DISC REVIEW
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HOT CHIP
One Life Stand
HOT CHIPの5枚目のアルバム。アンダー・グラウンドからもオーヴァー・グラウンドからも愛される彼らは、今作であまりにも開放的で美しい音世界を提示している。前作のエレクトロ・ディスコ路線も残しつつ、今回はストリングスや生楽器を多用して、さらに温かみのあるダンス・ミュージックがメイン。ゴスペルのような伸びやかで美しいメロディを持つ歌が印象的。「Brothers」からピアノ・バラード「Slush」の流れは号泣必至なのだが、他の楽曲も自然と涙腺が緩んでしまう。このアルバムに収められた楽曲群は、これからいくつものダンス・フロアに甘美で美しい物語を生み出していくことになるだろう。「人間的であることが大切なんだ」という彼らの言葉がどれだけ誠実なものかは、このアルバムを聴けば分かる。
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HOTEL MEXICO
Her Decorated Post Love
デビュー前は日本発のチルウェイヴ・バンドとしてPitchforkやFADERといった海外メディアにも取り上げられたHOTEL MEXICO。東京のレーベルCuz Me Painとの共同企画も定期開催する彼らを、チルウェイヴ以降の欧米のインディー・シーンと共振する、先鋭的な国内インディーの先駆者として位置づけることは簡単。ただ、2年ぶりの新作となった本作を聴くと、そうした位置づけがとても表面的なものに思えてしまう。音楽的レンジの広さと洗練されたポップネスを持った彼らの音からは、シーンという枠組みを越えたところで独自の桃源郷を夢想するような、不敵なアティチュードが見え隠れする。他人にあてがわれた城に興味はない。自分の居場所は自分自身でしかないことを、このバンドはよくわかっている。
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HOT LITTLE HANDS
Dynamite In Black & White
オーストラリア・メルボルン出身のHOT LITTLE HANDSのデビュー・アルバム。彼らが発するグラマラスなポップネスはSCISSOR SISTERSのようでもあるが、このバンドはそこに豪快さとブルースを持ち込む。一言で言えば、SCISSOR SISTERSとJETの真ん中にいるバンドだ。そんなこと言われても意味が分からないでしょ?だからこそ、そこに自然に立ってしまう感性が素敵なのだ。ジャンルの横断や折衷が当たり前になった今でも、80’sエレクトロからガレージ、グラム・ロックまでを横断する振れ幅の広さとセンスはかなりのもの。「Dynamite In Black & White」の大真面目に馬鹿なことをやりきっているPVを見れば、彼らを愛させずにはいられないはずだ。
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hotobori
月面より
2016年に活動休止に入った"ごっこ"が改名し、配信してきた「あの夏のイマージュ」、「メモリーセブン」のリマスタリングVer.や、前身バンド時代から演奏していた「彼女」、「クイーン」などもまとめた1stアルバム。緩やかなテンポとピアノが特徴的な隙間の多いアンサンブルは、単にオーガニックなだけじゃなく、ギター・ロックを経由してきたサニーデイ・サービスのような、"時間を持て余した恋人同士の夏休み"を思わせつつ、血や汗の匂いはほとんどない。ファンク的なグルーヴを感じる「近未来」も、80年代シティ・ポップスを自分たちなりに消化して、変に背伸びしないアンサンブルなのもいい。素朴なのに、少しサイケデリックだったり、爽やかなのに不気味だったり。型に収まりきらない心地よさがある。
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THE HOTRATS
Turn Ons
洋邦問わず様々なカヴァー集がリリースされる昨今。新たな表現の模索として、ルーツ史観や純粋な音楽嗜好(遊び心も)で創作意識の抜本的な再解釈や原点回帰という意味合いを持つが、このカヴァー集は原型を留めぬほどオリジナリティに溢れ「ひとつの作品」として成立させる軸がある。SUPERGRASSのGaz&DannyとプロデューサーNigel Godrichによるスーパー・バンド、THE HOTRATS。SEX PISTOLSからDAVID BOWIEにBEASTIE BOYSと、ヴァラエティ豊かな楽曲群をエッジーなブリティッシュ・ビートで小気味良く纏めてみせる。自由奔放な音から垣間見えてくるのは、SUPERGRASSの進化/深化の秘訣、そしてなぜ彼らが狂騒のブリット・ポップから生き残れたのか、その答えだろう。
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hotspring
空っぽな宇宙
2007年、大分県別府市で結成。現在は東京を拠点に活動している4人組ロックンロール・バンド。その彼らが浅井健一が主宰するレーベル"SEXY STONES RECORDS"からリリースした前作『THREE MINUTES GOLD』から2年、自らのレーベル"QEEMA RECORDS"からリリースする7曲入りの新作。60年代のビート・バンド、70年代のパンク・ロックの影響のもと、THE BLUE HEARTS、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTといった日本語のロックンロール・バンドの系譜に連なるバンドの本質は変わらないものの、"イージー・ライダー"を気取って、刹那の輝きを求め、ロックンロールをぶっ飛ばす一方で、男泣きやメロウな魅力もアピール。結果、爽快な疾走感で駆け抜けながら、リスナーの気持ちの深いところにグサッと突き刺さる作品に。
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hotspring
THREE MINUTES GOLD
11曲目でカヴァーしているルースターズ、あるいはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT。リスナーの世代によって連想するバンドは違うかもしれないけど、ロックンロールが大好きならきっとロックンロールに恋焦がれる気持ちをこじらせてしまうだろう。やばいやばい。2007年に大分で結成。その後、上京してきた4人組の2ndアルバム。別府出身だからバンド名がhotspringなんて気が利いてら。ロックンロールをかき鳴らすバンドの演奏はがむしゃらなようで、哀愁をにじませるヴォーカルをはじめ、ロッキンな含蓄が感じられる。日本語のロックンロール・バンドの系譜に連なる連中だ。浅井健一が主宰するSEXY STONES RECORDSの新レーベル、FICK FILLYからの第1弾。歌うようなベース・ラインもかっこいい。
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HOUNDMOUTH
From The Hills Below The City
HOUNDMOUTHはインディアナの4人組。イギリスの老舗インディ、ROUGH TRADEがALABAMA SHAKESに続いてデビューさせたアメリカのルーツ・ロック・バンドだ。ROUGH TRADEと契約して以来、注目されてきた彼らが満を持してデビュー・アルバムをリリース。ALABAMA SHAKESの“弟バンド”なんて紹介されてはいるものの、R&Bの熱気をストレートかつパワフルに表現した彼らとは違い、こちらは黄昏や茫漠を表現した演奏やスワンプ・ロックと言うほど粘っこくない軽やかさが魅力。男女ヴォーカルが曲ごとにリードを分け合う歌にハーモニーを重ね、じわじわと盛り上げるスタイルも彼らの持ち味になっている。確固たるスタイルを印象づけながらなお感じさせる伸びしろが今後を期待させる。
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HOUSSE DE RACKET
Alesia
全欧でラコステのCMに起用される等、とにかくお洒落でポップなフレンチ・ポップ・デュオ、HAUSSE DE RACKET。日本でも大人気のフレンチ・ポップ・バンドのPHOENIXの後継者との呼び声も高い。前作『Forty Love』はリリースされてから1年以上経っているにも関わらず、まだまだUKチャートを賑わせている。今作は前作よりエレクトロ色が強くなったが、エッジの効いたダンス・ビートとシンセの絶妙なバランスはやっぱりお洒落。今作の彼らのサウンドを表現するなら、暗いダンス・ホールで妖しく踊っているような、と言えば想像しやすいのではないだろうか。特に3曲目の「Roman」、5曲目の「Chorus」は彼ららしい哀愁漂うメロディセンスが味わえるのでお勧めしたい。
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HOWL BE QUIET
Andante
2年2ヶ月ぶりの新作から溢れる"この2年間僕らはこんなことをして、こんな気持ちで過ごして、今ここにいるよ"という、はちきれんばかりのピュアな心情。それは嘘かと思ってしまうくらい誠実で曇りがなく、だからこそ彼らは回り道をしながらも危機を乗り越えられたのだろう。新体制1年目というフレッシュさと、作品ごとに様々な音楽性とソングライティングにトライしてきたキャリアが結合した全8曲。各曲にクライマックス感があるが、特に「Dream End」の4人それぞれが互いを尊重しながらもひとりひとりが主役として存在するアンサンブルとサウンドスケープは圧倒的だ。一音一音から伝わる強い信念――諦めきれないという気持ちほど切実で、自分自身を突き動かせるものはなかなかないのだ。
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HOWL BE QUIET
Mr. HOLIC
"聴いてくれる人と1対1で飲むようなアルバムを作りたかった"とフロントマンの竹縄航太(Vo/Gt/Pf)は言っていた。アルバム曲には彼ならではのちょっと偏った(?)恋愛観が赤裸々に綴られている。胸の内に抱えていることを存分に発散させていることも影響してか、彼の甘酸っぱいヴォーカルも非常に生き生きと響き、情けないところも曝け出すことで生まれる魅力や強さを体現するものになった。それらを最大限に広げているのはアレンジ。バンドの爆発力がある楽曲、UKのクラブ・ミュージック・テイストに生楽器を加えた楽曲など、元来からこのバンドの持つ音作りへの遊び心はスケールアップしている。特に彼らの真髄とも言える、さめざめと泣くような感傷的なピアノ・バラード「208」は格別に素晴らしい。
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HOWL BE QUIET
サネカズラ
2016年3月にメジャー・デビューし、シングルの表題曲はアッパー・チューンを届けてきた彼らの3rdシングルのタイトル曲はバラード。フロントマンである竹縄航太の2年前の失恋がリアルに綴られている。ピアノやストリングスを主体とした美しい音像と、皮肉も強がりも正直に曝け出す歌詞が作るいびつな均衡は、竹縄のピュアで捻くれた人間性をそのまま表しているようだ。TVアニメ"DAYS"のOPテーマであるTrack.2は、EDMアレンジの煌びやかさと楽曲の持つ感傷性が結びつき、最下層から高く羽ばたくようなスケール感を生む。Track.3はホーンやハーモニカ、オルガンなど様々な楽器を取り入れたポップ・ナンバー。彼らの強みであるジャンルにとらわれない音楽性にも改めて感服する。
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HOWL BE QUIET
Wake We Up
今年3月にリリースしたメジャー・デビュー・シングル『MONSTER WORLD』でも3曲で異なる音楽性を発揮していたが、今作はさらに自由に、音楽へ貪欲になる4人の姿勢が見える。表題曲はTVアニメ"DAYS"のオープニング主題歌。表面的には疾走感のあるポップ・ソングだが、EDMありレゲエあり、讃美歌テイストの壮大なコーラス・ワークが入るなど目まぐるしい展開を見せる。"様々なことが巻き起こる人生と夢の途中を走り抜ける少年像"を音でも表現していると言えるのでは。Track.2はアコギとマンドリンの刻むツインの音色と、打ち込みと生音を組み合わせて作ったビートの軽やかさが絶妙にマッチ。Track.3はメロウなヒップホップ要素を取り入れたソフトな楽曲で、じっくり歌に浸ることができる。
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HOWL BE QUIET
MONSTER WORLD
HOWL BE QUIETは自分たちの世界を強く持っているバンドだ。そしてそれを誰よりも強く信じている。どんな場所でも、どんな人の前でも、堂々と自分たちの音を鳴らす彼らの勇気はとても眩しく、聴き手も彼らの放つ光で満たされるようだ。メジャー・デビュー曲「MONSTER WORLD」、華やかなシンセとかつてないほどカラフルでポップな音楽性に"メジャー志向か?"と訝る人もいるかもしれないが、彼らのメンタリティもスケール感もなんら変わっていない。むしろひとりでも多くの人々を巻き込もうという野心はさらに膨らんでいるのでは? エレクトロ的アプローチがヴィヴィッドなTrack.2、アコギ×ホーンで作るニュー・スタイルのポップ・ソングなTrack.3。全曲表題曲級のクオリティである。
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HOWL BE QUIET
BIRDCAGE.EP
覚醒――この作品にはこの言葉が相応しい。前作『DECEMBER』から約11ヶ月、メイン・ソングライターであるフロントマンの竹縄航太は、自身と向き合い音と言葉を編み上げたという。そこにはもちろん見たくもない自分の姿もある。だがそこから目を逸らさず対峙することで、新たな扉は開けるのだ。彼の感情をそのままトレースしたような深い喜怒哀楽が表れるクラシック・ピアノは、少年のようなあどけなさが残るヴォーカルと共に遠くへ遠くへと叫んでいるようでもある。その音を包み込み、最大限に生かすことに徹する楽器隊の音は、愛と信頼そのものだ。HOWL BE QUIETの心臓に直接触れるような生々しさと気魄。覚醒し、鳥かごの扉の淵に足を掛けた彼らは一体どこへと飛び立つのか? そんな強い期待しか生まれない。
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HOWLER
World Of Joy
Rough Tradeが発掘し、日本でもFUJI ROCK出演や、THE VACCINESのサポート・アクト、単独公演を行うなど、世界中のガレージ、インディー・ロック・ファンの心を掴んだミネアポリス発のHOWLERが、2年ぶりとなる2ndアルバムを完成。10代の破天荒なパワーと、10代ながら妙に肝の据わった姿勢で、切れ味鋭いガレージ・サウンドを刀に辻斬りしていく面白さがあった彼らだが、今回はパワーのみならずバンドの引き出しの豊富さを再発見。擦り切れるほど聴いたロック・レジェンドからアンダーグラウンド・ヒーローたちのレコード、滴るほど体に染み込ませたその曲のエナジーに火をつけて、鮮烈な炎にし、ぶんぶん放り投げてくる。極限までソリッドなサウンドにしながら、ひねりたっぷりのポップ変化球でいろんなツボを突いてくるのが、ニクい。
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HOWLER
America Give Up
ビートニクのAllen Ginsberg著作の“HOWL”から取ったと思われるこのバンド名にこのタイトル…それだけで十分魅力的だ。THE STROKESやTHE LIBERTINESを発掘した事でも知られる老舗レーベルのRough Trade Recordsが契約したという話題先行で注目が集まる彼らだが、一聴してまず感じたのは、60年代~00年代のガレージ・ロック・リヴァイバルに至るロック史に刻まれた音の数々を凝縮したようなバンドであるという事。それはGIRLSの様に円熟したバンドならまだしも、Julian CasablancasやAlex Kapranosの様な色気の持つこのヴォーカリストは未だ19歳!THE VACCINESと共にツアーでここ日本にもやってくる。いち早くチェックしておいた方がいいかもしれない。
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V.A.
Hostess presents NO SHIT! 2
2000年創立以来、旬なアーティストや海外でも評価の高いバンドを次々とリリースして来たホステス・エンターテインメントのレーベル・コンピ第2弾が登場。前作も充実の内容だったが今作はそれを上回る豪華さ。RADIOHEADやARCTIC MONKEYSの新作からはもちろん、2011年の年間ベストに軒並みランク・インしているBON IVERなどが収録されたDISC1は今年の洋楽シーンを手っ取り早く知る意味では最適の1枚。続くDISC2は話題沸騰のHOWLERを始めICEAGEなどこれからが期待される新人が並ぶ。ジャンルを横断しながら今の空気をしっかりと伝えるセレクト。個人的にはDISC2をしっかり聴き込んでほしい。とにかくお得なアルバムだ。
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HOW TO DESTROY ANGELS
How To Destroy Angels
この男の動向はまったく読めない。昨年、NINの活動休止を宣言したTrent Reznorが新バンド、HOW TO DESTROY ANGELSを結成した。メンバーは愛妻Mariqueen MaandigにNIN関連でお馴染みのプロデューサーAtticus Ross。このプロジェクトの意図するところはいまひとつ謎だが、気心知れた関係での課外活動からあらゆる面でのリセットを図ったのだろうか?本作は今年6月に無料配信されたデビューEPの日本デビュー盤である。サウンドはミニマリステックなエレクトロからゴシック・インダストリアルな不穏さを浮かべ、艶めかしいMariqueenの歌声が濃密に絡まり合う世界観。本気度も伝わる緊迫感も満ち、これを機に本格的な活動に突入するかと思いきや、最近のTrentはファンである塚本晋也とDavid Fincherの映画にNIN名義で楽曲提供をしている。ムムム......まったく読めない男だ。
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HOW TO DRESS WELL
Total Loss
2010年のデビュー・アルバム『Love Remains』がPitchforkなどのメディアで大きな評価を集め、ここ日本でも昨年来日公演を成功させたHOW TO DRESS WELLの新作が早くも到着。メランコリック且つドラマティックでストーリー性のある美しいサウンドやファルセット・ボイスはSIGUR ROSを彷彿とさせるが、R&Bや近年のベース・ミュージックを吸収したビート主体の楽曲もあり様々な表情をみせる。ただ核になっているのはメロディや歌。THE XXの1stを手掛けたRoddy Mcdnaldを共同プロデュースに迎え、美しいサウンドスケープはそれをより鮮明に浮かび上がらせる。ジャンルを横断した彼の底知れない才能を見せつけられたような圧巻の作品。
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FATHER JOHN MISTY
I Love You, Honeybear
FLEET FOXESの元ドラマーでヴォーカリストのJosh Tillmanによるソロ・プロジェクト名義FATHER JOHN MISTYの2nd アルバム。前作に続いてJonathan Wilsonが共同プロデューサーを務めた今作はあたたかいアコースティック・ギター、生ドラムの音色を中心に幾重にも重ねられたサウンドとコーラスが60年代テイスト満載。かと思えばTrack.3ではキラキラなエレクトロ・サウンドに乗せたソウルフルなヴォーカルで驚かせ、続くTrack.4ではオールディーズ調なバラードで絶妙なストリングスとコーラスのアレンジを聴かせ、一瞬たりとも飽きさせない。Pitchforkの"Best New Track"を獲得したTrack.9は"奴らが俺に与えたのは ムダな教育と 立派な家のサブプライムローン"と歌うくだりでテレビ・ショーの観客のような笑い声が入るシニカルさを発揮している。
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hue
easing into emoting
エモ/インディー/オルタナを独自に消化した栃木発のロック・バンド、hue(読み:ヒュー)。2008年に高校の同級生4人組で結成したという彼らの1stアルバムがついに完成した。ポスト・ハードコアを匂わせるサウンドと絶叫するヴォーカル、と聞くと少し躊躇する人もいるかもしれないが、激情の中に見え隠れするキャッチーさや彼らの人懐っこさに親しみを覚えるはず。そして何より2本のギターが歌うように奏でるテクニカルなフレーズが秀逸で、ヴォーカルの絶叫にかき消されることなく、また邪魔することもなく、それぞれがツルのように美しく絡まる。その様が最高に気持ちいい。Track.3「switch me once」やTrack.4「バーンアウト」などシンガロング部分のある楽曲も多く、一緒に大声で歌って拳を突き上げたくなること間違いなし。
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Hump Back
拝啓、少年よ
2009年結成、大阪出身の3ピース・ガールズ・バンド Hump Backが、前作から約7ヶ月ぶりにリリースするのは、彼女たちらしいストレートな想いが込められた4曲入りシングルだ。表題曲「拝啓、少年よ」は、歌い出しから"夢はもう見ないのかい?"と問い掛ける青春ロック。爽快なビートに乗せて、青い日々を思い出すような暖かいメロディを林 萌々子(Vo/Gt)がまっすぐ歌い上げる。さらに、夜の風景が浮かび上がるミディアム・バラード「ナイトシアター」や、明るいサウンドながらどこか切なく、会えない"君"に対する後悔や寂しさを描いた「今日が終わってく」、平凡な幸せを追う気持ちを綴る「VANS」を収録。切なくも愛おしい青春を呼び起こす楽曲に、胸が苦しくなるほど心が揺さぶられる。
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HUNDRED WATERS
The Moon Rang Like A Bell
これはポスト・ダブステップ、フォークトロニカのアーティストとしては久々の、狭義のファン層を超えてリスナーを獲得しうる作品かもしれない。PitchforkでBEST NEW TRACKを獲得した「Down From The Rafters」はハルモニウムの不穏な響きや、エレクトロ版協会音楽的なダークな側面を映していてむしろ本作では異色。他の曲では生ピアノのダイナミズムが活かされた「Murmurs」、ヴォイス・パフォーマンス的なNicole Miglisの歌声も開かれた印象の「Out Alee」、「[Animal]」「Xtalk」などはリズミックでもあるし、なんと言ってもクリーンでクリアなサウンド・プロダクションはアップデートされたポップスと呼んでもおかしくないほど。なるほどSKRILLEXのレーベル"OWSLA"が契約するわけだ。
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HURRICANE BELLS
Tonight Is The Ghost
2009年のFUJI ROCK FESTIVALに出演した事も記憶に新しい、LONGWAVEのフロントマンSteve Schiltsによる新プロジェクトHURRICANE BELLS。大ヒット映画「ニュー・ムーン」のサウンド・トラックに収録されている事で話題を集めた彼の期待のデビュー・アルバムだ。LONGWAVEの持つ幻想的な美しいメロディは受け継がれているがこの新プロジェクトではもう少しラフに心地よく演奏される。新機軸を取り入れるというよりは、削ぎ落とされたシンプルなプロダクションの曲が目立ち、よりSteve Schiltsが作る曲の良さが引き出され、口笛もあったりよりパーソナルで彼の存在をより近くに感じられる作品になっている。
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HURTS
Exile
80sのシンセ・ポップ、DEPECHE MODEやTEARS FOR FEARS並みの美メロとキャッチーさを10年代型にアップデートした『Happiness』で一躍ブレイクしたHURTS。世界ツアーで疲弊しきったという彼らは、なんとまた出会った当時に似たマンチェスターのアパートに半年籠もりっきりで2ndアルバムを作り上げた。幻惑的でめまいを呼び起こすような耽美さは若干後退し、ギターからの曲作りが多かったことも影響したのか、同じダークで哀感を湛えたメロディでも、トライヴァルだったりエクストリームなサウンドが支えている楽曲が増えた。顕著なのが1stシングル「Miracle」であり、「The Road」のヘヴィネス。また、グルーヴやコード感にR&Bのニュアンスを感じる「Sandman」も新鮮。
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HURTS
Happiness
狂おしいほどのロマンチシストはマンチェスターから。「BBC SOUND OF 2010」に選出され一躍脚光を浴び、最近ではNME恒例の「COOL LIST 2010」にもランクインしたHURTS。なにかと話題を提供してくれる2人組だが、本作を聴けば海の向こうの騒ぎも納得だろう。基本は80 年代のエレ・ポップを想起する世界観だが、決して懐古的な意識に捉われない、壮大でドラマチックな音響構築に妖艶な歌声でワン・アンド・オンリーな空間を現出させた。その強固な美意識がシーンを席巻する日は近いか?すでに発売されているヨーロッパ諸国でのチャート・アクションは良好のようで、国民的なアーティストの地位まで登る機運も高めている。来年には単独公演も決定したが、新人らしからぬパフォーマンスは必見なので是非とも足を運んでもらいたい。
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HUSKING BEE
AMU
タフなリズムに乗せて"お前自身を見つけろよ"と鼓舞するTrack.1「Find You」でグッと腹の底から力が沸き、USインディー的なアレンジも窺える「Within The My Aim」、平林の作詞作曲による「A Subtle Touch」でのソウルを感じさせる、楽器すべてが曲を歌うようなグルーヴ、ポップかつカオティックな音楽の密度を感じる「Lifestyle」、磯部がダンス・ロックを意識して書いたという「A Never Ending Journey」、サビメロにハスキンらしさが炸裂する「Searching For It」、珍しくマイナー・キーでポスト・パンク的なソリッドさを感じる新鮮な「Side By Side」、そしてアコギ1本とハープとグロッケンが愛らしい「大きなボートと小さなヨット」のラストまで、今のハスキンを凝縮。琴線に振れる磯部のメロディの真摯さに涙。
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HXEROS SYNDROMES
Wake Up H×ERO! feat.炎城烈人(CV:松岡禎丞)
多くの人気アニメのテーマ曲を手掛けてきたBURNOUT SYNDROMESによる最新プロジェクトが、このバーチャル・アーティスト HXEROS SYNDROMES。TVアニメ"ド級編隊エグゼロス"のためにバーンアウトがプロデュースするユニットで、主題歌となる表題曲は主人公の声もフィーチャーするという新しい試みになっている。今回はバーンアウト節でありつつも、より作品に振り切ったサウンドと内容になっていて、これぞアニソンというキャッチーなメロから、ヒーローもののカタルシスたっぷりの管弦アレンジで聴かせる。またヒップホップからアッパーなポップ・チューンまで、作品をインスピレーションに自由な発想で制作を楽しんでいる。アニメが好きな彼らにとって音楽家冥利に尽きるコラボだ。
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HY
RAINBOW
音楽に対する誠実さと温かで陽気なキャラクターは不変だが、こんなに新しい音楽要素にアプローチしているとは嬉しい驚き。結成20周年プロジェクトの第1弾は、アルバムのみをリリースしてきたHYのバンドとしての矜持が詰まった快作だ。ソングライターが3人いる強みも発揮している。名嘉 俊(Dr)作のピアノ・ポップなTrack.1やEDM以降のポップスのスケール感溢れるTrack.7。ラヴ・ソングの女王、仲宗根 泉(Key/Vo)のエヴァーグリーンなバラードのTrack.6では、彼女の歌い手としての深化や奥行きの深さにも胸打たれた。さらに新里英之(Vo/Gt)による、四つ打ち且つ彼らならではの開放感があるTrack.3やプリミティヴなビートのTrack.13と、進化を止めない5人を讃えたくなる。
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HY
CHANCE
沖縄の5人組が1年8ヶ月ぶりにリリースする12thアルバム。出会い、運命、転機という意味合いを"CHANCE"というタイトルに込め、バンドとファンの繋がりを歌った曲の数々を収録。80~90年代のJ-POPが持っていた豊かさを、男女ヴォーカルそれぞれの持ち味を生かしながら時にロッキンに、時にダンサブルに蘇らせる天真爛漫なサウンドが彼らの魅力。曲の数々を、より味わい深いものにしているファンキー~ブラック・ミュージックからの影響も聴きどころだ。このアルバムを引っ提げ、3月26日から全国を回るツアーでは、新たな出会いが生まれるに違いない。ちなみに初回限定盤のみに付く特典CDの収録曲「DEBUと言われて」は、本格派のR&Bバラード。このままレア・トラックで終わらせるには惜しい珠玉の1曲だ。
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HY
LIFE
結成15周年を迎えたHY、メンバー全員の出身地である沖縄を全面に打ち出している11枚目のニュー・アルバム『LIFE』が到着した。15年の月日が経ったとはいえ、デビュー当時のポジティヴなイメージは変わらない前向きな作品となっている。友達と一緒に騒げるパーティー・チューンから幕開ける今作で注目すべきは、仲宗根 泉(Key/Vo)がヴォーカルをとる珠玉バラード、「愛しあって許しあって」。単なる失恋ソングではなく、"許しあう"をキーワードに一歩先をいく壮大な失恋ソングは必聴。そして、再会を約束してくれているようなTrack.10「さよならまたね」に続き、まだ見ぬ世界へと背中を押してくれるメッセージ・ソング「スマイル」で今作は締めくくられている。起承転結がはっきりとした今作は、朝から晩まで夏のビーチで1日中一緒に過ごす気分にさせてくれる1枚だ。
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新しい学校のリーダーズ×H ZETTRIO
狼の詩
メジャー・デビュー時からH ZETTRIOのピアニスト、H ZETT Mが楽曲プロデュースを手掛けている、ダンス・パフォーマンス・ユニット 新しい学校のリーダーズ。今作は、作曲をH ZETT M、作詞は昭和の時代から数々の名曲を生み出してきた阿久 悠、そしてH ZETTRIOの演奏で、新しい学校のリーダーズが歌うコラボとなった。昭和を知らない彼女たちが歌う、昭和の香り漂う歌謡ジャズは新鮮だが、青春やその葛藤や孤独といったテーマは普遍的だ。ハードボイルド・タッチの、孤高の姿を捉えた歌詞は、男性の歌手や、自然と哀愁が滲み出るもう少し大人の歌い手が似合いそうだが、意外にも4人にうまく(背伸びせずとも)ハマっている。クールで飄々とした歌とシュールなパフォーマンス、洒落たサウンドが心掴むシングルだ。
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