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INTERVIEW

Japanese

Laughing Hick

2023年11月号掲載

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Member:ホリウチコウタ(Vo/Gt) たいち(Dr) あかり(Ba)

Interviewer:藤坂 綾

今年7月にシングル『女だから』をリリースしたLaughing Hickが、10月6日に「モノクロセカイ」、11月17日に「さよなら恋人、おかえり恋心」と2ヶ月連続でシングルを配信。『女だから』リリースまでの約3年という間に感じた想いや、そこから徐々に変化していったライヴに対する自身の在り方、どんな時間も決して無駄ではなかったということを、今彼らは自分たちの姿で証明する。新しいこの2曲について、東名阪ツアー([Laughing Hick LIVE TOUR 2023 "さよなら恋人、おかえり恋心"])について、そして初となるワンマン・ライヴ[Laughing Hick ONE MAN LIVE"ダンデライオン"]について、3人に訊いた。

-『女だから』のリリース・ライヴ("Laughing Hick Presents 夏だから")でも披露されてた「モノクロセカイ」、この曲はいつ頃作られたんですか?

ホリウチ:書き始めたのは今年の3月ですね。そのとき一番考えてたことが、生きていくなかで大小あれど悩み事っていうのはあって、どんだけ悩んでたとしても、例えばメンバーや信頼できる人に相談したとしても、最終的には自分ひとりで答えを出さなきゃいけないんだなということで。結局1歩踏み出すのって誰でもなく自分なんだなと考えてるなかで、じゃあ1歩踏み出したいと思った自分のその想いと、リスナーの背中を少しでもポジティヴな方向に押す応援ソングを書きたいっていう想いから書き始めました。

-自分が1歩踏み出したいと思ったきっかけは何だったんでしょうか。

ホリウチ:『DOPAMINE』(2019年リリースの1stアルバム)をリリースしてから3年ぶりのリリースが『女だから』だったんですけど、その3年間、曲はたくさん作っていたんだけどリリースが全然決まらないっていう期間でもあって。だからこの曲を書き始めた頃に、"よっしゃ、ここでちょっと本腰入れて"というか、もっとストイックに曲を作っていこうって、バンドとして1歩踏み出したい気持ちが大きかったんです。それをそのまま曲にしました。

-リスナーの背中を押したいと思ったのは?

ホリウチ:3年ぶりの自主企画"Laughing Hick Pre. 『Voyager』"を1月にやって、そのときあかりの正式メンバー加入の発表をしたんですけど、そういうのって自分たちでは内輪のことだと思ってるところがあって。だけどみんな自分のことのように喜んでくれたんですよ。Laughing Hickのことを、正式メンバーの発表をこんなにも喜んでくれる人たちがいるんだって思ったらすごく嬉しくて。それまではあんまり好かれてこなかったというか(笑)、自分のバンドを好きになってもらえる幸せみたいなものを感じたことがなかったんです。だから、自分たちの喜ばしいことを一緒に喜んでくれるこの人たちを大切にしたいなって、1月の"Voyager"のときに初めて思って。

-それまでは距離みたいなものを感じてらっしゃったんですか?

ホリウチ:それまではただ自分がやりたいようにやってたというか、ひとりよがりなライヴをしていたところがあったんです。だから正直あまり周りのことは考えてなくて。でも"Voyager"のときに、ライヴって一緒に作っていくものなんだっていうことに改めて気づくことができたんです。それくらい嬉しかったし、じゃあ自分も変わらないと思って、そこから変わっていきましたね。

-それは大きな変化でしたね。

ホリウチ:自分でも思います。

あかり:1月の"Voyager"で、自分たちの音楽をこんなにも待っててくれてる人がいるんだっていうことをすごく感じたし、自分たちが100出したら100以上で返ってくるっていうやりとりをすごく大切に感じたから、またこのやりとりをしたいし、何度でも続けたいと思ったんです。でもライヴが終わったらみんなそれぞれの日常に戻っていくわけじゃないですか。そんなときに背中を押すことができたらいいなって思ったし、背中を押したことで何かを乗り越えて、また次のライヴで会えたら幸せだなと思えたのもそのときだったから、この変化はバンドにとって大きいものだったと思いますね。

たいち:"Voyager"であかりの正式加入を発表したとき、自分たちのことのように喜んでくれてるなっていうのは自分もめちゃめちゃ感じたんですよね。それまではコウタも言ったように、みんなと作り上げるライヴではなくて、自分よがりのライヴをやってたんです。何もわかってなかったというか。だから、曲を作ってその曲で会話をするのがライヴなんだってことに気づけたことは自分にとって大きな変化だし、進歩だし、それがちゃんとできるようになったということもまた進歩だから、気づけて良かったなって思います。

ホリウチ:自分のことで精いっぱいで、バンドで表現することも精いっぱいの時期があって、ほんと全然周りが見えてなかったというか、そういうライヴを繰り返してきての1月の"Voyager"だったから、そこで大事なことに気づけて、フロアと一緒にライヴを作り上げるというところまでいけたんだから、それはもう自分も変わりますよね。変わらなきゃですよ。

-その変化があったから、"夏だから"のようなもっと素晴らしい景色をメンバーも、ファンも見れるようになったんですしね。

ホリウチ:嬉しいことです。僕らも1月の"Voyager"のときにみんなで一緒にライヴを作るっていう感覚がわかったからこそ、こういう景色を見たいよねって、曲を作るときにライヴを想像するようになったんですよ。

あかり:そうそう、みんなで楽しみたいってね。だからライヴでより曲が発展していくというか、まさに"夏だから"で『女だから』の3曲は完成したなって気がしました。これが私たちの見たかった景色だって。

-サウンド的にもこれまでになかったものになってますが、それも1歩踏み出すという意味でのことですか。

ホリウチ:そうです。日々いろんなライヴハウスでライヴをやっていくなかで、その場ではめちゃめちゃすごい熱量で曲を届けてるけど、1歩ライヴハウスから出たら俺たちはもう関われない世界じゃないですか。だったら次はどうやったら背中を押せるだろうか、どうやったらライヴハウスを越えた先でも一緒にいられるだろうかっていうことを考えたとき、望んで聴いてもらうことができるんだったら音楽でいつでも側にいられるから、歌詞だけではなくて楽曲でも背中を押したいというか、どうしたらそれができるだろうって考えた結果、ですね。今までにない鍵盤を入れてみたりっていう新しいチャレンジをすることで、俺らも今までのLaughing Hickから1歩踏み出したよっていうことをサウンド的にもアプローチできるんじゃないかと思って、みんなも外の世界で1歩踏み出してくれよって、そういう願いを音にちりばめてみました。

-実際チャレンジしてみていかがでした?

たいち:単純に、俺はすごく新鮮でしたね。自分が生楽器だから、そこに対して電子音が加わってくるというのは新しいことだったので、それだけですごく新鮮でした。

あかり:鍵盤も入ってるのでびっくりした方もいるかもしれないですけど、そのぶん幅も広がって、"モノクロセカイ"から"カラフルセカイ"への広がりも見えたんじゃないかと思っていて。伝えたい想いを楽器やサウンドでも表現できたらいいなとはずっと考えていたので、今回のトライはドキドキしたんですけど、曲としてベストだったと思います。

ホリウチ:自分は正直すごく違和感があったんです。でもそれは今必要だったからやったことだし、今は違和感もなく受け入れられてます。

-違和感というのは?

ホリウチ:今まではバンド・メンバーで作ってきた曲だったけど、この曲はプロデューサーのKAZUKIさんがいてくれたり、鍵盤でサポートしてくださった方がいてくれたり、そういうメンバー以外の人たちとみんなで作っていくっていうことに対して違和感があったんです。でも、曲を一緒に作って、同じ景色を見てくれているうえに手助けまでしてくれて、最終的にはもう感謝しかないですね。

-あかりさんが"びっくりした方もいるかもしれない"とおっしゃいましたが、不安はなかったですか? リスナーにどう聴こえるだろうとか。

たいち:今までと全然違うから、聴く人はびっくりしちゃうだろうなとは思ってたんですけど、実際ライヴでやってみたら"好き"というコメントがたくさんあったりして、"あー、そうなんだ"って、嬉しかったです。

あかり:サウンド面でもトライして、歌詞も恋愛ではないものにトライして、どういう反応が来るかなとは思ってたんですけど、SNSでリリースと同時に"あなたの見てる空を見せてください"って、空の写真を投稿してもらうキャンペーンをしたら、ほんとにいろんな空の写真を投稿してくださって。そこに"背中を押された"とか"ここの歌詞が好き"とか"今日もこれ聴いて出勤します"ってメッセージも書かれてて、鍵盤についても"ピアノの音が好き"と書かれてるのを見て、ちゃんと届いてるんだなということを感じたし、自分たちの伝えたかったこととか、この音を入れたからこう伝わるんじゃないかっていう狙いに対しての反応も見られたので、"ちゃんと届いてるんだ、やって良かったな"と思いました。

ホリウチ:"きっと大丈夫/同じ空 見上げているよ"っていう歌詞があって、そこを切り取ってたくさんの空を送ってもらったんですけど、冒頭でも話したように、誰に相談したとしても結局最終的には自分ひとりで決断を下して、1歩前に踏み出さなきゃいけないっていうときに書いた曲なのに、みんなの空を毎日見るたびに"仲間がこんなにいるんだ、今までひとりだったけどこれからは空を見ればあいつらがいてくれる"って思う曲になったから、みんなにカラフルにしてもらってるんだなっていうことはそこですごく感じましたね。

-新しいことにチャレンジしたらどんどんやりたいことも出てきたんじゃないですか。

ホリウチ:サウンドのアプローチは結構広がったんで、これからもっといろんなことができるなと。

あかり:受け入れてもらえるんだっていうこともわかったから、こっちもそんなに構えなくなったし、もっといろんなLaughing Hickを見せていいんだなって、そういう部分でも1歩前に行けたような気がします。この曲で新たな扉を作って貰えたのは良かったです。

たいち:この曲ができたからこそ見れた景色もあるんで、まだまだいろんなことに挑戦して、いろんな景色を見たいですね。