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DISC REVIEW

W

Nostalgic Evolution

winnie

Nostalgic Evolution

スウェディッシュ・ポップとメタルという2枚看板を基軸にしながら、エモやオルタナティヴといったエッセンスを秀抜なイマジネーションでミックスするwinnieがドロップする3rdフル。彼らはメロディックからギター・ロックまで、幅広いシーンで大いに存在感を発揮しているが、そのスタンスがそのまま投影されたような仕上がり。先行シングルとして発表された「crush and burn」の爆発力、儚さすら感じさせる麗しいメロディ・ワークに心が翻弄される「lightning strikes」、男女ツイン・ヴォーカルのコントラストが素晴らしい「reasons never die」、壮大なスケールで聴き手を包み込む「always knocking on your door」等、多様な要素が際立ちながらもどこかに寄りかかることがなく、winnieならではのバランス感で彩られた全10曲。

Crash and Burn

winnie

Crash and Burn

イントロで思わず息を呑んだ。暴力的なのに哀しみが滲む、そのコントラストが作り出す刹那的な音色は、風穴を開けるが如く突き抜ける。USエモ、グランジ、HR/HMテイストを取り込んだ疾走感のあるサウンドに切ないメロが走るのは彼らの十八番でもあるが、約2年半ぶりの新曲「crash and burn」はioriとokujiのツイン・ヴォーカルによるハーモニーが、より楽曲の持つ繊細さを際立たせている。特にサビの消え入りそうなソフトな2人の歌声と厚みのあるオルタナ・サウンドが描く反響に身を投じると、優しく突き落とされるような妙な焦燥感に襲われた。c/wは表題曲とは逆ベクトルとも言える、スウェディッシュ・ポップ・テイストな楽曲。その振れ幅の大きさからも、8月にリリース予定のフル・アルバムの期待が高まる。

Synchronized

winnie

Synchronized

ドットに“winnie”なんてバンド名、とびっきりキュートじゃないか―そんなことを思いながら、CDを聴いてみる。きっと、思いがけず激しいエモ・サウンドに驚くだろう。バリエーションに富んだ楽曲たちと、一貫して貫かれている美しいメロディ。“Synchronized”と銘打たれた本作は、リズム隊とツイン・ヴォーカルのぶつかり合いを美しく表現している。緊張感あるギター・フレーズから入ったかと思えば、ヴォーカルはキャッチーなメロディをなぞる。リズム隊の激しさやギターの掻き毟るようなサウンドの上を、okujiとioriのお互いを補完するように混じりあうヴォーカルが滑るのだ。急きたてるように頂上目指し盛り上がるメロディは親しみやすく膨れ上がる。一回聴いただけで耳に残って離れない音は、生の音を目の当たりにした時の陶酔感を予感させる。邦楽だろうと洋楽だろうと関係ない。美しく響くロックはいつだって私たちを魅了し、自然と拳を突き上げてしまう行為に意味なんてないのだ。

Day Myself Black

winnie

Day Myself Black

MySpaseの日本国内アーティストEMOランキングで1位を獲得しオリコン・チャートでもロング・セールスを記録するなど、日本のエモ・ロック・シーンで今や飛ぶ鳥を落とす勢いのWINNIEがいよいよ1stフル・アルバムを発表。2ndミニ・アルバムからわずか11ヶ月という短いスパンで放たれる今作は、友人でもあるストレイテナーの日向秀和氏をゲスト・ミュージシャンに迎え更なるスケール・アップを遂げており、ダイナミック感も増している。また彼らの魅力の1つである男女のツイン・ヴォーカルから届けられる歌声は切なさと同時に力強さを与えてくれる。

Tesco

WISHMOUNTAIN

Tesco

Matthew HerbertがWISHMOUNTAIN名義で14年ぶりにリリースする最新作。英の大手スーパーマーケットTescoでの売上上位10品目の商品からサンプリングされた音によって制作されたというユニークな作品で、ほとんどの楽曲が1つの商品から録音された8つの音から構成されている。スポーツ・ドリンクからミルク、コーラまで日常的に身近なものの音がひとつの楽曲を形作っているというのがとても興味深く、馴染みのある音だからかとてもクセになる。また昔ながらのダンス・ミュージックを作りたくなったと語っていた彼の発言通り、オーソドックスでどこか懐かしい感じのするダンス・ミュージックに仕上がっているが、それが逆に新鮮に聴こえるのは今のダンス・ミュージック・シーンを物語っている気がする。

感情

w.o.d.

感情

自身4枚目のフル・アルバムとなる本作は、苛立ちや愉楽などの"感情"を3ピースの爆音に昇華した1枚。"馬鹿にしてよ"、"見下してよ"と衝動的な歌詞が際立つ1曲目「リビド」では、現代社会に一矢報いてやろうといった鋭利な音像で圧倒する。愚かさを笑い飛ばす「馬鹿と虎馬」、複雑なビートで反骨心を煽る「Dodamba」など、踊れる曲が連なるセクションも聴き応え抜群。迎えた終盤、ウクライナの国花を冠した「Sunflower」では、浮遊感に満ちたサウンドが忘れていた日常への感謝を蘇らせ、ラストの「オレンジ」で脳裏に浮かぶ橙色の空は、混沌とした時代で生きていく意義を再確認するきっかけをもたらしてくれる。とどのつまり"感情"が流れ着く先に広がるのは美しい世界なのだと、全10曲をもって証明しているかのようだ。

LIFE IS TOO LONG

w.o.d.

LIFE IS TOO LONG

リード曲「踊る阿呆に見る阿呆」はTHE WHOのPete Townshend(Gt/Vo)の名言を意識したような"踊れる"グランジ・ナンバーだったり、1曲目「Hi, hi, hi, there.」から地元の先輩ロックンロール・バンドの曲名が登場したり。臆面のなさが魅力のw.o.d.だが、先達への愛情が滲み出ているのもいい。だけど、そんなこと知らなくたって、単純に聴いてみれば"カッコいい!"とぶち抜かれる強さもあると思う。"通り過ぎた道の 正しさを祈った"と不安を孕んだ葛藤をぶつけた「relay」、アコギとキーボードが印象的な「あらしのよるに」は音的にも新境地。怒りや寂しさをなかったことにしたり、嘆いたりするのではなく、意味のあるものとして受け止め今を必死にサヴァイヴするリアルが息づく。

1994

w.o.d.

1994

1stアルバムがジワジワと話題を呼び、音源を超えるアグレッシヴなライヴ力で2019年は"VIVA LA ROCK"、"SATANIC CARNIVAL"、"RUSH BALL"と各地フェスへ出演してきたグランジ・バンドの2ndアルバム。今作も全曲ノイジーながら、その勢いはタイトなサウンドに凝縮されている。どっしりとリズム隊が支えるなかで、サイトウタクヤ(Vo/Gt)の歌心がより増した印象。特に「サニー」、「セプテンバーシンガーズ」のミドル・ナンバーではそれが際立ち、共通して登場する美しすぎる"空"を叙情的に描きながら、センチな心模様を歌声に滲ませる。前作に引き続き、ラスト・チューンでは彼らの初期衝動や真率さが突き刺さり、1枚聴き終えたあとには切なくも澄んだ後味が残る。

webbing off duckling

w.o.d.

webbing off duckling

芯の強いノイジーさでもって、昨今の洒落た邦ロック・バンドに中指を立てる、攻撃的なニューカマーが登場。神戸の3ピース、w.o.d.が本格始動と掲げリリースする1stフル・アルバムは、セルフ・タイトルの自信作。"聴けばわかる"と言いたくなるほどに、他とは異なる音楽性でリスナーに大きな衝撃を食らわせる。Kurt Cobain(NIRVANA/Vo/Gt)が亡くなった1994年生まれの彼らが鳴らすのは、洋楽の香り漂うNIRVANAを筆頭としたヘヴィなグランジ・サウンド。ただし日常における不満を日本語で叫んだり、拳を上げて大合唱できるパートもあったりと、親近感を抱かせる部分も。"割れる爆音が胸に優しかったな"と音楽と出会った瞬間を愛おしそうに歌う「みみなり」の純度の高さにも心が震える。爆音でぜひ。

Fix Yourself, Not The World

THE WOMBATS

Fix Yourself, Not The World

世界を変えるには、まず自分から――そんなテーマを掲げた本作は、人と人を隔てる昨今の状況はもちろん、バンドにとって大きな挑戦となったリモートでの制作も反映されているのだろう。リヴァプール発の3人組による4年ぶりの新作は、きらびやかなギター・ポップを軸に、チルな雰囲気から壮大なコーラスへと移ろうTrack.5、明るい曲調ながら厭世的な歌詞が刺さるTrack.7、軽快なサウンドが心地いいTrack.11、マイブラを思わせるドリーミーなアウトロのTrack.12など実験的な要素も取り入れながら、"今"の雰囲気を遊び心溢れるキャッチーなサウンドで描いている。バンド初となるUKアルバム・チャート1位を獲得したのも頷ける、この時代を生きる人々にそっと寄り添うような作品だ。

Beautiful People Will Ruin Your Life

THE WOMBATS

Beautiful People Will Ruin Your Life

前作『Glitterbug』が全世界で2億回以上デジタル・ストリーミングされた、まさに現代のオルタナ・ポップの標準をゆく3人組が3年ぶりのアルバムをリリース。リバプール出身だが、今はロンドン、LA、オスロと遠距離活動する彼らだからこその、随所に顔を出す英国的な鬱屈感や陰のあるメロディは健在。現代風解釈のマンチェ・ビートと言えそうなTrack.1「Cheetah Tongue」のグルーヴ、ディレイがかかったギターとシンセが空間を広げるシンセ・ポップ・ロックの「Turn」、往年のBLURを思わせる捻れたアレンジの「Black Flamingo」もフックが効いているし、THE STROKESのようなクールでシンプルな「Ice Cream」といったナンバーも。この聴き疲れしない感じがまさに今のポップ感。

This Modern Glitch

THE WOMBATS

This Modern Glitch

英リバプール出身のバンドのセカンド・アルバム。前作は本国でプラチナ・アルバムに輝き、今作も全英チャート3位を獲得している。前作を聴いたことのある人はこの豹変ぶりに少し驚くかもしれないが私もその一人だ。こんなにシンセサイザーを多用しているとは思わなかったし、こんなに勢いで突っ走っていく楽曲が並ぶとは思わなかった。少し間違えれば今の流行りを取り入れただけの薄っぺらなサウンドになってしまうが、彼らはそれだけで終わらない。全曲シングル・カットできるほどにめちゃくちゃポップなサウンドがベースになっているが、所々にひねくれたサウンドと歌詞が見え隠れして、異彩を放っている。インディー・ポップと呼べた前作と比べるなら、今作は敢えてメジャー・ポップと呼びたいと思う。

旅鴉の鳴き声

WOMCADOLE

旅鴉の鳴き声

ノベル・コンセプトアルバムの第2弾。前作『共鳴howRING』が黒ならば、今作は夕暮れのオレンジが似合う、そんなノスタルジックな1枚だ。勢いに頼らないことで必然的に歌の良さや緻密なアレンジといった部分が底上げされた珠玉の全6曲が並ぶ。理想と現実の狭間にいる嘘のない自分を映し出す「mirror」、素顔の自分を求めて闇に沈み込む「夜間飛行」で幕を開ける今作は、とにかく樋口侑希(Vo/Gt)の歌詞が等身大で生々しい。思春期の大切な感情をパッケージした「ラブレター」や、全国を旅するバンド自身のことを綴った「ペングイン」を経て、やがて人と人とを歌で繋ぐ「hey my friend」に辿り着く頃には、自分が何を大切に生きるのか、という人としての帰るべき場所が浮かび上がる。

共鳴howRING

WOMCADOLE

共鳴howRING

新メンバーを迎えたWOMCADOLEが完成させたのは、この時代を戦い抜くという闘争心に満ちたアルバムだ。"ノベル・コンセプト・アルバム"と銘打つ今作。物理的なコミュニケーションが断絶されたこの状況下に、君と僕をつなぐべく制作された作品だという。"必ず会える"と迷いなく伝える「再生」をはじめ、樋口侑希(Vo/Gt)が吠えるように歌う歌詞もストレートだ。全編に貫かれるのは"何があっても生き抜く"という想い。ヘヴィなグルーヴ、歪みを多用した鋭利なアレンジや重厚なコーラスも、その闘争心に拍車をかける。未来が明るいと言える根拠は何ひとつない。だが、"ロック・バンド"だからこそ発信できる希望がある。『共鳴howRING』はそういう覚悟を背負った作品だ。

ヒカリナキセカイ

WOMCADOLE

ヒカリナキセカイ

吠えろ、挑め、燃やせ――表題曲の約4分、一貫してそう猛々しく叫ぶWOMCADOLEは、相変わらず手加減というものを知らないバンドだ。"いつか差し込む/あの光を信じろ"と強引なまでに我々を奮い立たせる気迫は、かつての当たり前を失い絶望と隣り合わせの今の時代に文字どおり"一閃の光"であり"絶望を壊すシンボル"になり得ると確信した。そんなニュー・アンセムに加え、ディストーションの利いた骨太な「YOU KNOW?」と、一転して大人の色香を醸す「doubt」を収録した今作は、改めてフィジカル勝負なロック・バンドとしてのタフさも感じた1枚。吠えろと煽られて叫び、挑めと焚きつけられて拳を上げたい。彼らのせいで、熱狂のライヴハウスにどうしようもなく帰りたくなった。

黎明プルメリア

WOMCADOLE

黎明プルメリア

"今宵零時"から"黎明"へ――メジャー・デビュー作品であり約1年8ヶ月ぶりのフル・アルバムは、名実ともに"滋賀のスーパー・ロック・バンド"を証明する作品と言っていい。信念をより堂々と強固に打ち立てた「FLAG」を筆頭に、鋭利なギター・ロックからダークなオルタナ、フォーク・ソング、ストリングスの効いたバラード、ダンス・ナンバーなど、音楽性はさらにバラエティ豊かに。これまで持っていた純粋性、叙情性、鮮烈さ、洒落っ気が、枠にとらわれない表現に落とし込まれることで、彼らの人間性や精神性をより明確に示すことに成功している。バンドの資質を余すところなく詰め込んだ全13曲。今後も続く彼らの歴史と人生の中でも、故郷のような意味を持つ作品になるのではないだろうか。

ライター

WOMCADOLE

ライター

好機を手にしようとする人間は、風を読みそれが訪れるのを虎視眈々と待つ者、がむしゃらに探し続ける者の、大きくふたつに分けられると思う。鋭い眼光を持つという意味では共通しているが、現在の彼らは後者だろう。狼煙を上げ、満身創痍で泣きじゃくりながらも小さな心の鍵を開け、何がなんでも"大きな野望を鳴らせる戦場"への切符を掴みにかかろうという闘志が燃えたシングルが完成した。今はまだ恐怖の渦中でそれを掴めていないからこそ、闇と入り混じる炎の色が切実にこちらの鼓膜へと訴え掛ける。弱者による未完成であり最強の宣戦布告は、今後さらに火力を高めていくことを予感させた。c/wのマイナー・キーが印象的なロック・ナンバー、ソウル・バラードと、3曲すべてに進化途中のバンドの姿が刻まれている。

今宵零時、その方角へ

WOMCADOLE

今宵零時、その方角へ

4曲入りシングルから約半年でリリースされる13曲入りのフル・アルバム。もともと各プレイヤーが持つラウドロックやポスト・ロックなどの影響が垣間見られるが、今回はオルタナやブルースなどのアプローチも。青さの香る楽曲、黒く衝動的な楽曲、感傷的な楽曲だけでなく、シニカルなユーモアの効いたものもあり、表現方法を拡張すべくトライしていることが窺える。2010年代後期のギター・ロックの主流に収まりきらない4人の個性、その4人が作り出す歪さは紛れもなく彼らの武器。それを磨くだけでなく、成長と変化の真っ最中であるという事象をそのままコンパイルした、彼ら史上最もタフで火力の高い作品に仕上がった。

アオキハルヘ

WOMCADOLE

アオキハルヘ

現在のメンバーが揃ってからのWOMCADOLEは、湧き起こった感情を嘘偽りなく、余すことなく音楽と演奏に落とし込めるバンドになった。今作に収録されている4曲は聴き手目がけて剛速球を投げつける火の玉のようだ。なかでも「アオキハルヘ」は樋口侑希(Vo/Gt)の過去の恋心とそれに対するいまの想いが強く結びつき、彼らの生々しい青さとしなやかな色気が十二分に出た楽曲である。滑らかなベースとラウドロックさながらのエネルギッシュなドラムが作るリズム・セクションも、繊細且つ豪快な樋口のマインドとは抜群の相性。ひりついたギターもこちらの胸ぐらを掴むように鬼気迫る。全員が全員主役と言わんばかりに暴れまわることができるのも、互いのリスペクトがあってこそだろう。まだ見ぬ青き春へと走り出した彼らの行方に想いを馳せる。

15cmの行方

WOMCADOLE

15cmの行方

2015年12月、突然のメンバー脱退/活動休止を発表。そして約半年間の沈黙を破り、新メンバーを迎え再び歩き始めた彼らの"もう止まらない"という思いが確固たるものであることを、今作が証明してみせた。"僕らは、生きているんだ"と叫ぶ「アルク」から始まる、誰もが左胸に持つ"15cm"を捜す旅。一貫したテーマを持つ8曲はひとつの物語のようで、展開を追うごとに少しずつ光が射し、そしてラストの「唄う」で辿り着く結末――"唄うよ、あなたとの日々を"という、バンドの迷いのない答えに胸がすく思いがした。樋口侑希(Vo/Gt)が全身全霊を懸けるようにして絞り出す歌に宿った思いの強さは、今作を聴く限りでは正直これまでの比ではない。"誰かの光になる歌を歌い続ける"。彼のその意志は、足を止めていた間により揺るぎないものになったようだ。

ワタシノハナシ

WOMCADOLE

ワタシノハナシ

大人ってわかってくれない。いくら苦しい、つらいって言っても"若さ"のせいにして片づけちゃう。もちろん、その通りなのかもしれないけれど。そんな不安定な心に全力でぶつかってくるのは、滋賀発の4ピース、WOMCADOLE。彼らの初の全国流通盤となる今作は、シンプルなギター・ロック、だけど驚くほどにエモーショナル。20歳になったばかりの樋口侑希(Vo/Gt)が紡ぐ等身大でまっすぐな歌詞が印象的なTrack.2「ドア」やTrack.6「ハタチノボクへ」、声の限り歌うTrack.4「少年X」には、"伝えたい"という思いが人一倍詰まっている。"閃光ライオット2013"など多くのオーディションのファイナリストまで選ばれるも、あと一歩届かずだった彼らが、それでも、溢れんばかりの想いを原動力に完成させた今作は、多くの人に届くはず。WOMCADOLEの快進撃は、ここから始まる。

Hup : 21st Anniversary Edition

THE WONDER STUFF

Hup : 21st Anniversary Edition

かっこいいアラフォーの逆襲――昨年、デビュー20周年を記念して1st アルバムを再レコーディング盤としてリリースし、約18年ぶりに奇跡の復活来日も大成功に終わったWONDER STUFF から、今年は2ndアルバム『HUP』の現メンバーにて再レコーディング盤が登場です。えっ!あざとい?いやいやいや、新たな渋みを宿した力強さは、そんな揶揄を打ち消す普遍的ロックンロールの証明ですよ! 89 年リリース時は全英5位を記録しBRIT AWARDにもノミネートされるなど、バンドが大きな飛躍を遂げたアルバムだけあり、往年のファンには代表作として人気の高い名盤となっている。当時のシーンを総括するように、ネオアコの繊細さからマッドチェスターのグルーヴ、ほんのりアイリッシュ・トラッドも混ぜ合わせたオリジナリティは色褪せません!

歌声は草原から星空まで

WONDER WONDER

歌声は草原から星空まで

"牧場系バンド"を謳う男女混成バンド、WONDER WONDER。全国デビュー・アルバムとなった今作には、牧場というよりもむしろ生活の息吹が色濃く滲んでいる。彼らの音楽の核となっているのは、街に生きる現代人が身の回りにある自然や生活、そして生命を慈しむ豊かな心や感情なのではないだろうかと思う。それは、Track.4「食卓」の日常のふとした情景や心の機微をとらえた歌詞、素朴でハートフルなサウンドにも滲む。我々の人生には当たり前な孤独や虚無感というものが横たわっている。それをすくいとり抱きしめるように歌詞を綴り、そして天真爛漫に歌い上げる松尾美樹には、この世界はどのように映っているのだろうか。まだ荒削りな印象を受けるが、彼らの音楽には底知れない魅力がある。

artless

WONK

artless

香取慎吾やVaundyらゲストを多数迎えた"WONK'S Playhouse"の設定は、バンドが制作のために過ごすシェアハウスだったが、今作の布石でもあったように思えてくる、これまでにない日常感と親しさが溢れている。温かみのあるアコギやローズウッド、何よりメンバーのコーラスが印象的なTrack.2、ジャズ~ネオ・ソウルの粋で楽器一音一音の聴こえ方に注力したTrack.3やTrack.4、シンセ・ベースが空間を膨張/収縮させつつ、圧のないミックスが今の彼ら流のヒップホップ~エクペリメンタル・ソウルを具現化するTrack.5、そして祈りのようなTrack.6に帰着。家族や恋人、友達から魂の友人と呼べる人まで。どうかあなたらしく生きていてほしいと願う4人からの手紙のような6篇(曲)。

サクラメント・カントス

WOODERD CHIARIE

サクラメント・カントス

前作から約1年3ヶ月振りとなる待望のセカンド・アルバム。今作はWOODERD CHIARIEの魅力はそのままに壮大さとダイナミズムが加えられ、より彼らの芯に迫った作品と言えるだろう。先行シングル「オルフォイス」ももちろん彼らにはしっかりと人々の心を振るわせる歌がある。特にアルバムのリード・トラックである「バー」はバンドを代表する傑作だ。攻撃的でエッジの効いた「アイメ」や爽やかで心地よい「asa→hiru」などもアルバムをバラエティ豊かなのもにしている。そして彼らの武器の一つでもある美しい世界観を描き出すヴォーカルも聴き手の心をしっかりと捕らえて来る。この圧倒的なクオリティを放つ新作で彼らはまた一つステージを上ったと言えるだろう。

CAMP

World Maps

CAMP

1月1日に"bolt from the blue"から改名後初リリースの1stアルバムは1stにして集大成的な作品。"マウンテン・ポップ"を標榜し、大自然の中で聴きたくなるような、大人も子供に返ってはしゃいでしまいそうな音楽というコンセプトがあり、アートワークも含めてトータル・イメージがハッキリしている。代表曲「your song」から始まり、同曲のライヴ・バージョンで終わる全曲を聴き終えるころには、憂鬱な気分も吹き飛んでしまうくらいのポジティヴなエネルギーに溢れた作品だ。ファンク、AOR、フュージョン的な要素を押し出した「Groovy Doo」など懐かしく感じる楽曲も。マスタリングはPaul McCartney、RADIOHEADら数々の有名ミュージシャンの作品を手掛けたAlex Whartonが担当している。

EHON

World's End Super Nova

EHON

2015年に活動開始したバンド、World's End Super Novaの初の全国流通作品。初期曲から新曲まで計8曲を収録することで、バンドの過去、未来、現在を感じさせる名刺代わりの作品に仕上げた。今作で初めてこのバンドを知るリスナーも、冒頭3曲を聴けば、彼らがライヴ・バンドであることを一発で理解できるだろう。ミドル~スロー・テンポのバラードを中心とした4曲目以降は、愛情について歌った歌詞や温かな曲調に反映されているツモトアキ(Vo/Gt)の心の変化にも注目して聴いてみてほしい。ラストは、疾走感溢れる「夜の歌」。コロナ禍に自身を鼓舞するために発した"暗くても暗くても手を伸ばしたんだ"という言葉が、今はバンドとリスナーの未来を照らす言葉として響いている。

Source Errors Spells

WORRIER

Source Errors Spells

今号でレビューが掲載されているNICE NICEと一緒に手に取ってもらいたいバンド。ミルウォーキー出身の3人組WORRIERは、デビュー前からFOALSの09年ツアーの前座に抜擢されるなど、期待の新人として注目されている。基本は!!!やBATTLES界隈のエクスペリメンタル的アプローチなのだが、彼らの場合、複雑怪奇さはあまりなく、よく聴くと結構ストレート。リズム的にシンプルなミニマル・ビートの反復が多く、尺もコンパクトにまとめられているから余計にそう聴こえるのかな。うねるグルーヴの高揚感(エロさ)というよりも、神経質なポストパンク的要素の方が勝っているので、全体的に冷たい感じなんだけど、それが逆に良かったり。「Stripping My Heart Flat」から聴いてみてください。

MOONRAKER

WurtS

MOONRAKER

作詞作曲/アレンジ、アートワークや映像に至るまですべてをセルフ・プロデュースする、21世紀生まれのソロ・アーティスト WurtSがEMIとタッグを組んだ最新EP『MOONRAKER』をリリース。本作には、今やTikTokやYouTube Shortsで聴かない日はないほどバズりまくっている「Talking Box (Dirty Pop Remix)」を筆頭に、彼らしい脱力感のある気怠げなヴォーカルとアップテンポなトラックが絡み合う「コズミック」、ダンス・チューン「SWAM」、ブラス・セクションを取り入れたアレンジが光る表題曲「MOONRAKER」など全6曲が収められている。ジャンルレスな楽曲群から垣間見えるWurtSの貪欲なクリエイティヴィティに圧倒される。