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LIVE REPORT

Japanese

Skream! マガジン 2012年04月号掲載

2012.03.18 @SHIBUYA-AX

Writer 小澤 剛

ロックではなく“ロックンロール”。最新アルバム『それではみなさん良い旅を!』リリース・ツアー・ファイナルであるこのライヴにあったのはそれだった。勢いのある堂々としたギター・リフと、一発で脳に刻み込まれる単純明快なサビのメロディ。須藤寿(Vo&Gt)がステージで見せるどこかすっとぼけた立ち振る舞いや、メンバー全員がオバケのようなかぶりものをかぶって、妖しい雰囲気を放つサイケデリックなインスト曲「奴隷」と共に登場するユーモア。そこにはロックンロールのロマンがあったのだ。


前半は「それではみなさん良い旅を!」や「さよならフェンダー」、「トロピカーナ」や「黒にそめろ」などのアグレッシヴな曲でフロアの熱を上げる。中盤以降はフォーク・ソング調のメロディ中に浮遊感のある「バタフライ」や、幻想的なインスト曲「ウルティン・ペリン」を挟み込み、フロアの雰囲気を少し落ち着かせる。そこから一気に場を盛り上げるのが、堂々としたギター・リフと単純明快なサビのメロディを併せ持った「ロックンロールと五人の囚人」や「テキーラ!テキーラ!」。落ち着いたフロアの熱を一気に上げられる曲がいくつもあり、なおかつそれを再現することができるこの馬力のある演奏を繰り出せるところが髭の強みだ。


髭の6人が繰り出すそれぞれの音は絡み合うことなく、ガッチリとひとつのカタマリになって一直線にフロアに向かっていく。斉藤祐樹(Gt)と會田“アイゴン”茂一(Gt)の2人に須藤を加えた、3本のギターから放たれるソリッドな音も、佐藤“コテイスイ”康一(Dr&Per)と川崎“フィリポ”裕利(Dr&Per)の2人のドラマーが叩き出すリズムも、宮川トモユキ(Ba)のベースもそうだ。この音はひたすらタフでドライヴィン。6人は目の前にある坂道を一気に駆け上がるように音を繰り出していく。この何にも縛られない吹っ切れた演奏が力強い音を生み出している。ロックンロールの興奮や楽しさはこういうところから生まれるのだ。


そしてその馬力の源になっているのはツイン・ドラムである。豪胆とも言える2人のドラミングがバンド全体のエネルギーを引っ張り出し、演奏を力強くドライヴさせる。底の部分からエネルギーを持ち上げるようだ。これはライヴでこそより強く感じ取れる。2人は同じところを目指して突き進んでいくかのようにドラムを叩く。それでもこのドラムが前に出過ぎることはない。バンド全体をしっかりと見渡しながら、ちょうどいいところで力を抑えて、ギターとベースの音を響かせている。豪胆さとは反対にあると思える、クレバーな部分も感じさせた。

ロックンロールの道、というものがあるのであれば、彼らはその道を進んで行っても尽きることのない体力を持っている。6人が繰り出す屈強な音が簡単にさび付いてしまうとは思えない。ロックンロールのロマン。髭にはそれをとことん追求して欲しい。

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