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FEATURE

Japanese

WHITE ASH

2013年08月号掲載

WHITE ASH

Writer 石角 友香

4月の赤坂BLITZでは、その名の通り普段は冴えない青年のび太が、ステージ上では輝かしいスタジアム・クラスのポップ・スターに変身するようなロマンと、ソリッドで太く海外のシーンともシンクロする最新のバンド・アンサンブルで痛快この上ないライヴを見せたWHITE ASH。5月リリースのメジャー1stシングル『Velocity』は、まさに新しいフィールドに向かってギアを何段もアップするような疾走感に満ちあふれていた。同シングルから約3ヶ月、間髪入れずに2ndシングル『Crowds』をリリースする。
破竹の快進撃を続ける彼らだが、その内容がいかにも彼ららしい。1stシングルに伴う怒涛の全国ツアーの後には、初の自主企画“HATTRIX”を東京と大阪で開催。東京はHermann H.& The Pacemakers、大阪には髭といずれもリスペクトする先輩バンドとの競演を果たしたワケだが、2バンドとも一筋縄ではいかない音楽的な毒気やスピリットの持ち主なのは言うまでもない。しかも東京、Shibuya O-East公演では本物のPK合戦を盛り込んでの“対決”ライヴを実現。いかに彼らが“愛され系後輩バンド”でも、そこはそれ。音楽的に認め合っていなければこんな本気の遊びも実現しなかっただろう。やりたいことを飽くまでも攻めの姿勢で貫く。そんなWHITE ASHの求心力はあらゆるバンドマンのハートも掴んでいる。
今回のシングル『Crowds』は、タイトル曲が70年代に人気を博したアニメ“科学忍者隊ガッチャマン”を2010年代にアップデートさせた新シリーズ“GATCHAMAN”のオープニング・テーマに起用。WHITE ASHのハード・ボイルドな側面である、ダークでソリッドな山さんのギター・リフとのび太のコード・カッティング、彩のボトムの太いうねるベース・ライン、剛のシュアに決まるスネアが小気味よく、ドラマを盛り上げていく。今回もサビの一部に日本語詞を差し挟む手法で、そのワン・フレーズが強く耳に残りライヴでもまたまたシンガロングの渦が巻き起こりそう。ミディアム寄りの量感のある曲でののび太のヴォーカリストとしての豊かな表現力が堪能できるのも大きな魅力だ。しかもカップリングは3曲!ハードなミクスチャー・ロックとラップ的な要素、繊細なヴォーカルのすべてがダイナミックに展開する「Wake It, Make It」、のび太がタンバリンを叩きながら歌う姿が想像できるシンプルなビートとブルージーな味わいを持つR&R「Queen Of Boogie-Woogie」、フォーキーなアコギの弾き語りで展開し、のび太のどこまでも突き抜ける艶のある声をざっくりした手触りで楽しめる小品「Good Day For Bye」と、恐らくこのシングルでしか聴くことのできない楽曲も収録。この中の何曲かは今夏のフェスやイベントを楽しむ上でマストなレパートリーになること必定だし、かつ、今後アルバムに収録されそうにない飾り気のないのび太のソングライトの大元に触れることができるのという両面で嬉しいシングルに仕上がっている。これを読んでもらっている段階で間に合えば、ぜひ巨大な夏フェスで彼らのライヴを体感してほしい。特にSUMMER SONICでは海外勢に負けず劣らずの最新のロック・バンドとしての強みを発揮してくれそうだし、各地でファン急増の予感しかない。ファンにとっては弱っちいキャラと歌い始めたら変身よろしくヒーロー化するのび太はもうおなじみだが、未見・未聴の人にこそ、今年の夏はWHITE ASHという自分たちのやり方で道を切り拓く4人に出会ってほしいと切に願う。やりたいことを実現する胸のすくような快感がこのバンドにはあるから。

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