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DISC REVIEW

O

I Am Very Far

OKKERVIL RIVER

I Am Very Far

Norah Jones の傑作「The Fall」に楽曲を提供したことでも話題を集めたソング・ライターWill Sheff率いるOKKERVIL RIVERの新作が登場。共同制作したRoky Ericksonのカムバック作がグラミー賞の“Best Album Notes”にノミネートされたり、あのLou Reedも絶賛するというUSインディー・シーン随一の詩人Will がアレンジ、プロデュースを全て手掛けたという今作は、オーセンティックなアメリカン・ロックを基本としながら様々な音楽を取り込んだフリーキーなサウンドが魅力的。Willのメランコリックでセクシーなヴォーカルに導かれ、世界中を旅している様な気分にさせてくれるとても不思議な魅力を持ったアルバムだ。現在のUSのインディ・ロックを熱心に聴いている音楽ファンにぜひ聴いてもらいたい傑作。

能あるオコジョは牙を隠さない

OKOJO

能あるオコジョは牙を隠さない

2018年に結成されたばかりの大阪の3ピース・バンド、OKOJOの初の全国流通盤。いつの間にか口ずさみたくなってしまうサビの存在に、これがキラーチューンというやつか! と唸りたくなるTrack.1「遮二無二に恋しない」をはじめ、全体的にメロディと歌詞の組み合わせが秀逸である。加えて、ダンス・ポップ調のTrack.2「寝ても覚めても」、サビの疾走感にパンクの要素を感じるTrack.4「殿堂入り」など曲調も多彩だ。ラヴ・ソングを志しているバンドではあるが、Track.6「春の風」のような曲もあることからもわかるように、その定義はどうやら広そう。あらゆる角度からバンドのポテンシャルを窺い知ることのできるような作品となった。今後の展開に要注目。

THE LEMON SHARK

OLDE WORLDE

THE LEMON SHARK

沼田壮平の一人ユニットOLDE WORLDE(オールディ ワールディ)の2ndアルバム。昨年は、アジカン、スピッツ等のビッグ・バンドからの出演オファーに始まり、ROCK IN JAPAN、SUMMER SONICへの出演を果たすなど、一気に期待のニュー・カマーの仲間入りを果たした彼。そんな周囲の期待高まる中でリリースされる本作は、ほとんど全ての演奏を1人で行ったという完全セルフ・プロディース作品。前作から引き継ぐ、TEENAGE FANCLUBやTHE PASTELSを連想させる90年代グラスゴーの香りはそのままに、更にリラックスしたギター・ポップとなっている。一見すると、前作よりも落ち着いた印象を受けるが、過去最も自然な形でOLDE WORLDEという個性を落とし込んだ作品と言って良いだろう。

LITTLE GIRL

OLD LACY BED

LITTLE GIRL

これまで数々の海外インディー・バンドとの共演や、UKレーベル"Dufflecoat Records"から7インチをリリースしている名古屋発4ピース・ガールズ・バンドの1stミニ・アルバム。いきなり海外でのリリースをしているあたり女性ならではの度胸と行動力のたまものなのか、と構えて聴いてみるとTrack.1「Little Girl」の儚いというよりか弱い歌声に一瞬脱力。しかし続く「Only Time Passes」のドラマチックなギターのリフレインに一気に惹き付けられて以降、文字通り夢の中で聴かされているようなドリーミー・ポップな歌声と、シャカシャカしたギター・サウンドが癖になってくる。冴えたアレンジと街の練習スタジオで録音したようなローファイな音作りも良い。BELLRING少女ハートとのサイケデリックな共演が観たくなった。

Trust トラスト~絆

OLD MAN RIVER

Trust トラスト~絆

2008年に1stアルバム『Good Morning』で日本デビューを果たし、シングル「ラララ‐みんなのうた」は洋楽ラジオ・オンエア・チャート1位を獲得。TVCMにも起用され大ヒットなった。あれから2年半の時を経てセカンド・アルバム『Trust トラスト~絆』がリリース。08年末から09年末にかけてシドニー、ムンバイ、テルアビブの3都市で制作。現地のミュージシャンとともにレコーディングし、英語、ヒンディ語、日本語などを取り入れたり、インド楽器を使用したりと新たな手法にも挑んでいる。そしてとても暖かくて優しさに満ち溢れたボーダーレスな仕上がりとなった。彼自身が父親になったことで作品自体に大いなる愛情が反映されている。

Never Been Better

Olly Murs

Never Been Better

Michael Jackson風の「Did You Miss Me?」で始まるイギリスのポップ・シンガーによる2年ぶりの新作。ブルーアイド・ソウルを現代風にアップデートした路線を踏襲しながら、フォーク、レゲエと曲調の幅を広げた挑戦からはメイン・ストリームで勝負しているポップ・シンガーならではの矜持と"どんな曲でも歌いこなしてみせる"という自信が窺える。GYM CLASS HEROESのTravie McCoy他、客演および作家陣も華やかだが、何と言っても注目はソウルフルなロック・ナンバーの「Let Me In」を提供したUKロックの重鎮、Paul Wellerの存在。そして、日本盤のみYoko Onoが英語の歌詞を書いた「上を向いて歩こう」のカバー「Look At The Sky」を収録。そんな顔ぶれの豪華さも稀代のポップ・スターならでは。

Right Place Right Time 来日記念スペシャル・エディション

Olly Murs

Right Place Right Time 来日記念スペシャル・エディション

大盛況だった前回からわずか3ヶ月で実現する再来日公演に合わせ、イギリスのポップ・スター/シンガー・ソングライター、Olly Mursによる大ヒット・アルバムの来日記念スペシャル・エディションが緊急リリース。元々は2012年にリリースされ、見事、全英No.1に輝いた3作目のアルバム。今回、リリースされる来日記念スペシャル・エディションはオリジナルに3曲プラスされた日本盤に、さらに6曲を加え、全21曲を収録した日本だけの完全版。R&Bの影響を受けながらロック・サウンドやオーケストラも取り入れ、アンセミックなポップ・ソングとしてアピールする彼の魅力がたっぷりと味わえる。今まで聴きそびれていたという人はこの機会にぜひ! Bruno Mars、OWL CITY、MAROON 5のファンにもオススメだ。

God Said No

Omar Apollo

God Said No

"FUJI ROCK FESTIVAL '24"のメイン・ステージに出演が決定している、今年の注目アクトの1人 Omar Apollo。2枚目のフル・アルバムとなる今作では、前作で見せた冒険心を引き継ぎつつも、アルバムとしてのまとまりや完成度がレベルアップした作品となった。レトロなタッチのR&Bや、スタイリッシュで都会的なポップ・ソング、さらに気分を上げてくれるエレクトロ・ポップも切ないバラードも、すべて統一感のある世界観で気づけば一気に聴いてしまっている。Omar Apolloの独特な雰囲気を持ったチルなヴォーカルと、肩肘張らずに楽しめるリラックス雰囲気のサウンド。目をつぶって聴けば、忙しい日常からほんの少しだけ逃避させてくれる、ゆったりとした休日のようなアルバムだ。

Ammolite

Omoinotake

Ammolite

名刺代わりのメジャー1stアルバム。「EVERBLUE」、「One Day」、「心音」など代表曲が網羅されているため、Omoinotake入門編として聴ける、リスナー・フレンドリーな作品だ。同時に、2000~2023年という濃い3年のワークスがまとめられているため、現行のトレンドを研究しては自らの表現に落とし込み、J-POPとして響かせようとトライを重ねてきた、彼らの戦いの歴史に触れられる作品でもある。3人の音楽家としての実績は、もっと多くの人に称賛されるべきだろう。新曲も素晴らしく、サウンドのみならず精神性からゴスペルに接近した「Blessing」が1曲目に配置されているのは自信の表れか。「渦幕」におけるドリルのビートの導入も非常に意義深い。

EVERBLUE

Omoinotake

EVERBLUE

OmoinotakeがTVアニメ"ブルーピリオド"のOP曲「EVERBLUE」を表題に据えたEPでついにメジャー・デビュー。アニメの主人公による"好きなことをやるって いつでも楽しいって意味じゃないよ"という言葉に自身を重ねて書き上げた表題曲は、夢や自分と向き合い、葛藤しながらも前を見据える"青い願い"を持つすべての人の胸を打つ楽曲に仕上がった。アレンジ、プロデュースは蔦谷好位置が担当。ダンサブルで希望に満ちた、青春の匂いを纏う清涼感のあるサウンドであると同時に、9年間バンドを続けてきた彼らの熱い意志も刻まれているように感じる。またEPには銀杏BOYZ「漂流教室」のカバーも収録され、全4曲で十分に彼らの音楽センスの素晴らしさを堪能することができる1枚となっている。

Long for

Omoinotake

Long for

新たなフェーズに突入した前作『モラトリアム』発表以降、配信で新曲を連続リリースしてきたOmoinotake。彼らの2020年2枚目となるミニ・アルバムが完成した。タイアップやYouTubeチャンネル"THE FIRST TAKE"への出演でますます注目度が増している彼らだが、今作のグルーヴィで洗練されたポップ・ミュージックは、これまで以上にポピュラリティを確立しているように思う。疲弊しきった心に沁みる、コロナ禍で生まれた「One Day」、ドラマ"30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい"OP曲「産声」、ノスタルジーを感じる情景描写が見事なバラード「東京」などに加え、JQ(Nulbarich)による「One Day」のリミックスも収録。良質なポップスを堪能できる1枚だ。

モラトリアム

Omoinotake

モラトリアム

"覚醒"としか言いようのない3rdミニ・アルバム。昨年の3曲連続配信リリースの時点で兆候はあったが、新たなフェーズに入った印象。具体的に言うと、歌と言葉とメロディが磨かれ、ポップ・ソングとしての強度が飛躍的に増した。「惑星」と「Blanco」は作詞を手掛ける福島智朗(Ba/Cho)が自身の恋愛体験を綴った曲で、「トニカ」はバンドのくすぶった気持ちを昇華させるために書いた曲とのこと。ソングライターの踏み込んだ表現がバンド内の連鎖を呼び、AOR/ジャズ/R&Bなどをルーツとした横ノリのアンサンブルや、ヴォーカルの表現力など、兼ねてからの美点がより輝くようになったのでは。バンドのターニングポイントであり、きっとこれからの基軸となる作品。

Street Light

Omoinotake

Street Light

島根発のギターレス、鍵盤トリオ・バンド Omoinotakeのミニ・アルバム。リード曲「Stand Alone」をはじめ、シンセとパーカッションの使い方に新鮮さを感じるTrack.2「Never Let You Go」、初めて打ち込みを取り入れたTrack.5「Bitter Sweet」などバンドの新たな表情を垣間見られるのが嬉しい。ラストは、路上ライヴを盛んに行う彼らのホーム・グラウンド=渋谷スクランブル交差点を舞台にしたTrack.6「Friction」に集約されていく。前作と比べてサウンドがグッと洗練されたほか、各楽器の旋律にリズムが出てきたし、コーラス・ワークも効果的に働いている。以前よりもずっと広い場所で、自分たちの音楽が鳴る光景をイメージできるようになったのではないだろうか。

As Smart As We Are

ONE RING ZERO

As Smart As We Are

2004年に発売され、その斬新なコンセプトから本国では話題を呼んだONE RING ZEROの出世作が初の邦盤化。新種のアコーディオン「クラヴィオラ」との出会い、そして作詞を手がけた数多くとの作家との出会い。2 つの出会い、音楽と文学という2種の芸術の融合によって生まれた本作は、全18幕の物語を描く映像作品のようだ。1章ごとにまた舞台の幕が上がり、新しい物語が始まる。フランケンシュタイン、ゴキブリ…作家ごとに描くテーマ、切り口がまったくことなるが、皆一様に悲しいストーリーを語り出す。可愛らしい見た目とは裏腹に、少しグロテスクでダークなストーリー。子供向けであっても、あえて心に悪を種まくような、灰色のおとぎ話、夢物語を見ているようなこの世界に、私はチェコのアニメーションを連想した。

シーサイド・ミラージュ

ONIGAWARA

シーサイド・ミラージュ

2019年からフリーランスで活動中のJ-POPユニットが早くも今年2作目を会場/配信限定リリース。竹内サティフォ(Vo/Gt/Prog)念願の"夏盤"で、竹内電気時代から温めていたデモを使った楽曲から最新版まで、様々な時期に作られた夏ソング楽曲で構成されている。眩い砂浜のビーチを彷彿とさせるTrack.1、ツイン・ヴォーカル曲Track.5はフル・バンドでレコーディングしたことで鮮やか且つダイナミックに。打ち込みのビートとパワフルなギターでポップなグルーヴを作るTrack.2や青春を詰め込んだ斬新な展開のTrack.3、チルアウトできるTrack.4など、二人三脚という編成を生かしたサウンドメイクも瑞々しい。淀みない夏のきらめきを味わえる。

GAWARA!

ONIGAWARA

GAWARA!

バンドでもアイドルでもない"スーパーJ-POPユニット"が1年3ヶ月ぶりの新作を発表。配信リリースされた3曲と、YouTubeでデモ音源を公開していた「夏フェスなんて大嫌い!!なんちゃって」の再録を含む全8曲を収録している。今回歌詞に多く用いられている愛や人生といったテーマは、彼らの楽曲の特色のひとつである、日本人の琴線に触れる90年代J-POPの煌めきのテイストとの親和性も高い。当時の楽曲のオマージュをこれだけ取り入れても二番煎じにならないのはお見事。時代性云々以前に、彼らが素晴らしいと思うポップ・ソングを追求しているからこそ成し得る芸当だろう。特に「MEGA☆DEATH」は歌詞も楽曲もタイトルもONIGAWARAの真骨頂と言っていいのでは。

ヒットチャートをねらえ!

ONIGAWARA

ヒットチャートをねらえ!

竹内電気時代からそのポップ・センスはズバ抜けていたが、ONIGAWARAとして竹内サティフォ(Vo/Gt/Prog)&斉藤伸也(Vo/Gaya/Prog)のふたりで活動をスタートさせて3年超、完成した1stフル・アルバムはより洗練されたポップ・ミュージックのオンパレードで、そのクオリティの高さに思わず笑ってしまった。SMAPを筆頭に90年代のJ-POPへのオマージュたっぷりだし、それをパクリでもネタでもなく、純粋にヒット・ソングへの愛情ありきでやっているところがすごく魅力的なのだ。さらに、楽曲に合わせてハマ・オカモト(OKAMOTO'S)、カジヒデキ、DJ松永(Creepy Nuts)といった個性的なミュージシャンが多数参加。「Shake it!」の茶番みたいな遊び心もあれば、「I don't wanna die」ではこのユニットの根底にある想いが溢れていて、もう本当に愛すべき1枚。

Gloves

OPERATOR PLEASE

Gloves

OPERATOR PLEASEが、さらにポップに間口を広げることによって素晴らしい進化を遂げてみせた。無邪気に跳ね回るやんちゃな高校生だった従妹が、数年後に会ったらすっかり大人っぽくなっていて、無駄にドキドキしたみたいな驚き。YEAH YEAH YEAHS、GOSSIPなどの変化にも通じるが、ポップでダンサブルな楽曲群には、彼女達の才能の豊かさが溢れ出ている。キュートさを残しながらも艶っぽいソウルフルなヴォーカル、そして雑然としていたファーストから一転、音がしっかりと整理されたことによって生まれたグルーヴは、「すっかり大人になったね」なんて感想ではすまされない程のクオリティ。ファーストでは、鮮烈な一発屋の匂いがしないでもなかっただけに、このアルバムは彼女達にとって大きな指標となる1枚だ。

BLACK MEMORY

THE ORAL CIGARETTES

BLACK MEMORY

今年6月には日本武道館公演を成功させ、全国の夏フェスに多数出演した4人組の、約3ヶ月ぶりのシングル。表題曲は映画"亜人"主題歌のための書き下ろしで、監督とアイディアを出しながら制作された。どんな状況でももがきながら戦い続ける姿勢を綴った歌詞を、ダーク&キャッチーなサウンドに落とし込んだ楽曲は、クールで洗練された印象を与える。Track.2は耽美なメロディとヴォーカルが伸びやかなミディアム・ナンバー。ソングライター 山中拓也(Vo/Gt)のバックグラウンドも強く反映された、ピュアな楽曲になっている。ヴォーカルの声色使いに惹きつけられるTrack.3は、華やかなリズム・アプローチにも注目。全曲にサウンド・メイクやアレンジをアップデートしようとするバンドの気概を感じる。

UNOFFICIAL

THE ORAL CIGARETTES

UNOFFICIAL

ここ最近は"苦悩を越えて"とか"葛藤の末に"という苦しい経緯で新曲を生み出していたオーラルが、ついに吹っ切れた。ソングライティングを手掛ける山中拓也(Vo/Gt)が自身の弱さを曝け出すことで、メンバーのポテンシャルが全開放された最強のフル・アルバム『UNOFFICIAL』。オーラル節が炸裂した怪しげでダークな「悪戯ショータイム」や、ストレートなロック・ナンバー「5150」、90年代のヒップホップが持つデンジャラスなムードを取り入れた「DIP-BAP」など、ライヴ・アンセムの強さは圧巻だが、アルバムに大きな意味を与えたのが多幸感溢れるラスト・ナンバー「LOVE」。何度も"一人で笑う事は出来ない"と繰り返すこの曲は6月に初めて武道館に立つバンドが、その先へと進む布石になりそうだ。

5150

THE ORAL CIGARETTES

5150

タイトルに掲げられたのは、アメリカ警察の無線信号で"犯罪を起こしそうなクレイジーな奴"を意味する数字――それだけでもう、ただならぬ香りを漂わせているこの6thシングル。各々のテクニックをアピールするような混沌としたアンサンブルでもって、一触即発の不穏な空気をそこかしこで醸し出し、且つ今までにない妖艶さも見え隠れする今作は、バンドがネクスト・ステージへの扉を完全に蹴破ったことを布告する仕上がりだ。前作『DIP-BAP』で打ち出した挑戦が自分たちの可能性を広げたぶん、"期待を超える"というプレッシャーに見舞われた山中拓也(Vo/Gt)の不安、葛藤、そしてその先に生まれた覚悟がリアルに綴られた表題曲。弱さをも力に変え、壁を乗り越えた人間のパワーがどれほどのものかを見せつけるような、ものすごい強度を持っている。

FIXION

THE ORAL CIGARETTES

FIXION

3枚のシングルと山中拓也(Vo/Gt)の声帯ポリープ摘出手術による2ヶ月半のライヴ活動休止を経てリリースされる2ndフル・アルバム。前作『The BKW Show!!』は楽曲のカラーや各プレイヤーのテクニックの振れ幅を印象づけたが、今作は彼らの最大の魅力でもある日本的な哀愁メロディを活かしつつ全曲がアグレッシヴなサウンドで統一されたアルバムだ。切ないバラード曲をダンサブルに仕上げたTrack.7、ヘヴィで太い音に早口でまくしたてるヴォーカルでありながらも色気のあるメロディが余韻を残すTrack.8、ライヴでのシンガロングも想像できるTrack.9、分厚いギターのインパクトが大きく多幸感のあるTrack.10など、挑戦的な楽曲が並ぶ。10曲すべてがこれからのライヴで育つのでは。

The BKW Show!!

THE ORAL CIGARETTES

The BKW Show!!

彼らには"てっぺんを取る"という確固たる野心がある。その第1歩として、自分たちの持つ色を、戦うための武器へと昇華した。そんな勝負作でもあるメジャー1stフル・アルバムはBKW=番狂わせに相応しい、攻めに攻めた作品だ。日本で生まれ育ったからこそ生み出せる歌謡曲的な色香が漂うメロディと、物語調に彩った歌詞世界はより深みや余韻を増し、豊満なヴォーカルもそれを最上の状態で届ける。各楽器の音もアンサンブルもテクニカルで洗練されているのにひたすら感情的。隅々から貪欲にもっともっとと食らいつく気概が伝わってくる。彼らの"満足しない心"が常にこのバンドを更新させるのだ。ひりついた高速ロックから情感たっぷりのバラード、ミディアム・ナンバーなどなど、楽しいの向こう側にある鮮やかな景色を見せる。

起死回生STORY

THE ORAL CIGARETTES

起死回生STORY

ロック・オーディション"MASH A&R"の初代グランプリでも知られる奈良発の4ピースが満を持してメジャー・デビュー。"逆襲""革命"がテーマだという表題曲は、現在進行形でバンドが強く突き進んでいることをまざまざと見せつける。テクニカルで躍動感のあるサウンドは、どっしりと構えながらも前のめりで、彼らがひたむきに場数を重ねたことの賜物とも言える頼もしさだ。そして山中拓也の艶めいた歌声は更にスケール・アップ。彼の作り出す歌謡曲の匂いの漂うメロディに寄り添うヴォーカルは、滑らかで美しい。効果的な緩急が楽曲をロマンティックかつ情熱的に彩る――彼らの音楽は色で例えるなら間違いなく"赤"だ。インディーズ時代の再録Track.2、新曲のTrack.3と4、全曲にエネルギーが漲る。

BLUE

ORANGE POST REASON

BLUE

長崎出身の4ピースで、昨年"Red Bull Live on the Road"で入賞、"SUMMER SONIC"にも出演したギター・ロック・バンドの1stアルバム。もう驚くほど00年代のASIAN KUNG-FU GENERATIONやBUMP OF CHICKENの手法と匂いが充満しているのだが、どストレートなギター・ロックでしか到達できない、"これが心底好きなんです"というブレのなさは、1曲に凄まじい情報を乗せてくる現行の主流バンドと比べても潔いほど。加えて、すべての作詞作曲を手掛ける坂口亮(Gt)のフェイバリット・アーティストは小田和正というのも納得。まだ語彙に推敲の余地はあるけれど、例えば"生きていく為に生きてるような/誰かに自分を重ねるような"(「レトロノーム」)といった息を呑む表現もあり、まだ何者でもない曖昧な状況にあるリスナーを射抜く存在になる可能性を感じる。

未タイトル

ORANGE POST REASON

未タイトル

長崎発のバンド ORANGE POST REASONは、ギター・ロックのど真ん中というべきサウンドと生命力溢れる歌声が特徴的なバンドだ。しかし若さと勢いに甘んじているのではないことは本作を聴けばわかるはず。Track.1「未タイトル」やTrack.2「ソーダ」を聴けば"今"を鳴らすバンド自身のことを示唆させる歌詞にハッとさせられるだろうし、Track.3「風しるべ(弾き語りデモ Ver.)」では繊細なメロディを十分に味わうことができるだろう。初の全国流通盤である本作のタイトルは"未タイトル"。これからシーンの階段を駆け上がっていくこのバンドにとっては、ジャンルの括りや言葉の鎖さえもわずらわしいのだろう。今後の展開に注目していたい。

The Orbserver In The Star House

THE ORB featuring LEE SCRATCH PERRY

The Orbserver In The Star House

これは素晴らしい!アンビエント・テクノの先駆THE ORBがDavid Gilmoreとのカップリング作に引き続き、今回はなんとルーツ・レゲエの始祖ともいえるLee Scratch Perry御大を迎え、アルバムを完成させた。近年THE ORBはオリジナル・メンバーのAlexとベルリン・ミニマル・テクノの重要人物Thomasの2人で活動しており、作風の変遷からLee Perryとの邂逅は必然だったとも言える。ハウスやレゲエ、「Thirsty」をはじめとするブレイクビーツのダブ・オリエンテッドなトラックと御年80を迎えようとしているLee Perryのスモーキーなトースティングが織りなす呪術めいた音世界。中でも「Golden Cloud」と「Congo」の危うすぎる陶酔感ったら!

Wonky

ORBITAL

Wonky

UNDERWORLD、THE CHEMICAL BROTHERS、THE PRODIGYと共に"テクノ四天王"と称されるORBITAL。2004年の『Blue Album』をリリース後活動休止し、ソロ活動を経て2009年に復活。世界各国のフェスに出演した彼らがとうとう待望の新作『Wonky』で完全復活を果たす。エッヂが効いた楽曲が多い今日のシーンだが、彼らの新作は曲線を描くようなソフトな楽曲が多い。日常や人々の心の中に溶け込む映画音楽のようでもある。女性ヴォーカルや、エレクロトニック・ミュージシャンZala JesusやグライムMCのLady Leshurrをゲストに迎え、自分たちだけでは成し得ない世界の開拓も欠かさない。美しいメランコリックと、大地に根付いたサウンド・メイクに陶酔する。

CONTINEW WORLD

ORESAMA

CONTINEW WORLD

"CONTINUE=続く"と"NEW WORLD=新しい世界"が掛け合わせられた本作『CONTINEW WORLD』。DISC 1にはアニメ・タイアップ曲4作に加え、ポップでファンキーなディスコ・チューン「パラレルモーション」、スキャットが印象的な「Chewy Candy」、切ない夜を歌うバラード「夜行ノ雨」、ゴスペル調の「Moonlight」などバラエティに富んだ12曲が収録された。最後を締めくくる表題曲には、変わり続ける新しい世界を振り返らず進んでいくというコロナ禍にも通ずるポジティヴなメッセージが込められている。DISC 2では、YouTubeで公開されたセルフ・カバー企画"Dressup cover"シリーズが全曲CD化。新たなORESAMAワールドの扉を開く1枚だ。

OPEN THE WORLDS

ORESAMA

OPEN THE WORLDS

TVアニメ"叛逆性ミリオンアーサー"第2シーズンのオープニング主題歌と、同作エンディング主題歌のセルフ・カバーを収録。表題曲は各楽器の絡みと音の隙間がグルーヴを作り上げる、風通しが良く躍動感のあるポップ・ナンバーだ。特にイントロや間奏にあるピアノとギターが作り出すユニゾンやハーモニーは斬新で、キャッチーさとスリリングさをどちらも内包している。仲間と共に前進していく強さと刹那が描かれた歌詞のテーマとアンサンブルが合致して、説得力のある楽曲に仕上がった。Track.2はロマンチックなピアノの音色が効果的なORESAMA流ファンク・アレンジ。語感に特化した歌詞によってメロディに艶も生まれた。規格外の音使いをポップスに昇華する手腕に、毎度のことながら恐れ入る。

ホトハシル

ORESAMA

ホトハシル

メジャー1stフル・アルバムから約4ヶ月のインターバルでリリースされるシングルは、TVアニメ"ムヒョとロージーの魔法律相談事務所"エンディング・テーマと株式会社ロッテ"雪見だいふく"Twitter企画テーマ・ソングの2曲入り。表題曲はハイ・テンポのタイトな16ビートにファンクのフレーズを織り交ぜてORESAMA流のロック・ミュージックを実現させ、c/wではこれまでORESAMAが培ってきたシンセのディスコ感にニュー・ジャック・スウィングのテイストを融合させている。どちらもORESAMAにとって新機軸のダンス・ミュージックを提示した楽曲となった。口ずさみやすいメロディと、非現実に連れていくようなサウンド・スケープと、歌詞世界の可能性を、さらに追及した攻めのシングルだ。

Hi-Fi POPS

ORESAMA

Hi-Fi POPS

Hi-Fiなものが当たり前の2010年代にあえて"Hi-Fi"という言葉を持ってくるところも、うとまるのアートワークや70~80年代のディスコ・ミュージックのエッセンスを取り入れたサウンド・アプローチとリンクする。2017年に半年間で3枚の3曲入りシングルをリリースという精力的な活動を見せたORESAMAによるメジャー1stフル・アルバムは、2年半の歴史とこれからを詰め込んだ、まさに名刺代わりの1枚。"ORESAMAのポップス"のひとつの到達点である「流星ダンスフロア」からさらに進化を見せた「cute cute」は、生楽器とデジタルのいいとこ取りであり、そんな手法もあり? と驚いてしまうほどの大胆さを持つ。これからどんなことに挑戦してくれるのか期待が高まる充実の内容だ。

流星ダンスフロア

ORESAMA

流星ダンスフロア

再メジャー・デビュー後、3枚目のシングル。表題曲は前作に続きTVアニメ"魔法陣グルグル"のオープニング・テーマ。作品の鍵でもある"ダンス"をフィーチャーしたことで、J-POPとファンクやディスコを掛け合わせた"ORESAMA流のディスコ・サウンド"の集大成的楽曲に仕上がった。TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDとの共同編曲により、カラフルで躍動的なサウンドスケープになり、特に間奏の様々な楽器の掛け合いは大きなアクセントだ。カップリングには生音主体の切なく優しいクリスマス・ソング、アンドロイドに宿る強い気持ちを綴ったエレクトロ・ナンバーという趣向の異なる楽曲を収録。ORESAMAのポップスのテリトリーをまたひと回り拡張する作品になっている。

Trip Trip Trip

ORESAMA

Trip Trip Trip

再メジャー・デビュー・シングルからわずか2ヶ月で放たれる3曲入りシングル。TVアニメ"魔法陣グルグル"のオープニング主題歌のTrack.1は"冒険の始まる高揚感、きらきら感"や"おもちゃ箱"をキーワードに制作されている。シンセが前面に出た煌びやかなアレンジのなかでひと際異彩を放つアグレッシヴなベースがいいアクセントだ。Track.2はイヤフォン環境下で聴くことを重視した音作りで、定位や休符の使い方も効果的なソウル・ナンバー。Track.3はフィリー・ソウルの楽曲の音色を雅楽の楽器に置き換えたという斬新なトラックと、3曲すべてに趣向の異なる"ちょっとした違和感"が存在する。これこそORESAMA流のユーモアの効いたポップ・センス。熱い気持ちが綴られた歌詞も鮮やかに響く。

ワンダードライブ

ORESAMA

ワンダードライブ

ORESAMA単体名義のフィジカル盤としては2015年12月にリリースされたセルフ・タイトルの1stフル・アルバム以来となる、再メジャー・デビュー盤。TVアニメ"アリスと蔵六"のオープニング・テーマであるTrack.1では主人公やストーリーとORESAMAの心情が重なる部分を丁寧に抽出し、音の面では作品から受けたインスピレーションを疾走感や煌びやかなハウスのビートに落とし込んでいる。新しい舞台に立つ決意表明が描かれた曲になった。カップリング2曲も充実のクオリティで、Track.2は昨年のぽん(Vo)の心情が赤裸々に綴られた軽やかなダンス・ナンバー。Track.3は生楽器でふくよかに彩られたソウルのアプローチが甘美だ。3曲それぞれ異なる音楽性を見せ、ORESAMAならではのポップスの可能性を広げたシングルになっている。

H△G × ORESAMA

H△G × ORESAMA

H△G × ORESAMA

H△G恒例のスプリット・アルバム、今回のパートナーは80sディスコをエレクトロやファンク・ミュージックでリメイクした新しいダンス・ミュージックを作り出す2人組のORESAMA。H△Gは新曲でクリスマス・ソングに初挑戦し、渋谷を拠点に活動するORESAMAとのスプリットということで東京をテーマにした楽曲を制作。ORESAMAはH△Gの持つ"青春"というカラーに合わせ、新曲としてすでにライヴでよく披露していた楽曲と、東京の若者をテーマにした楽曲を収録している。これに加えて互いのカバー曲も収録しており、それぞれでカバーの解釈や手法が異なるところも面白い。音楽ジャンルは異なる2組だが、どちらもポップ・ソング。1枚で2組が作る現実と理想の狭間の世界を感じられる。

Carry On!

ORESKABAND

Carry On!

ガールズ・スカ・バンド、ORESKABANDのレーベル移籍後初となるミニ・アルバムはアッパー・チューン中心の構成。アルゼンチンとブラジルでの海外公演などライヴの合間を縫ってレコーディングされたからなのか、生の温度感をそのまま味わわせてくれるような曲ばかりだ。iCas(Vo/Gt)のラップが新鮮な「Carnival」、ベースとギターの絡み合いがスリリングな「Brand New Day」、ゴスペル的要素を盛り込んだ「Getting Higher」など、サウンド面での挑戦が耳に楽しい。今年で結成10周年のタイミングだが、ブラバン女子のわんぱく好奇心は健在。"続けていく"という意のアルバム名のもと、彼女たちの溌剌さが炸裂するサマは実に痛快だ。

BEST(2003-2013)

ORESKABAND

BEST(2003-2013)

幼馴染で中学のブラスバンド部のメンバーを中心に結成され、昨年10周年を迎えたバンドのキャリア初となるベスト・アルバム。今でこそ10代の女性バンドがデビューすることは珍しくないが、才能によりキャリアをブチ破って出てきたオレスカバンドのデビューは当時衝撃的ですらあった。ホーン・セクションを配したバンド編成で、最初から唯一無二のオリジナリティを確立していた彼女たちの音楽性の変遷がわかる選曲で、「ピノキオ」のような王道のスカと2013年作品「それは勝手な理論」のK-POPばりのエレクトロ・ダンス・ポップの対比に時代を感じて面白い。昨年もアメリカ・ツアー、ブラジルでのライヴを敢行するなど世界を股にかけて活躍するバンドの逞しさがギッシリ詰まった1枚。カッコイイ!

Hot Number

ORESKABAND

Hot Number

前作『COLOR』より2年3ヶ月ぶりのリリースとなるミニ・アルバム。ジャケットのデザインやアーティスト写真からもわかるようにヴィジュアルのイメージを一新し、そのサウンドも彼女たちの原点であるスカは勿論ベースにあるが、レゲエ色の強い「ラブ・ラ・ラバーズ」、キーボードやサンプリングを多用した「それは勝手な理論」など、今までにはなかった新しいORESKABANDを感じることができる。ロック、ジャズ、ファンク、レゲエ、ソウルなど、ありとあらゆる現代音楽の要素を取り入れた今作は、ミニ・アルバムというコンパクトな箱の中に、色とりどりの楽曲を詰め込んだ贅沢な玩具箱だ。その箱を一度開ければ、鮮やかでアグレッシブな楽曲の数々に夢中になり、時間を忘れて楽しむことができるだろう。

セピアに褪せる

Organic Call

セピアに褪せる

結成5周年を迎え、ブレイクは目前!? と期待が募るギター・ロック・バンド、Organic Callの2nd EPは、3rdシングル『Hello,Good-bye』からの「Hello My Friend」、「Good-bye」に「ブルーアワー」、「未来は君の手の中」、「なにもいらない」を加えた全5曲を収録。2ndミニ・アルバム『箒星、残像を探して』はバンドのスケールアップを確信させたが、今回の5曲が印象づけたのは、未来に向かって加速し始めたバンドの思いだ。リード曲「ブルーアワー」の"守りたいものがある 迷う暇なんてない"という歌詞は、まさに今現在のバンドの心境なのだろう。そして、タフになった印象に加え、楽曲は突き抜けていく勢いと彼らのライヴの景色を変えるアンセミックな魅力も放ち始めた。