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LIVE REPORT

Japanese

Laughing Hick

Skream! マガジン 2024年06月号掲載

2024.04.28 @渋谷WWW X

Writer : 藤坂 綾 Photographer:若奈(Live You)

EP『カフェオレ』を引っ提げ、3月16日の大阪公演から名古屋、仙台と回った[Laughing Hick LIVE TOUR 2024"ダンデライオン"]のファイナルであり、バンドにとって初となるワンマン・ライヴが4月28日、渋谷WWW Xにて開催された。

バンドにとって初ワンマンということはファンにとっても初ワンマンで、何事にも"初"は一度しかない。この"初"というのに私がこだわるのは、その昔、友人のバンドの初ライヴに行けなくなったとき、"初ワンマンは人生に一度きりなんだよ"と今にも泣き出しそうな顔で言われてしまったことがあるからで、"初(ワンマン)は人生に一度きり"――まさかそんな当たり前のことをそんな顔で言われてしまったら、たしかにそうだと頷きながらもう詫びるしかなかったからだ。それと同時にその当たり前の言葉にハッとさせられ、その"初"を見届けられなかったことを心から悔いた。そんなこともあり、ぎゅうぎゅう詰めのフロアを見渡しながらこの場にいられることの喜びを噛みしめ、それが始まるのを待った。

SEが流れ、メンバーが登場すると大きな大きな歓声が。ホリウチコウタ(Vo/Gt)が静かに、それでいて伸びやかな声で"いつもの声と音で響かせて/届く 届くように願い込めて"と歌い始め、たいち(Dr)が"「ダンデライオンツアー([Laughing Hick LIVE TOUR 2024"ダンデライオン"])」、過去最大の熱い空間を作ろうぜ!"と叫ぶと、あかり(Ba)がとびきりの笑顔を見せ、「Local Hero」でライヴはスタートを切る。手拍子が鳴り響き、一気に熱くなるフロア、もう完璧だ。その熱さに輪を掛ける勢いで、ライヴではすっかり定番となった「ホンネ」へと続く。曲中もたいちは相変わらず煽り続け、それに応えるかのように手を左右に振り続けるオーディエンス。フロア後方からの景色があれだけ圧巻だったのだから、ステージ上からのその様は格別だったに違いない。そして間髪入れず「Cuz」へ。安定した演奏力はもちろんのこと、堂々とした姿が頼もしい。曲の合間に思わず漏れる声や歓声もかっこいい。そう、ファンも負けじとかっこいいのだ。

ファンは「モノクロセカイ」では手のひらを空に向かって広げ、「さよなら恋人、おかえり恋心」、「カシスオレンジ」ではきっと自分の恋愛や体験を振り返りながら、ステージをただひたすらに見つめる。彼らの恋愛曲はクズな恋愛と称されることがあるが、決してそれだけではないことを、いや、ほんとはそうではないことをここにいる人たちはわかってる。どうにもできない痛い想いをそっと掬い上げ、深い傷に優しく寄り添う。つまりはどうしようもないピュアな想いを肯定する強さしか彼らの歌にはない。だからこんなにも多くの人が彼らの音楽に救われるのだし、そのリアルさに惹きつけられるのだ。心の葛藤、迷い、弱さ、醜さを吐露できる人間は、強くて優しい。

「愛してるって」から始まった後半戦は圧巻で、「休憩と宿泊」、「女だから」とダンサブルに攻め立てる。気迫に満ちたパフォーマンス、向かい合い何度も何度もトライアングルを描く姿、"よくできました"のあとの大歓声。どれもがとても愛おしく、その光景は今でも脳裏に焼きついている。"めちゃめちゃかっこ良かったですよ"とホリウチも言ってたけど、めちゃめちゃかっこ良かったよ、みんな。そして、"大好きな人を大好きなまま手放さなければならなかった、そんな大人と子供の狭間の歌です"と「カフェオレ」、"俺たちのこれからの将来にあなたがいてくれることを願って、約束の歌を"と「ランプ」、"「ダンデライオンツアー」ファイナル、未来でお会いしましょう。山梨県、Laughing Hickでした"とラストは「Bye-Hi」。フロアから隅々まで見渡し、"いつもほんとにありがとう"と潔く、初ワンマンの幕を閉じた。

"負けた数なら負けないからこそ/もっと 輝きを放つんだ"(「ランプ」)――これまでの感情をすべて喜びに変換し、見事に輝き切ったこの日。Laughing Hickの3人は、バンドとしての集大成をしっかりと見せ、これからの未来をはっきりと予感させた。すべてを輝きに変えることで未来が光に照らされたからだろう。音楽と向き合い、自分と向き合い、人と向き合い、ちょっとずつ消化して、ちょっとだけ踏ん張って、なんとかかんとか乗り越えて......バンドも生きることもきっとこの繰り返し。そうやって一歩一歩その先へその先へと進み、迎えたであろうツアー・ファイナル、初のワンマン・ライヴは、彼らのさらなる未来への通過点に過ぎないのだろう。


[Setlist]
1. Local Hero
2. ホンネ
3. Cuz
4. 今更になる前に
5. 中指を立てて
6. 恋にしがみついて
7. ラストネーム
8. Toothbrush
9. モノクロセカイ
10. さよなら恋人、おかえり恋心
11. カシスオレンジ
12. 愛してるって
13. 休憩と宿泊
14. 女だから
15. カフェオレ
16. ランプ
17. Bye-Hi

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