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LIVE REPORT

Japanese

Suspended 4th

Skream! マガジン 2022年07月号掲載

2022.06.17 @LIQUIDROOM ebisu

Writer 真貝 聡 Photo by Shoma Yasukawa, ハライタチ

Suspended 4thは、5月から1stシングル『KARMA』を引っ提げてレコ発ツアー"Suspended 4th pre.『KARMA! KARMA!! KARMA!!! Tour』"を開催し、6月17日に東京でファイナルを迎えた。会場はサスフォー(Suspended 4th)史上最大規模となる、LIQUIDROOM ebisu。

この日、対バンの相手を務めたのはWOMCADOLE。開演時間になり、ステージに樋口侑希(Vo/Gt)、マツムラユウスケ(Gt/Cho)、黒野滉大(Ba)、安田吉希(Dr/Cho)が姿を見せると、曲を始める前に樋口がフロアに向けて言葉を飛ばした。"SEXよりも、自慰行為よりも、気持ちいいことしてぇだろ?"。そして1曲目に演奏したのは「人間なんです」。出だしから樋口は"かかってこいよ"と観客を煽り、マツムラのメロディアスで歪んだギター、黒野の疾走感のあるベース、リズミカルさと強靭さを孕んだ安田のドラムによって、一瞬にして自分たちに追い風を吹かせて会場の空気を掌握した。

「絶望を撃て」、「少年X」と続けたあと、樋口がステージ袖を見つめて"紹介しよう! Suspended 4th、Washiyama(Kazuki Washiyama/Gt/Vo)!"と言って、Kazuki Washiyamaがギターを持ってステージに登場。披露したのは、サスフォーが自身のYouTubeチャンネル内でカバーをした「黒い街」。この日は原曲よりも演奏に奥行きが生まれ、より激情的にアップデートされていた。演奏が終わる間際、樋口とWashiyamaが向かい合ってハイタッチを交わした瞬間、そこに両者の美しい絆を感じた。観客が大きな拍手を送ると、樋口が"こういうことなんですよ! 知るかよ、ルールなんて。やりたい放題やらせてもらいます"と不敵な笑みを浮かべて言うと、再びマイクを握った。"つまらんロックがテレビを賑わせている時代ですよね。あんなもんに騙されちゃいけない。ずっとリアルが好きで、生が好きな人間だからこそ、今日ここで再会できました"。

――今年1月、サスフォー主催のツーマン・ライヴ"Grateful Jam 2022"にWOMCADOLEは出演が決まっていたが、開催直前、樋口がライヴ中に怪我をしたことで急遽キャンセルに。"何を隠そう俺が骨折したのは、ここ恵比寿なんです。今日は、あのときの思いを叩き割るぐらいの、骨太なロックを堪能して帰ってください"。樋口が自身の胸中を明かすと、静かにマツムラのアルペジオが鳴った。白いスポットライトの下で歌ったのは「ラブレター」。"いつか君と交わし合った事/嘘じゃないぜって安っぽいよな。"。そのロック・バラードは他でもなく、サスフォーに届けていた。"今日、Suspended 4thのツアー・ファイナルですよね? チャンスをくれたのもやつらですし、時間をくれたのもやつらです"。あの日、果たせなかったステージの借りはステージで返す。自分たちなりの祝歌(祝花)をステージに捧げて、WOMCADOLEは出番を終えた。

続いてはSuspended 4thだ。ステージに現れるや否やHiromu Fukuda(Ba)がスピーカーの上に足を乗せて高速スラップを炸裂し、代表曲「ストラトキャスター・シーサイド」でスタート。2曲目「GIANTSTAMP」では観客のほぼ全員が手を挙げて、自由にステップを踏んで揺れて乱れる。曲を重ねるごとにその熱気が上昇して、3曲目「97.9hz」ではDennis Lwabuが叩くドラム・スティックの先端が折れて宙を飛ぶほど、ライヴ開始からまるでジェットコースターに乗ったかのような目まぐるしく、圧巻のパフォーマンスを繰り広げた。

しかし、ここで思わぬアクシデントが発生。次の曲へ移ろうとしたところ、Washiyamaのエフェクターが壊れてしまったのだ。何度も調整しようと試みたが上手くいかない。"いいライヴをしているときは機材が壊れる、というジンクスを手に入れました"と言うと、心配そうにステージを見つめていた観客が大きな拍手をした。"小細工を使うなってことっすね。もう、今日はファズとワウとディレイ以外は使わない。決めました"と吹っ切れた表情を見せた。"あと、さっき樋口にお前らのお客さん最高だなって言われて。それが一番嬉しいわ"と喜びを伝えたあと、Washiyamaはスーッと息を吸い"じゃ......捧げます"と言って歌った「KARMA」。これがまた素晴らしかった。原曲とは違ってWashiyamaのギターはノイジーに鳴り響き、それが楽曲にヘヴィな色味を足して、4人のグルーヴに新たなアグレッシヴさを加えていた。

"ここまで来ちゃったわ、恵比寿LIQUIDROOM。やることはひとつしかないっす。マジでいいライヴをやります"というWashiyamaの宣言直後に、Seiya Sawada(Gt)がステージの前へ出て「Betty」で鋭くブルージーなギター・ソロを鳴らす。観客みんなが頭や手を自由に動かし、思いのままに身体を揺らした。会場がダンス・フロアと化しているなか、間奏ではDennisを囲んでお互いの出方を伺いながらジャジーなセッションを始めた。以前、Washiyamaは"俺らは音で会話をしている"と話していたが、たしかに彼らは楽器というツールを通して、キャッチボールをしているんだと再確認する。演奏が終わると"東京でこんなに人を集められて、ジャムをやれて、マジで幸せです"と改めて喜びを伝えた。

ライヴ中盤になり、Washiyamaが感謝の意を口にする。"お客さんだったりスタッフだったりとか、そういう人たちに感謝しかない。ひとりでも欠けていたら(俺らは音楽が)やれないっていう、みんなが言ってる当たり前のことに最近めちゃめちゃ気づきました。間違いなく、この場にいる人たちのおかげで音を鳴らせています。その恩返しじゃないですけど......前半はわりと実験的な感じだったので、ここからはぶち上げにいきます"。

たしかに、そこからのパフォーマンスが凄まじかった。「HEY DUDE」では飢えた狼のような、強烈な音の牙で観客に襲い掛かる。その後、なんの説明もなく新曲「トラベル・ザ・ギャラクシー」を披露。この曲は一聴して耳に残る圧倒的なキャッチーさ、高度なアレンジ、極上のグルーヴが込められており、今のサスフォーの最高到達点と言っていいだろう。

気づけばライヴは終盤に差し掛かっていた。"最近、俺が(ステージの)真ん中に立つようになって、やっとバンドになりました"と報告。数年前のサスフォーは個人の演奏スキルに注目されることが多かったが、今は違う。Washiyamaがバンドの舵を取るようになったことで、4人の重層は格段にパワーアップし、それが巨大なひとつのエネルギーとなって放たれている。
"もう思い残すことはないっす......。曲を書いて良かった、マジで。コイツらとやれて良かったっすわ"と噛み締めるように言って、最後に「INVERSION」を始めた。演奏が終わりSawada、Fukuda、Dennisが袖へと捌けるなかWashiyamaだけはギターを抱えたままステージに残る。"もうちょっと弾きたくなっちゃった"。そう言って、静かにサビを弾き語りして本編が終了。

すぐに会場から拍手が起こり、メンバーが再び登場。Sawadaが第一声"珍しいWashiyamaが見れて、俺も嬉しかったです"と感慨深そうに話した。そしてアンコールで「オーバーフロウ」を演奏すると、後半では4人の自由なセッションが行われ、ラストにDennisがドラム・ソロを魅せた。最後まで存分に魅了したと思っていたら、Washiyamaが"辛気臭せぇのは嫌なんで、最後に音でやりますわ"と言って、再度「トラベル・ザ・ギャラクシー」へ。まさに有終の美を飾る演奏。轟音の洪水を浴びて、脳内のドーパミンがドバドバと流れる。"Gonna crazy ok! 狂っちまえ!"と言い放って、サスフォーのツアーは幕を閉じた。

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