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INTERVIEW

Japanese

植田真梨恵

2019年04月号掲載

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メジャー・デビュー5周年を記念した5作連続リリースのラストは、2月リリースのミニ・アルバム『F.A.R.』とともに2019年の軸になっていく、もう1枚のミニ・アルバム『W.A.H.』。すでに昨夏CMソングとしてオンエアされ、シングルとしてリリースもされている「勿忘にくちづけ」や、先行配信されている、今の季節にぴったりの「Bloomin'」など、ゆったり聴けるうえにサウンド・プロダクション面では新鮮なアプローチの多い7曲を収録している。メッセージより情景や温度、そしてほんのり残る情感が聴き手の心を潤す。表現者としてさらなる自由を獲得した印象のある植田真梨恵の今を、『W.A.H.』収録曲についての対話から感じてほしい。

-改めて、ミニ・アルバム2枚という形態でリリースした理由をお聞きしていいですか?

メジャー5周年ということで、どういう5周年にしたいかと考えたときに、書く曲数が少しずつ減っていくのではなく、むしろたくさん書いていって、これまでの人生で一番今がアートしてるぞっていうくらいの5周年にしたいなと思って、ポンポン! っとミニ・アルバムを2枚出したいなと考えまして。コンセプトがしっかりとあるもので、心地いい雰囲気での2枚をお届けできたらいいなと思い始めたのがきっかけでした。

-たしかに、すごくカラーがはっきりしてる2枚ですね。2枚にしようと思ったときにストックから分けた感じなんですか? それともテーマに沿って作っていったんですか?

『W.A.H.』の方は、「勿忘にくちづけ」という曲が主になることは和がテーマになるところの発端でもあったし、「花鬘」は弾き語りのツアーで「勿忘にくちづけ」に合わせて書いた和風な曲だったりもしたので、『W.A.H.』の方はちょこっと書き足せばできそうだなと思ったんですけど、『F.A.R.』(2019年2月リリース)の方は「FAR」という曲だけがあって。いつかきちっと出したいなと温めていた曲で、「FAR」という曲がなんなのか、今一度振り返って、"これはきっとひとつまた大人になる成長として、書かなければいけなかった曲なんだろう"と思ったときに、そのテーマに合わせて曲を書き下ろしたものが多いので、『F.A.R.』の方が新曲が多いです。

-2枚ともサウンド・プロダクションがこれまでと比べて相当変わったと感じました。

ほんとにそうですね。その「勿忘にくちづけ」という曲を去年リリースして、ライヴで歌うたびに曲の持っている独特の空気感――日本人だからこそ感じるような心地よさとか、好きとか、そういう部分にたくさん触れたので、心地よい楽曲を届けていきたいなと思ったのは、この曲を作ってたときからだと思うんですよ。シンガー・ソングライターなので、書いてそれを歌ってそれを届けて生きているから、私が今感じていてちゃんと歌いたいことを、みなさんと同じように生きて歌っているというところが、とても肝だと思うんですよね。エンターテイメントになれないからこそ。

-"エンターテイメントになれない"?

派手な見世物というか、全部のプロフェッショナルっていうわけではないというか。私が届けることにリアリティを持って生きているっていうところに意味があるのかなと思うので、より今の私がちゃんと歌えるものであって、聴きたいものであって、歌いたいものであってほしいなと思いながら作った2枚ですね。

-シンガー・ソングライターとしての自分のスタンスを考え直したとかではなく?

考え直したというよりも、ほんとに今、リアルに近いものを作りたいと思っている方が強いです。なので、そんなに今までに引きずられずに、やりたいものをいい形で出せた方がいいかなと強く思いますね。

-植田さんって人は、もの作りをずっと続ける人なんだろうなっていうのが今回の2枚のミニ・アルバムに対する感想で。だから解釈の幅が広いものに変化してきたのかなと思いました。

そうですね。誰かが魂を込めて作っているものを見るのが好きなので、それが"一番アートしている1年にしたい"っていうところにも出ているのかなと思うんですけど。自分が描きたいものをきちんと描くっていうことが今年のテーマにはなってますね。

-音像の細かいところまで行き届いた感じの2作品でもあって。エンジニアさんと音楽的なリファレンスの話もしましたか?

これまではあんまりできなかったんですよね。でも、『F.A.R.』も『W.A.H.』もそうなんですけど、"Norah Jonesのこのアルバムのこの感じ"とか、"JELLYFISHのこのアルバムのこのコーラスの感じ"とか、共有できる音楽が近かった。だから、趣味という意味で合わさった部分が今回は多かったので、思い描いたことがうまく共有できた感じです。