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INTERVIEW

Japanese

0.8秒と衝撃。

2014年09月号掲載

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Member:塔山 忠臣 (最高少年。) J.M. (唄とラウド。)

Interviewer:天野 史彬

-そういう意志が如実に出てるからか、今回、音の面でも抜けがいいですよね。凄く説得力のあるポップさがある。

J.M.:それは、マスタリングの人を変えたのも大きかったかもしれない。マスタリングに関して、『NEW GERMAN~』で疑問に思ったことがきっかけとしてあって。あの作品では、重低音の強化が目立つマスタリングになってたんです。ビートが強くなると気持ちはいいけど、ただ、その方向性と、今、私たちが伝えたい音像のニュアンスが変わってきたんですよね。今回は全部の音像が狙い通りに行ったから、今までより明確なものにできたのかも。

-ビートの快楽性よりも、もっとリスナーに伝えたいことをダイレクトに伝えられる音像を目指したんですね。

塔山:言ってしまえば『NEW GERMAN~』以前のものとは、作ってるチームの体制も全然違うんですよ。俺の段階で機材も変えてるし、エンジニアも変えてるし、マスタリングも変えてるし。まったく新しい布陣なんです。もうちょっと、ケツのケツまで責任を持ってみようと思ったんですよね。たとえばマスタリングって、凄腕の人になればなるほど、こっち側から口を挟む猶予もないんですよ。正直、向こうの畑の話なんで、やってることもわかんないし。他のミュージシャンでも、それはそういうもんだって思ってやってる人は多いと思うんですけど、そこを打破したいなって思ったんです。せっかく自分たちの作品なのに、最後の最後に自分たちで把握できない要素があるのは嫌だなって思って。で、この間も話したけど、俺は(石野)卓球さんが好きで、ずっと卓球さんの作品でマスタリングをやってる人にお願いしてたんですよ。でも最近、卓球さんがマスタリングする人を変えはって。その人は、そこまで有名な人じゃないんですよ。でも、卓球さんみたいな音にうるさい大御所の人がマスタリングに関して全権を変えるっていうのは、興味深いなって思って。で、俺らもその人にお願いすることにしたんです。そしたらその人が、"初台にマンションをぶっ壊してスタジオを作ってるヒッピーがひとりいた"っていう感じの人で(笑)。

-かなりアクの強い方なんですね(笑)。

塔山:でも、凄くいいんですよ。

J.M.:うちと凄くフィーリングが合ってたんです。クセがあるんですけど、もの凄く音がわかりやすいというか。そういう点でうちと合ったことによって、よりスペイシーな方向性になったというか。

-塔山さんとJ.M.さんの間だけじゃなくて、それ以外の音源制作に関わる人たちとの間にも、新しい信頼関係があったんですね。

J.M.:今回は、的を捕らえて当てにいった音源だと思うんです。......私は、この音源を作って、今まで以上にミュージック・ラヴァーになれた感じがしてて。

-おふたりにとっての音楽との契りの深さや音楽から与えられたものを再確認できたからこそ、リスナーに伝えるべきこと、背負うべきことが明確になった部分もあるんですね。

塔山:そうですね......俺はどっちかと言えば、子供の頃は内省的なゲームっ子でしたからね。大人になったらゲーム全機種買ったろ思ってたけど(笑)、でも実際に大人になったら全然興味なくなって。20歳くらいになっても特にやりたいこともなく、何がやりたいんやろってずっと考えてて、たまたま人にCD借りるようになって、音楽について知りたい欲求が出てきて、パンクが好きになって......やっぱり、自分が音楽っていいなぁって思ったとき、自由な感じがしましたからね。頭が柔らかなくなるというかね。その時々で、人っていろんな悩みにぶち当たるじゃないですか。そういうものに対して自由にしてくれたというか。悩んでもええんやって思えたし、落ち込んでも、自分の中でなんか絶対に変わるからって思えるというか。音楽を聴くことで心のふり幅の自由ができたというか。"1+1=2"以外にはできないっていう社会の風潮があったとしても、それでもなんかできんちゃうかなっていう考え方になったんですよね。もちろん音そのものもそうだけど、そういう感情的な部分も、音楽を聴く快感だったと思うんですよね。そういうところに、うちらを聴いてる人も連れて行きたいんですよね。

J.M.:音楽って、自分の本質に近いところに触れたりするじゃないですか。本能がぞわぞわするというか。それで気持ちがウキウキしてくることもあるし。0.8秒と衝撃。をやってる人間の、少なくともこの2人にはそういう性質があるから。だからこの作品でも、次の作品でも、ポップで開きながらそういう部分を届けたいし、なおかつ攻撃性は持ってたいなっていうのは思いましたね。

-次の作品はもう作り始めてるんですよね。どんな感じになりそうですか?

塔山:昨日、J.M.にデモを聴かせたんですよ。テンション上がってましたね。俺はPOLICEとかStingのつもりで作ったのに、"GORILLAZみたいでいいね!"って言われて(笑)。ちょっと調子乗ってましたもん。"これ聴いたら GORILLAZ古いってわかった"って。何様や!っていう(笑)。

J.M.:いやいやいや、(GORILLAZは)今聴いても新しいんだけど、自分たちはもっと新しいことできるなって。
塔山:でもまぁ、次のインタビューの時はGORILLAZとは書かせないですから。天野くんには"POLICEっぽくてカッコいい"って書いてもらう。

-期待しております(笑)。......でも今日、久しぶりにお話させていただいて、本当におふたりのムードもいいし、背負う覚悟もできてるし、これからまた新たにハチゲキが始まっていくんだなって感じました。この先が楽しみですね。

塔山:ありがとうございます。やっぱりもっといろんな景色をリスナーにも見せたいですからね。俺らがそれを諦めたら、彼らに悪いですよ。目に見えるもんとか、形がしっかりしてるもんが多いじゃないですか、今の世の中。それはそれでいいんですけど、でもそうじゃないもので、"これ大事ちゃうんか?"って思うようなものって、結構あるんですよね。日の目の当たらない場所で苦しんでるような人たちでもね。やっぱり、忘れたくないものってあるじゃないですか。倍々ゲームみたいな世の中ですからね、今は。それはそれで大事だし、俺らもやるんですけど、だけど、それとは違う部分にも大事なものがあるってことをわかってる奴と、単に踊らされてる奴は違うんでね。それを形で見せますよ。頑張ります。