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INTERVIEW

Japanese

シュレーディンガーの犬 × Laughing Hick

2023年10月号掲載

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シュレーディンガーの犬:ならく いち もな さりあ るるか
Laughing Hick:ホリウチコウタ(Vo/Gt) たいち(Dr) あかり(Ba)
Interviewer:山口 哲生 Photographer:川野晴都


なんとなく街で聞いたら好きになっていた、みたいな。 そういうバンドでありたい(ホリウチ)


-では、次の質問にいきましょう。

さりあ:さっきも話したんですけど、TikTokのイメージがすごくあって。一時期ずっとスクロールしても曲が流れてきたときがあったぐらい、ずっと頭に残っていて。私はそこまでTikTokでバズったことがないのでわからないんですけど、バズったときにどう思っていたのかなっていう、率直な感想をお聞きしたいです。

ホリウチ:やっぱりシンプルに嬉しかったですよ。朝起きて数字を見て、"えっ!?"みたいな感じでしたけど、嬉しかったですね。

あかり:最初にバズったときは、自分たちがまだTikTokに疎かったんですよ。最初に「愛してるって」のAメロがバズったと思うんですけど、"サビじゃないんだ!?"みたいな。

たいち:そこは僕もびっくりしました。曲の中でもフィーチャーされる部分がいろいろあるんだなって。

あかり:最近は我々もTikTokを見るようになってきたんですけど、最初にバズったときを今振り返ると、"あの子もこの子も踊ってたんだ!?"っていうことにびっくりして。自分らの曲が、10代の子たちとか普段はライヴハウスに来ないような人たちのところでも回っていたのはすごく嬉しかったです。

-そのバズを受けてから、曲を作るときにいろいろ意識することも増えたりしました?

ホリウチ:逆に意識しないようにしてます。一時期はちょっと意識してやってみたけど、匂ってしまうというか。"狙ってんな"感が出ちゃうからこそ、自然に入ってきやすいようにするというか。言い回しとかは比喩しすぎると届かない時代になってきているので、そのへんは考えたりはしますけど、ポップに、キャッチーにという意識で変わらず作っている感じですね。

-比喩しすぎると届かないという感覚もあるんですね。

ホリウチ:やっぱり(画面を)スクロールして、聴いて、数秒で飛ばされていくので、たぶんみんなそこまで考えて聴いていないというか。だから、数秒で掴めるポップさのほうが重要なのかなって。そこは考えますし、わりとそっちのほうが自分も好きだったりしますね。考え込んで聴く曲も好きですけど、すぐに入ってくるというか、なんとなく街で聞いたら好きになっていた、みたいな。そういうバンドでありたいなっていう感じです。

-シュレ犬のみなさんは前回の座談会(※2023年8月号掲載)で、TikTokはグループでやろうとしたけど、1本撮ってから撮らなくなってしまったというお話をされていましたが、最近更新するようになりましたよね。

ならく:また別で取り組んでいるというか。最近はYouTubeでショート動画の撮影をメインにしていて。

-その動画をTikTokにも流している?

ならく:そうです。

-いかがです? 短い動画を積極的に出してみて。

いち:やっぱりYouTubeのショートより、TikTokのほうが(再生数が)伸びやすいですね。スクロールする速さが全然違うので。あとは、YouTubeは本編を観る人が多いけど、ショートは隙間でしか観ないので、観られるのはTikTokのほうが多いというか。

ならく:初回から伸びやすいかもね。YouTubeは登録している人が観るけど、そこがまだ多くないので。

-TikTokのほうがリアクションも良かったりします?

いち:どうだろう......いいねの数は再生回数に比例はしてますけど。

ならく:やっぱりちょっと変なことを言ったりしているほうが伸びる気がします。自分の場合だと、ちょっと言い方が悪いですけど、ファンの一部を煽るというか、焚きつけているような感じの投稿にはDMが来たりしましたね。"面白いです"とか。浴衣を着ているショート動画よりも、過激なことを言っているほうが反応が多かったので、なんとも言えない気持ちになってました。人間の本性を見たというか、やっぱりそういう感じなんだなぁって。

いち:TikTokって、やっぱり中高生あたりがよく観てるじゃないですか。前に、選ぶならどっち? みたいな企画をやったときに、内容をめちゃめちゃ恋愛のことにしたんですよ。恋愛といっても、ちょっとギリギリ下ネタなんじゃないかっていうぐらいの感じだったんですけど。それをやってみたら、YouTubeは案外ウケなかったんですよ。たぶん、それを目的として観ている人が少ない。でも、TikTokだと"共有したら好きな人と両思いになります"とか、絶対に信じなくていいのに、恋愛が絡むと気になるところがあるみたいで。その影響もあって、TikTokのほうがそういう動画はちょっとだけウケがいいんだなって思いました、世代的に。

-やっぱり恋愛ネタって中高生の反応が強いんですね。

いち:強いです。やっぱり気になるじゃないんですかね。

-恋愛リアリティー・ショーとかもよく観ているでしょうし。

いち:めっちゃ観ますよね(笑)。

ならく:一番観そうな世代だよね。

いち:流行りますよね、高校のときに。

-動画のネタに困ることはまだないですか?

ならく:いや、やっぱり常に考えてます。撮影のときはみんな"思いつかない......!"って。

もな:お互い出し合っている感じですね。

ならく:"アイドルあるある"みたいなものを撮ることが多いんですよ。普通に踊ったりする感じじゃないので、エピソードを考えるのが大変で。

いち:踊る系の動画であれば、流行っている曲を踊ったり、エモく撮ったりすればいいんですけど、やっぱり企画とかネタとなるとわからなくなりますね。何が流行っているのかがわからないし。

-しかもサイクルが速いから、やろうとするともう古いという。

ならく:そうなんですよね。

-Laughing Hickのみなさんとしては、TikTokにツアーの裏側をアップされていたりしましたよね。

あかり:そうですね。遠征の移動の様子とか、自分らの企画をやったときのダイジェストを作ったりしていて。今は曲を知ってもらっていることが多いと思うんですけど、もうちょっと"この曲、このバンド、この人たち"というのを繋げたいなと思っていて。ダイジェストや裏側を出して、もっと人間に興味を持ってもらえるところまで持っていけたらなっていうのが今の課題ですね。それこそTikTokでハマるものと、YouTubeでハマるものってやっぱりあるじゃないですか。TikTokはわりとわかりやすいものが求められているし、YouTubeはフォローしている人がもっと濃いものを知りたいと思うところもあるだろうから、そこにうまく準じてやっていければなと思ってます。

-では、Laughing Hickのみなさんからシュレ犬のメンバーに聞いてみたいことはありますでしょうか。

あかり:グループ名の由来ってなんですか?

ホリウチ:猫じゃない?"シュレーディンガーの猫"っていう実験から取ってるのかなと思った。

ならく:そうですね。

あかり:そんな実験があるんですか?

ホリウチ:思考実験みたいなやつですよね。

いち:なんか、2回に1回毒ガスが出る箱の中に猫を入れるんですけど──。

あかり:え、かわいそう......。

いち:で、箱を開けるまで、その猫が生きてるか死んでるかの確率って半分半分みたいな。説明が難しいんですよね(苦笑)。

ホリウチ:なんかね、箱の中に猫を入れて、蓋を閉めるわけ。

あかり:うん。

いち:(ちゃんと説明するところが)優しい(笑)。

ホリウチ:その箱の中に2回に1回ガスを入れるんだけど、それって死ぬ可能性が2分の1になるじゃん。だけど、この蓋を開けるまで、その猫が本当に死んでいるのか、死んでいないのかわからないじゃん。俺たちは観測することによってそれが生きているってわかるけど、じゃあ今この箱の中にいる猫はどうなっているの? っていう。

ならく:人間で言うと、中身をちゃんと知らないとどうなのかわからないよ、みたいなニュアンスですね。

たいち:なるほど!

いち:でもなんでこの名前を付けたんだろうね。由来は"シュレーディンガーの猫"なのは知ってるんだけど。

ならく:この中で私だけが初期メンバーなんですけど、タクシーに乗ってるときにサラッと言われたんですよ。"「シュレーディンガーの犬」になった"って。

あかり:結構サラッとしてたんですね。なるほど、実験だったのか。

-あと、あくまでも思考実験なだけであって、毒ガスで死んだ猫がいるわけではないですね。

たいち:おぉ、良かった。