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INTERVIEW

Japanese

古坂大魔王

 

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-音楽制作を始めた当初は、そういう音をどうやって作っていたのでしょうか。

NO BOTTOM!の初期メンバーにいたタカミ君っていう、今はローランドのロンドン支局のトップをやっている人がいるんですけど、彼は1990年代後半に、当時は珍しかったパソコンのLogicを使って趣味で音を作っていて、テレビ番組のエンディング曲を作らない? って言われて。僕はその当時、サンプラーとシーケンサーを買って、録音はミキサーにMDを繋いでしていたんですけど、それだとどうしても幅が狭まるので、タカミ君の家に通い詰めて、パソコンの打ち込みをずっと見ていたんですよ。彼はローランドの中で808、909、303の音を再現したいっていう夢があって、ようやくそれを実現させて"AIRA"シリーズっていうのを作った人なんですけど。その人に全部教えてもらって、そこから自分なりにパソコンの中でやってきました。ボキャブラで稼いだ金を全部パソコンに注ぎ込んで。あの当時、700何十万かかってますね。

-そんなに稼いでたんですか!?

だって営業に山ほど行ってましたから。みんなジャガーとか買ってましたけど、僕は車を買わないでパソコンを買ってました。当時、Mac買って50万、ソフトひとつひとつが10万、サンプラーで60万くらいかなぁ。リズムだけの音源がCD1枚で5万円しましたから。

-今だとプラグインですぐにできるものが、実際に機材を買わないといけなかったということでしょうか。

いや、プラグインを入れるとパソコンが固まっちゃうんです。今でこそ動くけど、昔はプラグインを動かすとパソコンの性能が低いので、固まっちゃってたんですよ。だから、ソフト・シンセを毎回毎回録音してましたね。同時進行でパソコンの中で2台を動かすのが無理だったんですよ。なので、1台動かしてそれをその場で録音して貼って、また録音してっていうのを毎回やっていて。それよりは外部で鳴らしてマルチ・トラックで録音した方が早かったんですよ。しょうがなかったんですよね。プラグインでやるなんて夢の話というか。音も超軽かったですし。外部で鳴らしてコンプレッサーをかましてようやく使える音だったので。

-それを考えると今のプラグインは相当いいわけですね。

もう半端ないですよ。僕が700万出して買った機材が今は2万で買えますからね(笑)。Logic Pro買えば全部入ってますから。あれを買うのに僕は700万かけましたし。もっと上の世代の話を聞くと、坂本龍一さんはサンプラーで1億かけたっていいますからね。キーボードの1音1音の下に全部フロッピーディスクが入ってたらしいです。そのフロッピーが1枚数千円とかしていたらしいですから。僕が始める前の30年くらい前の話ですけどね。今はiPhoneで作っても音がいいですからね。

-GarageBandでもクオリティが高いものができる?

全然できますよ。iPhoneのマイクの方が、ヴォーカルは音がいいです。iRIGを使って録れば。iRIGのコンプレッサーは超優秀なので。

-それは、先ほどお話された8ビットのチップ・チューン的な音がもともと好きっていうところが聴く耳に影響を与えているところもあるんじゃないですか。

そうかもしれないですね。例えばTHE ART OF NOISEのシンセ・ドラムみたいに、低音がパンッて出るのがかっこよかったんですね。チップ・チューンってどうしても疑似低音を作ってるので、"オンオンオン"っていう感じなので、やっぱり"バーンドーン"っていう音を入れるっていう意味ではデジタル・ドラムの方がかっこいいなと思いますね。

-今はどんな音楽を聴いてるんですか。

今はアイドルが多いですね。それとトラップですね。DIPLOとか、SKRILLEXからのEDMの流れの。いわゆるデジタル・ロックがいまそこにあると思っているんですよね。ダブステップ、トラップ系のところ。でも僕はあんまりEDMにはいかないんですよね。EDMは昔のハウスに近いんですよね。なんかデジロックは今トラップとかブレイクビーツにある気がして。だからHIPHOPに近いかもしれないですね。日本だとアイドル、女子限定ですね。曲さえよければグループは誰でもいいです。

-グループじゃなくて曲の良さで選んでいるんですね。

曲で聴いてます。まず基本、これがアイドルのメンバーにハマっちゃって、44歳で13歳くらいの女の子を応援してたらアウトだなと思ってるんですよ。

-(笑)そのアウトな人たちがアイドルを支えている気がしますが。

でも、僕の中ではそこはしないようにしようって。よく箱推しとか言いますけど、箱推しもしない。"音推し"にしようと思って。でも今、アイドルとアニソンが一番音で実験できるんですよ。パイが大きいのでお金が使えるじゃないですか? そこの中で遊べるんですよね。だからぶっとんだ音が作れる。初音ミクとか、"けいおん!"の京都アニメーションとか。売れようとしていないというか、自分たちが楽しもうとしているだけ、オナニーですよね。でもそれがかっこいいと思うんですよ。

-今、古坂さん世代の方がトラックを作ったりしていることが多いですよね。

そうですよね。だから、すげぇ気が合うんですよ。僕ら世代が遊べるようになって、しかもビジネスとして成立する場所で出せるとしたらアニメとアイドルが一番大きいんじゃないかなって。同じように初音ミクっていう、ポップを狙ってない、ありふれた曲じゃないものを、っていう反骨精神ですよね。ポップなものっていうのは"あるある"ですから。"ないない"をいくには、例えばPerfumeがあの当時にあの音を作って。あれ、クラブで流すと低音が全然ないっていう、発明だと思うんですよね。スモール・ミュージック用のダンス・ミュージックっていう。でもあれはPerfumeの見た目とダンスがなかったら、成立できてないと思うんですよ。ももクロもヒャダイン(前山田健一)っていう、インターネットの中だけで好き勝手やってきた人がまんまももクロに持ち込んだっていう。そういうところに面白さがある気がして。やっぱりでんぱ組.incが出てきたときとか、ぶっ飛びましたもんね。