉や語呂、サウンドでキャッチーに遊びながらアルカラの音楽はもちろん、音楽や芸術が生まれる心震わせる瞬間を封じ込めた「瞬間 瞬間 瞬間」、同様のテーマ性をよりパーソナルに内省的に描いた「未知数²」など、力のある曲に惹きつけられる。多くの曲の根底にあるのは生きる喜びであり、なんの変哲もない日常があることの喜び。それを"ロック界の奇行師"は、聴き手の耳を驚かせると同時に、その余韻に歌心と歌の真意とをそっと置いていく。何度も聴きたくなる作品。
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アルカラ
20180127~KAGEKIにやってくれないかチュアー~
初のフル・アルバム『KAGEKI』を引っ提げて開催された全国ツアーのファイナル、Zepp DiverCity TOKYO公演の模様を収めた映像作品。"ツアー前に起こったKAGEKIな出来事"により、会場に集まった人の多くが不安を抱えていたであろうこのライヴだが、1曲目「3017」の1音目でその不安を払拭してのける様が痛快。サポート・メンバー 為川裕也(Gt/folca)のサウンドメイクが原曲に寄り添っているところには、アルカラへの愛とリスペクトが感じられる。事前に出演が告知されていた9mm Parabellum Bulletの滝 善充(Gt)に加え、菅原卓郎(Vo/Gt)とHEREの武田将幸(Gt)も乱入し、カオスなお祭り騒ぎとなったアンコールも必見。アルカラというバンドがなぜこんなにも愛されているのか、その答えがここに詰まっている。
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cinema staff×アルカラ
undivided E.P.
長く親交を温めてきた cinema staffとアルカラによるスプリットEP。書き下ろしの新曲、それぞれのカバー、コラボ曲の全5曲が収録された。cinema staff新曲「first song(at the terminal)」は、ソリッドで高いテンションのドラミングと多展開のドラマチックなサウンドを、伸びやかな歌が包み込む。キャッチーで温かいメロディにただ行儀よく収まらない、アンサンブルのパッションが惹きつける。アルカラの新曲「サースティサースティサースティガール」は、爆発的なオープニングからサビでファンクに急展開するトランスフォームっぷり、先の読めなさ、オチのつけ方で唸らせる。この2バンドが互いをカバーし、コラボする曲は、もちろん技もネタも巧妙に仕掛けられていて、味わい、楽しみが尽きない。
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アルカラ
KAGEKI
8枚のアルバムを発表してきたアルカラだが、全12曲というボリュームのフル・アルバムは、今回が初。バンドの脳内へと分け入っていく迷宮的なサウンドがたっぷり味わえるアルバムで、迫力がある、怒濤のアンサンブルがパッケージされた。アルカラは、予測不能なスリリングな展開とキャッチーさとを両立する稀有なバンドである。その両方の濃度と純度を上げ、音の腕力でねじ伏せるだけではない独自のポップでロックな形を作ってきた。繰り返し聴きたくなる音の隠し味、違和感を少しずつ織り交ぜてなお耳触りや発語の気持ちよさがある言葉、けれんみたっぷりなようでいて、心の急所を突く歌と、今回もその"節"がわかっちゃいるのだが、気づけば脳内の迷宮にとらわれてしまう。愉快で濃い1枚だ。
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アルカラ
炒飯MUSIC
銅羅の音と逆再生に始まり、子供のコーラスや掛け声が入ったりと、飛び道具的なアイテムのキャッチーさも曲を盛り上げているが、何よりも4人が"主題歌"というお題で存分に遊び倒しているのが「炒飯MUSIC」。Aメロからサビまでどこで切ってもクセの強いメロディと、そのメロディに負けていないワウ・ギターや印象的なリフ、また突如シンセ・ベースが間奏に飛び込んできて異次元にワープする。小さいころに観たアニメの内容や主人公の名を失念しても、"ほら、あの"と主題歌だけはソラで歌えたり、音やフレーズを覚えていたりする。そういう、異物感と気持ちいいほどの耳馴染みの良さとが同居している曲だ。そこまでやるかの悪ノリも、キャッチーに響かせてしまうのがアルカラらしい曲でもある。
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アルカラ
ちぎれろ
エキゾチックなギター・フレーズを肝にした、フォークロアなパンク・サウンド「消えたピエロと涙」でアルバムは幕を開ける。ピエロの哀しき性を、ほろ苦く、寓話的に仕立てた歌にまずKOされる。自己肯定と否定とを繰り返して、自分の居場所で必死に踏ん張る姿はとても不器用で、それだからこそ美しくもある。この曲を筆頭にして、今作は、批評的にシニカルに世の中や人を切っていくスタンスと、同時に泥臭くもチャーミングな、人の心の機微や性分が詰まっていて、とてもエモーショナルな内容だ。懐かしい歌謡曲の、物憂げで、湿度のあるメロディが冴えて、アルカラらしいトリッキーなサウンドと絡まっているのも面白い。毎作突き抜けたパワーがあるが、今作は抜群。キャッチーさにしれっと毒を盛り、たちまち中毒にさせていくドープな音楽がここにある。
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アルカラ
20141207-ガイコツアー2014-
すべてがあった。アルカラの、今の、すべてがあった。2014年12月7日にZepp Tokyoにて行われた『CAO』リリース・ツアー"ガイコツアー2014"のファイナル・ワンマン公演。本作は当日のライヴ全編に加え、ツアー・ドキュメント映像も含めた大ボリュームのDVD作品である。突き刺すように駆け抜けたライヴ前半。ユーモアで会場を沸かせた中盤。あたたかさと感動で会場を包み込んだ終盤。アルカライダーまで登場したアンコール。そして、ツアー・ドキュメントで見られる、"バンド"と"ライヴ"への愛。シリアスな顔もおどけた顔も、必死で何かを伝えようとする顔も......12年のキャリアの中で彼らが見せてきたあらゆる"顔"が、この作品には刻まれている。この先、どれだけ先へ進もうと、きっとここに刻まれたすべての顔を、彼らは忘れない。
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アルカライダー
アルカライダー監修「アルカラボーナストラック大全集」
アルバムの最後に、たまに"ボーナス・トラック"って入っているでしょ。CDを聴いていたら、最後の曲が終わったのに全然CDが止まらなくて、ほっといたら数分後に急に曲が始まってビクッとする、あれのことね。ああいうのって、僕はちょっと苦手なのです。だって、アルバムの余韻を損なうじゃん。でも、アルカラのアルバムのボートラは例外的に好きなのです。何故ならクオリティが高いし、音楽愛に満ちた引用が出てくるし、何より彼らは悪ふざけにもゴリゴリの本気だから。本作は、そんなアルカラの素敵なボートラたちをアルカライダーが集めて監修したもの。初期のボートラはシリアスな名曲多めだけど、キャリアを経るごとに段々と悪ふざけが悪化していくのがよーくわかる。尽きせぬ初期衝動とロック愛に乾杯。
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アルカライダー
怪盗ミラクル少年ボーイ
若い子は知っているかな。昔、"ダウンタウンのごっつええ感じ"というバラエティ番組があってね、そこに"エキセントリック少年ボウイ"というコントがあったんだよ。今はもう、あんな素晴らしい悪ふざけはテレビで見ることはできないね。このアルカライダーというバンド(肩書きは"ロック界の奇行師ヒーロー")には、あのコントに通じる悪ふざけを感じるよ。このシングルの2曲目の「ゆけ!アルカライダー ~アルカライダーのテーマ~」からは特にそれを感じるよ。アニメ"怪盗ジョーカー"の主題歌である表題曲は捻くれた展開の妙と疾走感のあるサビで聴かせるギター・ロックだよ。リミックスも入ってるよ。悪ふざけも、やるならこのぐらい全力でやらないとね。というか『CAO』からのギャップがすごいね。最高だよ。
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アルカラ
CAO
すべての音が切迫感と焦燥感に満ちている。かつてなく生々しい。ここには、ドラマティックな激情と奇抜な変態性を行き来するサウンド、あるいは人を食った言葉遊びで聴き手を煙に巻いてきた今までのアルカラの姿はない。ここにあるのは、時代を突き刺す鋭利な刃物としてのロックを一直線に鳴らす、素顔を剥き出しにしたアルカラの姿である。均一化されていく価値観に満たされ、正しさだけが求められるこの世界に対して怒りの表情を浮かべながら、そうした問題意識を突き詰めたが故に露になった、"すべてのものが終わりゆく"という儚い刹那と、少年の頃の自分自身に重ねられたパーソナルな心象。"どーでもいい"という言葉の切実さと説得力。12年のキャリアの果てに辿り着いた大傑作。この先の10年はアルカラの時代になるだろう。
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アルカラ
ドラマ
アルカラ、5枚目のアルバム。歌謡性の高いドラマチックなメロディと歌が、変拍子を多用したリズムを基盤とした、空気を切り裂くようなソリッドな演奏と共に繰り広げられる、まさにアルカラ節が炸裂した作品である。ロックがシリアスさだけを打ち出すことは容易いが、同時にユーモアを手なずけるのは、とても難しい。しかし、アルカラは見事にそれをやってのける。それができるのは、ある一定の音楽性だけに捉われない豊かな素養と、それを楽曲に昇華する技術、そして独特な言葉のセンスがあればこそだ。4曲目「YOKOHAMAから来た男」~6曲目「380」において自由に音楽で遊びまくった後、「防御線の果て」、「ビデオテープ」という名曲で締める後半の流れが実に素晴らしい。
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アルカラ
こっちを見ている
おいおい!どうなってんだ!?やはり"ロック界の奇行師"を自称するだけに、思いもよらない展開をしてくれるぜ!前作『フィクションを科学する』から約7ヶ月という驚異的なスピードでアルカラが新作『こっちを見ている』をリリースする。フロントマン稲村太佑の脳内だだ漏れ状態か?この猪突猛進がさらなる高みへの鮮やかなステップ・アップであり、激エモな楽曲の疾走感にも反映しているようだ。映画『アベックパンチ』の挿入歌にも決定した「半径30cmの中を知らない」を中心に繰り広げる大胆かつ繊細なアルカラ・ワールド。奔放すぎておかんの声からピー音(放送禁止に使うアレ)まで入るとは、ホント馬鹿だな~(褒め言葉!)。これはライヴ映えする力もハンパないから、借金してでも生を体感するべし!
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アルカラ
フィクションを科学する
嘘か真か、インタビューで語ったように"心で歌う"姿勢がそうさせたのか。アルバムとして3枚目の今作は、これまでの圧倒的なハイテンションで突っ走るような勢いを緩め、メロディアスな世界観を強調した作風となった。9mm Parabellum BulletとSyrup 16gの中間に位置付けられそうで、疾走感を期待するとやや肩透かしを食らうかも。だがしかし、この変化で露わとなったのは、聴けば聴くほど旨みが増すような、するめいか状態の味わい深い叙情性。「大久保のおばちゃん」や「はてない」に印象的だが、メロディアスなサウンドと日常のささやかな心情を掬う文学的な詩世界が絶妙に相まり、いつかの原風景を引き出すだろう。全体をみるとストレートなロックン・ロール「キャッチーを科学する」は軽いご挨拶って感じで、ニクイね!
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アルカラ
BOY NEXT DOOR
神戸出身の四人組、アルカラの2ndアルバム。尚、同時に1stアルバム「そうきたか」も再プレス&リリースされている。"ロック界の奇行師"と呼ばれているだけあって、確かに変わったことしてるな~という印象。「マゾスティック檸檬爆弾」では、2ビートを久々に聴きました。そこからの展開もめちゃくちゃ面白いし。プログレッシブというんじゃないんだけど、複雑怪奇なバッキング。その割に、ヴォーカルラインは覚えやすくてフックが満載なところも、賢いというか、狡猾というか。王道的バラードもいい曲ではあるんだけど、やっぱり(いい意味で)"変"だな~っていう曲の方が輝いて聴こえてきます。普通のロックに飽きちゃったんだよねっていう気持ちがバシバシ伝わってくるだけに、今後の更なる飛躍に期待が出来そうです。
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或る感覚
バイタルリスペクト
鋭く叙情的なメロディ。包み込むような轟音。静と動を往来するたしかなリズム。そのすべての中心にある、歌――革新的な何かが鳴っているわけではない。しかしここには、グランジ以降のオルタナティヴ・ロックが、あるいはハードコアを起源とするエモコア・バンドたちが積み上げてきた偉大な足跡がある。そのあとを引き継がんとする気高い意志がある。bloodthirsty butchers、NUMBER GIRL、HUSKER DU......偉大なる先達たちの名前が思い浮かぶ。或る感覚の約2年ぶりとなるフル・アルバム。このアルバムは目新しさばかりが取り沙汰されるシーンにおいて、どこまでも実直に"音楽"と"人生"に向き合っている。人と音楽が共に歩む"歴史"と"未来"。そのすべてを照らすこのアルバムはきっと、10年後も誰かにとって大事なものであり続けるだろう。
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或る感覚
ナチュラル / 初夏のピラニア / ロマンチック・アルカイダ
面白くないものは面白くない。自らがいるバンド・シーンに唾を履き続けるフロントマン、ロン(Vo/Gt)の苛立ちと自身の音楽への自信は今回のトリプルAサイド・シングルという形態にまで及んだのかもしれない。さらに誰も思いつかないようないびつなリフが、いわゆる“自然体”を揶揄するようなリリックを際立たせる「ナチュラル」、BPMを少し落とすことでさらに斬りつけるようなギターのフレーズが刺さる「初夏のピラニア」、和×チャイニーズなフレージングといい、16ビートといい、下手するとイロモノになりかねない要素を、ロンのまっすぐな声とクセになるメロディ、シュールな脱力コーラスで無二の空気感を作り出す「ロマンチック・アルカイダ」。トゲトゲしさと中毒性は意思があるから成立する。
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或る感覚
カウンター
2011年の閃光ライオットでファイナリストにも選出された、2010年結成の4ピース、或る感覚の1stアルバム。そのサウンドは、ジャキジャキジャキと高速で刻まれるポスト・パンク的なカッティング・ギターと、後期ナンバーガールを思わせる和製メロディが印象的なオルタナティヴ・ロック。最近のバンドで共振するものがあるバンドといえばDOESやアルカラが思い浮かぶ。が、或る感覚はまだ20歳そこそこのバンドである。本作『カウンター』には、まだ自分たちの表現の着地点が定まらない揺らぎと、バンドをやることに対する喜びや好奇心、向こう見ずな野心が生々しく鳴っていて、そこが何にも変えがたい魅力になっている。シリアスな叙情性とユーモラスな感性を同時に手なずけようとしているところも面白い。先が楽しみな逸材である。
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あるくとーーふ
UPSIDE DOWNTOWN
前作『サイファールーム』から1年と少々という時間は、あるくとーーふにとってこれまで以上にクリエイティヴな時間となったようだ。高校の同級生でバンドを始め、"未確認フェスティバル"でファイナリストになるなど、10代のうちから抜きん出たポップ・センスで同世代の心を掴んできたバンドだが、今作でそのファン・ベースはより裾野を広げると思う。エネルギーを存分に内包したバンド・サウンドのムードはそのままに、洗練された音作りや構築的なアンサンブルが、奔放な利佳子のヴォーカルの自由度や歌心を広げて曲に心地よいグルーヴを生んだ。引き算で作り上げたサウンドは感覚的だと言うけれど、余韻や余白をも演奏で表現しているのが大人っぽくバンドの新たな横顔も覗かせる。バンドがきらめく瞬間を捉えたマジカルなEPだ。
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あるくとーーふ
サイファールーム
"攻撃的ポップバンド"を自称する通り、ピアノを擁するきらめくポップ・サウンドに、現実を鋭いまなざしで捉えるエッジの効いた歌詞を両立させる長野発の男女混成5人組バンド。今作のテーマは"脱出ゲーム"。現状に満足しない姿勢を脱出ゲームにたとえ、もっと広い場所へ行きたいと願うハングリー精神を表しているという。圧倒的な中毒性と衝動で駆け抜ける「ダイナマイトタウン」をはじめ、明るい未来への祈りを優しい筆致で綴ったバラード曲「光の栞」、物語のその先に向かう賑やかなポップ・ソング「エピローグからショータイム」へ。物語のその先へと向かってゆくカラフルな全7曲は、偽物の感情や忘れられない思い出、無力な言葉など、どこか過去の作品ともリンクする歌詞が散りばめられ、このバンドの巧みな構成力が光る。
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アルクリコール
ホワイトブルーとハル
2年ぶりの全国流通盤は初のフル・アルバム。北海道のバンドであることにアイデンティティを持って活動する彼らの"心"が、曲と音という"技"と"体"に結びつくようになった印象だ。北欧音楽を参照とした、"バンドっぽい音"という漠然としたイメージに縛られないアプローチが覚醒を物語る。彼らにとって"厳しい冬"だったこの2年を投影した歌詞も深みがある。地元に対する誇りとコンプレックスが滲む言葉は美しくもリアルだ。自分たちは何を歌って生きていくのか。深層と向き合うことで生まれた本作が、広く人生を謳う作品になったのは必然だ。"人生とは例えるならば/長い長い旅の様なものだね"と始まる「バンドワゴン」の軽やかなサウンド、メンバーの楽しげな声がかえって泣けた。
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アルクリコール
Re:versal
昨年2017年に"THEサラダ三昧"から"アルクリコール"へと改名をした北海道在住ロック・バンド。結成7年目にして初の全国流通盤は、ライヴ会場で配布していた疾走感溢れるデモ楽曲「アゲイン」とは違う、彼らの繊細な一面を見せる6曲が詰まっている。ディレイがかかったギターに伸びやかで澄んだ歌声がマッチし、歌詞にも出てくる"寒空"が似合うセンチメンタルなナンバー「ワスレナ」、1サビでバックの音がギター1本になり、静けさのなかポツポツと身を切るような想いを紡ぐ「雨音」など、情景を描くのが非常にうまい。そうして行き場のない葛藤を描きつつ、ラストの「クラリオ」ではそれらを解決できるのは自分自身であることに気づかせる。聴く者のフラストレーションにじっくりと寄り添う作品。
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アルコサイト
思い出に変わるまで
昨年は、「さよなら、桜桃の花」などバンドの新たな面をうかがわせる3曲連続配信を行ってきた4人。コロナ禍でライヴなどができない期間は制作に磨きをかける時間にあてて配信の3曲や、今回のEP『思い出に変わるまで』を作り上げた。EPの1曲目「オリオン」は、アルコサイト印と言えるストレートで、勢いのあるギター・ロックをより鮮やかに、きらめくような青春期のかけがえのない瞬間を深く濃くメロディやサウンドに刻む曲となった。青い春ならぬひねくれた我が道を行く「赤い春」や、ナイーヴな心の奥で熱い叫びを燃やし続ける「ロックが足りない」でのヒリヒリ感も、大阪弁でのバラード「墓場まで持っていくわ」での情緒あふれる歌とギターの絡みにも、バンドのいいテンションや、互いの呼吸感が伝わる。
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或るミイ
OWL/sleepin' and sleepin'
或るミイは色で表すと青色だな、と思う。両A面として収録される「OWL」「sleepin' and sleepin'」。日本語に英単語を織り交ぜた歌詞(言葉選びのセンスがバツグン!)さえもリズムとしてループさせるスタイルは聴き手の心と身体を躍らせてくれるしシンセやギターも煌めいているが、あとに残るのはどこか切なげな余韻。それはまるで、快晴の空の色でありながらも、寒色とも称されるあの青色のようだ。また、旧譜曲を弾き語りした「JOY(YOFUKASHI ver.)」も収録。夢と現(うつつ)の境界をたゆたうような独自の色彩は、アレンジが加えられる前、メロディの段階から存在しているものだということがこのカップリング曲を聴けばよくわかる。
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或るミイ
サマタイム×サマタイム
ヴォーカルの脱退という大きな壁を乗り越え、新ヴォーカルにタカハシツトム(Vo/Syn)を迎え入れてリリースされる1stミニ・アルバム。Track.1「JOY」の心地よい水音に誘われ、深く潜るように聴き入ってしまう作品へと仕上がった。タカハシと田中裕貴(Gt/ Cho)のふたりで作曲を行ったというだけあって、弾けるような快活な曲やメロウな曲など、さまざまな種類の楽曲が収められているところがまた楽しい。初めて或るミイを聴くかたも、昔からの或るミイのファンも飽きることなく聴くことができるだろう。一貫して宿るノスタルジックな気持ちからは夏への名残が感じられる。新生或るミイはここから始まっていく。スタート・ラインに立った彼らの快進撃が楽しみだ。
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或るミイ
(仮)或るミイのすべて
千葉LOOKを拠点に精力的なライヴ活動を行い注目を集めている4ピース・ダブ・バンド。初の全国流通盤となる今作は、轟音にしてドラマチックな展開をみせるサウンドと甘く柔らかいメロディが相反しながらも、絶妙なバランスで溶け合う。その核を担う要素は、ダブを掲げるだけあり何といっても腰にくるグルーヴだろう。竜巻が真っ直ぐに天へと昇るように、彼らの楽曲も全く芯がブレることなく様々なジャンルの音塊を渦のように巻き上げながらキャッチーなポップへと昇華している。その真骨頂を味わえるであろうライヴ定番曲「宵待ちのロズウェル行」も収録。メンバーが手掛けたという独特なアート・デザインと共に今後の活躍も要注目な新人の登場である。
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あれくん
革命前夜、
暗いニュースで溢れがちな今を生きるリスナーへ向け、ポジティヴをテーマに制作したEP。だが"前向きだけどまだどこか後ろ向きなあなたへ"というコメントも発表している通り、そのポジティヴさは手放しであっけらかんとしたものではなく、現実的な目線も孕んでいるところが肝であり、これまでもどこか不安な気持ちに寄り添ってきたあれくんならではの作品になっている。環境音を積極的に取り入れ、より生活に馴染む音像になった「diary」や、ストリングスでスケールを増した「いつか」は本作のためにリアレンジされたもの。ボカロP 水野あつとの共作曲「ゆびきり」では両者の武器を生かした温かなピアノ・ポップを響かせ、「ツナギアイ」では隙間のあるサウンドに乗せられたグルーヴ感のあるリリックがあれくんとしては新鮮だ。
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あれくん
呼吸
切ない恋心を透き通った声で描き、10代を中心に話題のネット発SSW、あれくんのメジャー初アルバム。「好きにさせた癖に」は965万回、「ばーか。」は749万回と好調な再生回数を誇るが、それらすでに公開済みの楽曲は、すべてガラッとアップデートされている。チルなビート且つミニマムだけど一音一音が際立つ、トレンドを採り入れたポップ・サウンドにリアレンジされていて、海外アーティストを意識したようなあれくんのフェイクも含め、既発のバージョンを知っているとその進化に驚かされるはず。また、半数を占める新曲たちに綴られているのは、これまでの彼の代名詞=ラヴ・ソングの枠を超え、人生の葛藤に向き合った言葉たち。メジャー初作品にして現時点での集大成にとどまらず、新たな自分を切り拓いている。
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安斉かれん
ANTI HEROINE
自身初となるフル・アルバムを2枚同時でリリース。CHARLI XCX、CHVRCHES、DANNY L HARLEなど、国内外から豪華作家陣を招いて制作された本作には、ダークなエレクトロ・サウンドを押し出した「へゔん」や「ギブミー♡すとっぷ」、ソウル/モータウンな「ら・ら・らud・ラヴ」、強烈に歪んだギターが轟くハイパーポップ的な「おーる、べじ♪」、ドリーム・ポップな「恋愛周辺(Demo)」に、本人も作曲に関わった躍動感満点の「YOLOOP」など、実に多彩な全15曲を収録している。これまでのイメージを覆す新たな安斉かれん像を構築しているが、そこからは多大な好奇心を持って音楽に接し、それらを貪欲なまでに吸収しようとしている彼女の、アーティストとしての純粋な表現欲求を感じさせる。
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