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COLUMN

黒猫チェルシーの「開拓!ネコロンブス」【第7回】

2017年01月号掲載

黒猫チェルシーの「開拓!ネコロンブス」【第7回】

黒猫チェルシーの開拓!ネコロンブス 第7回 <宮田岳(Ba)>

「ハチミツ大作戦」

唐突ですが、僕はくまのプーさんのファンである。不眠症の僕でも、夜寝る前にプーさんの動画で大爆笑をする、という日課を得たことで、睡眠に対する意識もいささか健やかなものとなりました。プーさんの素晴らしさは、まさに哲学まで昇華しきったハチミツへの愛に集約されます。常識を超えた思考は、身体を構成している成分がほとんど糖であることに由来しているでしょう。

最近プーさんグッズが増えつつあるのですが、良いプーさんの表情は、しばしば危険な香りを漂わせます。でもそれは今回のテーマとはまた別のお話。


プーさんといえば木の穴に顔を突っ込んで、無我夢中にハチミツをしゃぶるシーンが印象的です。でもハチミツの何が、プーさんをとりこにしているのだろうか?今回の開拓は、プーさんと切っても切れない関係にあるハチミツです。

調べていくと、どうやら人とハチミツの関わりは新石器時代からすでにあるようです。一万年前ですね。現在の養蜂のスタイルも、エジプト文明の頃にはすでにありました。第3回の漆もそうですが、祖先たちはほとんどのことを試してくれているものだ。(どうしてあの気持ちの悪いナマコが、食べられるものだなんて我々が知っていようか)

ハチミツとは、ミツバチによってつくられます。ミツバチが、花の蜜を集めて巣に持ち帰ったものが唾液と混合され、さらに貯蔵期間中の蒸発により濃度の高まったものをいいます。花の蜜とミツバチエキスのハーモニー、ということになりますね。うげ。

僕もときどき料理の隠し味に使ったりもしますが、ハチミツにしか出せない存在感がありますよね。先日、料理漫画「食戟のソーマ」の作中で、主人公が比較的すっきりとした「キハダ蜂蜜」を使用し、それが料理の決め手になったという描写をみました。どうやらミツバチが蜜を集めて、良いハチミツになる植物は限定的であり、そのような植物を「蜜源植物」と呼ぶらしいです。蜜源植物の例は、レンゲ、アカシア、トチ、ユリノキ、キハダなど。蜜源植物によってハチミツの味や香りは全く変わり、国や地域によって好みも分かれるらしいです。ミツバチは蜜源植物をひとたび見つけると、ずっとそこから採る。この性質によって、キハダ蜂蜜だとか、アカシア蜂蜜だとか、純度の高い単一蜜源の製品ができあがるらしいのです。

ハチミツには、人の手でつくれない面白さがあります。そりゃあ、大根だって豚バラだって実際人がつくったわけではないですが。ハチミツとは、製造をミツバチに委託し、さらに自然条件という二次的な要素が加わったある種の芸術と呼べるでしょう。きっとプーさんは我々に人為以上の美学を提示しているのだ。その象徴としてのハチミツなのである。プーさんが好きなハチミツはどんなのだろう。間違いなくキハダ蜂蜜ではないだろう。できるだけ甘ったるい香りのキツいやつだったらいいな。