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LIVE REPORT

Japanese

DOES

Skream! マガジン 2014年09月号掲載

2014.07.20 @渋谷CLUB QUATTRO

Writer 奥村 小雪

厚い雲に覆われた薄暗い夕方、こんな日はDOESのあの名曲が聴きたくなる。こんな天気が似合うバンドはそういないだろう。どんよりとした曇り空の下、DOESのシングル『紅蓮』のリリース・ツアー・ファイナルへと足を運ぶ。

会場の渋谷CLUB QUATTROへ着くと、ざわざわと開演を待つファンたちの会話が入り乱れる。そわそわしながら開演を待っていると、予定の18時を少し過ぎて客電が落ち、一斉に手拍子が起こる。そして赤いライトに照らされ、真っ赤な衣装に身を包んだDOESのメンバーが登場。メンバーの後ろには真紅の幕が垂れ下がり、舞台袖のスタッフまで赤いTシャツを着ているというこだわりっぷり。グッズとして販売された赤いTシャツを着ているファンも多く、会場中が燃え盛る炎のようだ。

氏原ワタル(Vo/Gt)曰く"DOESらしさが出るように、バトルを意識して作った曲"だという「紅蓮」に相応しく、血がたぎるような真っ赤なステージに圧倒されていると、大歓声の中スタートした「砂嵐」がハイ・スピードで駆け抜ける。出だしからどんどんDOESのペースに巻き込まれてゆく感じ。ああ、これがライヴだ、これがロックだ。10年以上もの間ロックンロールを鳴らし続けてきた彼らの実力が、ひしひしと伝わってくる。続いて披露されたのは、先述した名曲「曇天」。その後もヘヴィ且つダンサブルな「ワンダー・デイズ」や、軽快なメロディと響き渡るギターのワウが気持ち良い「アクロス・ザ・ライフ」、重厚なリズム隊とギターの甲高い音色が印象的な「イーグルマン」と、衝動的なDOES流ロックが立て続けに披露されていき、会場はどんどんヒート・アップ。ここで一息入れるかの様に壮大なバラード「赤いサンデー」へ。ずしんと重く響き渡るバスドラがなんとも心地良い。シングルとしてリリースされた当初はDOESの新境地に驚かされたポップ・ナンバー「サブタレニアン・ベイビー・ブルース」も、今やおなじみのアンセムと化しており、ファンが一斉に手拍子でリズムを刻む。QUATTROがハッピーな雰囲気に包まれたところで、スピード・チューン「S. O. S. O」のうねるようなグルーヴに胸が昂り、"ニュー・アルバムから1曲聴いてください"というワタルのMCの後、新曲「終わりのない歌」が披露される。セルフ・タイトルを冠した最新アルバム『DOES』のラストを飾る曲だが、タイトルの通り終息感はなく、続く「遠くまで」でもハイテンションなパフォーマンスに会場の熱気は増すばかり。ワタルのへヴィなギター・ソロが光る「色恋歌」でファンの踊り狂う様は、もはやお祭り騒ぎ。そして赤塚ヤスシ(Ba)ファンお待ちかねのメイン・イベントの1つ、「フューチャーボーイ」へ。作詞作曲したヤス本人による歌唱ということで、ファンからは歓喜の声が上がる。エフェクトのかかった歌声に、エッジの効いたバンド・サウンドが混じり合い、闘争心をかき立てる。ヤスが"サンキュー"とクールにキメると、続いてワタルのギター・ソロに、ベースのルートが重なり「ロッカ・ホリデイ」がスタート。後半戦もまだまだ勢い止まず、エコーのかかったワタルの歌声が壮大に響き渡る「太陽病」、スピーディーなドラミングが印象的な「世界の果て」と、どんどん渦に飲み込んでゆく。ダンサブルな「レイジー・ベイビー」では、森田ケーサク(Dr)が立ち上がってバスを鳴らし、ワタルとヤスも飛び跳ねながらダイナミックにパフォーマンス。ワタルの"飛べ!"という煽りに会場は大フィーバー、地響きを鳴らして揺れ、「修羅」では毎度おなじみヤスによる"一、二、三、四"というかけ声とともにファンが指を高く掲げカウントする。そしてラストはもちろん「紅蓮」。イントロの重低音から待ってましたとばかりに会場は熱狂する。サビの少し手前で、急に何かが弾けたようにフロアは一気に沸点を越え、熱気の中に混沌と衝動が入り交じる。一瞬、その熱にメンバーが押されるのかと思いきや、負けちゃいられないと言わんばかりに力強い掛け合いを見せ、ファンとメンバーがお互いに魂をぶつけ合う。目で見る"赤"、耳で聴く"赤"、そして肌で感じる熱までも"赤"く思えるようなステージとなった。

メンバーがステージから去ると、すぐさまアンコールの拍手が鳴り響き、しばらくしてケーサクが1人で登場。その後メンバーも登場し、アルバム『DOES』のオープニング・トラック「カリカチュアの夜」を披露。響き渡るドラムと軽快なメロディに乗せて、"オーイエー"と会場を盛り上げる。「陽はまた昇る」ではファンがタオルを掲げて会場がますます赤く染まり、さらにヒート・アップ。"バクチに踊れ!"と叫び声とともに勢いよく始まった「バクチ・ダンサー」では、オーディエンスも共に歌う。頭を振ってベースを鳴らすヤスの姿も印象的だった。

しかしこれでは終わらない。ダブル・アンコールで登場したメンバーは、まるでここからが本番だとでもいうようにアツいパフォーマンスを見せつける。ローファイでキラキラしたギター・サウンドが心地良い「今を生きる」で会場に希望が溢れ、笑顔のまま「明日は来るのか」で大合唱。会場が1つになり、ライヴは幕を下ろした。

アメリカの作家、スーザン・ソンタグの日記を編纂した"私は生まれなおしている"という書物がある。この本を最初に手にした時、"生まれ変わる"ではなく、"生まれなおす"というタイトルに強い衝撃を受けたものだが、この日のライヴでその瞬間を思い出した。DOESは"生まれなおした"のだ。昨年、結成10周年という節目を迎え、過去アルバムの完全再現ライヴを行ってきた彼らは、自身を見つめ直し、"DOESらしさ"を再認識したのだろう。だからこそ、無理に変わるわけでもなく、これまでのDOESを引き摺るでもなく、自然に新たなフェーズへと突入できた。自身のバンド名を冠した最新アルバム『DOES』にも、そんなDOESの未来が詰まっている。このアルバムを引っ提げて行われる次のツアーにも期待せざるを得ない。

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