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COLUMN

UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第5回】

2012年12月号掲載

UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第5回】

地下の薄暗さが僕の視界を騙しているのか?これは本当に現実なのか?ふもとの喉元から大量の血液が溢れ、地面にひれ伏す刹那、僕はそんなことを考えた。そして、叫んでいた。「うわあああああああああああああああ」流夏は言葉もなくただ膝をつくだけだった。「わはははは!お前が悪いのだよガニ太!ふもとはただ自分の感情に素直に行動しただけに過ぎない!」クソ親父だ。「ワシが創り出した《クラウド・ノイド》は皆、自らの欲望に忠実なのだからな!」クラウド・ノイド??その妖しげな言葉に僕はまたしても強い悪寒を感じる。「お、おいクソ親父、なんだよそのオタゲーっぽい響きの横文字は!説明しろよ!」クソ親父は倒れているふもとの元まで歩み寄り「それはもうすぐ訪れる素晴らしい未来まで楽しみにとっておくんだな」と、言うとふもとをお姫様だっこして「クラウディーアァ!!」と梅宮辰夫の嫁的なことを叫んだ。すると謎の光が親父とふもとを包む。「まずいなの!」夢千代がとっさに僕の手を引き、クソ親父に触れた。その瞬間、僕たちは世界からいなくなったのだった。独り取り残された流夏は状況を飲み込めず、とりあえず白目になった。気がつくと僕は見たこともない景色の中を漂っていた。ここは一体。「ガニ君気がついたなの。」夢千代は僕を抱えながら空間を泳いでいる。「ここはあなたのお父さんが創り出した、実際に人が立ち入ることのできるクラウド、《ヒューマンクラウド》なの」「ヒューマンクラウド?クラウドってあれか?ネット上にデータを保存できるってゆう」「そう、近い未来には誰でもこの空間に入れるようになるなの。あなたのお父さんは現実とは全く別の異次元の世界、いわばパラレルワールドを創ってしまったなの」何だかすごい話になってきた。夢千代は続ける。「さらに、あなたのお父さんは《クラウド・ノイド》と呼ばれるヒューマンクラウドからリアルワールドに自由に出し入れ可能な生命体を創ったなの。これはいわば、データ人間なの」なんか、うちの親父ってすごくない?と思えてきたが、てことはまさか。「残念ながら、比叡山ふもとはあなたのお父さんにクラウド・ノイドにされてしまったなの」僕は色んな感情を経て諦めの意の笑みを浮かべた。しかし夢千代は、まだなの!と「比叡山ふもとはまだ死んでないなの!!」と叫んだ。「クラウド・ノイドはデータ人間。データは修復が可能なの!だから急ぐなの!」夢千代の言葉に僕は崩れ落ちそうになっていた心のバランスを取り戻す。「よし!とにかく、急ごう!!」異次元空間を泳いでゆくと個室のようなものが浮かんでいた。「ここは、病院?」中に入ると全裸のふもとがベッドのようなものに寝かされていた。体全体が光に包まれている。「これは?傷を治している?」クソ親父の姿は見当たらないが、ふもとの傷がみるみるうちに消えてゆく。「す、すごい…」僕の感嘆の声に夢千代が応える。「これは治しているというより、なかったことにしている、と言った方が正しいなの。傷というデータをアンドゥしているのなの」アンドゥ??IT用語だろうか。でもとにかく、「とにかくこれで、ふもっちゃんは大丈夫なんだな!?」「っ…」急に黙る夢千代を横目に、ふもとが目を覚ました。「ふもっちゃん!!ああよかった!!」抱きつこうとする僕にふもとはカウンターをジャストミートさせた。「ぐはぁっ!」夢千代は1ミリも笑わずにふもとに質問をした「あなたは…だれなのなの?」血みどろになった自分のこぶしを舐めながらふもとは言った「…わからない」ふもとは記憶を失っていた。

...to be continued 茉莉乃沢 ガニ太