Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

LIVE REPORT

Japanese

WHITE ASH

Skream! マガジン 2013年10月号掲載

2013.09.15 @渋谷CYCLONE

Writer 沖 さやこ

WHITE ASHが現在のメンバーで本格的にバンド活動を開始し5周年。それを記念し、渋谷CYCLONEにてワンマン・ライヴが開催された。ステージの前には緞帳のようにプロジェクターが下がっている。剛のドラム・カウントでプロジェクターが上がると、いつもは登場SEであるthe pillowsの「WHITE ASH」をカヴァー。いきなりのサプライズに観客のテンションも高騰する。そこから「Ray」へ。地にリズムを打ち付けるような彩(Ba)と剛のリズム隊、色気のあるコードとサビのツイン・ヴォーカル、締まるところは締まったグラマラスな音像がフロアを支配する。"WHITE ASHです、ようこそ!"とのび太(Vo/Gt)が告げ「Thunderous」。山さん(Gt)が刻むソリッドなギター・リフが大きく切り込み、観客もシンガロング。のび太はふとした瞬間に鋭い眼光を輝かせる。楽しそうな表情であるが凛々しい。「Kiddie」ではダイヴァーが出現。4人は1音1音で確実に聴き手のハートを射抜いてゆく。"いつも以上に自分たちの思い入れのある曲を中心にやっていく"とのび太。"でもせっかくなんでライヴで初披露の曲をやりたいと思います"と「Wake It, Make It」。ハンド・マイクの彼はラップ・アーティスト風の動きで魅了。エモーショナルなヴォーカルに3ピースの屈強なサウンドのバランスが気持ちいい。のび太の持つオーラというか、醸す空気の色男具合に惚れ惚れする。ミラー・ボールが回転し"こっから更にダンス・ゾーンにいっちゃってもいいでしょうか!?"と「New Wave Surf Rider」「Paranoia」。オーディエンスの熱狂に空調が追いつかず、立っているだけでも汗だくだ。のび太が"まだいけますか~"と挑発した「Jails」では激しいモッシュが。駆け抜ける音色と観客の衝動的な感情が合致し、更に強いパワーが生まれてゆく。


のび太がガッツポーズをして笑顔で"最高です!"と叫ぶとフロアからは大きな拍手が。この4人になって初めて作った曲だという「B.B.」が、なぜこのタイトルになったのかを剛が語る。こういうエピソードが明かされるのも5周年記念ならでは。強靭なヘヴィなリフのブレイクで妖しく輝くのび太のヴォーカルは確実にこのバンドの武器だ。4人の演奏力と歌唱力があってこそ表現できる安定感に、自然と体が揺れる。「Hello, Afternoon」の後、のび太は"僕らは2010年9月に(『On The Other Hand, The Russia is...』で)インディーズ・デビューをしたんですけど、その前に(CYCLONEに)お世話になっていた"と、今回のライヴをCYCLONEにした理由をエピソードと共に語る。『On The~』はこのCYCLONEを使ってレコーディングされたとのことだ。のび太は"(CYCLONEは)僕らにとっては大切な場所"と言い"大切な場所を思って作った曲です"と「There Changed Me Special」を披露。とても素直な音色に、自然とクラップとあたたかい拍手が起こった。


そのあとは結成秘話を語る4人。全員が大学での軽音楽部の入部から楽器を始めたというエピソードに驚きを隠せないフロア。のび太が初めて聴いた瞬間に雷を打たれ"こういうバンドをやりたい!"とバンド活動に対して能動的な姿勢に変わった、結成のキッカケとも言えるARCTIC MONKEYSの「I Bet You Look Good On The Dance Floor」をカヴァー。好きという感情が爆発した情熱的なサウンドスケープで、のび太のメガネもずれるほどの昂ぶりだ。"今度は今の僕らの曲を聴いてください"と「Crowds」「Velocity」「And Gypsy」と畳み掛ける。山さんとのび太のギターは、両者一歩も引かずに炸裂。ラストの「Stranger」まで4人の息が崩れることはなかった。アンコールではまず山さんが1人でステージに登場し感謝の弁を述べる。のび太はメンバー1人1人にメッセージを伝え、リスナーに"シンプルかつかっこいい曲を皆さんに届けたい"と力強く宣言した。12月11日にリリースされる2ndフル・アルバムから「Casablanca」を披露。3拍子のリズムと憂いのあるメロディ、太いグルーヴのバランスが心地よい曲だ。"ラストはみんなでお祭り騒ぎしましょう!"と「Pretty Killer Tune」。曲中にメンバー紹介を挟み"このまま終われるんですか!?"とテンポを上げて再度演奏。コール&レスポンスなども巻き起こり、5周年記念に相応しい笑顔の溢れる祝祭感の中ライヴは終幕した。 このライヴのチケット代は3005円という5周年と引っかけた"ご縁(5円)価格"だったのだが、会場を出るときにのび太のイラストのステッカーと共に、ぴかぴかの5円玉お守りを頂いた。こういう細かい気遣いに見える小粋さもこのバンドの魅力である。

  • 1