DISC REVIEW
サ
-
-
シンガーズハイ
Serotonin
初のZeppワンマンはソールド・アウト、名だたる大型フェスに引っ張りだこと、ロック・シーンのど真ん中を突き進むシンガーズハイの新作は、アニメ主題歌を含む6曲入り。1曲目「STRAIGHT FLUSH」からボルテージMAXで、近年のギター・ソロ不要論に真っ向から立ち向かうようなアグレッシヴなギターが刺さる。続くバラード「紫」での立ち回りも素晴らしい。耳を劈くようなハイトーン・ヴォイスが魅力だが、それを抑えたメロウなナンバー「SENTI」はまさに新境地。軽やかに歌い上げられた内省的な歌詞が沁みる。最後はストレートに放つ"愛している"が印象的な爽やかな1曲「エイトビート」。本楽曲、そしてこのアルバムを締めくくる"やっと歌にできた"という言葉からも窺える、ひと皮むけたバンドの新フェーズを感じさせる1枚だ。
-
-
シンガーズハイ
DOG
昨年6月に配信リリースした「ノールス」がSNSで話題を集め、急速に注目度を上げているシンガーズハイの新EP。リード・トラック「Kid」は、耳に残るイントロのリード・ギターと内山ショートのハイトーン・ヴォイスが光るナンバー。"自称"バンド好きへの皮肉が抜群に効いている歌詞がなんとも爽快だ。疾走感があって曲名通り少し危なっかしい雰囲気の「飛んで火に入る夏の俺」や、一変して落ち着いた曲調で人間味のある失恋ソング「Soft」など全5曲を収録。ギター・ソロへのこだわりが伝わるサウンドはぜひともライヴで聴いてみたいし、日常を切り取って彼らの世界観で綴るリアルな歌詞に共感してしまうような節もある。技術や歌詞に音楽への愛が散りばめられたこの作品は、ロック・ファンに刺さること間違いなし。
-
-
シンガーズハイ
Love and Hate
2020年結成の4ピース・バンドが、KOGA RECORDSより初の全国流通盤をリリース。最初に飛び込んでくるのは、内山ショートのハイトーン・ヴォイス。hihiAまでを地声で張り上げる鋭い声はインパクト大だが、"口ずさめるリフ"を志向するリード・ギターも同じくらい存在感抜群。また、リズム隊の手捌きにも工夫が感じられる。"初期衝動をパッケージした"と形容したくなるサウンドだが、歌詞の描写に寄り添ったアレンジが施されていたりと、衝動のひと言では片づけられない構築力も垣間見える。ロック・バンド・ファンの心を突き動かす熱い魅力、まだ若いバンドならではのピュアさを持ちながらも、どこか冷静な視点をも感じさせる、稀有なニューカマーの登場だ。
-
-
真空ホロウ
真空ホロウ
彼らの作品の中では初の全国流通盤『contradiction of the green forest』が最も素晴らしく、後世に語り継ぐべき名盤だと思っている。過去曲と新曲を6曲ずつ収録した初のフル・アルバム『真空ホロウ』を聴いた今でもその評価は変わらない。だが、結成前からある楽曲「開戦前夜」が現在の彼らのモードと合致していたりと、バンドは間違いなくこの作品で初期の無垢な気持ちを取り戻している。その反面、大胆にダンス・ビートを取り入れた新しいアプローチに挑戦した曲にもバンドが振り回されていないのは、この年月で様々なアレンジに挑戦してきたという基礎体力があるからだ。彼らはこのアルバムで、自分たちの核をしかと愛でることができた。真空ホロウはここから、そしてこれからである。
-
-
真空ホロウ
Slow and steady
リアリティを追求するバンドが多いJロック・シーンで、ちょっとミステリアスなパラレル・ワールドを描いているのが3ピース・バンド、真空ホロウ。過去に2枚のミニ・アルバムを発表している彼らがTOWER RECORDS限定で3曲入り生産限定シングルをリリースする。透き通る繊細なギターと、ドラマティックな展開のメロディが、瞬く間に目の前を別世界に彩る。闇に揺らめく炎のように美しく不気味な空気。その不思議な魅力に落ちてしまうのは不可抗力だ。緻密に紡がれたスケール感溢れる1作目『contradiction of the green forest』に比べ、前作今作はアレンジがシンプルになり現実世界に溶け込む音と詞に変化。思考に入り込む感染系ギター・ロックに、溺れてみるのも一興です。
-
-
真空ホロウ
ストレンジャー
前作『contradiction of the green forest』でただならぬ存在感を見せ付けた茨城出身のスリーピースバンド・真空ホロウのニューアルバムがリリース。すでにライヴでも披露されていた「闇に踊れ」も収録される。ミルフィーユのように何層にも細い線が重なるような繊細だけれど力強く響く音。特にバンドの強度を支えているベースのグルーヴがたまらない。少し冷たさを感じさせながらもエモーショナルに歌い上げる松本明人(Vo&Gt)の声も印象深い。それに社会に対する理不尽なことや自己の闇に戻っていくような歌詞世界が相まって、心のスキマを満たしていく。リリースツアーも決定し、ステージでの彼らも見逃せない。棘のあるバラが美しいように、少し毒を含んだサウンドに妖しくも惹かれてしまうのだ。
-
-
神聖かまってちゃん
夕方のピアノ
この曲はただの排泄行為だ。または、感情の嘔吐といったところか。の子(Vo)の声とは判別できない、ヴォイス チェンジャーのような気味の悪い声でひたすらに"死ね"と叫んでいる、曲の半分以上がそれだけ。だが、このおぞましい行為こそが、このバンドの持つ"全てを生身のままドキュメントしていく" という側面を象徴しているともいえる。彼らは、頻繁にニコニコ動画内で生放送を行う。そこでは視聴者からリアルタイムで何百という言葉が寄せられ、その大半がキモイだのキレてるだのといったもので、ある種2ちゃんねるのような無法地帯と化している。彼らはそうやって、状況を意味のあるなしに関わらず、全てありのままたれ流しにしていく。だからこの曲も、音楽作品である前に、の子のドキュメンタリーのようなものなのかもしれない。
TOWERamazon
-
-
神聖かまってちゃん
友だちを殺してまで。
現段階で1曲目の「ロックンロールは鳴り止まないっ」はYouTubeの再生回数が154000回を突破している。彼らが放った"ロックンロールと出会った瞬間の衝動"は何万人もの人に求められ、共有されたわけだが、本作はこの事実を裏切らない作品であると同時に、その事実以上の作品である。同曲だけでは分からなかった神聖かまってちゃんの真髄が詰まっているのだ。彼らはいわゆる"青春のあの頃" を歌うような生易しいバンドではない。公の場で自傷行為するように、もっと痛々しく、危うく不安定なのだ。大袈裟にエフェクトがかかったへろへろの声と、どこかセンチメンタルにさせるキーボードの音色が響く白昼夢の中で、悲しいくらいに絶望的であったり、時に狂気をはらんだ世界を歌う。こんなにも"刹那(せつな)い" パンク・ロックに久しぶりに出会った。
TOWERamazon
-
-
新世界リチウム
きみはどう?
06年結成の3ピース・バンド新世界リチウムの2ndミニ・アルバム。僕たちはまだ成長途中であり、未熟である――。日々迷いながら必死に今をやり過ごそうとする若者が、そのありのままを言葉にした、実にまっすぐな目線から語りかける音楽だ。そして、アルバム・タイトルの通り“きみはどう?”というシンプルな問いかけが、様々な角度から聴き手に投げつけられる。例えば、“声をあげて泣くことや、泣きすぎて目を腫らした朝だってあるでしょう? きみはどう?”。、自分が惨めで、所在なくて、ベッドに崩れ落ちた日だってあるでしょう? きみはどう?”、こんなふうに――。そんなやり取りは、少しばかり耳を貸してくれという語りかけのようであり、一人じゃ生きられないからちょっと寄り添っていい? というSOSのようでもある。
-
-
新世界リチウム
この指とまれ
新世界リチウムは、松野康平(Vo&Gt)千葉龍太郎(Ba)石川慧(Dr)からなる、3ピースバンド。2006年に結成し、吉祥寺・新宿・下北沢などで活動を始め、2009年6月にシングル『ひまわり』でデビューした。そして2010年3月17日1stアルバム『この指とまれ』がリリースされる。これを聴いてまず思ったのが、昔自分が書いた日記を読み返したような感覚を思い出してしまった。なんだか不器用で、まっすぐさと正直な感情が素直に表現されている詩の世界観を自然のまま着飾ることもなく、パンク・ロックなサウンドで体現している。1曲目の「ヒューマニズム」の出だし「俺はこの手で君を殺す」と歌う松野の力強くも儚い歌声が印象的。
-
-
死んだ僕の彼女
underdrawing for three forms of unhappiness at the state of existence
前作『ixtab』が口コミのみで全国各地に拡がり話題になった、ノイズ・ポップ・シューゲイザー・バンドの2年ぶりの新作。彼らの持ち味である艶やかなフィードバック・ノイズに、日本人の専売特許である言葉の輪郭を際立たせ彩るメロディの融合――特に今作の冒頭の3曲はこのバンドのノイズ“ポップ”たる所以をまざまざと感じさせる、非常にメロディが強調された楽曲が並ぶ。4曲目の「nasty mayer’s daughter」では、幽玄なノイズの向こうに見えるドリーミーなメロディが美しく展開し、そして今作のハイライトとも言える6曲目の「aki no hachiouji」でクライマックスを迎える。“死んだ僕の彼女”その名に違わない詞の世界観も含め、是非このバンドの空気を感じて欲しい。
-
-
℃フーズ
SUNRISE CITY
シーフード・ヌードルのCM出演を目指して日々精進(?)の、魚介系バンド℃フーズ(シーフーズ)の初の全国出荷(流通)。アー写含め、めちゃくちゃ魚推しなのにジャケが猿だな......と思うけどその答えはこの盤を聴けばわかります。彼らが掲げる"ダメな日常も笑って過ごすための音楽"の通り、彼らの鳴らす音は特別なテクニックや難解な展開から生まれるものではなく、日々のささやかな幸せ――自転車に乗ってて1回も信号に引っ掛からなかったとか、陽だまりの中でうとうとしてしまうとか、たまたま入ったお店のごはんが美味しかったとか、そんな日常の素朴な出来事が何よりも心地よいことだと語るようでもある。根反 慧(Vo/Gt)の歌うもやもやした気持ちや喜怒哀楽も、音によって救われている印象だ。バンドの核心を表す全4曲。
-
-
シーブレッド
MAYONAKA E.P.
"ツインベースピアノエモバンド"を標榜し、2本のベースとピアノ、ドラムという他にはなかなか見られない編成で活動するシーブレッド。彼らの変わっているところは、こうした特異なバンド形態にありがちな演奏者のエゴを目一杯出した演奏ではなく、歌がクリアに聴こえるサウンド作りをしているところにある。リード・ベースがエフェクティヴな音像で主張しているにもかかわらず、井上龍一(Vo/Key)の歌声はしっかりと立っている。そして、そのぶんあまりにも等身大の肉声といった印象を強く受ける。だからこそ「Normal」で歌われているテーマ"普通"という言葉が切実に響くのだ。ブックレット型CDという変則的な形でのリリースもあり、今後の展開が気になるバンドだ。
-
-
ジェッジジョンソン
テクニカルブレイクス・ダウナー
2011年より、藤戸じゅにあ(Vo/Gt/Prog)の病気療養のため活動休止していたジェッジジョンソンが、新体制となってニュー・アルバムをリリース。蓮尾理之(Key/Prog/ex-School Food Punishment)、西川響(Ba/Prog)が正式加入し、ギターとドラムのサポートを迎えた5人編成。マニアックな(ときに変態的な)サウンド志向を持った、そしてプレイヤーとしてもテクニカルな布陣である。もとより、目の前に幻想的だがとてもリアルで美しい別世界を作りだすかのような、密度の濃い、構築的なサウンドが、人力でさらにパワー・アップしている。サウンドのダイナミズムやアンサンブルに圧倒されながらも、その真ん中には柔らかで、普遍的な輝きを持った歌が貫いている。得体の知れない化け物のようにうごめく音ですらも、ハミングするような親密さで聴かせてしまうから、このバンドは怖い。
-
-
中嶋イッキュウ
DEAD
女性の持つ執着心や独占欲などを時にホラー寸前、時にとても甘やかに描く、中嶋イッキュウの作家性が際立つソロ作。ドロドロした愛憎や欲望が軸にありつつ、どこか潔いまでに突き詰めた音楽性がテーマを陳腐化させないのは参加メンバーである山本幹宗(Gt/好芻)、佐藤征史(Ba/くるり)、あらきゆうこ(Dr)、新垣 隆(Pf/ジェニーハイ)の曲への深い理解とスキルのなせる技だろう。甘くレイジーなムードのオルタナ・ナンバー「DEAD」に始まり、in the blue shirtのリミックスがアンビエントなムードの「甘口 -DEAD remix-」、ナイヤビンギ風のトラックが新鮮な「哀願」、新垣の狂おしいピアノの旋律がドラマチックな「マンション」、シンプルで哀切なメロディと厚いアンサンブルの「MILK」と、いずれも中嶋の作家性と声の表現力を存分に満喫できる。
-
-
ジェニーハイ
ジェニーハイ
川谷絵音、中嶋イッキュウ(tricot)、小籔千豊、くっきー(野性爆弾)、新垣 隆によるバンド ジェニーハイ。風変わりなリズムを奏でる鍵盤に惹きつけられるものの、それだけが浮くことはなく、粒立ちのいいリズム隊が好アシスト。異形の展開をさらりと進むヴォーカルの気品も堪らないものだ。そしてまたもや、川谷の作るメロが頭から離れない。一度耳にしたら最後、してやられるしかなくなるのが悔しいところだ。バンドは足し算ではなく掛け算だとよく言うが、まさにそのとおり。どう考えたってこの5人でしか生まれ得ないアンサンブルにワクワクが止まらない。しっとりとした質感と想定外のカオスが一体となった「強がりと弱虫」が特におすすめ。後半に控えるソロ回しにも注目だ。
-
-
時速36km
輝きの中に立っている
ネットの勢いが盛んなこの時代に、ライヴ・シーンからその名を響かせつつある頼もしいバンドが、結成4年半にして投下する初フル・アルバム。"思い出に負けないような日が来るまで生きる"の詞が今にもリンクする「動物的な暮らし」、6分半にノスタルジーを詰め込んだ「素晴らしい日々」など既存6曲に加え、自分流のロックンロールを泥臭く叫ぶ「アンラッキーハッピーエンドロール」、eastern youthやbloodthirsty butchersの影響を色濃く感じる「鮮烈に」など未発表曲も9曲収めた。洒落てもいなければ、"バズる"ようなコミカルさもない。ただ過ぎゆく時の中で感じる少しの変化や寂寥、光を愚直に歌にし、無鉄砲に曝け出しながら生きる。ガツンとくる音楽を求める人には感じるものがあるはず。
-
-
時速36km
最低のずっと手前の方で
2016年結成、昨年初めて全国流通を果たした4人組が店舗/会場&通販限定EPを同時発売した。その内店舗販売となる今作収録曲は、一貫して夜道を歩きながら頭の中を巡る思いがありのまま吐き出されたような歌詞で、それを轟かせる仲川慎之介(Vo/Gt)の声がこれまた質朴。と言ってもむやみに泥臭いわけでも厭世的なわけでもない。ただひたすら飾らない言葉と声だからこそ現実的で、感情を煽るのだ。煩悶する思いに対し"まともな夜明けだ"と俯瞰しながらも、"誰にだってあることだからって苦しくないわけじゃないでしょう"と寄り添う「銀河鉄道の夜明け」。歌と共に徐々に扇情的になるギターも印象的な「真面」。「素晴らしい日々」は後半のコーラスがいいアクセントで、ライヴで一緒に歌ってみたくなる。
-
-
ジャンクフジヤマ
PROUD/EGAO
かの村上“ポンタ”秀一もその歌声に惚れ込んだというシンガー・ソングライター、ジャンクフジヤマの両A面2ndシングル。「PROUD」では力強く鳴り響くホーンが、「EGAO」では爽やかなキーボードやムーディーなトランペットが、それぞれ鮮やかな色彩を描く、躍動感のある上質なシティ・ポップ。そこに乗せられるフジヤマの、清涼感の中にもアクの強さの宿った歌声が実に心地いい。村上が参加したTrack.3「Affection」やTrack.4「この街~meet again~」のライヴ音源も味わい深い。ただ、それぞれの演奏や歌の完成度が高いぶん、どこか優等生過ぎるきらいもある。もっと音楽的な実験性が前面に出てきてもいいとも思う。この声やメロディは、そう簡単にかき消されるものではないだろうから。
-
-
ジュウ
-120
ジュウの3枚目となるEPが到着。ロクでもない高校生活を赤裸々に振り返る「HIGH SCHOOL ROCK~青春真っ逆さま~」で始まり、底辺で光ってやるという反骨精神を爽やかなサウンドに乗せ、ジュウなりのポジティヴ・ナンバーに仕上がった「THIS FREE」や、20秒に強烈なエネルギーを詰め込み社会への怒りと共に爆発する「殺す」など、少年のように、まっすぐで時に鋭い眼差しが随所に光る。そんな本作を締めくくるのは、思春期の"行き場ない熱い苛立つ心"を忘れないでと歌う「卒業」。"青春"や"大人"を冷めた目で見ていたあの頃のリアルな記憶が刻まれたリリックは、今まさに青春時代を生きる若者にも、社会に染まっていく大人たちにも響くことだろう。自由になりたいという青い叫びが痛いほど突き刺さる。
-
-
ジュウ
ハードロマンチッカー
社会に"銃"口を向け、反骨精神を燃料に"自由"を追い求める。そんな無骨な生き様を曝け出すロック・バンド"ジュウ"の2nd EP。遠藤貴義(Dr)を正式メンバーに迎え勢いづくバンドの"今"の熱量をぶつける「暴力」で幕を開ける本作は、HOTVOXのRIKによるラップをフィーチャーするなど、新たな挑戦が見て取れる。中でも特筆したいのは、ジュウ流のラヴ・ソングとも言える「luv」や「110」。持ち味のグッド・メロディが映える爽やかなサウンドはまさに新境地だが、そこに乗せられたのは時に無様なリアルも映す彼らならではのリリック。"貧乏バンド"と揶揄し赤裸々に綴られた葛藤や、それでも"君がいないとダメだ"と歌うまっすぐな思い。"尖ってて優しい"バンドマンの生き様にグッとくる。
-
-
ジュウ
CHAKA
昨年タカナミから改名し、流行の洒脱なサウンドなどどこ吹く風、独自の美学を貫く痛快無比な楽曲やパフォーマンスでライヴハウスを沸かせてきているジュウが、1st EPをリリース。冒頭からライヴが観たくなる、いい意味で暑苦しいショート・チューン「スニッチ坊や」に始まり、ざらついたサウンドとスピード感、"汗びっちゃりどう生きる?"という独特な言葉のセンスが光るキラーチューン「赤いZ」が続く。轟音と胸を熱くさせるグッド・メロディの中で、フロントマン 髙浪 凌の少しかすれた歌が繊細な部分も、それを吹っ飛ばそうともがく姿もあぶり出す「泣き出す雨は新宿で」も最高。取り繕ってきれいに生きなくてもいい。荒っぽくても今のリアルな全部を出し尽くす。そんなバンドの姿勢が胸に突き刺さる。
-
-
十五少女
キミノイル世界線 feat. another anima
エイベックス/講談社/DNPによる音楽×仮想世界プロジェクト、十五少女。同プロジェクトによる新曲「キミノイル世界線 feat. another anima」は、2022年8月にリリースされたEP『ASTRONOTES』で聴かせたパンキッシュな音像とは異なり、打ち込み主体のサウンドの上で鋭くも透き通った歌声が美しく響き渡るナンバーになった。十五少女の歌声の主は、5人組女性ヴォーカル・グループ mzsrz。本楽曲の作詞/作曲はBTS、安室奈美恵などを手掛ける岡嶋かな多、トラックメイクはDa-iCEやKis-My-Ft2などを手掛ける一方で自身もアーティストとして活動するDazstaが担当している。またポエトリー・リーディングには初めて声優陣が参加。十五少女ならではの世界観にどっぷり浸ってほしい。
-
-
Magic, Drums & Love
Love De Lux
住所不定無職のユリナ、℃-want you、ザ・ゾンビーズ子に、撃鉄の田代タツヤ、ヴォーカリストのWhite Fire Shirohiの5人が"魔法とドラムと愛"の名のもとに結成した通称"マジドラ"。キュートなキャラメル・ヴォイスと力強いソウルフルな歌声を響かせる今作は、EARTH, WIND & FIREを彷彿とさせるバンド名どおり、ファンキーでグルーヴィなサウンドが最高にドープな1枚。THE CLASHのカバー、住所不定無職の(ある意味)セルフ・カバーも収録し、フロアを踊らせるマジック・ナン バーが出揃っている。昨年アナログでリリースされていた「"Fushigi" Tonight」をラスト曲に、カーテンコールのような大騒ぎするコール&レスポンスで終演する。これはライヴも体感してみたい。
-
-
住所不定無職
One Happy,Two Sad&Three Pretty Things
キャッチーなメロディとオリジナリティ溢れる歌詞で、独自の世界観を表現する住所不定無職が、新メンバー℃-want you!を迎え4人編成となって初となる最新シングルをリリース。堂島孝平プロデュースによるポップなディスコ・チューン「宇宙のYeah!!!」は、彼女たち特有の舌ったらずでハスキーな歌声とラップのかけ合いが、何とも可愛らしくクセになる。ちょっぴり切ないメロウ・ポップ・チューン「ジュリア!ジュリア!ジュリア!」や、軽快なビートをかき鳴らす「マージービート聴かないで!」、爽快なアッパー・チューン「シャ!シャ!シャ!シャイン・ア・ライト!」など、どれもトキメキ満載、ボリューム満点の1枚となっている。さらにポップに進化した彼女たちのロックンロールは、鳴り止まない。
-
-
住所不定無職
トーキョー・ポップンポール・ スタンダードNo.1フロム・トーキョー!!!
驚いた。住所不定無職、大躍進である。これはバンドにとって過去最高作といってもいいだろう。その主たる要因は、人選の成功によるところが大きく、プロデュース陣との相性が抜群なのだ。ヒダカトオル参加の「MAGIC IN A POP!!!」の、キラキラしたファンシーな音作りと、甘くラブリーなヴォーカルにデコルテされた、激ポップなメロディ。カジヒデキ参加の「キスキス」は、全てが余すことなくドリーミーかつガーリーな仕上がりで、とことんロマンチック。ポップのスペシャリストの魔法によって、本作はそれ自体がマスコットのようにキャッチーでポップな存在感を持っている。これって、更にポップなロックンロール?ノンノン、これは“ポップンポール”。隅から隅まで、これでもかというぐらいポップに弾けたロックンロールなのさ。
-
-
住所不定無職
JAKAJAAAAAN!!!!!
アニメ声のような舌ったらずで甲高い声と、カラフルでファンシーなルックス。そして、とことんキュートでポップ、全てがキャッチーな音。目に入ってくる情報のままの音が鳴っていると思っていたが、ある瞬間はっとした。その“息づかいのリアルさ”にはっとしたのだ。拙く頼りなげに歌う声と、それに反して真っ直ぐでぶれない女の子の歌としてのリアリティがあった。それは、チャットモンチーの「恋愛スピリッツ」を初めて聴いた時のような感覚で、ドキッとすると同時に少しヒヤッとする怖さがあったのだ。そこに気がついた時、この全てがマスコットのごとくプロモーションされているガールズ・バンドが、ものすごくどっしりしたロック・バンドに見えてくるのです。可愛いだけじゃない、女の子って怖いんですよ~。
-
-
女王蜂
火炎
「HALF」ではソリッドなギター・サウンド、「催眠術」ではナイヤビンギをエレクトロニクスと融合。センスと洗練が極まりつつある女王蜂の新曲は、90年代後半に盛り上がり、最近再び注目の2ステップに、今のエレクトロニックな要素や、笛や鼓など和の上モノをスリリングにビルドアップした強烈な一撃だ。何よりアヴちゃん(Vo)のラップの切れ味が素晴らしく、このミクスチャー具合は今の日本で群を抜いて強い。手塚治虫の名作をリブートしたTVアニメ"どろろ"のOPテーマとして初めて聴いた人は、一瞬全体像が掴めないかもしれないほど、ユニークな構造を持った曲だろう。c/wには「催眠術」の女王蜂流アコースティック・バージョンと、「告げ口」を今のサウンド志向にリアレンジした「あややこやや」を収録。
-
-
女王蜂
HALF
人間の血と人間を食らう喰種(グール)の血が混ざった主人公が、理性と食欲の狭間で戦うTVアニメ"東京喰種:re"のEDテーマに、"ジェンダーレス"という言葉がついて回る女王蜂のニュー・シングル「HALF」が起用された。さらにカップリングが「FLAT」と来たら、そこに痛烈なメッセージを感じざるを得ない。そして、いざ再生してみるとたしかに怒っている。しかし、それは特定の人や概念に向けた批判をただぶちまけたものではない。ヒップホップやロック、ディスコなどの音楽的背景を奔放なセンスでミックスしたサウンドも然り。決めつけないことを強さにできたからこそのオープンな魅力は、様々な考えを持ったひとりひとりの、様々なシチュエーションにハマることだろう。
-
-
女王蜂
Q
サウンド・プロダクションからアナクロさが抜け、あらゆる人に接点のある物語に変化した前作『奇麗』から、さらにバンドの地力でエレクトロニックなダンス・チューンなども実現した今回の『Q』。ドライで透徹した視点がアヴちゃんとも共通するDAOKOを迎えた「金星 Feat.DAOKO」、濃厚な内容と踊れるビートが新しい「DANCE DANCE DANCE」や「失楽園」。そして本作の肝となる存在の心象が綴られた「Q」や、生きる強さが描かれる「雛市」。しかしそれらは強いだけでなく、同時に切ない。なお初回盤には、本作の内容にリンクした50ページに及ぶアヴちゃんによる書き下ろし漫画を含むブックレットが付属。彼女自身が捉えた"Q"の物語を音楽とは違う角度で読んでみるのも楽しみのひとつだ。
-
-
女王蜂VS獄門島一家
金星/死亡遊戯
女王蜂と、女王蜂のヴォーカルを務めるアヴちゃん、中村達也、KenKen、長岡亮介によるスペシャル・ユニット"獄門島一家"のスプリット・シングル。キラキラのダンス・ビートに乗って軽快に踊る「金星」、溢れ出す欲望を艶やかに描いた「く・ち・づ・け」の2曲は、自由でありながらもどこか救われない切なさを感じさせる女王蜂ならではの楽曲。獄門島一家は、個々が培ってきたスキルを遺憾なく発揮しつつもユーモア溢れるカラフルな音色で「シーサイドスーサイド」、「死亡遊戯」の2曲をスマートにやってのける。この仁義なき戦い、勝敗なんてつけられるわけもなく。というか、右から左から攻められて身動きできなくなっているこちらの完敗だ。そして、そんな私を見てアヴちゃんがしたり顔をしているような気がした。
-
-
女王蜂
奇麗
結局、人は独りで生まれ、独りで死んでいくのだと。結局、生きるということは孤独と共にあることなのだと。そして本当の孤独とは、他者を感じることでしか得ることはできないのだと、この女王蜂、3年ぶりのアルバム『奇麗』は伝えているのではないか。随所で聴ける狂騒的なビートも、息をのむほどの透明感を持ったメロディも、僕にはひとりの人間がその命の奥底にあるものを吐き出した、エグくも美しい独白に聴こえる。そのぐらい、ここに刻まれた音と言葉の筆致は繊細で、悲しくて、強い。お互いを求め合い、言葉と肌を擦り合わせれば合わせるほどに、傷つき、傷つけることでしか生きられない人間という愚かしい生き物のサガ。それはなんとも奇怪で、麗しい。その真実を暴き出したこのアルバムは奇麗だ。本当に、奇麗だ。
-
-
女王蜂
ヴィーナス
インディーズ時代からバズを巻き起こし、2011年のメジャー進出以降は音楽業界以外でも話題を集め、しかし2013年には活動休止。特定の音楽性やシーンの中で語られることもなければ、フォロワーも生まれない。マイノリティであることを表現の理由にしているわけでもない。では、女王蜂というバンドの本質とはどこにあるのか? 本作は活動再開後最初の音源であり、バンド初のシングル。表題曲の「ヴィーナス」はテレ東系ドラマ"怪奇恋愛作戦"(監督はケラリーノ・サンドロヴィッチ)のOPテーマ。この狂騒のダンス・チューンを聴いてわかることは、このバンドはただただ自分たちの欲望に忠実であるということ。その獰猛でエゴイスティックな美しさに、僕らは踊らされるしかないということ。そりゃ、フォロワーなんて生まれるはずもない。
-
-
ジョゼ
honeymoon
前作『YOUNGSTER』に続き、GRAPEVINEやくるりを手掛けた根岸孝旨をサウンド・プロデューサーに迎えて制作を行ったミニ・アルバム。まず1曲目の「モラトリアム・ラヴ」から、飛び込んでくるアンサンブルの迫力が前作にも増して進化を遂げている。ダビングを極力減らしたという今回の音は、3つの楽器の音がソリッドにせめぎ合う、今のバンドのありのままを刻印する音になった。全体的に跳ねたビート感があって、性急に突き進むだけでないリズムが、メロディに陰影をつける。羽深創太(Vo/Gt)の描くナイーヴで、物語性に富んだ歌の世界と、でもまっすぐに心の有り様を伝えたいんだとシンプルに磨いた言葉が、生々しく放たれるサウンドでポンと前に押し出された。鮮やかで、パワーに溢れた作品だ。
-
-
ジョゼ
YOUNGSTER
ミニ・アルバムとしては3作目となるジョゼの『YOUNGSTER』にいるのは、まだ何者でもない少年。どうなりたいのか、どうしたいのか、あるいはどうしたらいいのかにやきもきしたり焦ったり傷ついたり。同時にその無色透明でいられる猶予みたいなものを楽しんで、"ふうん"とちょっと斜めに世の中を観察したりもしている。そこで感じたものが、音になって言葉になった。やさしいメロディに乗せて歌われる心の機微に、かつて抱えていた感情がうずいたり、今の気持ちとフィットする。いわゆる"ギター・ロック"の正統派たる、美しい佇まいだ。揺れる気持ちの繊細さや、物思いに耽る首の角度もなんとか音にしたいと思うような、細やかなアレンジやアンサンブルが、彼らのギター・ロックの姿勢/背骨をしっかりと支えているのが、肝。
-
-
ジョゼ
Sekirara
音楽に何を求めるかは人それぞれだ。娯楽? BGM? あるいは芸術? ジョゼのフロントマン、羽深創太は、音楽を自己と向き合う場として求めている。自分自身が裸になれる場所として。故に、彼の作る音楽はとてもパーソナルな質感を持っている。そんな彼の音楽への向き合い方に対して、マスターベーション的であると拒否反応を示す人もいるかもしれない。しかし、そんな人にこそ、この1stフル・アルバム『Sekirara』を聴いて欲しいと思う。"人"が曝け出された音楽の、その剥き出しの美しさに息を呑むだろう。そして気づくだろう。彼は何よりもあなたに、音楽の中で裸になってほしいと願っていることに。一体感を増したバンド・アンサンブル。それゆえに解放されたメロディと歌。とても切実な音楽が鳴っている。どうか出会って欲しい。
-
-
ジョゼ
Nocturne
2010年に結成された3ピース・バンド、ジョゼの、今年5月にリリースされた『Aquarium』に続く2ndミニ・アルバム。冒頭を飾る「湖とノクターン」から、3ピースとは思えないその深淵で雄大なサウンドスケープに引き込まれる。水面を反射する日光のようにキラキラと輝くメロディと、確固とした足取りで深い地の底へと続く階段を降りていくようなビートに乗せて羽深創太は歌う。"僕を裏切る前にまずはそうだ 湖へおいで"―― そこからは、日常を切り取った現実的な風景描写を基調としながらも、ふと気がつけば水の底をゆらゆらと漂うよな幻想的な感覚が時折顔を出す独創的な世界が繰り広げられる。THE JESUS AND MARY CHAINやSyrup16gのように獰猛な野生と甘美な夢が交錯する、魅惑的な6曲が並んでいる。
-
-
LONE×ジラフポット
Black's ONE
白熱のパフォーマンスで関西のライヴ・シーンを沸かす2バンドのスプリット作。収録曲は、衝動と美しさが絶妙に入り混じるジラフポットの「Back Stab」と、歌を聴かせつつライヴ映えするLONEの「スプリットシングル」、そして共作となる「Black's ONE」。ジラフポット中野大輔(Gt/Vo)がベースとなる曲を作り、LONE山本浩之(Dr)が編曲、LONE牛首(Ba)が歌詞を作り、中野とLONE毛利翔太郎(Vo/Gt)がメロディを持ち寄って完成させた「Black's ONE」は、耳馴染みの良さと疾走感とスケール感が見事に共存し、アンセミックなコーラスを背負ったシャウトは爽快感も抜群だ。また、毛利には山本が、中野は自身でペイントとしたというジャケ写のふたりにも注目を!
-
-
ジラフポット
Twelve Typewrite
前作『The Quiet Cube』から約1年4ヶ月ぶりとなる今作は、自主企画イベント"VS. Everything"でデモ・バージョンを無料配布した「United States of Vampire」、「青を込めて」、「getaway」の3曲を含む全6曲を収録。中野大輔(Gt/Vo)のハイトーン・ヴォーカルと、豪快で爽快なスケール感のあるサウンドが心地よい「青を込めて」や、ニュー・ウェーヴっぽさのある「Sweat shop」など、音源としての聴かせどころもあれば、ダークでメタリックな質感と異様な迫力のあるコーラスによってライヴで観客を巻き込んでいく様子が目に浮かぶ「United States of Vampire」では、ライヴ・バンドとしての評価の高さを知ることができる。また、過去作も含めて洋楽名盤っぽいアートワークも興味深い。
-
-
ジラフポット
The Quiet Cube
4月にリリースしたライヴ会場限定シングルの表題曲を含む、全8曲入りの3rdミニ・アルバム。もともと3ピースという制限にとらわれることなく音源制作をしているバンドだが、今作はさらに自分たちの音楽の質を高めることに尽力したサウンドメイクだ。曲ごとに異なる音楽性を見せるだけでなく音の質感も変化を持たせ、ギターの音色はさらに豊かでカラフルに、リズム隊の音は太く雄大に、精巧且つダイナミックになった。ファンク・テイストのミディアム・ナンバー、エモーショナルに突き抜けるロック、テクニカルなビートと不協和音的なメロディを掛け合わせた楽曲、ダンサブルなジラポ流ポップ・ソング、ブルースなどを経てから聴く、ラストの「ローリングローリング」の等身大のシンプルさが沁みる。
LIVE INFO
- 2025.08.02
- 2025.08.03
- 2025.08.04
- 2025.08.05
- 2025.08.06
- 2025.08.08
- 2025.08.09
- 2025.08.11
- 2025.08.12
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
ASP
Skream! 2024年09月号