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INTERVIEW

Japanese

シュレーディンガーの犬×Absolute area

2023年09月号掲載

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"EDM × ROCK"を掲げるシュレーディンガーの犬(通称:シュレ犬)がアーティストと座談会を行う連載企画。この記事では、Absolute area(アブソ)を招いた第2回後編の模様をお届けする。活動フィールドも表現している音楽も異なる2組が、"バズ"や"裏側"といったテーマでトークを繰り広げた前編(※2023年8月号掲載)から、後編は"楽曲"や"ライヴ"についての話題へ。前編同様、様々なトピックが飛び出すなか、両者からエモいエピソードが次々に明かされる、賑やかながらも熱いクロストークをお楽しみください。

シュレーディンガーの犬:ならく いち もな さりあ るるか
Absolute area:山口 諒也(Vo/Gt) 萩原 知也(Ba) 高橋 響(Dr)
Interviewer:山口 哲生 Photographer:川野晴都

-前編同様、シュレ犬のメンバーのみなさんが用意した質問をもとにしながら、後編は音楽やライヴについてのお話をメインにお聞きしていこうと思います。では、るるかさんからお願いします。

るるか:1曲できるまでにどれぐらい時間がかかりますか? 制作期間とか、どのぐらいかかるものなのかなと思って。

山口:結構バラバラですね。まず僕が家でデモを作るんですけど、そのデモを1曲作るのも、1週間でできるときも、3日ぐらいでできるときも、1ヶ月以上かかることもあって。ある程度曲が固まってから、最近ではアレンジャーさんに投げたり、バンド・メンバーだけで固めていったりするので、期間となると結構難しいんですよね。どうすか?

高橋:作ってない人に聞く(笑)? でも、バンドを組んでオリジナルを作り始めたときに比べたら、圧倒的には速くなってるよね? メンバーに共有する前にボツにしている曲がもっとあると思うので、そこも考えると速くなってるんじゃないかなぁって。あと、こだわりがすごいというか。デモの段階でもう完成しきっちゃっていて、結構びっくりするんですよ。ストリングスもコーラスも入っていて、デモってなんだっけ? っていう(笑)。1日で作ったときもなかった? レコーディングの前に急遽曲を追加することになって、数日で上げてきた曲をバンドでほぼ合わせずにレコーディングしたこともあって。あれはびっくりした。

山口:曲って、時間をかけないほうがいい場合もあって。

萩原:降ってくるってやつ?

山口:そう。そのほうがいい曲になるんですよね。

高橋:そうなんですか?

山口:そうなんです(笑)。まぁ、質問からちょっとズレちゃいましたけど(笑)、期間は結構バラバラですね。すぐできるときもあれば、半年ぐらいかけて作る曲もあって。例えば、歌詞が全然浮かばないからいったん放っておこうみたいな曲があったとして。その曲のことを忘れた頃に、歌詞を書き溜めているメモ帳みたいなものを開いたときに、自分が本当に歌いたかったことってきっとこういうことなんじゃないかなって、半年後にわかることも全然あります。

さりあ:歌詞を書くときに気をつけていることはありますか? 例えば恋愛系の曲とかは、自分の経験をもとにしているのか、妄想で書いているのか気になりました。

山口:歌詞は自分の経験が多いです。妄想で書くこともありますけど、やっぱり経験に勝るものはないというか、歌詞が強くなるなと思うので。気をつけていることは......これはバンド名の話にもなるんですけど、やっぱり"絶対的な領域"っていう、誰にも踏み込まれたくない自分の心の中にある領域って、自分しか触れることができないわけじゃないですか。なので、僕が曲を書くうえでは自分のことを慰める気持ちで書いていて。そうすることによって、その曲を聴いた方が、その曲を通して自分自身と対話できると思っているので。だから、誰かに対して歌うというよりは、自分に向けて歌っていますね。そこは気をつけてます。

もな:悲しい系の曲が多いのには理由があるんですか?

山口:そこは......僕がかなり悲しい人間なので(笑)。悲しいんですよねぇ。なんか、ずっと寂しくて歌を歌っているような気がしていて......。

高橋:どんどんネガティヴになっていってない(笑)?

山口:ははははは(笑)。いや、全然ポジティヴではある。例えばですけど、自分が幼い頃って、誰かに酷い言葉を言われて傷ついたりもしたんだけど、この歳になるとなんとも思わないようになってしまって。でもきっと、自分の中にはすごく純粋な感性を持った自分がいるはずで、本当は傷ついているんだろうけど、表に出さないというか。防衛本能みたいなものが出てきちゃって、上手に生きちゃってるなぁっていう感じもするし、それも悲しいことだなと思うので。だから歌の中では、取り繕って上手に生きている自分というよりは、もっと自分の心の奥にある純粋な部分を歌いたいなと思ってますね。まぁ、悲しいんすよ(笑)。

-ははははは(笑)。シュレ犬のみなさんとしては、自分たちの曲を自分に向けて歌っているような感覚になることはあります?

ならく:あります。

いち:私もある。

ならく:「What's going on」という曲(2021年6月リリース)に、"だって諦められないのが取り柄なんだもん"っていう歌詞があるんですけど、もともとは昔いたメンバーがそこを歌っていて、その子がやめちゃってから自分が引き継いだんです。私は初期メンバーなんですけど、みんなもうやめちゃって、自分ひとりが残っていて。そのパートを歌ってた子とは仲も良かったから、すごく感慨深いなと思いながら、でも自分はやっぱり諦めきれないし、もうちょっと頑張るかという気持ちでいつも歌ってますね。頑張ろうってなる歌詞です、いろんなことを含めて。

いち:自分がシュレ犬の中で好きな曲としてよく挙げる「君の記憶の中に居たい」という曲(2021年8月リリース)があって。その落ちサビに"永遠なんてない事なんて/全部わかってるわかってる/だから/約束/記憶の中忘れさせないよ"っていう歌詞があって、ちょっと長いんですけど(笑)。もともとそのパートは、自分と前にいたメンバーで分けて歌っていたんですけど、今はフルで自分が貰っていて。毎回歌うたびに思うんですけど、永遠ってやっぱりないんだなって。例えば、オタクの子が推すのをやめたら、こっちからは会いに行けないから、ライヴをしに行くところに会いに来てくれないと会えないし、メンバーも別にやめたあとでも会えるけど、メンバーとして活動することはもうないし、ずっと一緒に活動できることもないから。それでも、1回でも関わった人たちの記憶に、自分と一緒にいた記憶が残ってほしいなって思いながら毎回歌うので、いつもちょっと泣いちゃうんですよね(苦笑)。泣きそうな顔で歌ってて。

山口:自分が歌うパートは、自分で歌詞を書いているわけじゃないけど、それでもその歌詞が自分のものになるというか。

ならく:そうですね。なります。

いち:運営さんが考えてくれているときもあるんですよ。例えば"地獄の底まで"という歌詞(2023年6月リリースの楽曲「ADDICTED BUG」)だったら、ならく様が歌ったり、"一番"という歌詞(2022年リリースの楽曲「Hype up!」)が入っていたら、いちが貰ったり。

ならく:特にキャラに沿った歌詞をいただいた場合は余計に思い入れが強くなりますね。

いち:自分たちで歌詞を書いていないからこそ、それを表現するのが難しいんですよね。それこそ英語を翻訳する(※2023年8月号掲載)とか、自分の歌割りをどう歌うのか考えるために、自分なりに意味をしっかり考えていると思います。

さりあ:私は新メンバーとして入らせてもらえているので、前のメンバーさんが歌っていたところに恥じないように歌わなきゃいけないなと思ってます。認められるように頑張らないとなって。

山口:メンバーふたり(萩原、高橋)はどうなの? 歌詞とかさ、演奏している人としてどう思ったりしてる?

萩原:俺はね、「SABOTEN」って曲(2021年7月リリース)があるんですけど、コロナのときにデモが送られてきて。2番の"否定される事が怖かった"っていうところは、彼は自分のこととか、メンバーとの関係性とかを歌っていることが多いから、こういう感情で書いているんだろうなっていうのがすごく見えたし、フレーズもパッと浮かんできて。歌詞と自分の感覚がリンクしたときに、フレーズとか、自分なりの何かが出てくるっていうことはある。

高橋:僕の場合は、ドラムっていう楽器自体に音階がないので、フレーズで表現するのは難しいんですよ。だからそういう感じというよりは、ひとつの曲があったとしたら、そのストーリーの中でどうやって抑揚をつけていくのかとか、メロディに合わせてどう叩くかとか、歌詞に合わせてどこまで激しく叩いていいのかとか、自分の中で世界観みたいなものを作って叩く感じですね。

-そういうところは山口さんとしてももちろん感じていて。

山口:感じてますね。僕の歌のテンション感を汲み取ってくれているなって。

高橋:はい、汲み取ってます。

山口:テンションが一緒に上がっていくときもあるし、聴かせるときはみんな浸りながらプレイしていたり。

萩原:黄昏てたりとかね。

高橋:バラードをニコニコしながらやっていてもね(笑)。お客さんとのテンション感が合わなくなってくるから、そういうところは気にします。

-シュレ犬のみなさんは、例えばライヴをしていて、メンバーの調子を感じ取ったりすることもあります? 今日はこのメンバー元気ないからちょっとサポートしようかなとか。

いち:曲調的に、やっぱり歌っていると喉が枯れるんですよ。だから、どこで枯れるか予想して、ライヴ中にめっちゃ見てます。

ならく:自分は結構喉が弱くて、ここ1年ぐらいで歌えないことがちょこちょこ出てきたんですけど。

いち:さっき話してた"だって諦められないのが取り柄なんだもん"がそもそも結構高いんですよ。でも"やばい、今日ならくさん声出ないかもしれない......"と思って。

ならく:うん。通常で結構ギリギリのところなんですけど、そのときは(いちが)一緒に歌ってくれて。それもそれで良かったよね。

いち:この中では(ならくと)一番長く一緒にいるんですけど、ふたりで歌うっていうことがあのパートではなかったから、ふたりで歌っていることにちょっと感動しちゃって(笑)。

ならく:うん、感動した。

いち:こっちも諦めないし、サポートする側も諦めないしっていう。

ならく:そういうのはあるかもね。長いこと一緒にやっていると、ここは歌うのしんどそうだなとか。

いち:うん。できなくてサポートし合うっていうのはありますね。

ならく:ライヴをしていてどんなときが気持ちいいですか?

アブソ一同:ん~~。

いち:全員上を見てますね(笑)。

高橋:自分はドラムなので、ふたりに比べてステージ的には後ろにいるんですけど、そのぶん、お客さんのことがよく見えるというか。前にいると、前のお客さんを見る形になると思うけど、ドラムは座っているし全体が見えるので、会場が広いと2階のお客さんもちゃんと見えるんですよ。そういうときに、例えばワンマン・ライヴだったら、サビで全員が手を上げていたり、笑っていたりするのを見るのが一番気持ちいいですね。この曲を演奏できたから気持ちいいというよりは、お客さんの反応を見ることが気持ちいいかもしれないです。

山口&萩原:右に同じです。