今なお多くの制約を強いるコロナウイルスは、かえってフレデリックの闘争心に火を点けたのかもしれない。いち早くリモート制作の体制を整え、従来の音楽性を踏襲しながらもEDMに突き抜けた「されどBGM」を7月に先行配信。次いで、得意とする緻密な音遊びが光る「Wake Me Up」、ファンキーな中にポリティカルな主張も連想させる「正偽」、青春も熱狂も失ってしまった今夏に対して歌う「SENTIMENTAL SUMMER」の計4つの新曲をリモートで制作。そこには変わらず、むしろ凄みを増して滾る人間臭さがあり、且つそれらをまるっと包んでしまえるポップネスな力もある。どんな状況下でも、我らが"遊び場"を取り戻す日まで、音を鳴らすことをやめない。今作はそんな決意表明だ。
ライヴ・バンドとしてフェスやイべントで百戦錬磨の存在感を発揮している今の夜の本気ダンスの無敵感が、見事に結晶化したシングルである。Track.1「By My Side」、これはキャッチーなリフと絶妙なファンクネスを孕んだ四つ打ちビートが絡み合う、彼らが得意とするダンス・チューンだが、今まで以上に曲そのものの"重み"が増した。各楽器の織りなすアンサンブルが、まるで重戦車の如き迫力で耳に迫ってくる1曲。とにかくヘヴィ、且つグルーヴィ。そしてTrack.2「Show down」、これも性急なダンス・チューンだが、その上に彼らの本来的に持つメロディアスな側面が強く出ている。米田の歌声も強く深くなった。もはや"勢いのある新人"のカテゴリーからは大きくはみ出すスケールの大きさを感じさせる1枚だ。
髭のフロントマンの須藤寿の初のソロ作品がリリース。"須藤寿GATARI ACOUSTIC SET"と名づけられたこのプロジェクト、その名の通り弾き語りをベースに最小限のアコースティック・セットで組み上げられている。Track.1のミドルテンポのフォーク・ナンバーの「あそびにいこう」から髭で見せている側面とは違った彼の歌心が垣間見れる。リード・トラックの「ウィークエンド-Theme From The Great Escape」ではゲストにコトリンゴを迎え、アンニュイでミニマルな髭では想像しえないような優しいヴォーカルを披露。彼のイメージから正直もっとざらついたフィジカルなフォーク作品を想像していたのだが、大瀧詠一や細野晴臣などを想起させる極上のポップ・ソングが詰まった作品。