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DISC REVIEW

I

Libertine Dreams

INORAN

Libertine Dreams

○○をしなくてはいけない。はたまた○○をしてはいけない、などと。気づけば、決まりごとの類いが増えてしまっていたこの世相のせいもあるのだろうか。今作の中に詰まっている自由でボーダレスな音たちは、なんだかやたらと心地いい。単なるロック・サウンドとは明らかに違うし、そこここにはクラブ・ミュージックの要素も孕みつつ、ポップ・ミュージックとしての素養もありながらにして、どこか無国籍なニュアンスまでをも含んでいることにより、この『Libertine Dreams』は不思議且つ伸び伸びとした音に溢れかえっているのだ。LUNA SEAのギタリスト INORANのソロ作という肩書きにさえ一切縛られることのない、貪欲なクリエイティヴィティが具現化したこの音の持つ奔放さは実に素晴らしい。

アイクロニクル

I-RabBits

アイクロニクル

新ドラマーを正式に迎え、新たなラインナップでスタートを切るという想いとともに自らの殻を破ろうという挑戦をダイナミック且つヴィヴィッドに印象づける4人組ピアノ・ロック・バンドの3rdミニ・アルバム。"ピアノ・ロックを美しく汚す"と自ら表現したその挑戦は、とことんアグレッシヴなバンド・サウンドに見事に反映されているが、美しいメロディを伸びやかに歌い上げる歌も一歩も退かず、それぞれに主張し合う演奏に負けずに前へ前へとその魅力をアピールしているところが痛快且つ爽快。リスナーに対して、自分を肯定してごらんと歌いかけるメッセージとともに踊れるビートやシンガロング・パートをふんだんに盛り込んだところからは、ライヴでファンと盛り上がることを前提に作ったことも窺える。(山口 智男)

約3年8ヶ月ぶりにニュー・アルバムをリリース。"永遠"なんてないとわかっているからこそ願うようにそれを歌っていたのが当時だとしたら、限られた時間の中で相手とどう関わっていくかという点に想いを費やしているのが現在。そのくらい焦点は変わったが、それはおそらくバンドにとって苦しい季節もあったからなのだと思う。それでも聴き手の全感情を受け止めそれらをプラスに変換できることがこのバンドの強さであり、その根本にあるのはバンドがずっと守り続けてきた、いくら自分が傷ついても相手のことを信じたいという気持ちだ。1stミニ・アルバム収録曲「I LOVE IT」、「ユニオン」の再録版や、本拠地・横浜に捧ぐ歌「ヨコハマラプソディー」にも今だからこその意味が宿る。

ふるえる

ircle

ふるえる

ircleが約2年半ぶりとなるフル・アルバム『ふるえる』をリリース。オープニングからタイトなビートが高揚感を駆り立てる「風穴」をはじめ、曲名からも遊び心が垣間見える「ダルマオープンチャクラゲート」、軽快なシャッフル・ビートで展開する「暖炉の灯」、東京オリンピックどころじゃなくなった2020年春を歌った「2020」など全10曲が収められる。全体的に奇をてらうことなく、アレンジ/歌詞ともにircleらしいシンプルさを研ぎ澄ました作風が心地よい。なお、"HUMANisM盤"には5月に地元の大分県別府市で開催した主催イベント"HUMANisM~超★地獄編2022~"のドキュメンタリー&ライヴDVDが付属。結成21年を迎えたロックンロール・バンドの今を凝縮した記念碑的な1枚となっている。

こころの℃

ircle

こころの℃

ライヴの熱がぐんぐんと上がってきたタイミングでリリースする3rdフル・アルバム。エモーショナルなロックを中心に、ハードコアもバラードも飲み込んだ多彩な全10曲は、ミニ・アルバムの発売を重ねながら磨き上げてきた曲作り、音作りのスキルの賜物だ。胸に突き刺さる剥き出しの感情と共にバンドの底力を今一度アピールしている。つまり、エモいだけのバンドじゃないということ。自らのステートメントを掲げながら、新たなグルーヴを追求した「ホワイトタイガーオベーション」を冒頭に持ってきたのは、バンド自身が転機を感じているからだ。"MURO FESTIVAL"も主催する渋谷TSUTAYA O-Crestの店長、室 清登が始めた新レーベルの第1弾。ここからircleの新たな時代が始まる!

Cosmic City

ircle

Cosmic City

カントリー調の「ねえダーリン」、前作に引き続きピアノを使ったスロー・ナンバー「Heaven's city light」といった曲も中盤に収録しつつ、全体としてはヒリヒリとした感覚も含め、エモコアなんて言いたい激しさが戻ってきた印象がある。やっぱり彼らはこうでなきゃ。レクイエムと思しき「ばいばい」が、激しさの中に切なさが滲む曲調になったことに加え、歌詞にあえて汚い言葉を使ったところも彼ららしい。じゃあ、原点回帰なのか? いや、2分足らずのハードコア・ナンバーとポエトリー・リーディングの組曲とも言える「アンドロメダの涙」と「ペルセウスの涙」が新境地を思わせることを考えると、そうとも言えない。ircleは常に転がりながら前に進んでいる。そんなところが一番、彼ららしい。

CLASSIC

ircle

CLASSIC

2017年に、同郷大分の後輩SIX LOUNGEとスプリットCD『地獄盤』をリリースし、全国ツーマン・ツアーを開催したircle。そのツアー・ファイナルでリリースを発表したミニ・アルバムがついにリリースされる。切羽詰まったところから生まれるフォーキーな歌と爆音のバンド・サウンドというircleらしさは相変わらずながら、これまで以上にポジティヴなヴァイブスが感じられるのは、ピアノやオルガンも使ってアンサンブルの幅を広げることに挑んでいるからか。"ラララ"という合唱コーラスを加えたリード曲の「あふれだす」(Track.2)は、シンセを使ってアンビエントな音像を作り上げた「Sunday morning relight」(Track.5)の挑戦とともに、今後何かを変えていきそうだ。

地獄盤

ircle×SIX LOUNGE

地獄盤

ともにライヴハウス・シーンで人気を伸ばしている大分県別府市出身の先輩後輩バンドによるスプリットCDが、後輩であるSIX LOUNGEから話を持ち掛け、実現したそうだ。それぞれに新曲を2曲ずつ提供している。そのSIX LOUNGEはともにストレートなロックンロールの「STARSHIP」、「STRAWBERRY」で爽やかさと向こう意気が入り混じる個性をアピール。一方、ircleは「瞬」、「HUMANisM」の2曲で、それぞれ2ビートと言葉を畳み掛ける歌という新境地にチャレンジ。なぜ自分は歌うのか、何を歌うべきなのかというテーマと改めて向き合った歌詞が胸を打つ。別府の観光名所、地獄めぐりに由来するおどろおどろしいタイトルとは裏腹に、激しい演奏と詩情が交差する美しい1枚だ。

Copper Ravens

ircle

Copper Ravens

前作『光の向こうへ』からわずか4ヶ月でリリースするニュー・ミニ・アルバム。自分たちを知らない人たちにも興味を持ってもらうことをテーマに間口を広げることに挑んだ前作を踏まえたうえで、改めてircleらしさをアピールする全6曲。メンバー自ら純度100パーセント以上のircleらしさが感じられると語る「orange」では、弾き語りのフォーク・ナンバーがエモーショナルなガレージ・ロックに転じるアレンジがドラマチック。メンバーの実人生から生まれた言葉の数々とともに切なさ、悲しみ、苛立ちを歌いながら、バンドの所信表明とも言えるラストの「Blackbird」では前進する意思を歌い上げているところがいい。曲ごとにバンドが持つ豊かなバックグラウンドを物語る閃きに満ちたアレンジも聴きどころだ。

iしかないとか

ircle

iしかないとか

今年の4月に枚数限定でリリースしたシングル『失敗作』を見事に即完させ、勢いに乗っている4ピース・ギター・ロック・バンド、ircle。そんな話題の同シングルを含んだ1stフル・アルバムをついにリリースする。攻め立てるようなギターに乗せて"俺が俺で無くなるのが嫌なだけ。"(「セブンティーン」)と歌う河内健悟のヴォーカルが印象的で、聴き手に強く訴えかけてくる迫力がある。"iしかない"という彼らの衝動がひしひしと音を通して伝わってくるようだ。型を崩すことで"今ある世界に新しい風穴をあける"というバンドの思いのもと、今のロック・シーンに新しい旋風を巻き起こしていくことだろう。

さよならリリー

ircle

さよならリリー

東京を中心に精力的なライヴ活動で知名度を拡大している別府出身の4ピース・ギター・ロック・バンド、ircle(アークル)。バンド名には円(circle)の持つ完全の象徴という意味合いを、頭文字のCをはずし、型を崩すことで"今ある世界に新しい風穴をあける"という思いが込められている。朗らかなヴォーカルが際立つ軽やかでキャッチーなTrack.1から、攻勢的なギターが炸裂するTrack.2、ポスト・ロック的なサウンド展開とポップネスが融合するTrack.3という畳み掛けは、バンドのアプローチの振り幅を見せつける。激突するように共鳴する各楽器が作り出す空気感は、中学時代から音を奏で続けている4人の阿吽の呼吸だろうか。結成からの12年間という歳月をコンパイルした瑞々しい作品だ。

夜を抜けたら

IRIKO

夜を抜けたら

音楽好きの兄に連れられ観に行ったBOOM BOOM SATELLITESのライヴ、TVで観たNUMBER GIRLのフェスでのライヴ映像に衝撃を受けたリーダーの鶴浩幸(Vo/Gt)が"いつか自分も"という思いで結成したバンド、IRIKO。今作にはそのときの衝動や感情が丸ごと詰まっているような生々しい熱量がある。さまざまなアーティストに影響を受けつつも、彼らの魅力である泥臭さや力強さを基調とした確固たるバンド・サウンドが高らかに突き抜ける。そこにスパイスのように変拍子を絡ませてくる挑戦的とでも言えるサウンドはリピート必至。その音を聴くだけで息のあった4人の演奏が見えてくるようなライヴ感も今作の魅力のひとつだ。

Da®win

IRIS MONDO

Da®win

エレクトロ・ガールズ・バンド IRIS MONDO、待望の1stアルバム。キラキラと弾ける骨太なエレクトロ・サウンドは、まっすぐなロック・バンド的アプローチから、目の前に物語が浮かび上がってくるような雨音や水の音まで、様々な音像を飲み込んで縦横無尽に拡張していく。トラックメイクのドラマチックさもさることながら、くるみスカイウォーカーとPLUM SHISHIDOのツイン・ヴォーカルによる、多彩なジャンルの要素を感じられる軽快なヴォーカル回しが楽しい。特に生演奏一発録音で制作されたという、Wiennersのアサミサエ(Vo/Key/Sampler)をフィーチャリングに迎えた「スパーク ネオ ストーリー」は圧巻だ。彼女たちの音楽への純粋な貪欲さを存分に感じられる1枚。

Kiss Each Other Clean

IRON & WINE

Kiss Each Other Clean

前作は全米チャート24位を記録する大ヒットとなったが、「Flightless BIRD,American Mouth」が映画「トワイライト」の挿入歌として起用された影響はあるだろう。しかしこれは、単にタイアップ効果がもたらした結果ではなく、IRON & WINEことSamuel Beamの音作りに対する真摯で誠実な姿勢が実を結んだ、必然的な動きなのではないか。オリジナル・アルバムとしては3年振り通算4枚目、SUB POPから4AD移籍後初となる最新作。曲毎に表情を変えるバラエティ豊かな作風には、フォーク、カントリー、AOR、ブルース、ワールド・ミュージックなどジャンルレスな歩みの洗練があり、また成熟の貫禄を感じさせる風通しの良さもある。もちろん、コーラスとの美しいヴォーカル・ハーモニーも健在。“雄大なアメリカ”を想起するエモーショナルが満ち溢れている。

フリージアの花束を

the irony

フリージアの花束を

九州出身の4人組ギター・ロック・バンド、the ironyによる3rdミニ・アルバム。船津陽史(Vo/Gt)の圧倒的な歌唱力とノスタルジーを誘う美しいメロディを武器とする、自他共に認める王道歌モノ・バンドが、自らのアイデンティティを最大限に発揮した渾身の1枚を完成させた。エッジの効いたロック・サウンドに綴る負け犬たちのラヴ・ソング「アンダードッグ」に始まり、優しいメロディがふたりの門出を祝福するウェディング・ソング「ラストダンス」、毎日の生活で疲弊する心を風船に喩えた軽妙なカントリー・ポップ「balloon」など、愚直な愛も皮肉も呑み込んだ6曲の"良い歌"たち。ピアノの伴奏から幕を開ける珠玉のナンバー「Hallelujah」。地元・福岡を舞台に悲しい別れを描いた渾身のバラードには、the ironyというバンドの真価が詰まっている。

10億ミリのディスタンス

the irony

10億ミリのディスタンス

九州出身の4人組バンド the irony(ザ・アイロニー)による2枚目の全国流通ミニ・アルバム。どこか懐かしくて美しいメロディを、船津陽史(Vo/Gt)の切実な歌声で紡ぐ極めて王道のギター・ロック・アルバムだが、そのサウンドメイキングは、UK/USロックをルーツに持つ脇屋周平(Gt)が中心的な役割を担うことで、大胆に織り込まれる洋楽的なエッセンスがスリリングだ。離れた"君"へエールを送るリード曲「幻影少女」の他、人間の隠れた二面性を暴くエッジの効いたロック・ナンバー「ERROR」、切ない別れを叙情的に綴るバラード「白い花」など、全5曲を収録。不器用でもまっすぐに人との絆や愛について歌う歌詞からは、人として大切な何かを気づかせてくれる。バンドが普遍への第一歩を刻む大切な1枚となった。

明るい未来の証明

the irony

明るい未来の証明

下北沢や渋谷を中心に活動する4人組ロック・バンド、the irony。彼らが、いい意味でひねりのないまっすぐなギター・サウンドに、ひたすらに柔らかく優しい言葉を刻み込んでいくたび、じんわりと思いが沁み渡る。人は悲しいから、愛おしいから、祈りたいから歌うのかもしれない。"僕"と"君"の繋がりを確かめたくて歌うのかもしれない。明るい未来があることを信じたくて歌うのかもしれない――こんなことを、the ironyの音楽を聴くと思う。今作の最後を飾るナンバー「ヒカリ」の持つ奥行きや温かさに触れた瞬間、耳元から世界が広がっていく感覚を覚えた。聴けばわかるなんて適当なことは言いたくないが、聴けばわかる。安直なギター・ロックだと思っていたら損をするぞ。さあ、君も新しい世界に出会ってくれ。

KING

irune(ex-Use With Caution)

KING

胸の奥に抱える本音を代弁してくれる4人組ロック・バンド、Use With Caution(通称:ゆずこしょー)の現体制初となる作品『KING』は、彼らの柔軟性を十分に堪能できる1枚。未来への不安や不信感、誰もが経験する感情を、一方的ではないメッセージとして、様々なサウンドに乗せて届けてくれる。"求められる音楽を作る"と謳うのは簡単だが、実際にニーズに合わせて変化していくことはとても難しい。しかし彼らは、自分たちの現在地と目的地をしっかりと見据え、前向きに変わっていくだけでなく、現在進行形で成長している過程すらもアートとして『KING』という作品に落とし込んでいる。彼らのことは、バンドというよりも"クリエイター集団"と呼ぶのが正しいのかもしれない。

イノセントリードドドドープエモポップス

ISAAC

イノセントリードドドドープエモポップス

大きな聴きどころはふたつ。まずひとつ目は、"観客と一緒に楽しんでもらいたい"と作り始めた、言葉遊びを交えたユーモラスな歌詞だ。もはや彼らのスタンダードと言ってもいいその歌詞は、ユーモアという観点からの完成度の高さのみならず、そこに込めたメッセージにもしっかりと耳を傾けたい。そしてふたつ目は、ダンサブルなビートも使いながら、さらにポップになった楽曲と骨太な演奏。歌詞を際立たせるためのプログレッシヴな演奏からは、実力派のロック・バンドという彼らのもうひとつの顔が浮かび上がる。Track.9「こっそり冒険島」は、彼らのルーツを思わせる爽やか且つエモいギター・ロック・ナンバーで、後半のあっと驚く展開にも思わずニヤリ。彼らは決して遊び心を忘れないのだ。

アップルエモインストール

ISAAC

アップルエモインストール

愛知県豊橋市出身の4人組、ISAACが作り上げた1stミニ・アルバム。前身バンド時代はJIMMY EAT WORLDを目指していただけあって、演奏はなかなかアグレッシヴ。しかし、日本語で歌う曲そのものは昨今のロックやJ-POPに通じるキャッチーな魅力がある。童謡"うさぎとかめ"を歌いこんだTrack.1「動揺を童謡で学ぶ唄~うさぎとかめ編~」、ライヴでは振付けもあるというTrack.2「スーパーナチュラルスーサイド」、ディスコ・ナンバーのTrack.6「音楽が終わった夜に」など、リスナーに楽しんでもらうために作った曲におけるアプローチはある意味、過激。しかし、これはまだ序の口。新たな一歩を踏み出したバンドは誰も予想していなかった(?)ポップ・ソング作りのセンスを今後さらに開花させそうだ。

Celebrate This Place With Me

ISLET

Celebrate This Place With Me

既存のカテゴリーに属さないものに対面した時、私たちは拒否反応を起こしがちだ。願わくば自分は安全な場所で傍観していたい。しかし、ISLETは拒否反応を起こす隙さえ与えてはくれない。一瞬にして“ISLET=隔離されたどこか”へ連れて行かれる。おそらくは現実ではないどこかだ。同じパターンをいくつも重ねた複合的音像。唐突すぎる場面展開。固定したパートを決めず流動的にプレイするサウンドは、破壊的なドラム・デュオとノイズに裏打ちされた妖艶な空気が漂う。ゴシックなTHESE NEW PURITANSのパンクよりエキゾチックで、高尚なSteve Reichのミニマル・ミュージックより暴力的。中毒性を帯びたサウンドは、視界を塞がれてしまったかのような錯覚を起こし、眠っている記憶に揺さぶりを掛ける。

Synesthesia

IVORY7 CHORD

Synesthesia

IVORY7 CHORDの1年4ヶ月振りの新作となるミニ・アルバムは、インスト2曲を含めた全8曲とは思えないほどに濃厚でドラマティック。そしてどの曲もひたすら攻めているのが特徴的だ。IVORY節ともいうべき清涼感のある音の洪水がダイナミックに降りかかり、心地よく鼓膜を包む。UNCHAINの佐藤将文とheの大谷武史がギターで、Kyleeが大西俊也(Vo/Gt)と共に「ONE」歌詞の共作を手がけているなど、バンドと親交が深いアーティストが各楽曲に参加していることも“Synesthesia(=共感覚)”的なスパイスとなり、エッジの効いた繊細な音色が織り成す層は煌びやかだ。大西のヴォーカルとメロディの相性はより高まり、楽曲を更に強く印象づける。

leaves

IVORY7 CHORD

leaves

約1年前に惜しまれつつも解散したWRONG SCALEの大西俊也(Vo&Gt)と野田剛史(Vo&Ba)を中心に結成されたivory7chord。メンバーにはUNCHAINの吉田昇吾(Dr)、元L.A.SQUASHの三谷和弘(Gt)といった美メロの構築者たちが名を連ねるだけあって、その色彩豊かな表現力はさすが。心地よい流れるようなメロディを追っていくと清涼感を残すハーモニーと繊細だけれど力強い音世界に酔わずにはいられない。インストの曲も収録されており、ドラマティックに展開されていく楽曲たちと溶けていく。細かな音の層がいくつも重なり、それは一瞬でも気を抜くと壊れてしまいそうに尊い。the band apart、te'等が好きな人は必聴です。

Singin' in the NOW

Ivy to Fraudulent Game

Singin' in the NOW

アイビーの"今"を歌うアルバム『Singin' in the NOW』。「オートクチュール」、「オーバーラン」など疾走感溢れるロック・チューンに加え、コーラスの効いたギターときらめく電子音が軽やかな「yaya」、きめの細かい演奏に叙情的な歌声が映える「Heart room」、浮遊感あるデジタル・サウンドが異彩を放つ「UNDER LAND」、壮大なラストを飾るドラマチックな「愛の歌」と振り幅の大きさが印象的だが、伝えたいメッセージは一貫している。"貴方の暮らしを笑顔にできますように"との想いが込められたという今作は、余白を残した歌詞が聴き手それぞれの置かれた環境、抱える悩みに適応できる包容力を持つ。ここに収録された10曲は、そんな"貴方"へ向けた彼らにしか歌えない"愛の歌"だ。

胸を焦がして

Ivy to Fraudulent Game

胸を焦がして

4thアルバムからの先行シングルとなる本作。キラキラしたグロッケンの音色が弾むイントロからスタートする表題曲「胸を焦がして」は、春の訪れを告げるような今の季節にぴったりの明るいメロディが印象的だ。しかし、心弾むサウンドに乗せて歌われる歌詞には、弱さや憂いが綴られている。"夢は叶う"、"きっとうまくいく"と歌うのではなく、うまくいかない人生も受け入れありのままを映す言葉たち。そんな共感性の高い歌詞は、不安を抱えながらも思い描いた未来に胸を焦がし生きている、すべての人の人生を肯定する包容力と温かさを持っている。また2曲目のタイトルは事前に明かされておらず、CD購入者だけが楽しめるエンタメ性も魅力。ニュー・アルバムへの期待も高まる。

再生する

Ivy to Fraudulent Game

再生する

いいタイトルだ。コロナ禍に崩壊した文化を"音楽の力で再生する"という決意で制作されたIvy to Fraudulent Gameの最新アルバム。それは同時に、一時は活動休止の危機にあったというバンドそのものを再生していく、そんな作品でもあると思う。特筆すべきは、初めてメンバー全員が作曲を手掛けたこと。大島知起(Gt)による解放的なナンバー「檻の中から」、轟音が美しい幻想を描くカワイリョウタロウ(Ba)の「共鳴」をはじめ、寺口宣明(Gt/Vo)が手掛けた「Twilight」は神聖なアプローチで新境地を開いた。そんな今作で静かな憂いを湛えるのがメイン・ソングライター 福島由也(Dr)作曲の「番」や「御伽」だ。"心を表す言葉が見つからない"と綴る歌詞に、彼らが音楽に求める意味を見た。

完全が無い

Ivy to Fraudulent Game

完全が無い

夢破れて失意のどん底に落ちようとも、孤独に喘ぎ泣こうとも、人は最後に必ず死ぬ。その日を迎えるまでの出会いや苦悩が唯一無二の人格になる。メジャー・デビュー後、「Memento Mori」や「模様」といった曲で、Ivy to Fraudulent Gameが歌い続けてきた揺るぎない思想が、ひとつの作品として結実した2ndアルバム。青い前進の意志を刻む「blue blue blue」、ヘヴィな音像の中で不屈の闘志を燃やす「無常と日」や「真理の火」など、美しくも激情を孕んだオルタナティヴなバンド・サウンドに乗る、寺口宣明のヴォーカルの訴求力はいっそう強度を増した。全11曲の最後に辿り着く、生命力が漲る壮大なバラード「賀歌」は圧巻。不完全な日々を愛してこそ人は強くなる。

模様

Ivy to Fraudulent Game

模様

バンドとしてネクスト・ステージへと進んでゆくことを宣言するような前作シングル『Memento Mori』に続き、アイビーがリリースする2019年第2弾シングル『模様』は、初めてヴォーカル、寺口宣明(Gt/Vo)の作詞作曲ナンバーをリード曲に掲げた王道のロック・バラード。アコースティック・ギターとストリングスを伴奏に歌い出し、次第にバンド・サウンドが美しく広がってゆく展開には、前作収録曲「低迷」に引き続きアレンジャーに迎えたトオミヨウの辣腕が光る。"鱗の傷は 光を受けて 模様みたいに綺麗だった"と、生きていくなかで誰もが少なからず負う痛みや傷こそが人間の生きた証であると肯定するような歌詞には、自分の弱さを包み隠さずに歌う寺口の素直な心情が綴られている。

Memento Mori

Ivy to Fraudulent Game

Memento Mori

"死を想え"と訳されるラテン語"Memento Mori"を表題に掲げたニュー・シングル。快作。先行で音源なしのリリック・ビデオを公開する初の試みからも感じられるとおり、今作はバンド史上最もメッセージ性の強い曲と言ってもいいかもしれない。"いつかは死んでしまうなら"と、死の側から生きる日々を浮き彫りにする思想は福島由也(Dr/Cho)らしいが、それを開放的なサウンドに乗せて、揺るぎない真実として歌い上げる寺口宣明(Gt/Vo)の、ロック・ヴォーカリスト然とした歌唱が清々しい余韻を残す。カップリングにはインディーズ時代からライヴで演奏している「trot」、寺口による作詞作曲「低迷」も収録されるが、全編に同じようなメッセージを貫いた構成も美しい。

Parallel

Ivy to Fraudulent Game

Parallel

マイナビBLITZ赤坂やZepp DiverCity TOKYOでのワンマン・ライヴを成功させるなど、着実に進化を遂げているIvy to Fraudulent Gameの初シングル。表題曲「Parallel」は抑制された美しいメロディと冷徹なビートのなかで、この世界とは何かがズレた"並行世界"を淡々とした筆致で綴る。言葉と音とで圧倒的な虚無感を描き出したアイビーの真骨頂と言える楽曲だ。カップリングには、寺口宣明(Gt/Vo)が初めて書き下ろした「sunday afternoon」を収録。メジャー・デビュー・アルバム『回転する』で「革命」を聴いたとき、バンドの持つ陽性のエネルギーに驚かされたが、あの寺口がこんなにも洒脱でスウィートなポップ・ソングを作るなんて。まだまだアイビーはバンドのすべてを掴ませてくれない。

回転する

Ivy to Fraudulent Game

回転する

福島由也(Dr/Cho)が生み出す繊細にして荒々しい楽曲を、不遜なほど強い存在感を放つ寺口宣明(Gt/Vo)が歌う。ふたりの圧倒的な奇才を擁してインディーズ時代から注目を集めていた4人組ロック・バンド Ivy to Fraudulent Gameの、待望のメジャー・デビュー・アルバム。インディーズ時代にリリースした「青写真」や「アイドル」を再録したほか、今作のために書き下ろした新曲、インスト曲を含む全9曲は、それぞれが美しく調和し合いながら希望に満ちたひとつの景色を描いていく。脈打つ心音を合図に"貴方の思う様な人では在れないから"と不安に苛まれた自分を卑下する「最低」から幕を開け、"飼い慣らせ不安をこの歌で"と終える「革命」まで、そこには圧倒的な構築美が貫かれていた。

継ぐ

Ivy to Fraudulent Game

継ぐ

美しくも退廃的なバンド・サウンドに乗せて、寺口宣明(Gt/Vo)が耽美で衝動的なメロディを歌う群馬発の4人組、Ivy to Fraudulent Game。前作『行間にて』から約1年ぶりとなる2ndミニ・アルバムは、ソングライティングを手掛ける福島由也(Dr/Cho)のルーツでもある、SIGUR RÓSやMY BLOODY VALENTINEなどの影響をより色濃く反映させて、バンドの新境地を切り拓いた1枚になった。そこで描く歌詞は抽象的で、思想的で、すんなりと読み解けるものではないかもしれないが、例えば、誇り高く生きる人の生き様を歌う「Utopia」や、運命とは何か、生きる価値とは何かを問う「Dear Fate,」や「!(読み:アマダレ)」、希望の意味に葛藤する「夢想家」など、その奥には誰もが共感できる"感傷"が詰まっている。おそらく「徒労」は、このバンドが音を鳴らす意味そのものだ。

行間にて

Ivy to Fraudulent Game

行間にて

"閃光ライオット2013"のファイナリストでもある、2010年に結成された群馬出身平均年齢21歳の4ピースが待望の全国デビュー。ポスト・ロック、オルタナ、シューゲイザーといった音楽性を取り入れたサウンドスケープは繊細で感傷性が高く、J-POPとしても通用するメロディはキャッチー且つポジティヴに響く。異なる趣きを持つそのふたつの要素の整合性は現段階では粗削りだが、そのぶん今後どう化けるのかという期待値は上がるというもの。若くして完成している器用なバンドが多い今日の日本において、磨けばさらに光るに違いないと思わせる彼らのような存在は貴重である。楽曲や歌詞のメッセージごとにさりげなく表情を変えるヴォーカル・アプローチや、心象風景を音像で描く演奏スキルも成長が楽しみだ。