Japanese
のんぴー
2024年04月号掲載
-めちゃめちゃいい話ですね。「犬の歌」に関しては?
これはめっちゃ前に作ったんすよ。もう4年前ぐらいなのかな。もともとは題名を付けていなかったんですけど、"まだ題名は決まってません。聴いてください、「犬の歌」"って言いすぎて、これもう「犬の歌」じゃね? って。
-(笑)作り出したきっかけは、それこそ犬に向けて歌を作ろうと?
そうです。さっき話してた3人で、よく公園で遊んでたんですよ。アスレチックとか好きだったし、ピクニックしたりとか。で、犬を連れて行ったときに、"のんぴー、犬に歌を作ってみてよ"って言われて、パパっと作ったのがこれです。
-パパッと作ったわりには、犬を飼っている人の心情をしっかりと描いてますね。
良かった! 褒めてもらっちゃった。でも、一丁前なこと歌ってますけど、母からは"ねえねえ、散歩して!?"って言われてます(笑)。
-(笑)あと、これまではバンド・サウンドがメインの楽曲が多かったですし、今回の収録曲も、最終的にはアコースティック・ギター1本でも成立するようなものになっていますが、「Eye's on Me」はサウンド的にもベクトルがちょっと違ってますね。
もともとこういう楽曲がルーツというか、好きだったんですよ。インディーというか、ラップにメロディが乗っかっているぐらいの感じで、オートチューンでケロケロしたものが好きだったので。そういう楽曲をずっと作りたいっていう話をしていたっていうもあるし、EPにはちょっとテイストの違う感じを1発入れときたいっていうのもあって。そうすることで、"のんぴーってこういう人だよね"じゃなくて、ここを見せておくことによって幅が広がるし、そうなったときにこういう曲のお仕事もいただけたらなと思いますし(笑)。私、なんでもできますよ? っていうアピールをさせてもらってます。
-どういうところから作り始めたんですか?
今までは自分の感情を歌ってきたんですけど、それってちょっとクドいかなとも思っていて。だから「Eye's on Me」はテーマをひとつ決めて、どういう人たちに届けたいのかっていうのを考慮したときに、どういう形の楽曲にするか、何を求めているのかというのを考えて作ってみました。今後は主題歌とかも作っていけたらいいなと思っているので、その練習といいますか。そのテーマに寄り添いつつ、自分さを出しつつ、みたいな曲になってますね。
-「ウロボロス」は"のんぴー像を分析して作った"とのことでしたが、SNSだったり、路上だったりでコミュニケーションを取っていることもあって、言葉として出てきやすかったですか?
そうですね。"人類の背中を押すために/この世に降臨"って歌ってますけど、そう思ってくれているファンはいる。けど、人間として"人類の背中を押すために/この世に降臨"とか言えないじゃないですか(笑)。"お前誰だよ!"ってなるけど、それを言い放つ。そういう尖っている部分を意外と求められているのかなって。で、行きすぎちゃっても歌だったら許されるのかなと思って、それこそ"ジャンプ"じゃないけど、そのセリフみたいなものを並べたのがこの楽曲ですね。
-なるほど。それでど頭から"自己中心的であれ/なにもかも私利私欲のためにあれ"という。今の世の中って、利他的でありなさいという風潮ではありますけど。
それが誰かのためになっていたらいいなと思っていて。その次の"街中のゴミを拾うのだって/拾った自分に自惚れてやれ"というのも、たぶん、ゴミを拾ってあげたいと思って拾う人って、なかなかいないですよ。ゴミを拾って捨てたのを、誰か見てないかな、俺拾ったぜ? っていう気持ちも、みんな若干少しは持っていると思うんです。それでもいいから、誰かのために優しくしたことに自惚れてもいいし、それが誰かのためになっていればいいのかなって。
-うんうん。このAメロは、それこそのんぴーさんが歌うからこそ成立する言葉だと思いますよ。あと、この曲は途中でテンポを落とすけれども、テンポをもとに戻さずに、そのまま最後まで行くのも面白いなと思いました。
あれはライヴのことを考えたんですよ。そもそも去年の11月のワンマン・ライヴは、オリジナル曲がゼロの状態でやることを決めたんです。だから1年間で11曲リリースしなくちゃいけなかったんですよ。そうなると、もうそれがセトリになるじゃないですか。だから「ウロボロス」は、ライヴの1曲目にやる曲として作ったんです。でも、この曲は弾き語りのイメージじゃなかったんです、最初から盛り上げたかったから。そうなると、2曲目に行く前にギターを持たなきゃいけないんですけど、テンポを戻すと間に合わなくなるから、落としたままにしといて、みんなに歌ってもらっている間にギターを持つ。で、最後の"いざ羽ばたけ"のときにはもうギターを持っていて、そこを歌うっていう。
-なるほど(笑)。結果的に壮大になったし、みんなで歌える形にもなっているからいいですね。そして「一日一生」は、"ライオン・キング"をイメージしたとのことでしたけども。
曲のテーマは"一日"なんですけど、その"一日"を"一生分"と考えたかったので、すごく壮大にしたかったんですよね。"一日"はすごく長くて、"一日"はすごく大きなものだっていうことを伝えたかったので。
-こういう曲調にしたいというのは、曲を作り出すタイミングで結構見えているんですか?
そうですね。こういう感じにしたいっていうのは、めっちゃやりとりさせてもらってます。でも、めっちゃ失礼なんですけど、頭の中にはイメージがあるんだけど、音楽のことがわからないから言葉にできないんですよ。頭の中をSDカードにコピーして抜き取ってもらったら話は早いんですけど、それはできないので。だからまぁ本当に大変ですね。その楽器がなんなのかがわからないから、"ウィーーンみたいなやつをグィーーンって出してほしんですよ"、"......はぁ?"みたいな(笑)。
-そこも一歩ずつという感じですね。そして、お話にもあった通り、4月5日からライヴハウス・ツアーが始まります。ライヴハウスを回るというのも初めてということですよね。
そうです。わからないこともたくさんあると思うんですけど、とにかく場数を踏めば踏むだけいいだろっていう。いろんなトラブルがあるだろうし、埋まらないところもあるだろうし、パンパンなところもあるだろうし、21公演たぶんそこまで内容が変わるわけでもない。そうなったときに、自分のモチベーションが日によって変わるというのは、お金を貰っている以上、プロとして失礼なわけじゃないですか。でも、やったことがないから、今は全部全力でやろうと思っているけど、そうしてしまったときに3日目に声が枯れてしまうとか、そういうこともあると思うんです。あとは、人数が場所によって変わる/変わらないというのはあるにしろ、やっぱりライヴはお客さんと作るものであって。でも、人がいればいるほど盛り上がるのは確かなんですよ。だから、人がいないときに、盛り上がっているときと同じぐらい楽しくさせるためにはどうすればいいのかっていうのを、その場で考えなきゃいけないっていう臨機応変さがたぶんついてくるのかなって。いい経験になるんじゃないかなって思ってますね。自分を客観視するのが好きなので、"おー! 頑張れよ、のんぴー!"って思ってます。
-音楽を始めて2年目で、ここから身についていくものがたくさんあると思うんですけど、それでも自分はお金を貰っているんだから、ということを20代前半で思えるのも早いかなと思うんですけど。
そこは経営学を学んでいたっていうところもあるし、あと、炎上したことがあって。路上ライヴって、最初はカバー曲でやってたんですよ。で、1回考えてみてほしいんですけど、路上ライヴを初めてやってみようかなと思って、曲を作る人っていなくないですか?
-あぁ、そうですね。最初はカバーから始めて、とか。
そうそう。当たり前に人の曲を歌ってみるじゃないですか。で、カバーした動画がたまたま回ってくれたことがあったんですよ。そしたら、"人の曲でイキるなよ"っていうコメントが殺到したんです。人の曲で、外で、有名人ぶるなよって。そのときに、有名人ぶってると思われていたことは、すごく嬉しかったんです。
-なぜです?
路上ライヴでペコペコして、"東京ドームです!"みたいなことを言っても、"は?"じゃないですか。だから、どこに行っても身振り素振りは変えたくなかったんで。なのでそこはいったん置いといて、"人の曲でイキるなよ"ってことは、自分の曲を歌う資格があるんだって思ったんです。"人の曲でイキるな"って、特に"歌うなよ"とは言われてないんですよ。で、これだけコメントが殺到しているということは、もしかしたらオリジナルを楽しみにしている人もいるかもと思って。アンチって悪い印象があったんですけど、そうやって気づかせてくれるところもあって。
-自分の曲でイキろうと。
それが去年のことですからね。人の曲で、外でイキるなよって1年前に言われて、今度自分の曲だけでライヴハウス・ツアーしますから。だから言ってやりたい。お前らのおかげで全国ワンマン・ツアーするぞ! 北海道から沖縄まで! 全部自分の曲だぞ! さぁ来い!
-待ってんぞ、と。これからどんなアーティストになっていきたいですか?
私は"人間パワースポット、のんぴーです"って言い続けていて。やっぱり育ってきた環境も、ひとりひとりの価値観も絶対に違うから、"大丈夫"って全員に寄り添うことはできないんですよ。でも、今できることを全速力で頑張り続けているのんぴーという人を見て......例えば、"あー、ちょっとダメだな"と思ったときに、"のんぴー見てみ? 無理でも全速力で頑張ってるから"とか。"のんぴーがこんなに頑張ってるなら、自分も明日から少しぐらいできることはないかな"とか。そうやって誰かの背中を少しだけでも押せるような存在、そういう場所にできたらいいなと思って、"人間パワースポット、のんぴーにお参りに来てください"っていうコンセプトで活動しているので、そういう人間像で自分が居続けたい。毎回MCで、"人間パワースポット、のんぴーです。どんなパワースポットもそれ自体では光っていません。たくさんのスポットライトがそこを照らすことによって輝いています。みなさまというスポットライトで私を照らし続けていてください"っていう話をするんですけど、そういう人間でいたいですね。みんなが照らしてくれるような、それで輝いていられるような"人間パワースポット"になっていたいなと思ってます。
-そのためにも、まずは自分が全力で頑張って、周りを引っ張っていくという。
でも、怒られるんですよ。"のんぴーがやるっていうと、やらなくちゃいけなくなって後ろが大変だから"って。それで、"一度お持ち帰りさせていただきます"っていう言葉を最近教えてもらいました(笑)。
-はははははは(笑)!
すぐ"やりましょうよ!"って言っちゃうんですよ。だから最近めっちゃ使ってます。"めっちゃいいですね! ぜひやりましょうよ! あ、でも一度お持ち帰りさせてもらいます。今はチームで動いてるんで"って。
-便利な言葉ですよね(笑)。
でも、一度お持ち帰りしてしまうと、熱が冷めちゃうじゃないですか。持ち帰りは嫌いなんで。
-でも、それこそ熱をいったん冷ますための言葉というか。
いやぁ~、冷めちゃダメよ。冷ましちゃダメ。あとから"あの件なんですけど......"って、年下からすると言いづらいんですよ。目上の人が多いなかで、"こういうのやろうよ"って言ってくれてるときって、だいたい私はやってもらう側なことが多いから、その人は良かれと思って言ってくれているわけじゃないですか。で、こっちが断る権利はないんですよ。今はやらせていただけるのはありがたい限りなので。だから、言われたときに"ぜひお願いします。次いつ空いてますか?"って言いたいんです。
-それも大事ですよね。
でも、私はゼロイチを作るだけで、みんながイチヒャクにしてくれるので、イチヒャク組はめちゃくちゃ大変ですよね。やること99個あるから。私は1個しかないけど。
-その1も99があるからこそですし。
うん。で、99からの悲鳴です。"一度お持ち帰りしてくれ"っていう(笑)。
RELEASE INFORMATION
のんぴー
1st EP
『一日一笑』
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[Nonpy Records]
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