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COLUMN

UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第3回】

2012年08月号掲載

UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第3回】

「いやー、一時はどうなることかと思ったよ。」すっかり夜は明け、僕と親友の部田下流夏(ブタゲ ルゲ)は大学を後にし、帰路についていた。「むぅ、ガニ太氏にはお恥ずかしいところを見せたでし。」流夏はまだ半分白目だ。「これでおあいこってゆうか、やかんの件も含めて、互いの胸にちゃんとしまっておこうぜ。」「むぅ、もう脅迫出来なくなったでし。」「ったくこのやろー。」一件落着ムードもつかの間、目の前に一人の少女が現れた。「だ、誰でし!?」流夏は再び全白目で言った。「そう、ムッチーは未来しか知らない。永遠の記憶喪失なの。」清楚なワンピース、ヘソくらいまでありそうな貞子的黒い前髪で顔は見えないが、声は秀島史香みたい。これが予知夢千代(ヨチ ムチヨ)との出会いだった。夢千代は記憶が存在しない代わりに、未来を知ることが出来るらしい。どうにも理解しがたい話だ。「急に現れて何を言ってんだ?未来がわかるなんて馬鹿馬鹿しい。」僕は当然の疑問を口にする。「あら、ガニ君は他人には見せられないやかんをお持ちなの。」ギクっ!僕の名前はおろか、やかんのことまで!?「ふふっそれに30分後、ガニ君がムッチーに夢中なのをムッチーはすでに知っているのなの。」夢千代はそう言うと、昨夜の出来事をまるで目の前で見ていたかのように話し始めた。そうあの時、流夏が僕を助けるために研究室のドアを開けたんだったな…。(前回参照)ライオンちゃんヘッドはひどく取り乱していた。あんな鬼畜な行動を見られたのだから当然だが、もっと別の理由があるように見えた。その一瞬の隙に僕はロッカーを脱出。汗でヌメヌメのライオンちゃんヘッドを取り押さえた。「な、なにがでたかなっ!?♪」ライオンちゃんヘッドは無数の透明な糸のようなものに自由を奪われている。それは全ての悪を縛り付ける僕の『スパイダーチェイン』もう身動きは取れない。「観念するでし!」流夏はライオンちゃんヘッドのライオンちゃんの部分をゆっくりと引き剥がす。すると、流夏は何故か脱力し、体をブルブル震わせ始めた。「っ!?おい流夏!どうしたんだ!?」僕の問いに流夏はゆっくりと白目になり言った。「お、お、、おやじ氏…!」中の人は、なんと流夏の父親だったのだ…。「そこからしばらくルゲ君の白目が治らなかったのには笑ったなの。」と、夢千代は見事に全てを当てて見せた。ハッタリを言っているとは到底思えない。絶対に見えないはずのロッカー内でのチンポジ直しまでも言い当てている。「そうそう、ちなみにガニ君は毎夜毎夜、幼馴染みの比叡山さんのマンションに行って…」「ああああー言うな!今それ関係ないだろ!わかったよ!お前の能力、認めてやるから!」夢千代の不意打ちを慌てて僕が制す。あぶないあぶない。もうちょっとでこの小説が第三回で打ち切られるところだった。この女の前では僕達は全裸同然。ライオンちゃんヘッドと一緒だ。「むぅ、ムチヨ氏が予知能力者ってことはわかったでし。じゃああなたの目的は?一体何なのでしか?」流夏がすかさず突っ込む。「そうだよ。僕達の前に現れた理由を述べよ!」僕も復唱する。すると、夢千代はヘソまである長い前髪をかきあげて言った。「…比叡山ふもとは、あと一ヶ月の命なの…。」えぐるような不安と、チラリと覗く夢千代の素顔が、同時に僕の胸を締め付けたのであった。

...to be continued 茉莉乃沢 ガニ太