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FEATURE

Japanese

DOES

2012年03月号掲載

DOES

Writer 伊藤 啓太

2011年3月11日、あの日から日本、いや私達の世界は一変した。意味を持っていたものが意味を失い、光を放っていたものも光を失った。昨日までの日常が文字通り音を立てて崩れ、もうそれを取り戻すことができない現実に絶望した――あの日からもうすぐ1年になる。DOESを取り巻く環境も少なからず変わっていったであろう。しかし、音を鳴らすことを止めることを選び、音楽ではなく音楽以外の行動で被災地に貢献する活動をしたアーティストもいた中で、彼らは音楽の光を、意味を信じた。止まること無く、むしろ歩みを速め音を鳴らした、それが彼らの決意だった。

震災後まもなくメッセージと共に発表された彼らのチャリティ活動、そして氏原ワタル(Vo&Gt)から届けられた、「勇気」。“勇気を出せよ”というシンプルで、しかしこれ以上ない力強いメッセージをギターのみで優しく、語り掛けるように歌う彼の姿に力をもらった人は少なくないはずだ。

そして2012年3月、“あの日”から1年を経てリリースされる、1曲のみが収録されたシングル『今を生きる』。昨年9月に赤坂BLITZで行われた「5th Anniversary LIVE」で初披露されたこの曲を初めて耳にした時、正直少なからず驚きはあった。DOESといえば、ソリッドで鋭いギター・ロック・サウンドをベースに、言わば“無骨”なロックをかき鳴らし続けていたのが特徴だった。だが本作では、彼らの専売特許である妖しく光る研ぎ澄まされた日本刀の刃のように鋭く切りかかってくるようなスリリングなギターのリフは鳴りを潜め、聴くものに希望を感じさせ、“曇天”から差し込む柔らかい光のようなギター・サウンドに変化している。氏原ワタルのヴォーカル・ワーク、少しディスがかかった力強い歌声は勿論今作も健在だが、遥か遠くまで声を届かせるために声を絞り出し、その場にはいないかもしれない多くのリスナーと、まるで歌を共有するような印象すら受ける。赤塚ヤスシ(Ba&Cho)、森田ケーサク(Dr&Cho)のリズム隊も今まで以上に丸く、暖かいグルーヴで彼の歌とギターを支える。“あの悲劇を決して忘れずに、これからの未来が輝かしい日々である為に今を精いっぱい生きよう”という彼らのポジティヴなメッセージは今作の音の端々から伝わってくる。

冒頭でも触れたが、あの日以来表現する側の人間の苦悩というのは凄まじかったと思う。それ自体が決して物質的な意味で“生産的”ではない。生産的な活動ですら制限されている中で何を表現すべきか……どの答えを選んだアーティストも正解、不正解で論ずることが自体ナンセンスであることはわかっている。しかし、音楽の力を信じてきた人間としては“表現”し続けることを選んだ彼らの選択には少なからず勇気付けられた。光が見えなくなった時、最終的に光を見つけ掴むのは自分自身である。しかし、心が折れそうな時に寄り添い、力になってくれるのは物質的なものだけではない。音楽の力を信じたいのだ。今、そしてこれから、DOESが照らしだしてくれた光を掴むのは私達自身だ。
―曇天から差し込む一筋の光、DOESが照らし出した未来を紡ぐ言葉―

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