Japanese
DOES
2014年07月号掲載
Writer 沖 さやこ
2010年代の現在において、ロックの解釈は様々である。もともとロックは社会に対する怒りや自らの手で世界を変えようとする思想のもと生まれた音楽で、束縛をぶち壊し自由を求めるものだった。時代も変われば言葉の意味も変わると言えど、これはロックの核とも言える部分。それはいつの時代も英雄的でもある。そして現在、この日本には"理想の英雄"が生まれる"少年漫画"という場所がある。その世界で逆境と戦うヒーローたちに、子供たちは胸をときめかせ、時には大人も心を動かされる。"自分もこんなふうになりたい、自分もできるかもしれない"――現実世界では成し得ないことが現実になる仮想世界。そこには純粋で切なる夢がある。
1999年から週刊少年ジャンプで連載されている人気漫画"NARUTO -ナルト-"のTVアニメ版"NARUTO -ナルト-疾風伝"、そのオープニング・テーマをDOESが書き下ろした。タイトルは「紅蓮」。公式サイトにて、氏原ワタルはこの曲についてこう語っていた。"DOESらしさが出るように、バトルを意識して作った曲です。ナルト達の戦いを、愛ゆえの光と影の戦いと捉え、詞に織り込みました。紅蓮の火が明かりを照らし、激しさを増す戦いの先に光がありますように"
NARUTOの登場人物はそれぞれが抱える闇と戦い、現状をぶち壊そうと試行錯誤を繰り返している。それでも戦おうとするのはその先に"光"があることを信じているから、信じたいからだ。ロックの先駆者たちも、その光を求めていたのではないだろうか。この「紅蓮」も、そんなNARUTOの世界に寄り添いながら、自身の"愛ゆえの光と影の戦い"を投影している。エッジが効いたギターとソリッドなアンサンブルに、哀愁漂う色気のある和的なマイナーのメロディ――バンドを強く印象付けた「修羅」や「曇天」を彷彿させるリスナーも少なくはないだろう。
だが「紅蓮」が決定的にこの過去の2曲と違うところがある。「修羅」と「曇天」は一抹の虚無感や、唾を吐き捨てるような反抗心が強い、すなわち闇のなかでもがき、のたうち回るようであったのに対し、「紅蓮」は"影"にいつつも確実にその"光"が見えているのだ。いや、もしかしたら見えていないのかもしれない。だがその光があることを信じてやまない、非常に前向きな気持ちが込められている。"傷つきながら未来信じて/また先へその先へ行こう""戦いの果てに何もなくても/また先へその先へ行こう"――この歌詞にも示されているように、過去曲のそれとは違う、様々な許しや、現状を受け入れる度量を感じさせるのだ。これは「今を生きる」という楽曲ができたときにバンドが手に入れたものだろう。3月11日の東日本大震災の悲劇を決して忘れず、これからの未来が輝かしい日々であるために今を精いっぱい生きよう――そんなメッセージが込められた「今を生きる」。バンドは現在もその心を持ち続け、そして今回"未来"に向かい走り始めた。
2012年に作り上げた5thフル・アルバム『KATHARSIVILIZATION』と、シンセを用いて作られた雨上がりのような爽快感と包容力を持つダンサブルなシングル曲「夢見る世界」。2013年には結成10周年を記念してアルバム完全再現ライヴなどを行い、現在と過去をひたむきに見つめ続けた結果辿り着いたのが、「紅蓮」という燃えさかる華なのだろう。そこにNARUTOの世界が重なることで、よりファンタジックに響き想像力を掻き立てる。そして「紅蓮」はNARUTOが人間の心を生々しく描いた奥深い作品であることを改めて思い知らせてくれた。オープニング・テーマとしても申し分のない楽曲だ。
曲の終盤に、こんな一節がある。"優しい君を守るため/僕は鬼にでもなれる"――これは"失われていることすら当たり前のような"現代で、ロックが指し示すひとつの希望なのかもしれない。
▼リリース情報
DOES ニュー・シングル
『紅蓮』
[Ki/oon Music]
2014.7.2 ON SALE
【初回生産限定盤】CD+DVD
KSCL-2420 ¥1,373(tax in)
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【通常盤】CD
KSCL-2422 ¥1,049(tax in)
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[CD]
1. 紅蓮
2. 砂嵐
3. フューチャーボーイ
[DVD](初回生産限定盤)
遠くまで [Music Clip]
紅蓮 [Music Clip]
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