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INTERVIEW

Japanese

黒猫チェルシー

2017年02月号掲載

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Member:渡辺 大知(Vo) 澤 竜次(Gt) 宮田 岳(Ba) 岡本 啓佑(Dr)

Interviewer:沖 さやこ

2016年は2枚のシングルに2本の全国ツアー、自主企画ライヴを行い、フロントマンの渡辺大知は役者としてTVドラマやCM、初めて舞台に出演するなど精力的な活動をしてきた黒猫チェルシー。彼らの約4年半ぶりとなるオリジナル・フル・アルバム『LIFE IS A MIRACLE』が完成した。4年半という期間で様々な経験を重ね、そこでキャッチしてきたものを自分たちなりに取り込んだ渾身の作品は、バンドの今後の指針を感じさせるものと言ってもいいのではないだろうか。

-2016年2月にリリースされたシングル『グッバイ』インタビュー(※2016年2月号掲載)で"自分たちに嘘をつかずに曲を作りたい"とおっしゃっていましたが、4年半ぶりのニュー・アルバム『LIFE IS A MIRACLE』はそれに加えて、様々な要素を掛け合わせて音楽で遊んでいるような印象を受けました。

渡辺:このアルバムは"僕らの4年半"なんですよね。この4年半でメンバーは違うバンドで演奏したり、僕は役者の仕事もたくさんさせてもらえたりしたので、個人個人がいろんな経験をして――それで培ってきた集大成なところはあります。レーベル移籍して初めてのアルバムというのもあって、ここ2年くらいはずっとアルバムを見据えて曲作りをしていて。......めちゃくちゃ小さいデモも入れたら100曲くらい作って、その中から厳選したんです。

岡本:4年半前は自分たちのことしか見えてなかったし、自分のことすら冷静に捉えられていないような段階で。正直言えば何もわかってなくて......とにかく必死やった。そういうがむしゃらにやっていたときから個々の活動を経て、もう少し客観的に全体を見ることができるようになりました。レコーディングもただただ演奏するだけじゃなくて、ひとつひとつ考えてできるようになったし。それが僕の中ではでかいですね。

澤:何日もかけてレコーディングをする――やっぱりそれはアルバムのレコーディングならではなので。それができる喜びをいままでで一番感じましたね。ずいぶん久しぶりのアルバム・レコーディングでしたけど、その間に出会った音楽や培った経験を詰め込めた。本当にレコーディングが楽しかったんですよね。

-このアルバムで"黒猫チェルシー"というものがひとつ着地したような。

宮田:前のアルバムを作ったのが22歳のときで。......これは良いのか悪いのかわからないんですけど、23、24歳である程度のことが固まる気がするんですよね。この4年半でそういうものを経て完成したアルバムというか。(自分たちが)やるべきこととかが固まった気もするんです。

澤:ロック・バンドもKISSとかギターウルフみたいに最初からずーっとスタイルを崩さないかっこよさを持つバンドもいるし、常にずっとずっと変わり続けることを意識しながら続けるバンドとか......いろいろなパターンがありますよね。僕たちは10代でバンドを始めて、好奇心を持っていろんなものに飛びついたりしつつ、どこかで"黒猫チェルシーというものを守らなければいけない"と変に凝り固まってしまった時期もあって。メジャーでオリジナル・フル・アルバムを2枚出して、この4年半で精神的なことが固まってきた気はします。音楽性は変われども、メロディ(の重要性)や歌の在り方、在るべき場所というのは変わらないだろうなと。

宮田:あと、僕らは気合や勢いで演奏するというよりは、ちゃんと演奏してちゃんとレコーディングしていくタイプなので、それによって表れる個性やアイデンティティを大事にしていきたいですね。

澤:そういう表現方法は自分たちが尊敬してきたことだし、音楽が楽しいと思える部分だし、音楽をやっている意味でもある。自分たちのパートに対する誇りでもあるし、そういう真剣さは使命感......と言うと少し大げさかもしれないんですけど、そういうものもあります。全員がそれぞれ持っていると思うんですけど、僕の場合だと"ギター・リフ"はギター・ロックをやるうえである種の任務だとも思っていて。それがバンドらしくて心地いいな......というのはこの4年半で改めて思ったし、それが黒猫チェルシーの武器だと思います。

渡辺:"ロックの王道に挑戦する。でもとにかくキャッチーなものにする"という気持ちで曲作りをしていって。ロック・ミュージックが軸であればどんな曲調でもいいけど、いまの音楽シーンに挑戦していくという意味でも、"歌のメロディがいい"というのは大前提でした。全員が曲を作って持ち寄ってるからこそ、曲のバリエーションはどんどん増えていく。そういうものをひとつにまとめるとき、歌や言葉の役割は大事なポイントであるとは思って。自分がその役割をちゃんと担うだけの力をつけないとなと思っていたし、それを出せる自信があったうえで今回レコーディングできました。今回、"やっぱ歌やな"と思ったんですよね。

-というと?

渡辺:「涙のふたり」(Track.4/黒猫チェルシーがNHK連続テレビ小説"まれ"の劇中バンド"little voice"名義で制作した楽曲)あたりから、メロディに乗せて声を出すのではなく"歌を歌おう"と思うようになって――それまでそんなこと思ったことがなかったかもしれない(笑)。二十歳を超えてからもいろんな音楽と出会って、いろんな影響を受けて、いろんな経験をして......いつの日か"歌を歌える人になりたい"と思うようになっていた。技術はまだまだ自分の憧れには届いてないんですけど、今回のアルバムにはいまの自分が出せる限界まで歌心を注ぎ込んだつもりではあります。


俺は歌手としてストリートや生活を歌いたい


-『LIFE IS A MIRACLE』は日常の匂いを感じる作品でした。主人公が黒猫チェルシーのヒューマン・ドラマにも聴こえるし、自分のすぐそばにありそうな、素朴だけどきらきらした青春群像劇に飛び込んだような感覚にもなりました。

渡辺:今回の歌詞や歌は、全部同じ人が出てきているような感じに......というのはちょっと意識しましたね。"これが黒猫の音楽だ!"という気持ちと同時に、そこらへんに転がってそうな歌が作れたらいいなという気持ちもあって。俺が作ったとか誰が作ったとか関係ないけどいい曲......そういうものになるといいなと思ったんですよね。艶やかで想像の世界を見せてくれる音楽に魅せられた経験もあるんですけど、俺は歌手としてストリートや生活を歌いたい。人と近い、人間っぽいことがやりたくて......生活を感じられるものをわかりやすく出しちゃおうと。だから"街"の中のことを歌ったものが多いのかな。

-歌詞のイメージと音のイメージの相性も良かったです。黒猫チェルシーは全員が作曲するバンドですので、おひとりずつフォーカスできればと思います。まず、アルバムのオープニングにもなるインストの「M-1589」(Track.1)~「スター・トレイン」(Track.2)は澤ワールド全開。すでにクライマックス感もあります。

澤:クライマックス感は意識したところでもありますね。去年改めてまたELECTRIC LIGHT ORCHESTRAをよく聴いてたんですけど、ああいうストリングスや曲の展開が作るロマンチックさが大好きで。そこに自分が得意で大好きなヘヴィ・ロックのリフを融合させました。黒猫チェルシーというものを考えて作ったというよりは、"やってみたいな"という発想から自分のやりたいことを詰め込んだので楽しかったですねー......。ドラムもツイン・ドラムで。

岡本:2回叩かされました(笑)。

-ツイン・ドラムと言うから、てっきりゲスト・ドラマーさんとのセッションなのかと思いきや、岡本さんのセルフ・セッションだったんですね(笑)。

澤:Bメロだけ違うことをやってもらって、あとは同じものを叩いてもらいました(笑)。ギターのハモりもストリングスもコーラスも、リズムの感じも含めて、聴感上気持ちいいことを詰め込めた曲ですね。