Japanese
Permanent vol.8
Skream! マガジン 2018年12月号掲載
2018.10.25 @下北沢LIVEHOLIC
Writer 渋江 典子
Skream!編集部イチ押しのアーティストが出演するライヴ・イベント"Permanent"の第8弾は、弾き語り形式での開催。ircle、WOMCADOLE、LINE wanna be Anchors、鳴ル銅鑼というこれからのロック・シーンを担うであろう4バンドのフロントマンが、バンドでの彼らとはまた違う一面を見せてくれた、特別な一夜となった。
最初に登場したのは、三輪和也(鳴ル銅鑼)。アコースティック・ギターに乗る吐息がかった三輪の歌声は、バンド編成時より色気と艶やかさを増し、フロアを甘く溶かしていく。10月に東名阪で弾き語りワンマン・ツアーを開催したこともあってか、ソロ楽曲の完成度は抜群だ。"男、女、どちらも貧しい生きもの"という言葉のあとに披露されたのは、本日唯一の鳴ル銅鑼の楽曲「不埒な女」。バンドならではの音の厚みがないぶん、日本語特有の奥ゆかしさを持つ歌詞が光り、楽曲の世界をより色濃く描いていく。最後の「大事なコト」では音楽家としての葛藤や決意が溢れ出し、序盤の"音楽は呪いだ"という言葉の意味が少しだけわかったような気がした。
照明も追いつかないほど唐突に演奏をスタートさせたのは、2番手、阿部将也(LINE wanna be Anchors)。1曲目「B with U」でフロアを揺らすと、"常にいろんな欲と戦ってる。いい曲書きたいし、人気者になりたい。欲は麻薬的だね"と話し、「欲望麻薬」へ。ギターと声だけのシンプルなサウンドで奏でるこの曲はより自由だった。阿部の"欲望"を満たしたのだろうか。演奏し終えた直後、"気持ちいいっすね~"と心の声のようなひとり言を漏らしていた。昔の楽曲「WATASHI」や全国未流通の「明日またキスしよう」を披露しながら、"今まであまり光に当たったことがなかった"と自虐的なエピソードをぽろぽろとこぼす。ラストの「人生」には、そんな彼の人生が詰まっていた。
続いては、東京での弾き語りは久しぶりだという樋口侑希(WOMCADOLE)。始まりから「MayDay」の剥き出しのロックンロールでフロアを圧倒する。"今日の昼に滋賀から新幹線で来たんです。東京って街の電車はやっぱ難しいすね、井の頭線ってなんや"と下北沢までの苦労話で笑いを誘う。最近のバンドの活動や滋賀での弾き語りの思い出を話しながら、11月28日にリリースするニュー・シングル『ライター』から「ノスタルジックアパート」を披露。未発表新曲「Kamo river」を歌い上げるなど、弾き語りならではのサプライズも起きた。最後は舌打ち交じりの「馬鹿なくせして」で締めくくった。ギター1本の弾き語りでは樋口の歌声の人間臭さや無防備さが際立ち、こういう不器用な楽曲をいっそう引き立たせる。弾き語りライヴは、いつもと違う魅力が見えるところがとても楽しい。
そしてトリを務めるのは、河内健悟(ircle)だ。"近いな、我慢できる(笑)?"とフロアに謎の問い掛けをし、一気に河内ワールドへと引き込む。弾き語りライヴはバンドよりも自由なのだと言いつつ、自己紹介では"ircleです"と間違えてしまうお茶目さも彼らしい(本人いわく"呪縛"なんだとか)。曲の間に笑顔でフロアに話し掛け、ロック・スター 河内の魅力が全方向に解放されているよう。この日は下北沢の思い出として披露(暴露?)した衝撃的なお酒の失敗談を始め、パーソナルな部分や音楽に対する想いを多く聞くことができた。楽曲にまつわるエピソードとともに届けられる歌はずっしりと心に響き、最近になって気持ちを伝えることを意識し始めたと話す河内が"言葉や気持ちを扱う者としての答え"を詰め込んだという「わかりあうこと」でステージの幕を下ろした。
鳴り止まぬアンコールに応えて、河内が再びステージに登場する。他の出演者を呼び込むと、急遽ircleの「セブンティーン」でコラボレーションするというスペシャルな展開へ。ircleへのリスペクトも込めつつ、それぞれが音楽家として思うがままに歌い上げる。あんなに笑いながら「セブンティーン」を聴くのは、きっとこれが最初で最後だと思う。弾き語りライヴにもかかわらず自然と拳が突き上がったあの景色は、最高にロックだった。
- 1
Related NEWS
LINE wanna be Anchors (28)
Permanent (28)
- 2018.12.14
- lical、ナキシラベ、はまだりな、IN THE POOL、tot出演。来年1/16に下北沢LIVEHOLICにて[Permanent × And.G 合同企画"watershed"]開催決定
- 2018.11.03
- マッシュとアネモネ、11/16下北沢LIVEHOLICにて開催のSkream!編集部企画"Permanent vol.9"出演決定。みきなつみ、Split end、なきごとと共演
WOMCADOLE (198)
- 2023.03.16
- WOMCADOLE、無期限活動休止を発表。5月よりツアー開催
- 2022.12.10
- 大晦日名物イベント"KINDAMA'22-'23〜謹賀魂〜"、全出演者決定&入浴順発表。最終発表はヤユヨと超能力戦士ドリアン、カウントダウンはWOMCADOLEとセックスマシーン!!
- 2022.11.10
- ircle、フル・アルバム『ふるえる』リリース・ツアー第1弾ゲストにkobore、WOMCADOLE、SAKANAMON、Hakubi、メメタァ、Maki、THE BOYS&GIRLS発表
ircle (240)
- 2023.12.22
- ircle、来年5/25地元大分での"HUMANisM"をもって無期限活動休止
- 2023.11.04
- 10周年迎えるLACCO TOWER主催ロック・フェス"I ROCKS 2024"開催決定。第1弾出演者として盟友 マイヘア、BRADIO、kobore、レゴら発表。来年1月より"遠征編"開催も
鳴ル銅鑼 (83)
- 2022.12.17
- 鳴ル銅鑼、カバ(Gt)が来年3/19開催の10周年ライヴを最後に旅に出ることを発表
MUSIC VIDEO
Related DISC REVIEW
-
全国流通こそ約1年4ヶ月ぶりだが、季節ごとに会場限定シングルのリリースとツアーを行うなど、止まることなく活動していたLINE wanna be Anchors。器用さよりも泥臭さ、生々しさの方が立っているのは、全6曲(シングルから3曲+初収録3曲)がバンドのこれまでとこれからを映しているからだろう。"性,酒,音"と書いて"欲望麻薬"と読ませる「欲望麻薬」、「人生」のストレートな響きが特に象徴的だが、音楽に魅せられ表現に身を賭す自らの性(さが)を描くことによって、彼らは、混沌を抱えながら進むバンドの姿勢を改めて提示したのだ。自らターニング・ポイントを作りにいったような気合いが感じられる作品。ここから快進撃が始まることを期待したい。(蜂須賀 ちなみ)
-
初の全国流通盤だった前作『Anchors Is Mine』ではまるでバンドの自己紹介をするかのように様々な表情を持つ曲を収録していたが、今作は自身のバックボーンだという歌謡色の濃い曲が中心となっている。アコースティック・ギターの音色がよく聴こえる曲が多いのも印象的だ。その結果、音の隙間を味わわせてくれるような引き算のアンサンブルが冴えているし、そういうバンド・サウンドによって、阿部将也(Vo/Gt)の艶やかな歌声や節回し、どこか捻れた性格をしている歌詞などが正しく活かされている。この1年間で、バンドの長所や短所をしっかりと自覚することができたのだろう。このバンドにしか歌えない歌は、もう彼らの手の中にある。そのまま突き進んでほしい。(蜂須賀 ちなみ)
-
職業柄"今気になっているバンド"を訊かれることが多いが、この長ったらしい名前を今後は答えないといけないようだ。切り口鮮やかなサウンド。緻密な曲構成&アンサンブル。纏うのは、鈍く光る刃物のように灰色の空気。"君"という二人称が多く登場するにもかかわらず、常に焦燥と孤独を抱えている歌詞。ヴォーカリストがGRAPEVINE好きを公言していると知り少し腑に落ちたが、それでもやはり、年相応の青さと妙な老成感がギリギリのバランスで共存するこのバンドが、どうしても気になるのだ。京都発のLINE wanna be Anchors、本作が初の全国流通盤。現在アンビバレントなバランスで立っているこのバンドが、今後どのように歳を重ねていくのかを見てみたい。(蜂須賀 ちなみ)
-
京都の4人組ギター・ロック・バンドLINE wanna be Anchorsが、初の流通音源としてTOWER RECORDS限定100円シングルをリリースする。正統派ギター・ロックというには少し捻くれているように感じるのは、阿部将也(Gt/Vo)のソングライティングの成す技だろう。一見、決して難しくはない単語の羅列が、哀愁を漂わせるソリッドなメロディ・ラインに乗った途端にドラマティックに加速していく。歌詞がもたらす4分弱のストーリーの起伏に合わせて展開されていくフレーズの構成が実に緻密で、曲が生み出す情景の見たさに何度も再生ボタンを押してしまう中毒性をはらんでいる。静寂と激情を叙情的に表現するスキルは、おそらく今後もさらに磨かれていくであろう。彼らの将来に大きく期待できる、希望的作品。(峯岸 利恵)
-
ノベル・コンセプトアルバムの第2弾。前作『共鳴howRING』が黒ならば、今作は夕暮れのオレンジが似合う、そんなノスタルジックな1枚だ。勢いに頼らないことで必然的に歌の良さや緻密なアレンジといった部分が底上げされた珠玉の全6曲が並ぶ。理想と現実の狭間にいる嘘のない自分を映し出す「mirror」、素顔の自分を求めて闇に沈み込む「夜間飛行」で幕を開ける今作は、とにかく樋口侑希(Vo/Gt)の歌詞が等身大で生々しい。思春期の大切な感情をパッケージした「ラブレター」や、全国を旅するバンド自身のことを綴った「ペングイン」を経て、やがて人と人とを歌で繋ぐ「hey my friend」に辿り着く頃には、自分が何を大切に生きるのか、という人としての帰るべき場所が浮かび上がる。(秦 理絵)
-
新メンバーを迎えたWOMCADOLEが完成させたのは、この時代を戦い抜くという闘争心に満ちたアルバムだ。"ノベル・コンセプト・アルバム"と銘打つ今作。物理的なコミュニケーションが断絶されたこの状況下に、君と僕をつなぐべく制作された作品だという。"必ず会える"と迷いなく伝える「再生」をはじめ、樋口侑希(Vo/Gt)が吠えるように歌う歌詞もストレートだ。全編に貫かれるのは"何があっても生き抜く"という想い。ヘヴィなグルーヴ、歪みを多用した鋭利なアレンジや重厚なコーラスも、その闘争心に拍車をかける。未来が明るいと言える根拠は何ひとつない。だが、"ロック・バンド"だからこそ発信できる希望がある。『共鳴howRING』はそういう覚悟を背負った作品だ。(秦 理絵)
-
吠えろ、挑め、燃やせ――表題曲の約4分、一貫してそう猛々しく叫ぶWOMCADOLEは、相変わらず手加減というものを知らないバンドだ。"いつか差し込む/あの光を信じろ"と強引なまでに我々を奮い立たせる気迫は、かつての当たり前を失い絶望と隣り合わせの今の時代に文字どおり"一閃の光"であり"絶望を壊すシンボル"になり得ると確信した。そんなニュー・アンセムに加え、ディストーションの利いた骨太な「YOU KNOW?」と、一転して大人の色香を醸す「doubt」を収録した今作は、改めてフィジカル勝負なロック・バンドとしてのタフさも感じた1枚。吠えろと煽られて叫び、挑めと焚きつけられて拳を上げたい。彼らのせいで、熱狂のライヴハウスにどうしようもなく帰りたくなった。(岡部 瑞希)
-
"今宵零時"から"黎明"へ――メジャー・デビュー作品であり約1年8ヶ月ぶりのフル・アルバムは、名実ともに"滋賀のスーパー・ロック・バンド"を証明する作品と言っていい。信念をより堂々と強固に打ち立てた「FLAG」を筆頭に、鋭利なギター・ロックからダークなオルタナ、フォーク・ソング、ストリングスの効いたバラード、ダンス・ナンバーなど、音楽性はさらにバラエティ豊かに。これまで持っていた純粋性、叙情性、鮮烈さ、洒落っ気が、枠にとらわれない表現に落とし込まれることで、彼らの人間性や精神性をより明確に示すことに成功している。バンドの資質を余すところなく詰め込んだ全13曲。今後も続く彼らの歴史と人生の中でも、故郷のような意味を持つ作品になるのではないだろうか。(沖 さやこ)
-
好機を手にしようとする人間は、風を読みそれが訪れるのを虎視眈々と待つ者、がむしゃらに探し続ける者の、大きくふたつに分けられると思う。鋭い眼光を持つという意味では共通しているが、現在の彼らは後者だろう。狼煙を上げ、満身創痍で泣きじゃくりながらも小さな心の鍵を開け、何がなんでも"大きな野望を鳴らせる戦場"への切符を掴みにかかろうという闘志が燃えたシングルが完成した。今はまだ恐怖の渦中でそれを掴めていないからこそ、闇と入り混じる炎の色が切実にこちらの鼓膜へと訴え掛ける。弱者による未完成であり最強の宣戦布告は、今後さらに火力を高めていくことを予感させた。c/wのマイナー・キーが印象的なロック・ナンバー、ソウル・バラードと、3曲すべてに進化途中のバンドの姿が刻まれている。(沖 さやこ)
-
4曲入りシングルから約半年でリリースされる13曲入りのフル・アルバム。もともと各プレイヤーが持つラウドロックやポスト・ロックなどの影響が垣間見られるが、今回はオルタナやブルースなどのアプローチも。青さの香る楽曲、黒く衝動的な楽曲、感傷的な楽曲だけでなく、シニカルなユーモアの効いたものもあり、表現方法を拡張すべくトライしていることが窺える。2010年代後期のギター・ロックの主流に収まりきらない4人の個性、その4人が作り出す歪さは紛れもなく彼らの武器。それを磨くだけでなく、成長と変化の真っ最中であるという事象をそのままコンパイルした、彼ら史上最もタフで火力の高い作品に仕上がった。(沖 さやこ)
-
現在のメンバーが揃ってからのWOMCADOLEは、湧き起こった感情を嘘偽りなく、余すことなく音楽と演奏に落とし込めるバンドになった。今作に収録されている4曲は聴き手目がけて剛速球を投げつける火の玉のようだ。なかでも「アオキハルヘ」は樋口侑希(Vo/Gt)の過去の恋心とそれに対するいまの想いが強く結びつき、彼らの生々しい青さとしなやかな色気が十二分に出た楽曲である。滑らかなベースとラウドロックさながらのエネルギッシュなドラムが作るリズム・セクションも、繊細且つ豪快な樋口のマインドとは抜群の相性。ひりついたギターもこちらの胸ぐらを掴むように鬼気迫る。全員が全員主役と言わんばかりに暴れまわることができるのも、互いのリスペクトがあってこそだろう。まだ見ぬ青き春へと走り出した彼らの行方に想いを馳せる。(沖 さやこ)
-
2015年12月、突然のメンバー脱退/活動休止を発表。そして約半年間の沈黙を破り、新メンバーを迎え再び歩き始めた彼らの"もう止まらない"という思いが確固たるものであることを、今作が証明してみせた。"僕らは、生きているんだ"と叫ぶ「アルク」から始まる、誰もが左胸に持つ"15cm"を捜す旅。一貫したテーマを持つ8曲はひとつの物語のようで、展開を追うごとに少しずつ光が射し、そしてラストの「唄う」で辿り着く結末――"唄うよ、あなたとの日々を"という、バンドの迷いのない答えに胸がすく思いがした。樋口侑希(Vo/Gt)が全身全霊を懸けるようにして絞り出す歌に宿った思いの強さは、今作を聴く限りでは正直これまでの比ではない。"誰かの光になる歌を歌い続ける"。彼のその意志は、足を止めていた間により揺るぎないものになったようだ。(松井 恵梨菜)
-
大人ってわかってくれない。いくら苦しい、つらいって言っても"若さ"のせいにして片づけちゃう。もちろん、その通りなのかもしれないけれど。そんな不安定な心に全力でぶつかってくるのは、滋賀発の4ピース、WOMCADOLE。彼らの初の全国流通盤となる今作は、シンプルなギター・ロック、だけど驚くほどにエモーショナル。20歳になったばかりの樋口侑希(Vo/Gt)が紡ぐ等身大でまっすぐな歌詞が印象的なTrack.2「ドア」やTrack.6「ハタチノボクへ」、声の限り歌うTrack.4「少年X」には、"伝えたい"という思いが人一倍詰まっている。"閃光ライオット2013"など多くのオーディションのファイナリストまで選ばれるも、あと一歩届かずだった彼らが、それでも、溢れんばかりの想いを原動力に完成させた今作は、多くの人に届くはず。WOMCADOLEの快進撃は、ここから始まる。(増田 思織)
-
ircleが約2年半ぶりとなるフル・アルバム『ふるえる』をリリース。オープニングからタイトなビートが高揚感を駆り立てる「風穴」をはじめ、曲名からも遊び心が垣間見える「ダルマオープンチャクラゲート」、軽快なシャッフル・ビートで展開する「暖炉の灯」、東京オリンピックどころじゃなくなった2020年春を歌った「2020」など全10曲が収められる。全体的に奇をてらうことなく、アレンジ/歌詞ともにircleらしいシンプルさを研ぎ澄ました作風が心地よい。なお、"HUMANisM盤"には5月に地元の大分県別府市で開催した主催イベント"HUMANisM~超★地獄編2022~"のドキュメンタリー&ライヴDVDが付属。結成21年を迎えたロックンロール・バンドの今を凝縮した記念碑的な1枚となっている。(山田 いつき)
-
ライヴの熱がぐんぐんと上がってきたタイミングでリリースする3rdフル・アルバム。エモーショナルなロックを中心に、ハードコアもバラードも飲み込んだ多彩な全10曲は、ミニ・アルバムの発売を重ねながら磨き上げてきた曲作り、音作りのスキルの賜物だ。胸に突き刺さる剥き出しの感情と共にバンドの底力を今一度アピールしている。つまり、エモいだけのバンドじゃないということ。自らのステートメントを掲げながら、新たなグルーヴを追求した「ホワイトタイガーオベーション」を冒頭に持ってきたのは、バンド自身が転機を感じているからだ。"MURO FESTIVAL"も主催する渋谷TSUTAYA O-Crestの店長、室 清登が始めた新レーベルの第1弾。ここからircleの新たな時代が始まる!(山口 智男)
-
カントリー調の「ねえダーリン」、前作に引き続きピアノを使ったスロー・ナンバー「Heaven's city light」といった曲も中盤に収録しつつ、全体としてはヒリヒリとした感覚も含め、エモコアなんて言いたい激しさが戻ってきた印象がある。やっぱり彼らはこうでなきゃ。レクイエムと思しき「ばいばい」が、激しさの中に切なさが滲む曲調になったことに加え、歌詞にあえて汚い言葉を使ったところも彼ららしい。じゃあ、原点回帰なのか? いや、2分足らずのハードコア・ナンバーとポエトリー・リーディングの組曲とも言える「アンドロメダの涙」と「ペルセウスの涙」が新境地を思わせることを考えると、そうとも言えない。ircleは常に転がりながら前に進んでいる。そんなところが一番、彼ららしい。 (山口 智男)
-
2017年に、同郷大分の後輩SIX LOUNGEとスプリットCD『地獄盤』をリリースし、全国ツーマン・ツアーを開催したircle。そのツアー・ファイナルでリリースを発表したミニ・アルバムがついにリリースされる。切羽詰まったところから生まれるフォーキーな歌と爆音のバンド・サウンドというircleらしさは相変わらずながら、これまで以上にポジティヴなヴァイブスが感じられるのは、ピアノやオルガンも使ってアンサンブルの幅を広げることに挑んでいるからか。"ラララ"という合唱コーラスを加えたリード曲の「あふれだす」(Track.2)は、シンセを使ってアンビエントな音像を作り上げた「Sunday morning relight」(Track.5)の挑戦とともに、今後何かを変えていきそうだ。(山口智男)
-
ともにライヴハウス・シーンで人気を伸ばしている大分県別府市出身の先輩後輩バンドによるスプリットCDが、後輩であるSIX LOUNGEから話を持ち掛け、実現したそうだ。それぞれに新曲を2曲ずつ提供している。そのSIX LOUNGEはともにストレートなロックンロールの「STARSHIP」、「STRAWBERRY」で爽やかさと向こう意気が入り混じる個性をアピール。一方、ircleは「瞬」、「HUMANisM」の2曲で、それぞれ2ビートと言葉を畳み掛ける歌という新境地にチャレンジ。なぜ自分は歌うのか、何を歌うべきなのかというテーマと改めて向き合った歌詞が胸を打つ。別府の観光名所、地獄めぐりに由来するおどろおどろしいタイトルとは裏腹に、激しい演奏と詩情が交差する美しい1枚だ。(山口 智男)
-
前作『光の向こうへ』からわずか4ヶ月でリリースするニュー・ミニ・アルバム。自分たちを知らない人たちにも興味を持ってもらうことをテーマに間口を広げることに挑んだ前作を踏まえたうえで、改めてircleらしさをアピールする全6曲。メンバー自ら純度100パーセント以上のircleらしさが感じられると語る「orange」では、弾き語りのフォーク・ナンバーがエモーショナルなガレージ・ロックに転じるアレンジがドラマチック。メンバーの実人生から生まれた言葉の数々とともに切なさ、悲しみ、苛立ちを歌いながら、バンドの所信表明とも言えるラストの「Blackbird」では前進する意思を歌い上げているところがいい。曲ごとにバンドが持つ豊かなバックグラウンドを物語る閃きに満ちたアレンジも聴きどころだ。(山口 智男)
-
今年の4月に枚数限定でリリースしたシングル『失敗作』を見事に即完させ、勢いに乗っている4ピース・ギター・ロック・バンド、ircle。そんな話題の同シングルを含んだ1stフル・アルバムをついにリリースする。攻め立てるようなギターに乗せて"俺が俺で無くなるのが嫌なだけ。"(「セブンティーン」)と歌う河内健悟のヴォーカルが印象的で、聴き手に強く訴えかけてくる迫力がある。"iしかない"という彼らの衝動がひしひしと音を通して伝わってくるようだ。型を崩すことで"今ある世界に新しい風穴をあける"というバンドの思いのもと、今のロック・シーンに新しい旋風を巻き起こしていくことだろう。(齋藤 日穂)
-
東京を中心に精力的なライヴ活動で知名度を拡大している別府出身の4ピース・ギター・ロック・バンド、ircle(アークル)。バンド名には円(circle)の持つ完全の象徴という意味合いを、頭文字のCをはずし、型を崩すことで"今ある世界に新しい風穴をあける"という思いが込められている。朗らかなヴォーカルが際立つ軽やかでキャッチーなTrack.1から、攻勢的なギターが炸裂するTrack.2、ポスト・ロック的なサウンド展開とポップネスが融合するTrack.3という畳み掛けは、バンドのアプローチの振り幅を見せつける。激突するように共鳴する各楽器が作り出す空気感は、中学時代から音を奏で続けている4人の阿吽の呼吸だろうか。結成からの12年間という歳月をコンパイルした瑞々しい作品だ。(沖 さやこ)
-
フロントマンの三輪和也(唄/六弦)が"徹底的に媚びずぶれず、まっすぐに自分がかっこいいと思うことを、自分たちに嘘をつかずにやりきった"と語るとおり、彼らの2ndフル・アルバムはエネルギッシュでありながら自然体の作品に仕上がった。メンバー4人で作るアンサンブルの空気感やグルーヴもより濃密に。ロック・ナンバーから彼ら流のダンス・ナンバー、歌謡ジャズ、バラード、ロジックのように構築された楽曲、そしてストレートでエモーショナルなものまで、多彩な楽曲群はどれも鋭さとポップ・センスを兼ね備え、少年性と艶を併せ持つ三輪の歌声も鮮やかに響く。特にTrack.1「兆シ」の晴れやかさと、最後を飾る「DUNE」の壮大な包容力は新機軸。過去の集大成的作品であり、詞、音共により自由になった飛躍作と言っていい。(沖 さやこ)
-
2014年に"RO69 JACK"優勝、2015年に初の全国流通盤『無知』をリリースした岐阜出身4ピースの1stフル・アルバム。『無知』が妖艶でクールな空気にダンスの要素やキャッチーさを加えた、バンドの個性をきれいに整えた名刺代わりの作品なら、今作はその基礎体力を持ったまま音楽に体当たりする感情的な作品だ。バンド名、日本語の響きを重んじた歌詞などを見ると和のイメージが強いかもしれないが、音の礎はブルースやロックンロール。時代も洋楽邦楽も関係なく巻き込んだ音楽性と存在感のある歌は、老若男女幅広い層に響きそうだ。映画に出てくる謎めいた主人公に翻弄されるような感覚を味わえる前作も趣があるが、より体温が伝わる今作には前作にない情熱や高揚がある。様々な色合いを持つ濃密な浪漫に身を任せてみては。(沖 さやこ)
-
ニヤリと妖艶に笑った顔が浮かび上がる。岐阜出身の4人組バンド、鳴ル銅鑼の1stミニ・アルバム『無知』はそれぐらい自信を持ってリリースされるはずだ。マスタリングには、前作EP『電波』でもタッグを組んだPEACE MUSICの中村宗一郎を起用。前作に比べてまとまり良く、整理された印象のある今作は音の輪郭がはっきりとしていて完成度の高さが窺える。キレのあるビートやベースのうねり、ギターの音色が意思を持って鳴っているようだ。もちろん三輪和也(Vo/Gt)の艶っぽい歌声も健在。それどころかどんどん魅力を増している。"映画ぐらい特別な世界観のあるバンドでありたい"とメンバー自身が語るように、鳴ル銅鑼ならではの独特な妖しい世界へあっという間に引きずり込まれていく。(齋藤 日穂)
-
岐阜を拠点として活動している4ピース・ロック・バンド、鳴ル銅鑼(ナルドラ)が新作をiTunes限定でリリースする。彼らはRO69JACK 2014入賞という実力を持ち、今作はピース・ミュージックの中村宗一郎がマスタリングを手掛けたとのこと。疾走感溢れるグルーヴィーなロック・ナンバーに、ジャズや"和"の要素を取り入れたサウンドは、鳴ル銅鑼の個性が爆発した聴き応えのある仕上がりだ。日本語の響きにこだわりを持つという三輪和也(Vo/Gt)の艶のある歌声には思わず身震いしてしまうほどの魅力が詰まっている。その妖艶さは「御祭騒ぎ」冒頭の"鳴ル銅鑼、開演"という彼の囁きを聴いてもらえばお分かりいただけるだろう。この今後どんな風に化けていくのか楽しみで仕方がない。(齋藤 日穂)