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DISC REVIEW

R

Begginers Luck

RIPCHORD

Begginers Luck

2007年、眩いほどのロックンロールを鳴らすEPによって話題を集めたUK期待の新人RIPCHORDが、満を持してと言うには遅すぎる程のタイミングでデビュー・アルバムを発表する。一向にアルバムが発売されないので、正直なところ、EPだけで解散するのかなと思っていた。それだけに、このアルバムの到着は嬉しい誤算だ。「Look Up Your Daughters」といった既発曲はもちろんだが、それ以外の曲の異常なまでのキャッチーさに驚かされる。「My Precious Valentine」の♪パーパーパパー♪コーラスとか、聴いているこちら側が少し赤面してしまうほどキラキラしている。羨ましいほどの若さと疾走感に満ちたこのロックンロールのどこがBegginers Luckなんだ!?


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Lightbringer

RIVAL SONS

Lightbringer

サイケでバリシブなブルース・ロックを奏でるカリフォルニアの4人組 RIVAL SONSの新作は、今年6月にリリースされた前作『Darkfighter』と対をなす1枚。今作も、彼らの過去作すべてを手掛け、彼らのサウンドを熟知したDave Cobbをプロデューサーに迎え、6曲というコンパクトな構成ながら聴き応えのあるアルバムに仕上げている。冒頭を飾る約9分という長尺のTrack.1は、バンドのルーツを掘り下げ様々な冒険に挑んだ1曲。静かなオープニングから一気に活気づく展開や、中盤の聴かせどころであるギター・ソロなど、1曲の中にもドラマがある。そのほかにもグルーヴィで重厚感のあるハード・ロッキンな楽曲、温もりを感じるメロディアスな楽曲など、一気に聴けてしまう上質なアルバム。

Feral Roots

RIVAL SONS

Feral Roots

LAの4人組 RIVAL SONSの、"Atlantic Records"移籍第1弾となる6thアルバム。70年代を想起させるブルージーなサウンドは今作でも健在で、ダイナミックなビートにキャッチーな歌メロで魅了するTrack.1、ドラム・イントロが圧巻のTrack.3と、前半は攻撃的な曲がひしめく。後半はJay Buchananの艶のある歌声を引き立たせた楽曲群が並び、ゴスペル調のコーラスにヴォーカルが映えるラスト・トラックに至るまで、今までとは異なった新たな側面を見せている。自身の"野蛮な根源"を振り返りつつ、バンド独自のサウンドに昇華させた本作は、盛り上がりを見せるクラシック・ロック・リバイバルの中でも彼らが一歩抜きん出た存在であることを示している。

Not Alone

RIVERS CUOMO

Not Alone

FUJI ROCK FESTIVAL09の三日目のヘッドライナーに決定したWEEZERのフロントマンであるRivers Cuomo からとても素敵な作品が届けられた。ソロ名義でのリリース作品『Alone』、『AloneⅡ』の二枚のアルバムから、カリフォルニアのレコード店でファンを集め一緒にジャム・セッションをした模様を収めたDVDとCDの二枚組が今回の作品『Not Alone』だ。正直熱心なファン以外楽しめない内容なんじゃないかという気持ちも最初はあったが、しかし選曲はファン目線を考えた粋なトラックが並んでいてとにかくいい曲が多い。あんなゆるい感じの「Buddy Holly」はどうだろう。でも笑顔にならずにはいられない。FUJIが楽しみになってきました。

希望のかけら

Riverside Creature

希望のかけら

"僕"の視点で見つめ、つぶやく心の内もあれば、"僕"や"あなた"を俯瞰した物語で描く曲もある。どの曲も少しずつ違った寂しさや切なさ、哀しみを抱えていて、同時にそんな感情のひとときの置き場所になる、受け皿となる音を奏でている。優しいだけとも違うし、力強いばかりでもない。誰かの話に耳を傾けて、静かに頷きながら段々と硬い気持ちを解きほぐしていく感覚だろうか。ソフトなヴォーカルと、じんわりとした温かさを湛えたギター・サウンドで、そこに居てくれる音楽。歌、メロディが真ん中にあるけれども、正統派ギター・ロックからポスト・ロック的なアプローチ等細やかなアレンジがきいていて、物語が進むとともに徐々にバーストしていく高揚感もある。いつかどこかで見た心の内の風景が音になったアルバムだ。

We’re In The Music Biz

ROBOTS IN DISGUISE

We’re In The Music Biz

「私達は音楽業界の中にいる」。このタイトルが本作のすごさを何よりも物語っている。チープな音色もなぜか輝いて聴こえる、遊び心に溢れたエレクトロ・パンク・サウンドに乗せて歌われるのは、音楽業界へと飛び込んだ彼女達自身の姿だ。実在する業界関係者に悪態をつき、夜遊びやセクシャルな欲望を赤裸々に告白する、リリックの数々。言いっ放しの本音。乳丸出しのジャケット。 特にメジャーのシーンでは、いつのまにかヒップホップの専売特許となってしまった感のあるこうした態度は、かつてのオリジナル・パンクに見られたものだ。ROBOTSは2009年に、それを軽々とやってのける。しかもキュートに。このアルバムで踊れば、僕らはどこだって飛び込んでいける。

人間の鱗

ROLLICKSOME SCHEME

人間の鱗

自主企画ライヴなどでじわじわと人気を集めている5人組ギター・ロック・バンドの2ndミニ・アルバム。自らジャケット・アートワークも手掛け、歌詞も全て担当する紅一点のヴォーカル、ワイコが先導してさまざまな人間像をテーマに描いている。「DILEMMA」のキャッチーなサビとアレンジはライヴハウス・シーンを象徴するような盛り上がれる曲だが、歌詞がしっかりメッセージを発しており、"踊れるだけ"のバンドではないことを教えてくれる。ギター・リフの裏で暗躍するベースが楽曲タイトルを暗喩している「パンデミック」など多彩なアレンジは飽きさせず、言葉から解き放たれたプレイヤーたちの個性が爆発するインスト曲の様式美も面白い。

ARIKARA

ROMANCE

ARIKARA

2008年の11月に結成されたばかりのロンドン出身の4ピース・ポスト・パンク・バンド。PATTI SMITHを彷彿とさせるJamieのハスキーなヴォーカルと7 0 年代のゴス・サウンドをブラッシュ・アップさせた攻撃的かつ中毒性のあるビート。元Dior HommeのデザイナーHedi Simaneのお気に入りという事からも第2のTHESE NEW PURITANSの誕生とも言えるだろう。ただTHESE NEW PURITANSは新しいビートを取り入れようとしているのに対し、彼らはもっとメロディアスでロマンティック。そしてファッション紙の表紙を飾るほどの抜群のルックス。「彼らがスターになる前に」どうぞチェックしてみて下さい。

STARDUST

THE ROMANTIC SIX

STARDUST

ジャズとロック、パンクを交錯させたような音楽を展開する、勝手にしやがれのバリトン・サックス奏者、飯島 誓を中心にして2011年に結成された5人組の1作目。力強く打ちつけられるエレクトロニックな質感の4つ打ちを基調にして、テクノやハウスとロックを混ぜ合わせてみせる。そのさまはロックの雑食性でもってテクノとハウスをなかば強引に噛み砕いて飲み込んでいくようである。演奏とヴォーカルは共にテンションが高い。ところどころで挿し込まれるサックスが艶っぽく輝き、ワイルドなロックンロールとでも言えそうな雰囲気を放っている。男らしい硬派なサウンドが魅力だ。TOKYO NO.1 SOULSETの渡辺俊美、勝手にしやがれの田中 和と福島 忍らがゲストとして参加している。

FEVER

RONDONRATS。

FEVER

広島発のメロディック・ロック・バンド、RONDONRATS。による約2年ぶりのリリースとなる6枚目のミニ・アルバム。プロデューサーにPlastic Treeのギタリスト、ナカヤマアキラを迎えて制作され、サポート・ドラマーとして高橋宏貴(ELLEGARDEN/Scars Borough/THE PREDATORS)が参加している。楽曲ごとに歌い方や声色を変えるMAMIKOのヴォーカルもキュート且つパワフルで、アグレッシヴな音像もキャッチーに響かせる。ツイン・ギターならではの音圧はヘヴィでありながら華やかさもあり、全体を通してとてもカラフルだ。Track.5、6は全面ナカヤマがアレンジを担当している。メロコアの要素を基盤に幅広い音楽性を吸収している、新型ミクスチャー・ロック。

The Sun Also Rises

ROOKiEZ is PUNK'D

The Sun Also Rises

前作『From Dusk Till Dawn』以降、メジャー・レコード会社を離れてメンバー・チェンジもあったなか紆余曲折を重ねてきたROOKiEZ is PUNK'D、6年ぶりのニュー・アルバム。アニメ"弱虫ペダル"の関連作でもある「リクライム」、「リマインド」、「リアライズ」という不屈の精神を綴ったキャッチーな3部作を始め、バンドの原点でもあるミクスチャー・ナンバーからパーティー・ソングまで、垣根のないロックを全方位で網羅する1枚になった。"繋がり"をコンセプトにしたという今回のアルバムには、Macaroni&Cheese(ex-BACK-ON)、Rockwell、Kousuke Saekiをアレンジャーとして迎えるなど、12年間におよぶバンドの歴史の中で大切にしてきた"仲間との絆"を強く感じることができる。

Time Stands Still

Taylor Locke

Time Stands Still

元ROONEYのギター&ヴォーカル、Taylor Lockeの1stソロ・アルバム。2010年以降ROONEYの活動が休止状態になり、サイド・プロジェクトのTaylor Locke And The Roughs名義で2年間で3枚のアルバムをリリース。プロデュース業やエンジニアリング業を行いつつ、このアルバムの準備を進めてきた。もともとROONEYでも持ち前のポップ・センスを発揮していたが、このアルバムではさらに楽器それぞれの良さを活かす、温かさと一抹の切なさを匂わせるアコースティックな感触のバンド・サウンドで魅了する。アコギを爪弾く音は間近でその音を鳴らされているかのごとく鮮明で、音の響き方の細部までポリシーが貫かれているのがわかる。流行に左右されない音楽の普遍的な魅力を感じていただきたい。

Eureka

ROONEY

Eureka

SUMMER SONIC 07でマリンステージをアツくさせた彼らが通算3枚目となるアルバムをリリースする。WEEZERのようなパワーポップ感もあり、切なさや気だるい空気もまといつつ、どこまでもポップ。アコギの音色、鍵盤の音が美しくも悲しさを感じさせ、結果ポップがよりポップに聴こえるコントラストが強い1枚だ。特にTrack.8「Stars And Stripes」はRobert Schwartzmanの色気を含んだ声がより際立ち秀逸。アルバムタイトルの『Eureka』は古代ギリシャ語で“見つけた”という意味。聴き終わったころにはジャケットのように長い航海の末に新しいポップを見つけられた気がする。野外で聴いたら気持ちよさそうな楽曲揃いなので、このアルバムを引っさげての来日&フェスの出演を願います!

Americana

ROSE HILL DRIVE

Americana

なんか……ダサくない? ロン毛&髭モッサリ、ヨレヨレのTシャツ着て荒々しい70年代ハード・ロックなテイストを紡ぐ。名前もROSE HILL DRIVEって(苦笑)、なにからなにまで大仰で古典的で、彼らはタイム・マシンに乗ってこの時代にやってきたのか?でも……聴いていくとなんだか熱い感情が沸き起こる。エッジーなギター・リフにハイトーン・ヴォイスはまるでWHITE STRIPESのJack Whiteが憑依したようだぜ! Daniel&JacobのSproul兄弟が中心の4人組天然ロッカーズ、ROSE HILL DRIVE。その熱いスタイルが話題を集め、THE WHOからAEROSMITH、VAN HALENにTHE BLACK CROWESにWILCOにQOTSAと、錚々たる面々からラヴ・コールを受けている。本作は約3年半振りのサード・アルバムである。ド真ん中に剛速球を投げる王道感は、日本でいうギターウルフに近い感じかな。なんか……かっこいいぞ!

ロットバルトバロンの氷河期

ROTH BART BARON

ロットバルトバロンの氷河期

女声の様に儚いファルセットに乗せられて歌われるのは、少年目線で描かれたような純粋で真っ直ぐな歌詞。そして北欧ミュージックのような透き通った清々しいメロディ。これが東京出身の2人組によって生み出された作品と知って、心底驚かされた。ROTH BART BARONの1stアルバムは、洋楽と邦楽を編みあげて出来た美しいレースの様。収録曲には全て英語のサブ・タイトルがついているのだが、むしろこちらが原題なのではないかと思う程に、彼らの楽曲は洋楽的である。ギターとドラム、ベースやピアノに留まらず、管楽器やグロッケンなど多種多様な楽器を駆使して作り出される壮大なサウンドスケープに圧倒されつつも、聴こえてくるのは童話のようなファンタジックで優しい物語。まさに、心温まる絵本のような作品だ。

EP

ROU

EP

独学でDTMの向こうに広がる無限の宇宙を知ったアーティストが、生演奏の世界へ。ソウルやファンク、AORにストレート・エッジなロック、60年代から現代の音楽までを、フラットな感覚でミックスしていく、ROUのデジタル・ネイティヴならではの柔軟なセンスと、仲間と共に音を奏でるバンドならではの原始的な熱の化学反応は、まさに今の時代だからこそのグルーヴに溢れている。そして、瑞々しくも力強い声と、歯に衣着せぬ飾らない言葉が乗ることで完成するこの『EP』という1枚の物語は、多くの人々が過多な情報の中で見失った自身の心を照らしてくれるような、現代に必要なポップ・ミュージックの在り方を示すものであると言えよう。

Ravo

ROVO

Ravo

日本のダンス・ミュージックを奏でるジャム・バンドとしてもはや最高峰といっていいROVOの2年5ヶ月振りのニュー・アルバム。FUJI ROCKを始めとするフェスでも欠かせない存在である彼らのライヴは素晴らしいのはもちろんだが、今作はポスト・プロダクションに時間をかけたと語っているようにライヴと同様とても完成度の高いアルバムになっている。今までよりもスケールは大きいのにしっかりと近くにいるようなそんな聴きやすさが今作にはある。全曲11分〜14分という長さに収められてる事もこのアルバムの聴きやすさを表しているかも知れない。よりシンプルに練り上げられたこのビートとサウンドには日常と非日常の間行き来する様な不思議な心地よさがある。

Goldrushed

THE ROYAL CONCEPT

Goldrushed

2014年を代表するポップ・アクトは彼らでキマリだ。昨年、SUMMER SONICに出演。大観衆を躍らせたというスウェーデンの4人組がデビュー・アルバムをリリースする。ギター、ベース、ドラムスというトラディショナルなロック・コンボ編成で演奏するエレポップ・サウンド。そのキャッチーな魅力が彼らの身上だが、80年代調あり、EDMあり、インディー・ロック風ありとデビュー・アルバムにして、ウェルメイドなポップ・ソング作りが光るバラエティに富んだレパートリーを持っているところが頼もしい。高揚感と哀愁が入り混じるところなどは、もろに日本人好みだろう。これはハズせない。ちなみに日本盤は彼らが注目されるきっかけになった「Gimme Twice」他4曲をボーナス・トラックとして追加。

The Last Royalties

THE ROYALTIES

The Last Royalties

来日公演ではRiddim Saunterやカジヒデキ等と共演。北欧ロック/ポップス好きの心をくすぐり、ぬくもりと洒落っ気と馬力たっぷりのロックンロールを鳴らすノルウェー発バンド、THE ROYALTIESの4作目。70年代刑事ドラマの哀愁やフォーク・ソング、プログレッシヴ・ロックの匂いもがするオルガンを基調としたド渋なインストで幕開け、この熱さは何!?と思っていると、THE WHOばりのドカスカなロックに、極上にスウィートできらきらとしたメロディも飛び出してくる。そこそこ! と膝を打つポップ心やツボを、"でしょ?"と満面の笑みで押してくれる、にやにやしてしまう確信犯・愉快犯ぶりがいい。でも、"ポップ偏差値高めです"アピールでなく、これが好きだと言う偏愛が気持ちよく暴走しているから、聴いてる方も無邪気に叫べてしまうアルバムだ。

Profound Mysteries III

RÖYKSOPP

Profound Mysteries III

20年以上のキャリアを誇る北欧ノルウェーのエレクトロ・デュオが、約1年をかけ楽曲や映像作品などを発表する壮大でコンセプチュアルなプロジェクト"Profound Mysteries"の第3弾にして完結編をリリースした。全体としてダークで内省的なトーンにまとめられているが、陶酔感あるニュー・ウェーヴの中でメロディ・センスが光る「Me&Youphoria」、Susanne Sundførをフィーチャーしたエレポップの「Stay Awhile」、アトモスフェリックな長尺曲「Speed King」など、多彩で幽玄な表現が詰まっている。プロジェクトを締めくくる楽曲でありながら突き放すようなニヒリズムを湛えた「Like An Old Dog」まで、徹底した美学が貫かれた作品。

Junior

RÖYKSOPP

Junior

北欧の誇るエレクトロ・ポップ・ユニットは、結成10周年目にして新たな季節を迎えた。 一聴してまず、これまでにないほどの多幸感に満ちた耳触りに驚かされる。冒頭を飾る「Happy Up Here」は、あの「Eple」が躁転したかのような、ちょっと笑っちゃうくらいキャッチーなナンバー。それ以降も、陽気でポジティヴなムードが全編を包み、冷ややかなムードだった前作とは印象がガラッと異なる作品になっている。疲弊しきった時代の空気を吹き飛ばすように。 ROYKSOPP特有の魔法、どこか懐かしく浮遊感のあるメロディはもちろん健在。しかし、これまでは白昼夢の世界に誘うようにそれが作用していたのに対し、本作は現実を塗り替えるような作用を持っている。冬の時代を春に変えていく、異化作用だ。

Solace

RÜFÜS DU SOL

Solace

オーストラリアはシドニーのエレクトロニック・トリオの3rdアルバム。1年かけてカリフォルニアのヴェニスで制作されたという本作は、その地の荒涼とした砂漠や海岸線をモチーフにしているそう。基本的にアンビエントなムードの中、メランコリックで控えめなエモーションが特徴的なヴォーカルが沁み入る。5曲目の「No Place」は先行シングルとしてSpotifyのグローバル・バイラル・チャートで2位を獲得。すでにUK、USではライヴ・バンドとしても人気の高い彼らだが、曲の力で世界各地の評価が上昇している印象だ。ハウシーな四つ打ちもごく控えめで、チルアウトにもしっくりくるし、エレポップ・テイストもある。映像喚起力も抜群で、思い思いに広大な情景を浮かべながら聴きたい作品。

The Runaway Club

THE RUNAWAY CLUB

The Runaway Club

2014年3月、突如YouTube上に「By Your Side」をアップし、素性を明かさぬまま活動を開始したTHE RUNAWAY CLUB。実はカナダのパワー・ポップ・バンドTHESE KIDS WEAR CROWNSのAlan Poettcker(Ba/Vo)によるソロ・プロジェクトなのだという。80'sよろしくなポップなシンセ・サウンドが全開な今作には、"RUNAWAY CLUB"というその名の通り逃避願望的なエモーションが感じ取れる。しかしその耳当たりのよいポップなサウンドは、PASSION PITやCHVRCHESらのようなシンセ・ポップという括りよりも、"ポップ"というもっと大雑把な括りでとらえたほうがよいのかもしれない。ヒップなイケイケ男子やお洒落女子、根暗が自慢のナードたちもまとめて踊らせる懐の深い1枚。

Alone For The First Time+5

Ryan Hemsworth

Alone For The First Time+5

Kanye WestやCAT POWERなどのリミックスを手掛け、LA拠点のプロデューサー集団WEDIDITにも所属するカナダ発のDJ、Ryan Hemsworthのアルバムが、5曲の追加トラックを収録した豪華盤でリリース。tofubeatsとのコラボ・トラック(Track.9)も収録され、両者の個性が折衷されたセンチメンタルなメロディとポップで捻りのあるエレクトロ・サウンドを展開しているが、アルバム全体のトーンとしても、どこか内省的でいて、夢うつつの境界をふわりふわりと漂うような心地がある。浮遊感のあるインディー・ロックのエッセンスを、エレクトロ・サウンドへと織り込んで小宇宙を作り上げたアルバム。ユニークなビート使いでエモーショナルな歌を鮮やかに際立たせていて、雰囲気でまとめない面白さがある。

Third

Ryo Hamamoto

Third

最低限の音が鳴っていれば歌が引き立つのか? そんな根本的な揺さぶりをかけてくるほどRyo Hamamotoの音楽は、そもそも彼が持っている悲しさや虚しさ、可笑しみなどの"知覚"を解像度高く最大限に表現するため"だけ"にあるように思う。Track.1「Last Train Home / 終電」の素なギターの1音と震えるような彼の声が聞こえてきた瞬間に、そのあまりの純度の高さに自分の鎧のようなものが瓦解していく感覚を味わう。大別すればアメリカン・ルーツ・ミュージックがオルタナティヴな回路を経て着地した数々の普遍的な音楽と同質の手触りがあるのだけど、歌詞の固定観念を軽く突破した、そのオリジナリティが聴き手それぞれの心の奥底と共振するはずだ。あらゆる感情が温度や記憶とともに鮮明に立ち上がる。 (石角 友香)

バンド名義の前作から4年ぶり、ソロ名義としては2007年に発表したアルバム以来9年ぶりとなる今作。2年リリースが空くだけで驚かれる日本の音楽シーンをベースにすると"どんだけマイペースやねん"とツッコミたくなるが、そういうスパンで発表される作品こそ当たりくじを引くことが多い。まさにコレがソレ。今作は、思いつくがままに作ったという全9曲を収録したオムニバス映画のような1枚。中でもTrack.9「カリブに配属 / Fata Morgana」は"自分が納得するまで故郷を探せ"と訴えかけてくるような楽曲なのだが、歌詞を歌い切ったあとのラスト1分が同作一番のハイライト。声が声でなくなるその瞬間は本当に鳥肌ものだし、"音楽を奏でることが自分の故郷"だと言い切るその感性にも惚れ惚れするはずだ。とにかく、まずはじっくり聴いてほしい。

from here to there

Ryu Matsuyama

from here to there

フジテレビのドラマ"オールドファッションカップケーキ"やCMタイアップ、ラジオなどでもその名が耳目に触れることが増えてきたRyu Matsuyamaの新作。Ryuが注目のSSW 優河と共に澄んだツインVoを響かせる「kid」、ラッパー BIMと"普通とは?"をテーマに、グルーヴ感充分に絡み合う「ordinary people」、2年ぶりにmabanua(Ovall)と共作し、洒脱且つ後半の展開も胸キュンなポップ・サウンドで包み込む「blue blur」など、今回もハイセンスなゲストが参加。「hands」ではShingo Suzuki(Ovall)が共同編曲し、"当たり前の生活"に照準を当てた詞を際立てるアレンジで聴かせる。けば立った私たちの気持ちを鎮め、浄化する、今多くの人に届く意味がある作品。

And look back

Ryu Matsuyama

And look back

朝日が昇るようなインスト曲から、大陸感のあるドラムとコーラスが聴き手を奮い立たせる「From the Ground」で幕を開ける、Ryu MatsuyamaのニューEP。前作以上に多彩なアーティストとタッグを組んだ1枚で、またレンジを広げている。ドラマ"大豆田とわ子と三人の元夫"ED主題歌でも話題のMC、Daichi Yamamotoとの共作曲は、ジャマイカとのハーフであるYamamotoとイタリアで育ったRyu(Pf/Vo)のバックグラウンドをテーマにしたナンバーで聴き応え充分。YouTube 2.5億再生を誇るタイのポップ・アーティスト、Max Jenmana参加の「Under the Sea」ではファンキーで今風なネオ・ソウルに挑戦しており、両者の新たな扉を開いている。

Borderland

Ryu Matsuyama

Borderland

新たにプロデューサーにmabanua(Ovall)を迎えた、ピアノ3ピース・バンドの2ndアルバム。壮大で芳醇なサウンドで街や景色を描き出す叙景に優れたサウンドに、包容力も強さも併せ持つRyuのクリアなハイトーンVoが乗る彼らの魅力に、確実に磨きがかかっている。mabanuaとの共作曲「Blackout」は、キーボードとベースが効いたグルーヴィな1曲で、バンドに新たな風が吹いたことを感じさせる。また、初のゲストVoを招いた日本語バラード「愛して、愛され feat. 塩塚モエカ(羊文学)」も新鮮。そして、"予想もつかない事こそが/信じられる唯一の希望なんだ(和訳)"という「Go Through, Grow Through」の一節は今、多くの人の気持ちを支えてくれるはず。

Between Night and Day

Ryu Matsuyama

Between Night and Day

まるで夜が明けていきそうな美しいインスト曲「Window」から始まり、1枚を通して旅に出るような、想像力をかき立てる音楽が数珠繋ぎとなった作品。ピアノ、ベース、ドラムの編成で、グッド・メロディの叙情的なピアノ・ロックを紡いできた彼らだが、今作は広がりゆく発想をそのまま音に映し、多彩な音とジャンルを練りこんで、情景や心象風景をエモーショナルに描いている。牧歌的でフォーキーなタッチからエレクトロでモダンな音まで操る感覚は、ARCADE FIREを思わせるようでもあり、ソウルが香る温かなポップスでもある。さりげなく日常に馴染む音楽でいて、擦り切れないタフさと奥深さも持った、細部にこだわったアルバムだ。Ryu(Pf/Vo)によるエアリーで艶っぽさも滲むヴォーカルの温度も心地よい。

Leave, slowly

Ryu Matsuyama

Leave, slowly

オルタナ好きなイタリア育ちのヴォーカル&ピアニストと、広くJ-POPアーティストのサポートを行うベーシスト、そしてバークリー音楽大学卒のドラマー。とくれば、スキルフルなジャム・バンドあたりを想像してしまうが、このトリオの奏でる音楽は自然、街などの情景と、上昇していくエモーションをアンサンブルで表現した"人間活動のBGM"とも言えそうな普遍性の高いもの。3作目となる今回は、初のストリングスを導入したTrack.2「To a Sunny Place」など、爽快なカタルシスを生むナンバー、RyuのフェイバリットであるBON IVER的な繊細なヴォーカリゼーションのTrack.3「Do it Again」、ギターも入った、ディープで静謐な世界観のTrack.5「In this Woods」なども。歌を軸に自由自在に展開する演奏の醍醐味を堪能したい。