DISC REVIEW
C
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Grand chocol8(ex-chocol8 syndrome)
エウロパ
chocol8 syndromeにとって初のシングル盤となる『エウロパ』は、初の全国流通盤となった1stフル・アルバム『8』から約半年の期間を経てリリース。短いスパンでのリリースにもかかわらず、"ライヴで楽しむ/楽しませる"ということに重きを置いた前作とは明らかに異なるベクトルの作品に仕上がっていることから、バンドの調子の良さと前のめりな姿勢が窺える。特に、自身が抱える光と闇の部分にギリギリまで迫ろうとするしゃおん(Vo)の詞と、その世界観を増幅するメロディ&サウンドメイキング(※作曲はキーボードのケンコモブチが担当)が光る表題曲の仕上がりは絶妙。"楽しい"以外の七色の感情を交わらせることにより、バンドと聴き手の関係性はますますかけがえのないものに変わっていくことだろう。
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Grand chocol8(ex-chocol8 syndrome)
8
おしゃれ×かわいい×かっこいい="おしゃかわロック"をコンセプトに活動するバンド、chocol8 syndromeの初の全国流通盤。"好きなものを全部取り込んでみました!"みたいな疾走感溢れるサウンドと、躍動感のある男女ツイン・ヴォーカルが特徴的。とはいえ、未来へ突き進む意志を瑞々しく輝かせるアッパー・チューンばかりではなく、和テイストのメロディ・ラインが艶やかな「閃光 ON AIR」、音の隙間も聴かせるミディアム・バラード「勿忘草」なども収録。笑顔の裏に隠されたその虚しさには、バーチャルではなくリアルであなたと繋がりたいんだという願い、傷つくのが怖くて踏み出せない臆病な心などが見え隠れ。こちら側の表情の方が気になるのは私だけだろうか。
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CHON
Chon
マス・ロックやメタルを土台にしつつ、ジャズやフュージョン、さらにはトリップ・ホップやエレクトロまで取り入れた、テクニカルながらクリーンなサウンドで人気を博す、アメリカは西海岸サンディエゴ出身のインスト・バンドによる3rdアルバム。前作『Homey』のヒットを受け、"Coachella"や"フジロック"など大型フェスへ出演を果たすようになった彼らは、大観衆の前でプレイすることを念頭に置いて今作を制作したとのことで、過去作に比べるとよりシンプルで明快なサウンドに変化している。とはいえ、バンドの持ち味でもある多彩な表現力や、フレーズから伝わってくるエモーションは健在。圧倒的なテクニックから生み出される爽やかなグルーヴの波に身を任せたくなる、この夏におすすめの1枚だ。
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CHON
Grow
サンディエゴのポスト・ハードコア・バンド、CHON。彼らが結成から7年、ついにリリースしたデビュー・アルバム。エモ・プログレ・インスト・バンドと言われている彼らは今後、Sumerian Recordsのメタルコアではなく、プログレ部門(?)を代表する存在になるのだろう。いや、ギターによる華麗な速弾きを軸にしたジャズの影響が色濃いプレイはプログレというよりももはや現代のフュージョンという言葉の方がふさわしいかもしれない。プログレという言葉から連想する難解さはここにはない。また、演奏の熱がぐっと上がる瞬間もあるとはいえ、エモやハードコアの名残も皆無だ。「Can't Wait」と「Echo」という2曲あるヴォーカル・ナンバーもリラックスした歌がリスナーを誘うのは和みの境地。実に心地いい。
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chouchou merged syrups.
clepsydra
残響recordが送り出す京都の4ピース・バンド、chouchou merged syrups.の2ndミニ・アルバム。前作『since』時点での彼らは、ポスト・ロックやポスト・ハードコア、オルタナを昇華した疾走感と構築美で魅せる、ある意味"残響カラー"に忠実なサウンドを展開していた。しかしその時点では個性を感じさせはしたものの、あくまでバンドを構成する1ピースとして機能していた紅一点ヴォーカル川戸千明の歌声が、本作においてはバンド・サウンドのすべてを蹂躙するほどの覚醒した存在感を放っている。川戸の艶やかでミステリアスな世界観と歌声のもとに構築されることで、サウンドは前作とは比べ物にならないほどに深淵かつカオティックな音像を手に入れている。バンドがネクスト・ステージに上がったことを感じさせる快作。
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chouchou merged syrups.
since
残響recordが送り出す、2010年に結成された京都出身4ピース・バンドの1stミニ・アルバム。プロデュースはcinema staffのベーシストである三島想平が担当。ポスト・ハードコア、エモ、オルタナ、ポスト・ロックを昇華した、疾走感の中にも優れた技巧と構築美が映えるcinema staffやthe cabsなどに通じる残響直系のサウンドを基調としながら、紅一点メンバーであり歌詞を担当するギター&ヴォーカルの川戸千明の存在が、他とは一線を画す個性となっている。彼女の放つ独特な文学性を孕んだ世界観は、時にノスタルジックな郷愁を誘い、時に凛とした孤独を歌い、時に人間の実存に纏わりつく様々な問題を暴き出す。透明感のあるメロディ、静と動を行き来する変拍子、すべてを掻き消すようなギター・ノイズは、そんな彼女の世界を美しく彩る。
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Christopher Allan Diadora
Amanda
THE STROKESが新作を発表した2013年に、まるでそれに対する解答を差し出すかのように2004年結成のほぼ10年選手から届けられた素晴らしい1stアルバム。サウンドの根幹にあるのはTHE STROKESからの影響を感じさせる00年代型ロックンロールだが、曲毎に表情を変えるヴァリエーションに富んだリズムと、歌謡性の高いメロディが一層のポップネスとオリジナリティを与えている。ニュー・ウェーヴ的な煌びやかさやロック以外の音楽素養を感じさせるアレンジもあるものの、あくまでも最高のリフをソリッドに聴かせることを念頭に置いているのであろう演奏と生々しいプロダクションによって、決して派手になり過ぎない絶妙なラインをすべての曲で維持している。あぁ、なんて素晴らしいセンスとダンディズム。最高。
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ChroniCloop
in Rainbows
思い切り開けたオープニング「in Rainbows」、そしてタイトルどおりにすべての音が点滅しているように聴こえる「点滅する色」、さらに"解った様な口利いてんじゃねえ/「解るよその気持ち」の解るよって何だよ"と誰もが一度は思ったことがある言葉を響かせる「猿の惑星」――冒頭の3曲だけで、すでにめくるめく展開! その後も"ピーターパン"の世界を現代にアップデートしたような「あたしは悪い子」、"君が泣いて居た事/君が傷付いて来た過去/君が逃げてしまった今日/でも大丈夫だって歌うよ"という歌詞が優しい「エイプリル」など、印象的な10曲が並ぶ。10年という月日を重ねてきたバンドとは思えない刺激と、10年という月日を重ねてきたバンドだから鳴らせる説得力のどちらも感じられる1枚。
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ChroniCloop
パレード
"パレード"というと華やかで明るいイメージを持つかもしれないが、今作が描いている"パレード"は、もっと深い。いろんな人がいて、いろんな人生があって、そのすべてが行進するように世界は回っている――そんなイメージが湧き上がってくる。"ずっと我慢してたんでしょう?/信じてくれて良いよ"と優しく強く歌い掛ける「世界を鳴らして」。"今にさ嘘みたいな/革命を見せてやる"と力強く言い放つ「ラストダンス」。個々のプレイヤビリティが楽しめるクールなダンス・ナンバー「24時」。鼓動のようなビートと切々と響く歌のコントラストが美しい「ハートレイト」。そして静かに未来へといざなう「消えない光」――色とりどりの世界が見えてくる、記念すべき初の流通作品だ。
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CHROTO
passAge
RED HOT CHILI PEPPERSやNIRVANA、MUSE、BLANKEY JET CITYなど、それぞれ異なる音楽性をルーツに持つ4人によって結成された吉祥寺発のロック・バンド、CHROTOの1stミニ・アルバム。1年前にリリースされた前作『CHROTO』でも各メンバーの演奏クオリティの高さに驚かされたが、今作には疾走感あふれる「システムダウン」や壮大なバラード「白い闇」、和のテイストが入ったTrack.3「L.I.A.R」など、前作以上に自由度の増した6曲を収録。イトキン(Vo/Gt)の実体験に基づいてリアルなストーリーが描かれたリリックには、様々なギミックが仕掛けられているとのことで、歌詞カードを握り締めてヘビロテしたくなる1枚。
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chuLa
DA・DA・DA・ダイスキ!!
超ハイテンポなアッパーチューンで元気を届けるchuLaのメジャー4thシングルは、昨年5月に新体制をスタートさせ、今年7月にTOKYO DOME CITY HALLでのワンマンを大成功に収めたこともあり、その成長と自信が見事に反映されたエネルギッシュな1枚に仕上がった。メンバー全員のキュートな魅力を惜しみなく前面に出した表題曲をはじめ、カッコかわいいラップが堪らない「プールサイドサマー」(Type-Aのみ)、ファンへの想いを個性豊かな歌声で歌う「cross road」(Type-Bのみ)、ハードなロックをクールにキメた「Pump it up!!」(Type-Cのみ)と、ただかわいいだけではなく、すべての力を味方につけ、個性や才能を存分に発揮したというところに彼女たちのこのユニットにかける想いが窺える。8人のこの先の未来に期待が高まる。
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CHVRCHES
Love Is Dead
"FUJI ROCK FESTIVAL '18"に出演する英グラスゴーのエレポップ・トリオによる2年8ヶ月ぶりの3rdアルバム。R&Bやヒップホップに頼らず、自分たちのエレポップ・サウンドを貫いているところが、とにかく痛快にして、爽快。3人の迷いのなさは、ポップな曲調とは裏腹に切れ味鋭い演奏と紅一点シンガー、Lauren Mayberryの、どこまでも伸びていくようなヴォーカルにもしっかりと表れている。曲ごとに緩急をつけた全16曲。どの曲にもキャッチーなフックが効いているのは、プロデューサーに迎えた現代のポップ・マエストロ、Greg Kurstinとの共同作業によるところも大きいのだろう。"これまでで最もポップな作品"とLaurenは言っているが、まさにそのとおりの作品になっている。
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CHVRCHES
Every Open Eye
50万枚を超えるセールスを記録したというデビュー・アルバム『The Bones Of What You Believe』の成功を、バンドが真正面から受け止めていることを思わせる、とても気持ちのいい作品だ。女性シンガーを擁するグラスゴーの3人組、CHVRCHESが2年ぶりにリリースする2作目のアルバム。身上としているエレポップ・サウンドに大きな変化はないものの、メロディ、リズム、アレンジというベーシックな要素だけで訴えることができる作品を目指したというだけあって、バンドの芯にある魅力がより際立ってきた。これまで以上に多くのリスナーから歓迎されるに違いない。成功をプレッシャーに感じるどころか、自分たちが前に進む原動力にしているようなポジティヴなヴァイブが感じられるところが何とも痛快だ。
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CHVRCHES
Ep
異常にファンキーなトラックに乗っかって、ババーン☆と飛び出す、Lauren Mayberry(Vo)のキッチュさときたら堪らないよ!トラック・メイク出来る現代版BOYS TOWN GANGといった出で立ちの彼らは、キーボーディストの男が2人にディーヴァが1人という編成。因にグラスゴー出身である。ダブステップ、チルウェイヴ、ディスコを咀嚼してモダンなポップ・ミュージックに還元したトラックの上で、爽やかに薫る歌メロには確かにグラスゴーの夏風が吹く。この夏にはSUMMER SONICでの来日も予定されているが、照りつける太陽の下、エゲつなく下半身を刺激する低音をバックに、振り絞る様に歌うLaurenちゃんをみてると妙な気持ちになってきちゃうかも......へへ。
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the cibo
Midnight Habit
2017年に現体制となった神戸発の3ピース、the cibo。真夜中の習慣と冠した今作では時間も、夢と現との感覚も曖昧な深い夜のときを描く。もつれ合っている記憶と感情をひとつずつ丁寧に解いて、大事な思い出としてラベリングをしたり、あるいは煮えたぎったままの未整理の感情としてその様を観察したりする、その贅沢で痛みも伴った濃いひとときを様々なギター・サウンドで表現している。ヒリヒリとした楽器のバトルが瞬間パッケージされたような「禁断の果実」や、「秘密は夕凪と共に」、そして、「三月、涙がこぼれそう」では旅立つあなたに向け、その歌が遠くまで轟くようにアンサンブルのボリュームを上げる。言葉とは裏腹な気持ちを音に込めた、一筋縄でない思いが端々で表れたリアリティのある作品だ。
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the cibo
HOPES -a Lost World-
神戸発の3ピース・ロック・バンド the ciboが、結成から7年、満を持して完成させた初の全国流通盤。それがいきなり全10曲のフル・アルバムになったところにバンドの意気込みが感じられる。「今宵、駆け落ちる前に」含む再録4曲に新曲6曲を加えた内容は、バンドのこれまでとこれからを物語る集大成にしたからだったという。海外のオルタナ・リバイバルにも共鳴する轟音の演奏とナイーブなだけに止まらない文学的な歌詞に加え、様々な可能性を追求する挑戦が、"歌が最優先"と語るいわゆる歌モノのギター・ロックをユニークなものにしている。耳に残るメロディーはもちろん、多彩なリズム・アプローチを含むアレンジや、単に心情吐露だけで終わらない歌詞の語り口にも、ぜひ耳を傾けていただきたい。
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CICADA
Loud Colors
2016年1月から、多彩なゲストを迎えての4ヶ月連続2マン・ライヴを行なっており、5月には初のワンマン・ライヴを渋谷CLUB QUATTROで開催する、4ピース・バンドCICADA。その初ワンマンを前にリリースするのが、今回のEP。ヒップホップやR&B、エレクトロニカなど、クラブ・ミュージックのグルーヴをふんだんに取り入れたバンド・サウンドを、紅一点の城戸あき子によるアンニュイなヴォーカルで都会的でセクシャルな眩さやポップさで包み込んだCICADAサウンドだが、今回はよりエッジーに攻めている。四つ打ちを回避し、細やかでトリッキーなジュークのビートを取り入れたり、これまでよりも大胆にヒップホップを前面に出して仕掛けたり、そんな新鮮で尖った音の鋭さを失わないまま、ポップに落とし込んでもいる。全5曲、試みのある姿勢を提示したEPだ。
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CICADA
stand alone
ヴォーカル、城戸あき子によるキュートでいてセンシュアルな歌声が、洒落たトラックをさらに都会的に彩るCICADA。今年2月に1stフル・アルバム『BED ROOM』をリリースし、ポップ/ロック・イベントからクラブ・イベントまでボーダレスなライヴを行なっている5人が、ニュー・シングル(7inch)を完成。バンド編成でいて、ブレイクビーツからレイドバックしたダンス・ビート、心地よく跳ねたビートを駆使し、構築的なサウンドを生み出しているが、今作もまたモダンで香り高いR&Bサウンドと甘いヴォーカルの映える3曲を揃えた。まだ若手バンドながら、このバランスの妙はなんなのか?というセンスが冴える。「stand alone」の攻撃的なドラムンベースもさることながら、音を詰め込みすぎず、ほどよい余白のある空間的なサウンドの「back to」も逸品!
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cinema staff
海底より愛をこめて
ライヴを主軸に音楽活動という名の航海を続けてきた彼らは、突如猛威を振るった新型コロナウイルスにより、その船から大海へと投げ出された。そんな彼らが"海底"から放つ、暗闇の中に光を見いだす本アルバム。先の見えない深海でもがく1曲目「海底」から始まり、"想像力で地上へ"というテーマのもと愛という明かりを頼りに進んでいく。荒波のように激しく緊張感漂うナンバーから穏やかに広がる大海原のように雄大な曲まで、様々に表情を変え展開する挑戦的な楽曲群。そして夜明け前の丘の上で始まりを歌う「はじまりの場所」にたどり着く。コロナ禍をともに彷徨い苦しみながらも乗り越えてきたすべての人々を、素直な感情を吐露した歌詞と深みを増したサウンドで抱きしめる、愛に満ちた12曲。
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cinema staff
白夜/極夜 E.P.
"極夜"とは太陽が昇ることのない状態。逆に"白夜"は太陽が沈んでも暗くならない状態を指す。真逆の現象をタイトルに冠し、陰と陽の心境をメタファーで表現したcinema staffの2021年初となるスタジオ音源。緩急を行き来する緻密なアレンジで激しくも悲しいワルツを描く「極夜」と、新しい一歩を踏み出す意志をエネルギッシュな歌に託した「白夜」は、サウンド面でもバンドの魅力を両軸から浮き彫りにする。バンド初期に演奏していた「DAWN」をソリッドにリアレンジした「NEWDAWN」も含めて、太陽をテーマにしたような統一感のある収録曲が印象的だ。さらに、CD盤には学生時代に、飯田瑞規(Vo/Gt)が作曲を手掛けた初々しい楽曲を収録。バンドの過去と現在が詰まった1枚。
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cinema staff
BEST OF THE SUPER CINEMA 2008-2011/2012-2019
2008年全国デビュー、2012年メジャー・デビューという経歴の中での初のオール・タイム・ベスト。収録されている新曲「新世界」は伸びやかなメロディとソフトなヴォーカルの相性を最大限に生かしつつ、バンドの地に足のついた音像を聴かせる晴れやかな楽曲。冷静に未来を見据え邁進する4人のモードを実感できる。もう一方の新曲「斜陽」は盟友、高橋國光(ex-the cabs/österreich)との共同制作。両者の尊厳と個性が美しく混ざり合った、繊細で慈愛と情熱に満ちた楽曲が生まれた。彼らの音楽人生を描いたであろう高橋の綴る歌詞も、ひとつひとつがパンチラインとして響く。様々な痛みと喜びと迷いに翻弄されながらも、自分の音楽を磨き続けることをやめなかった人間たちの、情操の結晶だ。
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cinema staff
Name of Love
「great escape」以来約6年ぶりにTVアニメ"進撃の巨人"のEDテーマを手掛けるcinema staff。嵐のようなギター・リフが生むカオスの中で、手探りで道を見つけていくような前回のダークなサウンドに対して、「Name of Love」は静謐なピアノと歌で始まる。今回描いたのは"絆"。強くも脆くもある目に見えないものを手にして進んでいく、美しくドラマチックな曲だ。構築的に細部を積み上げながらスケールの大きな曲を描いていく4人の手腕が生きた曲で、アニメの世界観や根底に流れるものを掬い取った内容となった。今作では「great escape」のニュー・ミックスの他、「OCEAN」、「さらば楽園よ」とアニメを思わせる曲を収録。重厚で充実感のあるシングルだ。
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cinema staff×アルカラ
undivided E.P.
長く親交を温めてきた cinema staffとアルカラによるスプリットEP。書き下ろしの新曲、それぞれのカバー、コラボ曲の全5曲が収録された。cinema staff新曲「first song(at the terminal)」は、ソリッドで高いテンションのドラミングと多展開のドラマチックなサウンドを、伸びやかな歌が包み込む。キャッチーで温かいメロディにただ行儀よく収まらない、アンサンブルのパッションが惹きつける。アルカラの新曲「サースティサースティサースティガール」は、爆発的なオープニングからサビでファンクに急展開するトランスフォームっぷり、先の読めなさ、オチのつけ方で唸らせる。この2バンドが互いをカバーし、コラボする曲は、もちろん技もネタも巧妙に仕掛けられていて、味わい、楽しみが尽きない。
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cinema staff
熱源
前作『eve』は初めてプロデューサーを立て、cinema staffの武器である歌、鋭さ、キャッチーさを洗練させた作品を生んだ。今回の6thフル・アルバムは再び自分たちの手で完結した作品だが、そこではこれまでの経験値を駆使したより鋭利な曲と、馬力のあるサウンド、構築的で変化に富んだアンサンブルへの知性が光る。グッド・メロディと幾何学的なサウンドが、ギリギリのところで接着している初期のスリルに引き込まれた人も、歌心や寓話的な物語性の高さに心揺さぶられた人も、爆発的なロック・バンドとしてのスケール感にやれらた人も、満足する作品。その、それぞれのポイントの高いハードルを超えたアルバムだ。"熱源"という果てることのない、マグマのように煮え立ったバンドのクリエイティヴィティを見せつける。
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cinema staff
Vektor E.P.
「エゴ」、「返して」、「ビハインド」の3曲からなる最新EPは、cinema staffのアンサンブルの妙味と歌とのハーモニーをより洗練し、大きく響かせたアルバム『eve』とはまた違った4人の味を引き出している。勢いの面では、初期のころの、互いに一歩も引かずに音のバトルを繰り広げ、せめぎ合う音が刹那な火花を散らすエネルギーがある。それが沸々としたカオス的な暴発感でなく、メロディを際立たせ、微妙な言葉の温度感を伝える繊細な火力を持ったサウンドとなっているのがとても美しい。「エゴ」ではサビのメロディ、肝のフレーズが猛烈な切迫感で耳に飛び込み、「返して」ではもう二度とないかもしれない甘い景色を、その音で痛切に心に刻み込む。叙情的な風景が、閃きのように脳内に広がる1枚だ。
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cinema staff
eve
前身バンドから数えれば、10数年に渡る年月をこのバンドで過ごし、ミニ・アルバムは5作、フル・アルバムとしても4作リリースしてきたcinema staff。5枚目のアルバムは、彼らのキャリアの中でも、より意識的に変化を求め、実践していった作品だ。それぞれが主張の強いフレーズをぶつけ合うアンサンブルと、展開の多い曲構成、泣きの要素で心を掴む叙情的なメロディ、これを絶妙の絡みで聴かせるのがシネマ節。アルバムに繋がるEP『WAYPOINT E.P.』収録の「YOUR SONG」では、シネマ節を超王道のバラードへ昇華した。その過程で培った曲を洗練させる手法が、アルバムの端々に活きている。各曲のチャーム・ポイントたる場所を、最大限引き出して響かせていくアレンジが、バンドのポップ性とヒリヒリとした尖りを露わにした。
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cinema staff
SOLUTION E.P.
リード曲「YOUR SONG」が大きな反響を得た前作『WAYPOINT E.P.』と対をなす今作。彼らのメロウな歌心を最大限強く、且つシンプルに引き出した前作、そして今作のバンド・アンサンブルの妙が織りなす"動"のドラマ、この両極がcinema staffの面白さだ。今作のリード曲「切り札」では、飯田瑞規(Vo/Gt)の上昇していく鮮やかなメロディ・ラインと並走し、デッドヒートを繰り広げる辻友貴(Gt)のメロディアスなギター・フレーズが肝。メロディの両輪がサウンドのスピードを上げ、風を生んでいく爽快さがある。サウンドはラウドでアグレッシヴだけれど、ビートもフレーズもデコラティヴになりすぎず、鋭く磨き洗練されている。プロデューサーを迎え、1曲を徹底してブラッシュアップし、4人の個の音を明快に編み上げたアンサンブルとなっている。
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cinema staff
WAYPOINT E.P.
自分たちの表現を護り、育み、磨き続けてきたcinema staffが、大きな一歩を踏み出した。アレンジをプロデューサーの江口亮へ一任し、それを自分たちなりに消化して作り上げた表題曲「YOUR SONG」。NHK岐阜放送局開局75周年を記念して制作されたドラマ"ガッタン ガッタン それでもゴー"のために書き下ろした主題歌だ。ドラマの世界観に自身の現況や心情を重ねたミディアム・テンポのバラードは、彼らが持っている誠実さ真摯な姿勢を混じり気なくこちらに届けてくれる。様々な人の力を借りて手に入れた方法論を、彼らは今後自分たちのものにするだろう。そのとき彼らはどんな音を鳴らすのか――。それは今はまだ曖昧なヴィジョンかもしれないが、未来は見えないからこそ面白く、自らの手で開拓してこそ喜びがあるのだ。
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cinema staff
blueprint
過去最高に歪んだギター、より地に足の着いたベースとドラム、そしてその4つの音の上で強く響くヴォーカル。"自分たちにしか鳴らせない音楽"を大事にしてきた4人の、活動と年齢を重ねたうえでの変化の結晶がこの『blueprint』、彼らの"未来予想図"である。"今の自分たちが何をするべきなのか"という冷静な視点と、"大好きな音楽/バンドを長く続けていきたい"という純粋な気持ちが作り上げた音と言葉は、ひとつひとつに高い熱量が宿り、4人の気迫が絶え間なく突き刺さる。しっかりと未来を見据えることができた、現在のcinema staffのモードがそのまま結実したアルバムだ。実に清々しく、実に夢とロマンに溢れたダイナミックなリアリズム。そんな勇敢な音色に、心が突き動かされるのは必然なのだ。
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V.A.
残響record Compilation vol.4
全15バンドが新曲を録りおろした残響recordレーベル10周年記念コンピレーション。好きなバンドだけ聴ければいい、なんて思ってるかたはその考えを改めることをお勧めする。なぜなら、もしこの15バンドにあなたが好きなアーティストがいるならば、間違いなくそれ以外の楽曲もあなたのアンテナに触れるはずだから。それこそが残響recordが10年間でリスナー、そしてアーティストと積み上げた"信頼"だ。ポスト・ロックやエレクトロニカの音楽性を持ち、どこか人を寄せ付けない孤高の輝きを放つ危険性、神聖さを持つアーティストが集うという、事件とも言うべきロマンチシズム。残響recordの看板でもあるcinema staff、People In The Boxをはじめ、全アーティストが独自の色を研ぎ澄ました攻めの新曲を投下している。
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cinema staff
Drums,Bass,2(to) Guitars
バンドが始動して10年の歳月が流れた。その間には数々の喜怒哀楽があり、挫けることも少なくなかったかもしれない。だが彼らはどんな時代でも自分たちに嘘をつかず、抱いている想いをそのまま音と歌にし、そのときの最高水準の音源を作り続けてきた。前作『望郷』はそのモニュメント的作品とも言える。そんな大作を作り上げたバンドが手に入れたのは確固たる自信。今作『Drums,Bass,2(to) Guitars』にはそれが満ち満ちた音しか鳴っていないのだ。美しく高らかに鳴り響く4人の音色と、情感豊かな飯田瑞規のヴォーカルは、聴き手を大きく巻き込むポジティヴで晴れやかなパワーがある。サンバ風のリズムや、エレクトリック・シタールを用いたりなど、随所に挟まれる人懐こい遊び心も痛快。大きなバンドになった。本当に。
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cinema staff
borka
4月2日にリリースされるメジャー2ndフル・アルバム『Drums,Bass,2(to) Guitars』に先駆けて、リード曲を先行配信。同曲は「great escape」をプロデュースした亀田誠治と再びタッグを組んで制作された。ものすごい手数で果敢に攻め込むダイナミックなドラミングに、瑞々しく響く2本のギター、ソフトなコーラスが一足早い春の訪れを告げるようだ。亀田誠治のプロデュースにより、いままでcinema staffが積み上げてきたものを更に大きくこじ開ける、洗練された音色になった。いつ帰ってくるかわからない"あなた"を待ち続ける主人公のボルカ。だが4人の音と飯田瑞規の包容力と説得力のある歌声は、そんな悲しみや不安を吹き飛ばすように鳴り響く。ここに存在するのは笑顔と強い希望だけだ。
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cinema staff
great escape
バンド初の書き下ろしタイアップ曲であり、初のプロデューサー起用曲はテレビアニメ版"進撃の巨人"の後期エンディング・テーマ。インタビューで三島想平(Ba)が"ヒーローがたくさんいるような曲にしたかった"と語ってくれたように、速く鋭く感情的に突き進むギター、メロディアスなベース、音全体を引き締めるドラム――全てが各々の輝きを発っており、攻勢的でハードでありつつも非常に開けた楽曲になっている。主人公エレン・イェーガーの心情や物語の持つ勢いや団結力を反映させつつ、実にcinema staffらしいサウンド・メイクだ。上京してからの2年間で感じた思い全てを込めたフル・アルバム『望郷』という、ひとつの到達点を迎えた今だからこそ作り上げることが出来た、実験的かつ挑戦的なナンバー。
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cinema staff
望郷
楽曲の中核を担う三島想平(Ba)は、ライヴで観客に向かい"岐阜県からやってきましたcinema staffです"と挨拶をする。それは彼らが上京してからも変わらない。『望郷』に収録されている楽曲は全てバンドが上京後に考えたこと、作り出したもので構成されているとのことだ。この作品はcinema staff史上、最も不安定な音像かもしれない。だが最も4人の生々しい心情が音と言葉に溢れた、非常にダイナミックな作品である。故郷への特別な想い、故郷を離れてでも追いたい理想、そして葛藤――。ここには環境と心境の変化がもたらした"進化"が現在形で集約されている。何より、感情的な4人の音色がとにかく包み込むようにあたたかいのだ。泣きながら人の涙を拭うような不器用な優しさに、何度も涙腺が緩んだ。
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cinema staff
西南西の虹
cinema staffのダブル・シングルのうちの1枚である『西南西の虹』は4曲入り。タイトル・トラックは昨年からライヴでも演奏されているが、音源で聴くと鋭利な部分だけではなくそこから生まれる優美さがより浮き彫りに。両極端なものが自然と地続きになるのも彼らの魅力のひとつだ。特にリード・ギターの切れ味と速度は目を見張るものがあり、何度も突き刺されるような感覚。スケールのあるメロディも楽曲の持つ力強さを引き出している。つんのめるような疾走感が光るシネマ節とも言える「A.R.D」、ギターの弦を押さえる指の音も優しく響くアコースティック・ナンバー「発端」、バンドの新章を予感させる言葉が耳に残る「いらないもの」。着実に歩んできた彼らの現在位置を示すシングルと言えよう。
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cinema staff
小さな食卓
cinema staffがシングルを2枚を2222枚完全限定で2月20日に同時リリース。そのうちの1枚である『小さな食卓』はCDに同曲を収録。タイトルとLOSTAGEの五味岳久が描くジャケットにもあるように、"食卓"をテーマに歌った同曲。何度もリフレインするギターは流線型を描くように広がり、躍動感のあるドラムはダイナミックに炸裂。緩急のあるベースは包容力を生み出す。4人の阿吽の呼吸が生み出す絶妙なアンサンブルは、家族の風景そのものにも思える。飯田瑞規のヴォーカルも、よくある日常風景をあたたかく優しく、何より明るく響く。身近にいる掛け替えのない人々への愛情と感謝の気持ちに満ちた曲。
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cinema staff
SALVAGE YOU
メジャー・デビュー作である前作『into the green』から3ヶ月弱で届けられたミニ・アルバムは"救い"がテーマ。聴き手を意識するようになった4人の音はより柔らかく、ダイナミックなスケール感を帯びており、バンドがネクスト・ステージに上がったことを如実に表している。明確な意思を発するポップな「奇跡」から、鋭さと激しさとミステリアスが交錯する「her method」、フィクションとノンフィクションの狭間を描く抽象画のような「warszawa」「小説家」へと、どんどん心の奥底へと4人の音が浸透していく。その鮮やかでドラマティックなストーリー展開は、夢なのか現実なのか分からなくなるほどに我々を音の中へと取り込んでしまうのだ。更に振り幅を増し成熟してゆくcinema staffの音像に息を呑む。
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cinema staff
into the green
新曲2曲と過去の代表曲4曲によって構成されたメジャー・デビュー作にして、音楽的にもcinema staffに新たな季節が到来したことを告げるEP。表題曲「into the green」はまさに、ここ数年の彼らが緩やかに、しかし確実に描いてきた音楽的な進化が昇華された改心の1曲だ。バンド最大の特徴であった飯田の透明感のあるヴォーカルに導かれるように流麗な旋律を描くギターは、時にシューゲイザーのような感傷的なサイケデリアを宿しながら、じわじわと聴き手を包み込む。怒りとも悲しみとも喜びともつかない、この独特なエモーションを表現するサウンドは、彼らがスピッツやsyrup 16gに連なる、この国の偉大なるオルタナティヴ・ロックの系譜にあるバンドであることを告げている。
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cinema staff
cinema staff
03年結成の4ピースバンドcinema staffの1stフル・アルバム。セルフ・タイトルを冠した本作は、まさにデビュー作というに相応しく、"海"という生命の源、始まりの場所を目指す希望に満ちた旅を描いている。そのジャケットの通り、冒頭曲「白い砂漠のマーチ」で夜の砂漠から旅は始まり、目指す"始まりの場所"は"海"。そう――これは、始まりへの旅路なのだ。未だ見ぬ生命の源、船出の場所へと近付くにつれて、光と潤いの色が徐々に加わっていく本作の流れ。と同時に、曲が進むにつれ、その足どりがより強くなっていくかのように、より強く、凛と響いていくヴォーカルもじつに勇ましい。そして、ラスト・ナンバー「海について」で約7分にわたり描かれる希望と歓びは、これ以上ない最高の"始まり"を描いている。
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cinema staff
水平線は夜動く
ここ2年間の彼らの活躍には目を見張るものがある。リリースを重ねるごとに、音が一回りも二回りも膨らみを増し、洗練されていくのだ。前作から半年振りのリリースになる今作は"線"をテーマにした4曲入りのコンセプト・シングル。彼らが切り取る4つの情景はどれも一貫として、張り詰めた早朝の真冬の空気に零れる吐息のように柔らかであたたかく、闇の中で深々と降り注ぐ粉雪のように繊細で凛としている。白と黒のコントラストを感じさせる静寂と轟音で彩られた彼らの音は独特なリズムを刻み、どこまでも切なく、どこまでも美しく響き渡る。慢性的な不満を抱えた現実世界に"夢"という魔法を掛けるようなドラマティックな空気感に、完全に飲み込まれ抜け出せなくなった。目を閉じて聴き入りたい、そんな音。
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