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LIVE REPORT

Japanese

Absolute area

Skream! マガジン 2023年01月号掲載

2022.12.04 @渋谷WWW X

Writer 稲垣 遥 Photographer:佐多杏介(kyonntra)

新作『Future』収録曲について、"新しいアブソ(Absolute area)の楽曲が僕自身も見てみたくなった"と先日インタビュー(※2022年12月号掲載)で話した山口諒也(Vo/Gt)。同作リリース当日に行われたワンマン・ライヴ"Absolute area one man live 2022「Fighter~未来への架け橋~」"は、まさに新たなアブソが目撃できた一夜だった。

それはオープニング・ナンバーとなった「少年」から顕著だった。今回の公演はキーボードに松本ジュン、そしてギターにもサポートとして坂本夏樹を迎えた初の5人編成。それゆえこれまでのライヴではキーボードやギターを弾きながら歌っていた山口が、冒頭からハンドマイクで堂々と歌い上げることに。フロントマンとしての存在感をいっそうアピールした幕開けだった。続いてミニ・アルバム『Future』から、光へと駆け上がるような爽快なドラム&ギターから始まる「マイナスの要素たち」。この日がミニ・アルバムの発売日にもかかわらず、一斉に手が上がった。歌に集中できるこの構成も功を奏したか、高音で突き抜けるサビも好調で気持ちいい。
"いくつになっても傷付きあう2人でいよう"と歌う「いくつになっても」から、"君みたいに些細な事で傷ついたり/できる人を見てると腹が立つんだ"という「カフネ」へ。"傷つく"ということを愛情の証として描き、時間の経過と共に鈍感になっていくことに抗わんとする想いを込めた楽曲が続いて、純な気持ちを忘れかけていた私たちの心をチクリと刺激する。意固地な想いが"君"に向き合うことでほぐれていく様を、透明感のあるファルセットとピアノを基調にした澄んだサウンドで美しく描いていった。

メンバー紹介をすると、マネージャーやライヴ・スタッフ、ここにいる観客たちなど音楽を通じて出会った人への感謝を伝え、「出会うべき人」を披露。2本のアコースティック・ギターを重ねて温かみを際立たせる。音源以上に萩原知也のベースが効いていたミドル・テンポの「70cm」のあとはアブソの代名詞と言える優しいミディアム・バラード「遠くまで行く君に」、キーボードのインタールードから「記憶の海を泳ぐ貴方は」を投下。ムードを高めるストリングスのSEが大きく響いても、そこに負けない歌の強さ、そして後半のバンドの音の迫力は5人編成ならではのもので、今後もっと大きな会場でも戦えそうな頼もしさを感じた。

"今いるこの場所から一歩前に踏み出すことには代償があるかもしれない。時間やお金や人。夢を叶えるために手放さないといけないこともあるかもしれない。それでもその先にいい景色が待ってると信じて歩けるように。過ぎていく過去に手を振りたいと思います"と山口が覚悟を決めるようにフロアに声を掛け、「遠い春の夢」から始まった後半。サビで山口に合わせ一斉に左右に振られる腕を見て、"これやってみたかったんだよね!"と無邪気な笑顔を見せると、ステージに腰掛けてより観客に言葉を伝えるように歌ったり、前に出てきた萩原と肩を組んでみたり、より自由に魅せる。前向きな曲のメッセージに寄り添い確かに一歩一歩進むような高橋 響のドラムもいい。

そして、ミニ・アルバムのリード曲「僕が最後に選ぶ人」をここで演奏。疾走感も躍動感も携えた新機軸のポジティヴなアップチューンはライヴ映え抜群で、新曲ながらクライマックスへの起爆剤となっていた。そのグルーヴを引き連れての「パラレルストーリー」では大きな手拍子が沸き起こり、終盤フロアからも"いくつもの"の心のコーラスが確かに聞こえた気がするくらい、感動的な一体感を生んでいた。盛り上がりが最高潮に達したところで本編最後、「introduction」のぐっと深みを湛えた壮大さが会場を掌握。その中で歌われる"小手先の世界をまた少しずつ変えてゆけたら"の言葉は、コロナ禍を経て変化し始める今を生きる私たちにもちゃんと響いたのだった。

アンコールでは彼らがロックな楽曲を軸としていた初期の代表曲「ひと夏の君へ」を威勢良く届け、ライヴの大事さ、みんなの顔を見ながら歌を届けられる嬉しさを実感したと山口。今回のミニ・アルバムのテーマ"未来"にも触れ、描いていた未来像に近づいているという充実感を口にし、来年は"実現"の年にすると明言すると、アルバムのラスト・ナンバー「橋を越えれば」を音源以上に洒落たキーボード・アレンジで披露する。挑戦が詰まった1年を糧にして、確かに見据えた未来の道筋。最後に"大丈夫だ! きっと大丈夫だー!"と叫んでいった山口が印象的だった。


[Setlist]
1. 少年
2. マイナスの要素たち
3. まだ名のない歌
4. いくつになっても
5. カフネ
6. 出会うべき人
7. ANNIVERSARY
8. 70cm
9. 遠くまで行く君に
10. 記憶の海を泳ぐ貴方は
11. 遠い春の夢
12. 僕が最後に選ぶ人
13. パラレルストーリー
14. いつか忘れてしまっても
15. introduction
En1. ひと夏の君へ
En2. 橋を越えれば

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