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INTERVIEW

Japanese

ヤユヨ

2024年02月号掲載

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Member:リコ(Vo/Gt)

Interviewer:吉羽 さおり

いろんなことに挑戦したい。やろうと思えばできるんだっていうことがわかった


-自分自身の内面的なところが写り込んでいるのが正しい応援歌な気がしますし、"今はブカブカな夢も"などの言葉選びにもリコさんのタッチが出ているなと思います。サウンド的には結構ミニマムな表現になっていますが、アレンジのイメージはありましたか。

めちゃくちゃシンプルですね。ギターのリフやメロディが強かったり、ロックな印象の曲は多かったと思うんですけど、そうじゃなくて、ふわっとクリーンな感じの音作りの中で、シンプルなコード感とリズムで言葉を届けられるようにとは意識しました。最初は、鍵盤は入ってなかったんです。リズム・ギター、ベース、ドラム、歌の4つだけで、初心に返った感じでやっていたんですが、それは新しいといえば新しいけど、物足りなさもあるなと。もっとできることがあるんじゃないかなっていうことで足していって、そのわりには、言葉を伝えたいからシンプルにしたという意図は残せたなと思うし、"BREAK"にちなんでガラスを割る音とかも入っていたり、テーマに沿ったアレンジもできたので、いろんなことを試してみて良かったなって思いました。

-これまでは、今回のように何かひとつテーマがあって、そこから曲を書き始めることってあったんですか。

それも初めてでした。1stフル・アルバム『日日爛漫』(2022年リリース)を出したときは学生最後の1枚だったので、社会人になる前の卒業制作みたいな感じで作っていたんですけど、"卒業制作だから卒業の歌を作ろう"とかはなかったので。テーマを意識して、3人がそれぞれ作曲に取り組んだのは今回が初めてだったなと。

-その向き合い方も3人それぞれですしね。ぺっぺさんの「Stand By Me」はグルーヴィでノリのある曲で。この曲は新体制ツアーの会場限定盤(2023年リリースの『SALTY』)としてもリリースしていましたが、きっとお客さんも一緒に前に進める気持ちになったかなと思いますし。

そうですね。「Stand By Me」は新体制になることが決まって初めてレコーディングした曲で。脱退が決まってからも足を止めてはいけないという思いが強かったので、ぺっぺなりに今の自分自身について書いたと言っていましたね。結構ぺっぺの曲って、こういう主人公がいてこういうストーリーがあってという、ストーリーを作って曲にするやり方だったんですけど、結局その言葉や音楽は自分から生まれてくるもの、自分自身のことを歌っていたりするんじゃないかなって気づいたみたいで。そこで今回は、最初から自分自身の歌を作ろうって挑戦をしたみたいです。この曲は、自分自身の歌だって言ってました。

-"西に歩けばサカイの家"(地元 大阪堺市)があるけれど、ここで帰れない、帰らないぞっていう思いが入っているし、でもただがむしゃらに頑張るだけじゃなくて、今の日々を受け入れて歩んでいる感覚もある。肩肘張っているだけじゃない、地に足のついた感じがある曲だなと思ってます。

いい意味で肩の力は抜けているし、でも強い意思もあるしという曲で。ライヴでも歌っていて感情が乗りやすいというか、いい歌だなぁって思いながらライヴをしていますね。

-すでにツアーでも演奏してきたと思いますが、ライヴでの反応はどうですか。

新曲としてずっとやってきたので、だいたいのお客さんはライヴで初めて観た、聴いたと思うんですけど、届いてるなっていうか。それは言葉で伝えてもらったわけではないし、例えばみんなで合唱してるとかではないんですけど、なんとなく今届いてるなっていう気持ちはあります。

-またその会場限定盤でも収録されていたのが、リコさんの「チョコミンツ」ですね。こちらはよりポップさが出た曲です。

「Stand By Me」と同じ時期に作り始めたんですけど、自分なりに東京を表現したかった曲ですね。"東京に出てきたということは?"とか"今の自分と音楽と東京"みたいなものがテーマで。一昨年くらいから言い続けているんですけど、"大人とは何か"、"大人になるってどういうことだろう"ってずっと考えていて。上京することで自立をしなきゃいけないから、少なからず1歩進めたなと思うことはあるんですけど、人間性としてはまだ幼い部分があるというか。誰かに迷惑をかけちゃったり、ひとりで頑張って生活しなきゃいけないのにやっぱり料理は苦手だなとか、だらしない部分があるなとか、脱退のこともそうですけど、ちょっとしたことで感情的になっちゃったりとか。そういう自分の子供っぽさも受け入れつつも、東京の街でちゃんと大人になれるように前を向きたいなっていう思いで作ったんです。なので"東京"といっても、バリバリの都会というよりは、自分が住んできた街に近いような、ちょっと懐かしさもある東京っていうイメージで。

-歌詞やタイトルにある"チョコミント"は、心情的な面を表したイメージ?

勝手なイメージなんですけど、チョコミントってミントの中にチョコのつぶつぶが入っていて、ミントの部分が大人だとしたら、チョコの部分は甘くて子供っぽい感じがあるというか。小中学生くらいの頃に、チョコミントを選ぶ人ってちょっと大人だなと思ってて(笑)。ミントだけじゃ食べれないというか、そこに子供も好きな甘さがないとおいしくないというか。だから大人になりたいとか、自分のダメな部分や子供っぽさを落ち着かせようっていう歌ではあるけど、でもそういう部分もあってもいいんじゃない? って。それがきっと愛嬌にもなるし、そういう初心を忘れないからこそ、大人になれる部分もあるんじゃないかなって思うので。そういう気持ちとマッチさせた感じですかね。

-大人の感じと子供っぽさがいい感じで混じっている、その象徴みたいな感じですかね。

自分自身が今、チョコミントだなぁと(笑)。

-サウンド面はどうですか。

ポップで懐かしさがある感じにしたかったので、JUDY AND MARYや小沢健二さんとか、90年代の渋谷系とか、渋谷系だけどちょっとロックな感じも欲しいみたいな、いろんなリファレンスをバーッと投げたので、どうしたらいいんだってメンバーを悩ませてしまったんですけど、結果的にはいい曲に仕上がったなって思います。めっちゃ紆余曲折したんですけどね、最初はバラードだったので。でもノリのある感じのほうが歌っていて楽しいかもしれないとか、この曲の歌詞の意味とも合うんじゃないかなというので、こういう形になりました。

-そして今作のラストを飾るのが、ぺっぺさんの「リプレイ」。先ほどぺっぺさんの曲作りのスタイルの話がありましたが、こちらはストーリー性があって、シチュエーションも思い浮かべられて温かな気持ちになるような曲になっています。

そうですね。前提として2月14日にリリースするのが決まっていたので、バレンタイン・デーにちなんで恋愛ソングをというか。今回は私が恋愛詞で書かないってみんなに宣言していたし、先にリリースしていた「Stand By Me」、「チョコミンツ」、「YOUTH OF EDGE」も恋愛の曲じゃないので、ぺっぺが"自分なりの恋愛ソングを作ろう"っていうことだったみたいです。初めて聴いたときの感触は、心温まるなという感じでしたね。バレンタインって時期的には寒いですけど、想いの渡し合いというか。恋人や家族、友人に、手間をかけて何かを作ったり選んだりする、その渡し合いに心が温かくなる気持ちがある。そういう曲をアルバムの最後で手渡せるのは、自分的にバレンタインだなって思いましたね。恋愛の曲だけど、恋愛以外でも自分の思いたい人に当てはめることもできる歌詞なので、すごくいいなって。

-この曲って、美しいコーラス感も肝になっていますよね。ぺっぺさんからの要望もあった感じですか。

間奏の部分でコーラスを入れてほしいんだよねっていうことで、ぺっぺがリファレンスでいろんな曲を持ってきてくれて。間奏でコーラスがメインになるみたいなのをやったことがなかったので、リファレンスの曲を聴き込んで。さらにここでは、明るいとか優しいだけじゃなく、人との関わりであるとか、相手に想いを渡すまでの勇気や不安──ネガティヴまではいかないけど、うずうずする気持ちやドキドキする感じを表現できないかなって考えていました。

-多幸感だけじゃない、そのニュアンスの表現が難しいお題ですね。

きれいなだけじゃない、ちょっとだけ不穏な雰囲気とかも意識して作りましたね。すごくいい曲になったんですけど、最初は歌うのに苦戦しました。キーが結構落ち着いていて、声を張り上げるような曲じゃないので。話し掛けるように、つぶやくように歌うことはあまりなかったし、サビでグッと上がらない曲もヤユヨでは珍しいので、サビとサビに至るまでの差をつけるのも難しかったです。

-そのヴォーカルのディレクションも、ぺっぺさん主導で。

今回に限らず、基本的にぺっぺの曲はぺっぺがこういうふうに歌ってほしいなっていうのを伝えてくれるし、はなの曲もこういうふうに歌ってほしいという、それぞれのこだわりを伝えてくれたうえで、それを飲み込んでレコーディングする感じなんです。

-メンバーだからこその厳しさはありそうです(笑)。

めっちゃ厳しいんですよ(笑)。何回も何回もやり直すし、でも自分も自分で"いや、ここはこういうふうに歌いたいんだけど"っていうこだわりもあったり、"でもそれじゃ今までと変わらないよ"とか言いながら話し合って作り上げてます。

-いろんな挑戦が詰まった、始まりの1枚ですね。4月からはワンマン・ツアー"真面目にぶっ跳べファンキー!ツアー2024"がスタートしますが、バンドとしてはこの2024年をどういうふうに進んでいこうと思っていますか。

この1月で5周年を迎えたんですけど、そのいい節目になったなというか。せっかく型破りなこともできたし、新しい武器も増えて、自分たちの音楽を広げる1枚になったからこそ、どんどんいろんなことに挑戦していきたいなという気持ちですね。何より、やろうと思えばできるんだっていうことがわかったので。自分の興味のあることだったり、やりたいなって思うことに素直に行動していきたいですね。それをひとりよがりにやるのではなくて、見てくれる人たちにも伝わるように表現していけたらいいなと思います。

RELEASE INFORMATION

ヤユヨ
4thミニ・アルバム
『BREAK』

TLTO-046/¥1,500(税込)
[TALTO]
2024.02.14 ON SALE
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