Japanese
betcover!!
betcover!!ことヤナセジロウは、国内の若手バンド・シーンに憤りを感じている。ガラパゴス化したフェスが主な活動の場となり、初見のお客さんに向けた即効性が求められることでテンプレート化していった表現が主流にあるメジャーを"クソ"だと言い放ち、その流れには乗らず、自由な音楽性を探求するインディペンデントな世界に対しても"安い"、"弱い"と警鐘を鳴らす。ただそれは、彼が心から音楽の持つパワーを信じ、音楽そのものをリスペクトしているからこその言葉である。それが正しかろうが間違っていようが、いいことも悪いこともはっきりと、言いたいことを言い、議論することの大切さについて、改めて考えさせられる時間となった。
-作曲を始めたきっかけを教えてもらえますか?
中学のときにエレキ・ギターを買ってもらったんですけど、正直ギターにはそんなにハマらなくて。とはいえ、1日に3~4時間は弾いてました。
-それ、ハマってるじゃないですか。
でも、技巧的なこと、ソロとか速弾きみたいなのはほとんどしなかったです。ただ好きなコードを鳴らすみたいな。そこから流れでなんとなく曲を作るようになって。中学の終わりごろにはベースも弾くようになったんで、録音機で録音してそれをスピーカーで流して別の音を重ねる、超アナログなやり方で作ってたんです。しばらくして友達のお父さんがMTRをくれて、それからはずっとMTRを使ってます。パソコンは苦手で未だに使えません。
-そして2017年にソロ・プロジェクト betcover!!として、アルバム『high school !! ep.』をリリースされました。
あれは最悪。本当に嫌だから、もう覚えてないです。
-次の作品『サンダーボルトチェーンソー』(2018年8月リリースのミニ・アルバム)はどうですか?
エンジニアさんもついてくれて、メンバーも良くなっていい感じにできました。
-音のレイヤーや曲の展開が独特ですが――
感覚です。というか、作品のことをあまり語っちゃうと、変なふうに捉えられるのが嫌なんで。
-なるほど。こういったメディアのインタビュー記事って読みます?
最近は面白い記事が少ないから読まなくなりました。古い"rockin'on"とかは好きなんですけど。あのころのタナソウ(田中宗一郎)さんや山崎(洋一郎)さんのインタビューや記事って、書く人が文章に対して挑戦してるし、インタビューとかだとアーティストにもパンチを打ちまくってて、言いたいことを言い合ってぶつかることもあるじゃないですか。もはやアーティストの作品を巡るインタビュアーとの対談ってくらいに。賛否両論巻き起こって然るべき覚悟がある。その感じが好きなんですよね。今ってライターの方がアーティストより下にいて、すごく企業的な感じがするんです。書くことも表現。対等でいいのに。
-アーティストの作った作品や積み重ねられてきたカルチャーに対しての、感謝や敬意は誰しもあるんじゃないかと。では、本当の敬意ってなんなのか。ヤナセさんが感じられたような、"よいしょ"じゃないと思います。
その下から"アーティスト様"みたいな感じが嫌なんです。"ライター業界"みたいなのがあって、しきたりとかダブーがあるんですか?
-逃げるわけじゃないんですけど、私はライターの友達がいないんです(笑)。でも、特にタブーとかはないんじゃないですかね。いろんな記事を読んでいて、優れた書き手の方はたくさんいると思います。ただ、もっと豊かな発信のために見直すべき部分は、いつの時代も常にあって挑戦していくものかと。特に今は"邦楽ロック"なる世界が厳しい。
そうですね。特にロック界隈ですよね。ちゃんとしたことをちゃんとやる、ちゃんと言う。それだけだと思うんです。今はSNSとかがあって個人の意見が言いやすくなっているにもかかわらず、多くのメディアもアーティストもほとんど言わないじゃないですか。不思議ですよね。僕は1本しっかり筋を通したい。全うにやりたい。思ったことを言って、違うものは違うって、ちゃんと発信したいです。
-何がそんなに"違う"のでしょう。
メジャーのバンド・シーンは一部を除いて、はっきり言ってクソだと思います。救いようのないところまできてる。一応断っておくと、メジャーと言ってもポップスや歌手、ダンス・グループとかは、エンターテイメントとしてあるべきものだから、そこはいいと思うんです。あくまでバンド、ロックの話です。
-国内アーティストだけのガラパゴス化したフェスが最たるプロモーションの場となり、曲やパフォーマンスがテンプレート化してしまった。性急なノリ重視の曲、決まりきったMCでの煽り。それによって生まれるフロアの画一的な景色。そういうものも要素としてはひとつあっていいのかもしれませんけど、シーンがあまりにもそっちに偏りすぎてますし、ブームとしては長すぎる。
まったくそのとおりだと思います。わかりやすいノリ、わかりやすい展開を重視して曲を作って、わかりやすいライヴをする。フェスでウケるバンドがいいみたいな。でもそれって、そもそも"わかりやすい"ですかね? 僕からしたら、肝心のメロディがしっかりしてない曲が多くて、全然入ってこない。ああいうのって、もはや音楽のわかりやすさではなく、みんな同じようにキャラクター化していってるだけだと思うんです。
-そういう流れに対してのカウンターとなるようなバンドもたくさんいると思うんですけど、どうですか?
弱いし安いと思います。今のインディーズ・シーンに、そこに対抗できるほどの気迫は感じられないですね。そこで僕が考えてるのは、インディーズ界隈だけでも救うこと。ぬるいインディーズ・シーンを潰すというか、仲間を増やしたいんです。面白いバンドやアーティストはたくさんいるのに、今のフェス・シーンの次なるものとして、それっぽいシーンを作って、いい感じで売ろうとしてるメジャーの大人に吸い取られそうになってる。それってカウンターでもなんでもなくて、音楽性の違うメジャーがふたつあるだけってことじゃないですか。
-70年代のパンクや90年代のグランジも、飽和した商業的なロックに対抗できるポテンシャルを持ったシーンに目をつけた大人がいて勃興した背景もありますが。
でも、あのころみたいに、言いたいことを言わない。ダサいシーンに戦いを挑むくらいじゃないと、今の時代何も変わらないと思うんです。
-文句を言っちゃいけないみたいな風潮は強いですよね。ポジティヴもネガティヴもどちらも本音だし、どちらもあるから成立する。なのにポジティヴばかりの妙な平和感が強い気はします。
そこが嫌なんですよ。大人たちが100パーセント商業目線だとは思わないし、今の主流でない音楽をわざわざ扱ってるんだから、好きでやってるんだとは思います。でも、平和的にひっくり返すなんて無理。だから、パンクとかグランジっておっしゃいましたけど、ついにそのときが来たんだと思います。そう考えると、今の日本のバンド・シーンで、メジャーの人たちが新しいことを仕掛けようと、インディーズで際立ったバンドたちを集めてやってることって、所詮メジャーがメジャーの中でやってることの枠は超えてない。このままじゃ何も変えられずに終わっちゃう。解決策は、僕らアーティストやバンドがもっと自我を強く持って、結束を固めることだと思うんです。
LIVE INFO
- 2024.11.27
- 2024.11.28
- 2024.11.29
- 2024.11.30
- 2024.12.01
- 2024.12.02
- 2024.12.03
- 2024.12.04
- 2024.12.05
RELEASE INFO
- 2024.11.27
- 2024.12.04
- 2024.12.25
- 2025.01.08
- 2025.01.22
- 2025.03.28
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
ASP
Skream! 2024年09月号